更新日:2024年12月05日
時計好きの男性なら皆一度は憧れる複雑機構「クロノグラフ(chronograph)」。高級腕時計の中でも一二を争う人気のジャンルであり、スポーティーでスタイリッシュなデザイン性は、国境・時代をこえて時計愛好家達のハートを鷲掴みにします。
ブライトリングの「ナビタイマー」やゼニスの「エル・プリメロ」、タグ・ホイヤー「モナコ」など、歴史的な名作も多く、そのどれもが「一度は欲しい!」と切望する名機達ばかりです。
しかし名作は数あれど、「世界で最も有名なクロノグラフは?」と問われて真っ先に思い浮かぶのはやはり、“キング・オブ・クロノグラフ”のロレックス「デイトナ」か、“ムーンウォッチ”のオメガ「スピードマスター」ではないでしょうか。「竜虎相搏つ」ということわざがありますが、果たしてどっちのクロノグラフが時計ファンに支持されているのでしょうか?
本記事では、デイトナVSスピードマスター(スピマス)を様々な観点から分析し、2024年現時点でどっちのクロノグラフが優れているのか?なかなか答えの出ない問いに挑みたいと思います。
既にどちらか(両方)をお持ちの方も、片方の熱狂的なファンの方も、どちらを購入するか検討中の方も、本記事が読者の皆様の“自分なりの正解”を選び出すガイドブックとなれば幸いです。
近年のトピックスとして、デイトナは誕生60周年の節目である2023年に、「Ref.1165XX→Ref.1265XX(※第6→第7世代)」へと世代交代を果たし、全モデルが刷新されました。
対してスピードマスターは、2023年11月に6代目ジェームズ・ボンドのダニエル・クレイグ(ブランドアンバサダー)が、“幻のホワイトムーンウォッチ”を匂わせ気味に着用。2024年3月にホワイトダイヤルの「オメガスピードマスター ムーンウォッチ プロフェッショナル 310.30.42.50.04.001」を発表し、大きな話題を集めました。
どちらの新作も実力伯仲、甲乙つけがたいカッコ良さですよね!?
デイトナとスピマスの違いを比較する前に、まずは両モデル(&両ブランド)が普遍的にどんなイメージを持たれているのか?ザッとおさらいしておきましょう。
2022年の記事にてデイトナのイメージや関連キーワードはご紹介しているため、(本記事は)前回と違う検索ワードを中心にノミネートしました。興味の湧いた方は過去記事も合わせてご覧ください。
クロノグラフの王様、デイトナのネット上のイメージ、2024年現在のトレンドワードをまとめてみました。
【デイトナの評判とイメージ】
【デイトナの注目関連キーワード】
ポールニューマン、ルマン100周年、winner 24、パンダ、レインボー、タイガーアイ、大阪、月などニッチな言葉も見かけましたね。総合的に見れば、色や素材、型番を中心に、幅広いキーワードで探されている検索状況でした。
二年前は「ダサい、そろそろ下落しそう」のネガティブワードもちらほら目立ったのですが、「定価で買う方法、今後」などの検索ワードも増えていますね。
キーワードから察するに、ロレックスバブル(高騰)の動向をチェックしつつ、(今のうちに)どうにか手に入れたい、という投資目的の層が一定数以上存在しているのでしょう。
続いて、スピードマスター プロフェッショナルにまつわる評判やトレンドワードを情報整理してみました。
【スピードマスター プロフェッショナルの評判とイメージ】
【スピードマスター プロフェッショナルの注目関連キーワード】
スピマスはアイデンティティーやバリエーション、歴史に起因したフレーズが目につきました。
月へのロマンを身に纏った最先端ボディーは、限定記念モデル&コラボモデルも多く、(ロレックスにはない)変化球や遊び心を堪能できるのもスピマスの魅力です。
次項目では、両モデル(ブランド)の大まかな概要とイメージを心の隅に留めつつ、どちらのクロノグラフが優れているのか?基本情報を元に紐解いていきましょう。
“クロノグラフの王様”と“月面着陸時計”。2つの伝説的クロノグラフの基礎知識を押さえておきましょう。
どちらも超一流の高級腕時計ブランドであり、業界を牽引する存在です。
今回はデイトナとスピードマスター プロフェッショナルの現行主力モデル(デイトナ:126500LN、スピマス:310.30.42.50.01.001)を中心に、多角的な視点で両コレクションを比較していきます。
“クロノグラフの王様”デイトナでも、スピードマスター プロフェッショナルの伝説には及ばないかもしれません。
当項目では、「コスモグラフデイトナ」誕生の1963年を少し遡り、NASA(※1958年創立)発足の1950年代からロレックス&オメガの歴史を分析します。
デイトナ&スピマスの各世代での特徴、キーとなるエピソードを中心に深掘りしてみました。
写真のデイトナ Ref.6240は幻の“ソロ”ダイヤル(※「ROLEX」表記のみの個体)
1960年代に世界初の防水機能付きレース用クロノグラフ「コスモグラフデイトナ」を発表し、その高い技術力を証明したロレックス。今でこそデイトナ呼びが定着していますが、最新モデル126500LNにも印字される12時位置の“COSMOGRAPH(コスモグラフ)”は、宇宙へ行くことを願いつつ、オメガ スピードマスター プロフェッショナルに敗れた名残でもあります。
コスモグラフという言葉自体、「コスモ(※宇宙の「COSMO」S)」と「グラフ(GRAPH)」に分けられる造語ですし、NASA認定時計の座を何が何でも獲得したかったのかもしれません。
そんなほろ苦い時代もあったデイトナの変遷を辿りましょう。
*注*本記事は、スピマス プロフェッショナルとの比較に重点を置いているため、デイトナの由来であるフロリダ州デイトナビーチのカーレース「デイトナ・インターナショナル・スピードウェイ」にまつわるエピソードは意図的に割愛しております。
その他の歴史含め、時系列を整理したい方は「ロレックスの歴史、三大発明」もお読みくださいませ。
■プレデイトナ(Ref.6234、6238)~デイトナに至るまで~
デイトナのルーツは、1950年~60年代頃に製造されたクロノグラフウォッチRef.6234、6238が原点と云われています。「プレデイトナ」とも呼ばれ、極めて希少性が高いモデルです。
<Ref.6234の特徴>
<Ref.6238の特徴>
プレデイトナの頃から、ロレックスの代名詞「オイスターケース」を採用している以外にも、横三つ目インダイヤル(※30分積算計・12時間積算計・スモールセコンド)の“3カウンタークロノグラフ”を既に確立しているのが特筆すべきポイントです。完成されたデザインコードは、不変のスタイリングですね!!
プレデイトナのRef.6238は、ボンドウォッチとしても有名で、スーツに合うクラシックデザイン(+性能の良さ)が選ばれた理由だったと云われています。
■初代デイトナ(Ref.6239、6241)
<初代デイトナのデザイン特徴、見分け方>
12時位置「COSMOGRAPH」の真下、または6時位置にあるはずの「DAYTONA」表記が「あるorない」バージョンが存在し、「COSMOGRAPH」表記のみのコスモグラフデイトナもリリースされています。
この頃はコスモグラフがメインで、デイトナはおまけのペットネーム的扱いだったのですから、歴史は時に不思議です。
プレデイトナと初代デイトナの外観の変化を見ると、タキメータースケールをダイヤルからベゼルへ移動させ、レーシングウォッチっぽさを増しています。タキメーターの数字も大きく見やすいものへと改良されていますね。
初代デイトナRef.6239と言えば、人気俳優ポール・ニューマン氏の逸話が有名です。記事後半では、「ヴィンテージモデルの資産価値」についてもご説明していますので、お楽しみに!
⇒
ロレックス デイトナ VS オメガ スピードマスター プロフェッショナル【ヴィンテージモデルの資産価値、オークション最高落札価格は?】 へ
珍しいロレックス×ティファニーの“ダブルネーム”デイトナ Ref.6264
■デイトナ第2世代(Ref.6262、6264)
<デイトナ第2世代のデザイン特徴、見分け方>
デザイン的には初代デイトナとあまり変わっておりません。ペアリファレンス形式(ステンレスベゼル:6239→6262、強化プラスチックベゼル:6241→6264)を採用し、ロレックスが独自に改良したCal.727を搭載しています。
*注*初代デイトナに搭載したCal.72(バルジュー社製手巻きムーブメント)は毎秒5振動、Cal.727は毎秒6振動に向上
第2世代と第3世代の狭間のタイミングで、多くの謎を残すレアモデルRef.6240についても、少しだけ触れることにします。
基本的に手巻きデイトナだった頃は、ペアリファレンス(※4桁Refの初代6239/6241、第2世代6262/6264、第3世代6263/6265など)が主流だったのですが、1965年誕生のRef.6240は対となるRefがなく、第3世代のデイトナ開発と同時期に進めたテストモデルではないかという説もあります。
デイトナダイヤル初の12時位置に「OYSTER」表記、スクリューロック式プッシュボタンを先駆けて搭載、第3世代よりも早く50m防水性能を実現した画期的モデルです
オマーン海軍仕様のデイトナ Ref.6263はUAEモデルと並ぶ人気
■デイトナ第3世代(Ref.6263、6265)
<デイトナ第3世代のデザイン特徴、見分け方>
約18年間製造されたため、比較的アンティークモデルを探しやすい第3世代デイトナRef.6263、6265。精度・防水性能共に優れ、手巻きデイトナの最終型にして最高峰の呼び声も高いモデルです。
第3世代に限った話ではありませんが、ダイヤルパターンのバリエーションが豊富なため、製造年や付属品の有無、僅かな仕様の差がリセールバリューにも強く影響するのもこの世代の特徴です。
「DAYTONA」表記の大きい“ビッグデイトナ”は、コレクター垂涎の的となっています。
■デイトナ第4世代(Ref.16520)
<デイトナ第4世代のデザイン特徴、見分け方>
現在でこそ絶大な人気を誇るデイトナですが、当時のロレックスはGMTマスターやエクスプローラーが主力で、デイトナの人気は今ひとつどころか、デイトナお断りの広告が出されたり、「悪趣味なデザイン」と半額以下(!)で売られることもあったそうです……今の時代では、信じられない話ですよね。
ところが、海外のファッション誌で特集を組まれ、不人気だったデイトナは遂に大ブレイク!!瞬く間に、大人気モデルへと成長していきます。
「エル・プリメロの逸話とデイトナとの関係性」を更に掘り下げたい方はこちらの記事もどうぞ。
経年変化のヴィンテージ風味がたまらないデイトナ Ref.116520のクリームダイヤル、多種多彩なトロピカルダイヤルもマニアに大人気!!
■デイトナ第5世代(Ref.116520)
<デイトナ第5世代のデザイン特徴、見分け方>
■デイトナ第6世代(Ref.116500LN)
<デイトナ第6世代のデザイン特徴、見分け方>
■デイトナ第7世代(Ref.126500LN)
<デイトナ第7世代のデザイン特徴、見分け方>
6桁Refの第5・6・7世代につきましては、比較的新しいリファレンスであり、弊社ブログでも度々取り扱っておりますので詳細は割愛します。
一目惚れしそうな愛嬌のあるルックスをしたデイトナですが、紆余曲折のドラマがありましたね。
「デイトナの系譜」を見ると、デザインコードも含め時とともに変化を遂げている印象です。
ロレックス唯一のレーシングクロノグラフをブラッシュアップさせ、“キング・オブ・クロノグラフ”へと変貌させています。
ふと、ずば抜けたセンスを持ちながらくすぶっていた天才ボクサーが、世界チャンピオン“アポロ”との激闘に敗れ、スターへと駆け上がる映画『ロッキー(シルベスター・スタローン主演&脚本)』を連想しました。不遇な境遇を見事に跳ね返し、皆に愛される“絶対的怪物王者”に成長する姿が似通っていますね。王者になった後のイメージ(*注*デイトナはエレガントさに磨きがかかりスマートな姿に)はまるで違いますが。
それらを鑑みるに、(24時間耐久レースのスポンサーでもありますし、資産価値的にも)デイトナは「不屈」という言葉が、相応しいですね。
デイトナの歴史がどれだけドラマチックであろうとも、スピードマスターほど奇跡に彩られた神話性には及ばない、そう考える熱心なファンも多いことでしょう。
日進月歩の技術革新を遂げる高級腕時計業界。普段使いに適した自動巻きムーブメント、傷がつきにくいサファイアクリスタル(ガラス)風防がメイン装備の現代でも、オメガ スピードマスター プロフェッショナルは「手巻き」「強化プラスチック風防」、そして「クロノグラフ」であり続けます。
NASAの厳しいテストに唯一つ合格し、絶体絶命の危機であるアポロ13号のアクシデント“運命の14秒間”でも粛々と時を刻み続けたオメガ スピードマスター プロフェッショナル。そんなタフ&クールさも魅力の“ムーンウォッチ”を歴代コレクション順にご紹介します。
■初代スピードマスター プロフェッショナル(Ref.CK 2915-1)
<スピマス プロフェッショナル第1世代のデザインと特徴、見分け方>
流行の兆しが見えたモータースポーツ向けに初代スピマスRef.CK 2915-1は生まれています。
デイトナの歴史項目をお読みになった方ならピンと来ると思いますが、「デイトナ=宇宙時計向け(コスモグラフ)→レーシングウォッチ、スピードマスター=レーシングウォッチ→月面着陸時計」と、どちらもコンセプトや方向性の舵取りを巧みに修正し、“伝説の二大クロノグラフ”の地位を確固たるものにしていったのです。
1957年に発表されたスピードマスターのオリジナル広告には、『Our picture shows two sports car enthusiasts racing the clock...(スポーツカー愛好家の二人が、時計と共にレースをする様子が写真に納められています)』と記されており、当初はレーシングウォッチとしてアピールしたかったのだと推察できます。
しかし、1962年にRef.CK 2998(2ndモデル)が「宇宙で着用された最初のオメガウォッチ」として名を馳せ、1965年にはNASAの公式装備品として認定されることで、その性能の凄さと信頼性は加速度的に影響力を増し、(当初のオメガの意図とは違う)月へと歩みを始めるのです。
■「スピードマスター プロフェッショナル第2世代(CK 2998、ST 105.002)」
<スピマス プロフェッショナル第2世代のデザインと特徴、見分け方>
スピードマスターとなり得る基幹デザインの完成度、宇宙との密接な関係性はセカンドモデルから始まります。インダイヤルの見にくさを改善するため、ブロードアロー針からアルファ針へ変更、視認性を向上させています。タキメータースケールの判読性を高めるために、(ベゼルに直接刻印せず)ブラックカラーのアルミプレートへ刻印する方式を採用しているのも英断です。
オメガと宇宙との出発点となった伝説的モデルのウォルター・シラー飛行士着用のCK 2998ですが、実は彼の私物だったそうです、驚きですね!
急速に進められる「月面着陸プロジェクト」のために、NASAは時計メーカー10社(※ハミルトン、エルジンなど)にクロノグラフの選定テストを依頼したことから、オメガの“ムーンウォッチ”の道のりが始まります。
最終テストに進めたのはオメガ・ロレックス・ロンジンのわずか3社のみで、他の2社はテスト途中で使用不能に陥ったと伝えられています。しかし、オメガのスピードマスターは、全てのテストを耐え抜き、NASAの正式採用へと至るのでした。
もしロレックスがNASA公認時計の地位を射止めていたら、「コスモグラフ プロフェッショナル(まさかのデイトナをムーンウォッチ呼び?)」「スピードマスター デイトナ(仮称)」なんて、逆転現象が起きていた可能性も!?
■「スピードマスター プロフェッショナル第3世代(ST105.003、ST145.003)」
<スピマス プロフェッショナル第3世代のデザインと特徴、見分け方>
1962年にウォルター・シラー飛行士が、私物のCK 2998を着用し宇宙飛行を成功させていますが、あくまで非公式の話です。サードモデルのST105.003でNASAから公式に認められお墨付きをもらいます。
オメガのスピードマスター プロフェッショナルと言えば、手巻き&プラスチック(ヘサライトクリスタルガラス)風防が基本仕様ですが、どちらも宇宙空間での操作を想定した“必須スペック”です。
重力を利用する自動巻き機構は、宇宙の無重力空間では機能しないため論外。クォーツも電池や回路トラブルの可能性があるためNGとされています。
宇宙船でトラブルが起きた際に、風防が砕け散っては危険なため、表面に傷はつきやすいが粉々に割れにくい特性を持ったプラスチック風防が選ばれ、末永くスピードマスターのDNAとして継承されていくのです。
■スピードマスター プロフェッショナル第4世代(Ref.ST105.012&ST145.012)
<スピマス プロフェッショナル第4世代のデザインと特徴、見分け方>
ムーブメント以外は、かなり現行モデルに近いスタイルになってきました。
船長のニール・アームストロングはST105.012、マイケル・コリンズはST145.012を使用していたそうです。
*注*バズ・オルドリンの着用モデルは諸説あり、真偽不明
■スピードマスター プロフェッショナル第5世代(Ref.ST145.022&3590.50)
<スピマス プロフェッショナル第5世代のデザインと特徴、見分け方>
スピードマスター プロフェッショナル史上もっとも長い生産期間を持つ第5世代だけあって、1968年製の「プリ・ムーンウォッチ(※月に到達する前のモデル)」や初期型のストレートライティングなど、仕様差が大きいのも5thモデルの特徴です。
下がり「r」一つとっても、70年代・80年代・90年代以降では違いが見られますが、詳細はまた別の機会に。
■オメガ スピードマスター 第6世代(Ref.3570.50)
<スピマス プロフェッショナル第6世代のデザインと特徴、見分け方>
■オメガ スピードマスター 第7世代(Ref.311.30.42.30.01.005)
<スピマス プロフェッショナル第7世代のデザインと特徴、見分け方>
■スピードマスター プロフェッショナル第8世代(Ref.310.30.42.50.01.001)
<スピマス プロフェッショナル第8世代のデザインと特徴、見分け方>
第6・7・8世代につきましては、詳細を割愛しておりますので、予めご了承ください。
2022年の大ヒット企画であるスウォッチ×オメガの「ムーンスウォッチ」シリーズ、2023年の新作ハニカム構造ダイヤルの「スピードマスター スーパーレーシング(329.30.44.51.01.003)」など、斬新さや手数の多さ、意外性などのキーワードも浮かぶスピードマスター。
しかし本流のデザインコード自体は、(派生コレクション、コラボモデルなどの変化球は多いものの)基幹モデルからの変化が少なく、どっしりと構えつつ正統進化を遂げている印象です。デイトナの歴代モデルと見比べると、ほとんど見た目が変化していないように見えますよね。
デイトナは「不屈」と評しましたが、対してスピマスは「不動」の言葉が似合います。
初代デイトナRef.6239は「275タキ」「300タキ」「200タキ」の3パターンがある
デイトナ&スピマスのコアとなる数々の伝説やルーツを押さえたところで、デザインについて比較していきましょう。
両者の歴史を整理すると、どちらも基本デザインに大幅な変化はなく、タイムレスなデザインを保っています。
しかし、スピードマスター プロフェッショナルは「ツールウォッチ」としてのDNAを色濃く受け継いでいるのに対し、デイトナは高級感(エレガントさ)をブレンドした「ラグジュアリーポーツウォッチ」へ変化していった傾向があります。
両コレクションのバリエーションも見比べてみました。
デイトナは素材やカラーリングが多彩で、パッと見て「デイトナだ!」とわかる洗練された色気が魅力です。
ドレッシー、ラグジュアリー、エレガント……高級腕時計を言い表す表現は多数存在しますが、デイトナは全ての要素が当てはまるような“完成されたデザイン”をしています。
時代のトレンドに左右されず、流行自体を生み出してしまう“普遍的なステータス性”は、腕元で圧倒的なオーラを放ち、成功者の風格を漂わせます。初代デイトナから継承し続けるタキメーターベゼル&横三つ目のインダイヤルが、“不変のアイコン”です。
時計の顔つきに影響するベゼルは、第1~3世代はプラスチックorステンレスのペアリファレンス形式、第4~5世代のメタリックなステンレスベゼルを経て、第6世代以降はセラクロムベゼルを採用。新しいアイデンティティーを獲得したことで、上品なカッコ良さも身に着けた“絶対王者”にデザイン的な死角は見当たりません!!
カラフルなラインナップであったデイトナとは違い、(一部例外はあるものの)ほぼ黒一色のクラシックスタイルを貫いているところが、スピードマスター プロフェッショナルの美点です。
それでいて、白文字盤のスヌーピーアワードモデル(311.32.42.30.04.003)、3時位置のサブダイヤル(※3分間だけオレンジ色を使用)もたまらない#SpeedyTuesdayの特別モデル“ウルトラマン”(311.12.42.30.01.001)など、遊び心も満載!コアなファンに刺さるデザインセンスも魅力です。
両クロノグラフのベクトルを整理すると、デイトナは完成された王道パターンのデザインに多種多様な素材、カラーリングを組み合わせてはいますが、変化球自体はあまりなく、「機能美」を洗練していった印象です。
一方、スピマスは目移りするほど変化球は多いものの、本筋となるスピマス プロフェッショナルラインは、質実剛健なツールウォッチ、計器っぽさを根強く継承しており、月面着陸から55年経過した現在でも、「道具」としてのアイデンティティーを見失っていません。
デイトナは横三つ目のインダイヤル固定ですが、スピマスは横二つ目のクロノスコープ、ムーンフェイズ(311.30.44.32.01.001)など、レパートリーが多く選択肢も豊富です。スピマスは自動巻きモデルもあり、サイズ展開やレディース向けも多種多様で、選ぶ楽しみはデイトナより上かもしれません。
おまけ話も一つ。弊社の買取スタッフによれば、「デイトナとスピマスは同じクロノグラフでも別ベクトルで、好む層もわりとわかれているイメージがあるから、(普段は)あまり同列に考えることはない」と、時計関係者ならではの視点の話も。
実際、両クロノグラフは似ているようでかなり違いますよね?
機能性に関しては、冒頭で述べたように現行主力モデル(デイトナ:126500LN、スピマス:310.30.42.50.01.001)のスペックを中心に、長所も短所も可能な限り偏らないフェアな立ち位置で両クロノグラフを比較してみました。
モデル | デイトナ Oyster Perpetual Cosmograph Daytona |
---|---|
型番(Ref.) | 126500LN |
ケースサイズ | 40mm |
ケース素材 | オイスタースチール |
ベゼル | ブラックのセラミック製モノブロック セラクロムベゼル、タキメーター |
ダイアル | ホワイト クロマライト ディスプレイ (青色発光の長時間継続ルミネッセンス) |
ムーブメント | キャリバー4131,パーペチュアル、機械式クロノグラフ、自動巻 |
精度 | 日差 - 2 ~ + 2 秒(ケーシング後) |
機能 | 時針、分針、スモールセコンド(6時位置)、1/8秒まで計測可能なクロノグラフ、積算計(30分 /3時位置と12時間 /9時位置)、秒針停止機能による正確な時刻設定 クロノグラフ、積算計(30 分/3 時位置と 12 時間/9 時位置)。秒針停止機能による正確な時刻設定 |
振動子 | 常磁性ブルー パラクロム・ヘアスプリング。高性能パラフレックス ショック・アブソーバ |
巻上げ | パーペチュアルローターによる両方向自動巻 |
パワーリザーブ | 約 72 時間 |
ブレスレット | オイスタースチール(3 列リンク) |
クラスプ | セーフティキャッチ付オイスターロック、イージーリンク(約 5 mmのエクステンションリンク) |
防水性 | 100 m/330 フィート防水 |
価格 | ¥ 2,176,900 (税込) |
≪デイトナ126500LNの長所、スピマス プロフェッショナルとの違い≫
デザイン性や高級感もウリですが、ロレックス本来の強みは実用性の高さ。
何しろ、日差±2秒以内の高精度に加え、外装はオイスタースチール(スーパーステンレス「904L」)で傷に強く、水・衝撃・磁力にも耐え抜くタフネスさまで誇るのですから、まさに隙がありませんね。
310.30.42.50.01.001との比較に重点を置いた場合、デイトナの“自動巻き”という個性は、長いスパンで見た際に、「便利で快適」という利点があります。スピマスの“手巻き”という属性は、やや面倒で煩わしく感じられることもあるでしょう。
少々うがった見方をして、最高クラスの実用性を誇るロレックス(デイトナ)にケチをつけるとしたら、“傷がつかない”無敵さが(見ようによっては)弱点かもしれません。
小傷や焼けなどの経年変化を好むヴィンテージマニアの方も一定数いらっしゃるので、「セラクロムベゼルより昔のメタルベゼルの方がいい!」なんて考え方はあるので、無敵すぎるのも時に考えものだったりします。
ただ、高級時計の買取相場に精通したピアゾスタッフの立場から申し上げますと、やはりロレックスの品質の高さは大きな武器である、のは間違いありません。
買取に出される時計を見る限り、ではありますが、オメガの手巻きモデルはOH(オーバーホール)が必要な状態のものが多いのに対し、ロレックスは30年前の時計でも、精度が高い状態を保っているケースが多く、「ロレックスの腕時計は一生モノ」に偽りなし、と日々思い知らされるばかりです。
レピュテーション・インスティテュート(RI)が発表する「最も評判のよい企業ランキング(※15カ国約24万人の消費者に調査)」で、グーグルやソニー、ディズニーやレゴを抑え、ロレックスは複数年に渡り首位の座に輝いています。
2016年のランキングでは、7つの調査項目全て(調査対象15カ国全てのおまけ付き!)で、トップ10にランクインしているのですから、とてつもない顧客満足度の高さですよね。
モデル | スピードマスター ムーンウォッチ プロフェッショナル コーアクシャル マスター クロノメーター クロノグラフ 42MM
Speedmaster Moonwatch Professional Master Chronometer Chronograph |
---|---|
型番(Ref.) | 310.30.42.50.01.001 |
ケース径 | 42mm |
ケース素材 | ステンレススティール |
ムーブメント | Cal.3861 (手巻き、26 石、毎時 21,600振動 3Hz、パワーリザーブ 50時間METAS認定のマスター クロノメーター ) |
機能 | クロノグラフ、スモールセコンド、タキメーター、超高耐磁性能ムーブメント |
防水性 | 5 気圧 (50 メートル / 167 フィート) |
価格 | ¥1,078,000(税込) |
≪スピマス プロフェッショナル310.30.42.50.01.001の長所、デイトナとの違い≫
NASA認定の装備品として宇宙で活躍した時計ですので、安定性と信頼性、耐久性は折り紙付きです。
手巻きモデルを軸に、自動巻きやムーンフェイズ、クロノスコープやレディースウォッチ(SPEEDMASTER 38)、など目的に応じて派生モデルに手を伸ばしていけるのが、スピードマスターの魅力です。
実用性自体は“キング・オブ・クロノグラフ”のデイトナと比べると、少々見劣りするような気もしますが、オメガにはオメガの良さがあることも補足致します。
オメガのスピードマスターは手作りをウリにした超高級腕時計ではありませんが、高度な時計製造技術と徹底した品質管理を積み重ね、堅実かつバランスの取れたクロノグラフを完成させています。デイトナとは方向性が異なる“信頼できる優秀さ”が、スピードマスターの一番の魅力かもしれませんね。
性能&品質に続いて、価格とコスパを比較していきましょう。時計業界全体で値上がりラッシュが続いていますが、2024年7月末時点の現定価(126500LN:2,176,900円、310.30.42.50.01.001:1,078,000円)を基準に、“価格と満足感の黄金比”を探ってみました。
高級品の世界は、コストパフォーマンスを単純比較しづらいため、「値段(現定価)に対する満足度がどれくらいあるのか?」を基準に、様々な視点を盛り込みました。
両クロノグラフを購入するか迷っている方は、一つの指針としてお役立てください。
質感に関する触り心地で言えば、ロレックスは抜きんでたものがあります。外装の高級感を単純比較すると、オメガよりグレードアップした腕時計、という評価が適切でしょうか。焦点となる“217万円の値段への満足度”は、難しいテーマですし、多面的に考えてみましょう。
×約5年間で90万円の値上げをしている
モデルチェンジをしているとはいえ、ほんの5年前まで130万円ぐらいだったのが217万円です。
物価上昇や円安の影響があるとはいえ、そういう軸で見ると、お世辞にもコスパがいいとは言えません。
*注*デイトナ116500LNの初出は定価1,274,400円、2019年10月の値上がりで定価1,309,000円、以降も価格改定が続き、現在の定価に。
ロイヤルオークのSSクロノモデル(26240ST.OO.1320ST.05)は定価528万円ですから、比較対象次第ではコスパが良いとも言えますし、難しいところです。
×手放すタイミングが難しい
デイトナは価値が高いモデルだからこそ、売り時が難しいのも事実です。利確できる今のタイミングで売却するか、慌てずにじっくりとキープするか……売り時を失敗したくないがために、常に値崩れを気にせざるを得ないのは難点(※最悪、タイパが悪くなってしまう恐れも)ですね。
“スピマスとの約110万円の価格差”について一旦結論をまとめると、(長期的に見た場合)親が子へ、子が孫へ継承できる“家宝=安定した実物資産”としての役割を見込めるところが、スピードマスター プロフェッショナルにはない、デイトナの優れている点でしょう。
スピマスのコストパフォーマンスについての分析は、デイトナとは逆パターンのネガティブからポジティブの順番で、短所と長所をお伝えします。
×見た目はほぼ変わっていないのに、10年で値段がほぼ倍に
オメガの予測検索でしばしば見かける「昔は安かった」というキーワード。2014年頃のスピマス3573.50.00(第6世代)は参考定価453,600円ですので、10年で定価100万円超え(ほぼ倍!)は、値段に対する満足度にはどうしても響いてしまいます。
×似たようなデザインが約30万円ぐらいから購入できる
ロレックスとオメガ、デイトナとスピマスを比較させた場合、「需要と供給のバランス」はオメガ(スピマス)の弱点になり得ます。
ロレックスは厳格な製品政策を貫き、一本一本の時計を大切に手作業で作っているため、大量生産ができない特性を抱えています。その結果、非常に高い需要があるのにも関わらず供給量が増えないため、“デイトナは欲しいのに買えない=特別感がある”という、イメージ戦略にも成功しているのです。
一方オメガのスピードマスターは、中古二次市場で探せば、安いモデルで30万円~くらいから、似たようなモデルを“欲しくなったら購入できる”現状が続いています。
(比較対象が強すぎるのも問題ですが)沢山のスピマス兄弟機が定価の半額以下で売られている状況は、コレクション自体のイメージダウンにも繋がり、310.30.42.50.01.001の定価100万円超えに対する満足感を微妙なものへと変えてしまう可能性も秘めています。
リセールバリューについては、説明するまでもなくデイトナの圧勝ではありますが、近年スピードマスター プロフェッショナルも気になる値動きをしています。
両クロノグラフの価格推移に注目してみました。
デイトナ 126500LNは、2023年の発売直後からプレミア価格を記録!約1ヶ月のご祝儀価格後は、ほぼ横ばいのリセールバリューをキープしています。
126500LNの新作記事(『旧型デイトナ 116500LNの販売相場・買取相場の動向は?』)では、どんな値動きをするのか正直にわからないと記述しましたが、時間が経ってみると“安全資産”として本当に強いですね、まさに王様です。
116500LN(第6世代)、116520(第5世代)、16520(第4世代)、いずれも多少の下落・高騰を繰り返すも別格の資産価値を維持しています。
エル・プリメロ搭載デイトナ16520は、じわじわ右肩上がりしているようにもチャートが見えますね。詳細に述べると、1記事分のボリュームになってしまいますので、また別の機会にご説明します。
じりじりと平均相場が上がりつつあります。
過去モデルの311.30.42.30.01.005(第7世代)、3570.50(第6世代)の販売相場もいつの間にか高くなりつつある情勢が続いているので、万が一の“スピマスバブル”に備えて、気になるモデルは早いうちにゲットするのも良い時期かもしれません。
弊社姉妹サイトの『ブランド時計販売のクエリ』では、アポロ15号40周年記念モデル(311.30.42.30.01.003)やミッションズ ジェミニ8号(3597.06.00)、その他稀少モデルを取り扱いしておりますので、記事を読んでいるうちにスピマス熱が高まった方は、この機会に是非とも覗いてみてください。
スピマスはスヌーピーやウルトラマン、デイトナはメテオライトやレインボー、4桁リファレンス(6239、6240、6241、6263、6265)など、一部モデルが高騰を続けていますが、どちらのブランドもヴィンテージモデルのオークションでは“億超え”で落札されているのをご存知でしょうか?
インパクトのあるエピソードを中心に、幾つか抜粋してみました。
驚くべきことに、どれもデイトナだけの逸話です。デイトナ&ポール・ニューマンの二人三脚で、億超えを連発しているのは壮観ですね。
スピードマスターも伝説級の歴史を持ちますが、デイトナの資産価値に関する逸話は、神話レベルの“桁違い”ぶりです!!
少し後味の悪い結末もありますが、オメガのヴィンテージモデルも“億超え”で落札されています。
スピードマスターはコレクションの歴史も長く、バリエーション豊富ですので、蒐集対象のコレクターズアイテムとして、まだ知られざる名作がひっそりと価値を増していってそうですね。これからに期待が持てそうです。
本記事とコンセプトが似ている再生回数・コメント数の多い海外動画のコメントも抜粋しました。
「断然、オメガ派!」コメントではオメガのスピードマスターが優勢でした。ロレックスのサブマリーナやゼニス クロノマスターなども話題として登場していましたね。
「私はデイトナ、ねじ込み式プッシュボタンは必須」
「ロレックスとオメガの比較(戦い)は今後も続く」
60年以上の長い間、時代に合わせたモデルチェンジを繰り返し、ブランドを代表する人気コレクションに成長したデイトナ&スピードマスター。資産価値やステータス性、品質を重視するならデイトナに軍配が上がり、ロマンや入手しやすさ、可能性を追うならスピードマスターに白星がつきます。
(見ようによっては)どちらも若干の欠点を持ちますが、時計業界全体で見ても“最高のクロノグラフ”であることは揺るぎのない事実で、これからも“最強のライバル”としてしのぎを削り、クロノグラフ人気を牽引していくことでしょう。
高級腕時計業界は、ロレックスのサブマリーナ VS オメガのシーマスター、パテック・フィリップのノーチラス VS オーデマ・ピゲのロイヤル オーク、カルティエのタンク VS ジャガー・ルクルトのレベルソ、など似て非なる“無数のライバル関係”がありますので、そちらはまた改めてお届け致します!
大人気ブランドのロレックス&オメガの主力であるデイトナ&スピードマスター。いつまで上がり続けるのか、いつ下がり始めるのか読みづらいだけでなく、いざ手放すと決めた時に提示された金額が「その時期で一番高い金額かどうか?」を見極めるのも困難な特徴を持ちます。
ピアゾの一括査定サービスでは、決裁権を持っている役員クラス以上のトップバイヤーが査定を行いますので、“旬の価格”を逃さずに、高額買取が見込めます。
ロレックス買取 時計買取ピアゾでは腕時計買取を専門とする9社無料一括査定が受けられます!買取実績掲載中!
オメガ買取 時計買取ピアゾでは腕時計買取を専門とする9社無料一括査定が受けられます!買取実績掲載中!
オメガはもちろん、ロレックス、オメガ、タグホイヤー、オーデマ・ピゲなどの高級ブランド時計を独自ルートで激安価格にて販売中です!