更新日:2025年01月30日
2017年に発売後、世界中の時計愛好家達を瞬く間に魅了したグランドセイコーの“ピーコック”SBGJ227。クジャクの羽根にインスピレーションを得た独創的なまだら模様、魅惑的なグリーンダイヤルの鮮やかさは海外限定モデルの中でも、一二を争うトップクラスの資産価値を誇ります。
その後もいくつか“ピーコック”模様のモデルがリリースされ、2024年秋には、セイコー台湾事業開始70周年を記念した70本限定“ホワイトピーコック”SBGJ281が発売されました。文字盤の優雅さもさることながら、リセールバリューの面でも一部時計通達にとってマークすべきコレクターアイテムでしょう。
グランドセイコー SBGJ281/横40.0mm× 縦46.2mm×厚さ14.0mm、エバーブリリアントスチール製ケース、メカニカル 自動巻(手巻つき) キャリバー 9S86搭載。希望小売価格:220,000.00ニュー台湾ドル、70個限定
白孔雀の羽根を繊細に表現したピーコックパターン×白文字盤が眩しいですね。
参考定価4,700ユーロ(約577,000円、発売当時のレートで換算)の元祖“ピーコック”SBGJ227が、700本限定のレア度でありながら、リリース以降80~90万円の根強い資産価値をキープ。現在では、140万円前後のプレミアモデルへとその綺麗な羽根を羽ばたかせました。本作SBGJ281はどこまで肉薄するか、今後の展開に注目です。
今回は遅ればせながらこの“ホワイトピーコック ”SBGJ281がどれだけの価値、ポテンシャルを秘めているのか?見た目・スペック・テーマ、など多方面からその可能性を探っていきます。
古代中国では九徳を備える瑞鳥として崇められる孔雀。毒虫や毒蛇を好んで食べる習性は、霊力を宿すのではないかと考えられ、日本でも平安時代に孔雀明王へと神格化されるほど信仰を集めます。
動物のクジャクをイメージすると、尾羽を扇状に広げて優雅に佇む姿が思い浮かびますが、サソリやコブラを食べる気性の激しさも併せ持つそうです。華麗なあの求愛行動から想像も付かない獰猛さですね。
そんなクジャクの二面性を汚れなき純粋性に昇華させた、SBGJ281の見どころもまとめてみました。
≪SBGJ281のセールスポイント≫
「孔雀=青や緑」の明るい玉虫色を連想しますが、本作ではシロクジャクのように真っ白なダイヤルをチョイスしてきましたね。公式情報によると、台湾セイコー支店創立70周年を迎えるに当たって、純白の美しい孔雀の羽根や伝統を再解釈、「孔雀の生命と美しさ」を再現したそうです。
エキゾチックな飾り羽根とは対極の白色を選んだ点が風流ですね。
インドの国鳥として知られるインドクジャク、絶滅危惧種のマクジャクがメジャーな存在で、その2種のみが特徴的な飾り羽を持ちます。昼間に活動する昼行性で夜には木の上で寝る、鳥類だが飛ぶのは上手ではない、性格は攻撃的でオス同士の喧嘩も珍しくない、などの特徴があります。毒虫や毒蛇も食べる雑食性ですし、かなりイケイケなタイプですね。ルックスの良い雑食系男子だったとは意外でした。
学術的には認められていませんが、毒蛇やサソリを食べても何の影響も受けないため、神経毒への耐性があるのではないかと考えられています。
色素の現象が原因で体毛や羽毛が白化したシロクジャク(※インドクジャクの白変種)も南西アジア地域(※インド、パキスタン、ネパール)に生息しており、3~6月の繁殖期の時期だけ、その純白の羽根を眺められるようです。インドクジャクの玉虫色の羽根はパーティードレスのようにゴージャスなのに対し、シロクジャクはウェディングドレスのように清純な輝きを秘めるのもポイントです。
それらの基礎知識も踏まえ、“ホワイトピーコック”SBGJ281の色彩美に迫りましょう。
孔雀の文様は中国・清時代の官服のシンボルに用いられ、その優雅さと高貴さが示されました。台湾70周年記念限定モデルSBGJ281では、鳳凰の原型である霊長・孔雀の“神聖な美しさ”を表現。汚れのない白色で、混じりけのない清らかさをその孔雀の尾羽模様(※ピーコックパターン)に反映しています。
グランドセイコーの“目玉商品”ピーコックパターンは、クジャクの目玉模様のように釘付けになること間違いなし!
SBGJ281のダイヤルは、中心から外側に広がる放射状の凹凸が絶妙で、近くから見ると小さい丸を組み合わせた同心円状模様、遠目からだと長方形のタイルを規則的に配置したように見える、ピーコックパターンが妙味です。孔雀の艶やかな羽毛を彷彿させるまだら模様は、複雑なプレスパターンの過程を経て生み出されます。離れて見た時が一番美しいとは思いますが、まじまじとズームしても、模様そのものが美しいですね!
SBGJ281はセオリックなホワイトダイヤルですし、本記事では「模様→色」の順で、その飾り羽根の魅力を解説していきます。
一番最初に見ておきたいモデルは、元祖“ピーコック”SBGJ227。玉虫色より美しいブルーグリーンカラーにピーコック柄を掛け合わせ、美の相乗効果を創り出しています。
シンプルに美しく、そして物珍しい側面が世界中のGS愛好家達に刺さり、資産価値の高さという形で顕れたのでしょう。海外GS限定ウォッチの中でも、トップクラスの資産価値を誇る価格高騰モデルです。
光りの加減で青にも紫にも見える“ブルーピーコック” SBGJ261。初代“ピーコック”と同じ44GS現代デザインをベースにしており、ゴールドカラーのワンポイントが美しいですね。文字盤の色味が煌びやかなのに対し、針の形状は鋭く、エッジが効いています。メリハリのあるデザインですが、ディテールがしっくりきますよね。
本作SBGJ281もほぼ同じ意匠を受け継いでいますが、秒針のみ青焼き針を採用。そっと風で飛んできた一枚羽根のように、純白の文字盤をブルースチール秒針が優美に舞います。
ピーコック柄×濃紅文字盤で、虹色に輝く「泳ぐ宝石」を再現した“錦鯉”SBGW321。粒感を残す独特な螺旋放射パターンは、錦鯉の輝く鱗を表現するのにもピッタリです。
記事終盤で「ピーコックパターンに合う別の色」についても述べますが、麻雀好きにはお馴染みの紅孔雀をピーコックパターン×深紅ダイヤルで手掛ける日が来るのか?“錦鯉”SBGW321との差別化、表現の違いが今から待ち遠しいところです。
ピーコックパターンではありませんが、ここで直近の台湾限定モデル“穀雨”SBGH321(2023年発売)も簡単に見比べてみましょう。
海外では“Grain rain(恵みの雨)”と呼ばれる「穀雨」をミントグリーンの淡い色彩で、柔和に仕上げていました。和紙風テクスチャーとの相性も良く、ふんわりとした味付けがたまりませんね。
本作SBGJ281は定番色の白を選んでいます。スタンダード故に、比較対象をどうするか少し悩みましたが、一番シンプルな「定番色×GS定番ウォッチ」のモデルをノミネートすることにしました。
白文字盤のGSウォッチと言えば、ぶっちぎりの完成度の高さを誇る看板モデル、雪白&白樺から比較していきましょう。
「差し色と秒針」にぜひ注目を。
白文字盤+ブルースチール秒針、の組み合わせを見て、“雪白”SBGA211を真っ先に思い浮かべたGSファンも少なくないのでは!?
初代“雪白”SBGA011が2005年10月発売、後継機SBGA211は2017年5月発売で、足掛け20年の超ロングセラーを誇るグランドセイコーのレジェンドモデルです。雪白&白樺は、定番中の定番モデルですので、GS購入検討者の方には、まず知っておいて欲しいモデルでもあります。
シンプルイズベスト、極限まで無駄を省いた“最高の普通”であり、GS史上最高の白文字盤と豪語したくなる完成度です。
2024年は「キャリバー9R」誕生20周年の節目でしたが、2025年は雪白誕生20周年の記念すべき年でもありますし、どんなメモリアルモデルが発売されるのか、そちらも注目です。
時計界のアカデミー賞とも言われる「ジュネーブ時計グランプリ」で、2021年度メンズウオッチ部門賞(Men’s Watch Prize)を受賞した、もう一つの看板モデル“白樺”SLGH005も抜群の総合力を誇ります。当時、ロサンゼルス・エンゼルスの大谷翔平選手に、「MLBア・リーグ™MVP受賞」記念として贈呈されたモデルです。
比較対象がエピソード含め、ちょっと強すぎる気もしますが、白文字盤という色自体が、グランドセイコーを代表する主力モデルのシンボルカラーですし、SBGJ281への評価もちょっぴり辛口にならざるを得ません。
“ホワイトピーコック”SBGJ281の完成度が低い、という意味ではなく、単純な美しさを見比べると、どうしても雪白や白樺に軍配が上がるのではないか、と思ってしまうくらい、どちらも図抜けているのです。実機で隅々まで眺めないと正確な感想は述べられませんが、感覚的にそう断言したくなるほど、雪白や白樺は素晴らしい、というのが個人的見解です。
少し視野を広げて、その他のGSホワイトダイヤルウォッチもセレクトしてみました。
全体的にGSホワイトダイヤルはレベル高めです。
雪白とはひと味違う、和紙の質感を巧みに再現したアジア太平洋地域限定“和紙”SBGJ283。安物のコピー用紙とは大違いの“温かみのある白”は高級感が漂っています。
SBGJ281もこちらのモデルのように、秒針はシルバー、GSロゴはゴールド、GMT表記&針はレッド(SBGJ281の場合ブルー?)と色を使い分けても、クジャクっぽくて面白かったかもしれません。秒針はインデックスと同色でも綺麗に見えますし、白文字盤は正解の見えない深甚な世界ですね。
パッと見だと“ホワイトピーコック ”SBGJ281に一番似ている外観(?)の“冬至”SBGE269。色味は本作に似通っていますが、「雪晴れ」の夕日のようなほのかな温もりがダイヤルに表現されていますね。他に比べ、ちょっと物足りない気もしますが、逆にそこがじんわり心に沁み渡りますね。
神鳥クジャクを純白で表現するのは文句なしですが、何も雪白や白樺と同じ青い秒針でなくても良かったのでは、と個人的な感想を抱きました。クジャクの鋭い嘴や眼光を黒い秒針で表現しても、GSらしい「光と影」をアプローチ出来たのではないでしょうか。初代“ピーコック”SBGJ227、“ブルーピーコック” SBGJ261の秒針はインデックスと同色のシルバー系でしたし、いっそ「ハズシの美学」で勝負した、緑の秒針くらいぶっ飛んだ“ホワイトピーコック ”でも面白かったかもしれません。
SBGJ281のケースサイズは横 40.0mm×縦 46.2mm×厚さ 14.0mmで、エバーブリリアントスチール素材に44GS現代デザインケースを組み合わせています。
GS台湾公式ページのエバーブリリアントスチール(白鋼)現行モデル一覧です。“氷瀑”SBGH347、“厳美渓”SLGH021などのメカニカルハイビートウォッチが居並びますね。
値段項目でも補足説明しますが、国内レギュラーSBGJ263、SBGJ265、SBGJ267と同じスペック(※エバーブリリアントスチール製&キャリバー9S86搭載)です。
その他海外限定モデルですと、“和紙”SBGJ283、“藤”SBGJ285、“夜桜”SBGJ287と同スペックです。秒針・GMT針含め、テーマに差し色が適しているかどうか、自分なりの解釈が出来るようになるとGSウォッチ選びがより楽しくなりますよ!
SBGJ281のムーブメントは自動巻きメカニカルハイビート36000 GMT 「キャリバー9S86」搭載。中国の実機レビュー動画を確認したところ、シースルーバック仕様のようです。
同スペックの“岩手山”SBGJ263の実機写真です。
SBGJ281は「LIMITED EDITION」や獅子マークのプリントがない裏ぶたを採用しています。周年記念限定ながら余計な装飾を省いた仕様で、裏スケの美しさをじっくりと鑑賞したい方には嬉しい“用の美”ですね。
ダイヤルに関しては辛口批評気味でしたが、裏ぶたは“ホワイトピーコック ”らしくていいですね、まるで清廉さまで兼ね備えているようです。
SBGJ281の価格は、TWD 220,000.00(約104万円)。同じスペックの国内現行モデルSBGJ263、SBGJ265、SBGJ267、1,023,000円(税込)とあまり変わらず、為替レート差を感じさせません。ズバリ、かなり安いです。
70本限定の超激レアモデルですし、まず入手不可能ですが、「レギュラーモデルと価格差のないピーコック」という好材料は素晴らしいですね。
海外限定&同スペック繋がりの“和紙”SBGJ283、“藤”SBGJ285が、11,000シンガポールドル(約1,278,200円)でしたので、相対的に見ると20万円近く安いのは大きな差ですね。
続いて、中古相場も簡単にご紹介致します。
初代“ピーコック”SBGJ227のボリュームゾーンは、140~150万円前後です。
グランドセイコー全体の特徴である「粘り強い安定度」はそのまま、下振れ傾向を見せず緩やかな右肩上がりを続けています。250万の出品は行き過ぎ感ありますが、200万前後で取引が成立しても不思議ではありません。
一方、SBGJ281は資産価値の面で分析すると、ちょっと羽ばたきが足りなさそうです。
グランドセイコーの限定モデルでよくある傾向の「定価ちょいプラス」の出品状況で、クジャクが鳳凰のように蘇るプレミア現象は想像出来ない、というのが本音です。SBGJ281は出品数自体少ないので断言は出来ませんが、初代ピーコックは別格、と捉えた方が妥当でしょう。
ピーコックパターンに神聖な白色を組み合わせたSBGJ281。シンプルな奥深さを味わい尽くすために、スペックの近いレギュラーモデル“岩手山”SBGJ263と見比べてみましょう。
(左)SBGJ281(右)SBGJ263
≪SBGJ281とSBGJ263のデザインの違い≫
見る人によって心象やこだわるポイントは千差万別でしょうが、完成度が高めなSBGJ281に負けず劣らず、レギュラーSBGJ263の美しさも際立ちますね。グランドセイコーというブランドは、青の使い方が上手く、雪白や白樺を筆頭に、ブルースチールの針が盤面を見目好く彩ります。格付けできないほど、どちらも素晴らしいのは間違いありませんが、強いて言えばSBGJ263の方が白と差し色が馴染んで見えますね。
読者の皆様はどちらのホワイトダイヤルがお好みですか?
(左)初代“ピーコック ”SBGJ227(右)岩手山パターンのSBGJ235
おまけで青緑カラーが華やかな“ピーコック ”SBGJ227も。くだけた物言いですが、「やっぱコレが一番!」ですよね。
クジャクの青緑色の目玉模様(眼状紋)は、膨大なエネルギーを費やし、あの飾り羽根を発達させたという説があります。ゲノム解析によると、目玉模様は進化と退化を度々繰り返し、メスどころか人間の視線も釘付けにする精巧な飾り羽根へ進化していったのではないか、と考えられています。
クジャクの青緑色の羽根は、自然界で最も鮮やかな色、とも云われていますし、科学でも解明できない美しさが凝縮されていますね。クジャクよりも美しいGSピーコック第四弾の発売を願い、別カラーについて少し掘り下げてみましょう。
霊鳥、神鳥、鳳凰のモチーフ、菩薩相の孔雀明王、など逸話に事欠かないクジャク。ピーコックパターンにマッチする別色を検討してみました。
真っ先に思いついたのは、麻雀の役でもある「紅孔雀」です。アカコクジャクと呼ばれる、マレー半島の山岳地帯にのみ分布する希少種も実在しますし、是非限定モデルとして手掛けて欲しいものです。レッドダイヤルの“錦鯉”SBGW321との差別化も兼ねて、アカコクジャク独特の赤文字盤×青緑色の水玉模様をピーコックパターンで表現したら、マニアックな人気が出そうです。クジャクカラーをツートンベゼル仕様に変更して、赤×緑のド派手な赤孔雀に仕上げるのもアリかも?
ブルー系を更に鮮やかにした、US限定“Oruri(大瑠璃)” SBGW279のような明るい青もピーコックパターンにフィットしそうです。濃いめの紫を派手にした“夜桜”SBGJ287カラーも面白いアイディアだと思いますが、男性視点に立つとちょっとウケが悪そうですかね。
抜けるような青、青々とした緑、夜のネオン蝶のような紫、などクジャクには寒色系の派手な色が馴染みますし、ピーコックパターンならではの変わり種、希少種のリリースをいちファンとして切望します。デザインをパキッとさせる、いい模様ですよね。
「白孔雀を購入できて大満足。集める価値がある」
「9SA4の巻き心地や音は、懐中時計みたいで好き」
「“阿寺”SLGA025は痺れるほど美しかった」
“ホワイトピーコック ”SBGJ281に寄せられた口コミは大絶賛の嵐でした。レギュラーより安い、というごもっともな意見も寄せられていましたよ!
天使の羽根のように優雅で可憐な白文字盤のSBGJ281。中国古代詩「孔雀東南飛」を彷彿させる汚れのないピュアさは、今までのピーコックシリーズとは違うベクトルの美しさでした。
口コミ評価も好調ですし、その価値は海を越えて天高く舞っていきそうですね。
モデル | ヘリテージコレクション メカニカルハイビート 36000 GMT 「ホワイトピーコック」 台湾限定
Heritage Collection Mechanial Hi-Beat 36000 GMT Taiwan Exclusive White Peacock |
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型番(Ref.) | SBGJ281 |
ケースサイズ | 40mm |
ケース素材 | エバーブリリアントスチール 裏ぶた:エバーブリリアントスチールとサファイアガラス |
ムーブメント | メカニカル 自動巻(手巻つき) キャリバー9S86 |
精度 | 平均月差±10秒(日差±0.5秒相当) |
駆動期間 | 約72時間(約3日間) |
防水性 | 日常生活用強化防水(10気圧) |
耐磁性 | あり |
生産本数 | 70本限定 |
取扱店舗 | 台湾 |
発売日 | 2024年発売 |
価格 | NT220,000 |
※販売開始時期・価格は予告なく変更される場合があります。