更新日:2025年10月23日
「ウォッチズ&ワンダーズ ジュネーブ(Watches&Wonders Geneva、略称W&WG) 2025」で、ぜんまい駆動式世界最高精度(※年差±20秒)を誇る「スプリングドライブ U.F.A.(Ultra Fine Accuracy)」キャリバー9RB2搭載モデル“樹氷”SLGB003とSLGB001を発表したグランドセイコー。U.F.A.シリーズ第三弾の新作、エボリューション9 コレクション “樹氷バイオレット”SLGB005が、2025年11月に発売予定です。
グランドセイコー エボリューション9 コレクション スプリングドライブU.F.A. SLGB005/横 37.0mm ×縦 44.3mm×厚さ 11.4mm、エバーブリリアントスチール製ケース、自動巻(手巻つき)スプリングドライブ キャリバー9RB2搭載。希望小売価格:1,463,000円(税込)、世界限定:1,300本 うち国内:700本、2025年11月発売予定
グランドセイコーでは比較的珍しい「スモーク系文字盤+紫色」の組み合わせが妙趣に富んでいますね。古くから高貴な色として知られる紫色を、グラデーションカラーのダークトーンでコーディネート。普段使いにも適した、独特な色味のバイオレット文字盤を新たに生み出しました。ダイヤルの外側に向かって、黒みがかった紫色へ変化させることで、樹氷の森が静かに目覚める幻想的な世界観を見事にダイヤルへ具現化しています。
アメジストやタンザナイトのような深みのある輝きは、太陽光では紫陽花のように鮮やかな紫色、照明の光では深みのあるダークバイオレットへ変化します。室内と屋外では、全く異なる表情を覗かせますし、“光の芸術(カラーチェンジ)”を楽しめるのも本作の魅力です。
スプリングドライブの製造地「信州 時の匠工房」の東に位置する霧ヶ峰高原の情景を、バイオレットカラーの繊細な色調で表現したSLOGB005。“樹氷の森の夜明け”を模した幽玄の世界に、どっぷりと浸っていきましょう。
GS渾身の一作であるスプリングドライブ U.F.A. キャリバー9RB2に、魅惑的な選択肢が加わりましたね。W&WG2025で発表された“樹氷”SLGB003とSLGB001はある種見慣れたアイスブルー系ダイヤルでしたが、本作はかなり攻めた色味です。エバーブリリアントスチール製+紫文字盤、という玄人好みする属性ながら、タウンユースにも問題のない色使いで、黒やシルバー系などの定番GSを既に所持している層には特にウケが良いかもしれません。
セカンドウォッチとしても興味深い、SLGB005の見どころを整理してみました。
≪SLGB005のセールスポイント≫
マニアックさとスタンダードのバランスが程よいですね。やや癖の強い紫色を黒文字盤系統に寄せることで、個性的でありながら万人受けする色味へ仕上げています。GSでは頻繁に使用しないスモーク文字盤っぽさを取り入れたのも実にオシャレです。ダイヤルの色合いは、オーデマ・ピゲのCODE 11.59やH.モーザーのエンデバーを彷彿とさせ、海外ブランドの高級腕時計に雰囲気が近いのが本作の訴求点でしょう。
黒に近い紫色、というのも興味深い表現方法です。スプリングドライブ U.F.A.の先行モデルであるSLGB003&SLGB001は、流行色であるアイスブルー系でしたが、本作SLOGB005は斬新さに舵を切ってきました。発売時期が近い“白樺ネイビー”SLGW007にも関連しますが、“黒寄りの別色(※前回SLGW003は青、今回SLOGB005は紫)”が少し続いているため、今後「黒ベースに近い目新しいカラー文字盤」がちらほらとGSコレクションを賑わせていく可能性も出てきましたね、楽しみです!
『霧ヶ峰高原では、冬の深まりとともに樹々が氷の衣をまとい、幻想的な「樹氷」の世界が広がります。ダイヤルには、その凛とした自然の美しさを、精緻な型打模様で描きだしました。さらに、樹氷の森が静かに目覚める夜明けの神秘的な情景を、バイオレットカラーの繊細なグラデーションで表現しました。』
要約すると、信州地方の「樹氷(※別名:アイスモンスター、スノーモンスター)」に夜明けの光が注ぐ“紫色の雪景色”を再現しているようです。樹氷の森の夜明け=バイオレット、と聞くと些かオーバーな気もしますが、詳しく調べるとどうやら誇大表現ではないようです。
「樹氷 夜明け(紫色)」で検索すると、紫色に変化する幻想的な風景が本当に出てきました。夜明けの樹氷原、というテーマも霊妙で、ダークバイオレットの色使いが目を喜ばせますね。
紫文字盤を中心に、SLGB005と幾つかのモデルを見比べていきましょう。
“樹氷” SLGB003&SLGB001"
本作を語る上で比較対象として外せないレギュラーSLGB003&限定SLGB001。斜に構えないクールな出で立ちは、透き通るエレガントな気品をダイヤルに宿します。SLGB001はブルー要素強め、SLGB003はシルバー系、と色味も異なり、似て非なる芸術でジュネーブに訪れた時計フリーク達を唸らせました。なお、SLGB003は2025年度グッドデザイン賞を受賞しています。
色にのみ絞って感想を述べると、本作はあえて差し色を少なくしているところが、結果的に功を奏しているように思えます。SLGB003&SLGB001は“GrandSeiko”表記が黒色(※SLGB003は秒針が青色、SLGB001は黒バンド)でしたが、本作では同表記&秒針&ブレスレットをシルバーで統一。アクセントカラーを減らすことで、ダイヤルに落ち着きと調和をブレンドしています。
“白樺ネイビー”SLGW007もそうでしたが、不要なものをそぎ落とすことで、本質的な美しさだけを残す「引き算の美学」は、驚嘆に値します。
“桐”SBGW323
「44GS現代デザイン×岩手山パターン」の王道スタイルにライトパープルを組み合わせ、静かな上品さを漂わせた“桐”SBGW323。Watches&Wonders2025発表の新作でしたが、桐の花のように高潔な美しさが魅力でした。
GSの紫文字盤を連想するとライトパープル系が多いイメージでしたが、今作でダーク系統へ趣向を凝らしてきましたし、次はどんなカラーリングで“日本の美”を捉えるのか、期待が膨らみますね。
"銀座限定2025“SBGE313
新しくリニューアルした「銀座グリッドパターン」に、爽やかな紫色を融合させた銀座限定モデル 2025 SBGE313。レトロモダンな色調の紫色がハイカラで、最先端の街に相応しい“進取の精神”がダイヤルの随所にあしらわれています。
同じ紫系統でも、SBGE313はスポーツコレクションのスプリングドライブGMTなので、SLOGB005と雰囲気が全然異なります。
アジア・パシフィック限定SBGJ285
キラズリ風ダイヤル×藤紫色で、やんごとなき藤の絶景をダイヤルに再現した“藤(Fuji)”SBGJ285。紫のGMT×44GS現代デザイン、というレアな属性も乙ですが、そよ風に優雅に揺れる藤の花の光景を模すことで、人生の儚さをやんわりと表現しています。
こちらのモデルはヘリテージコレクションですが、冠位十二階の最高位の色で優雅さを象徴する色として知られる「紫」は、GS最上位クラスのエボリューション9コレクションと相性が良さそうですよね。
香港・マカオ限定“夜桜”SBGJ287
夜の世界+紫色、の妖艶な美しさを文字盤に描き出した香港・マカオ限定“夜桜”SBGJ287。極彩色のネオンが煌めく繫華街にも負けない、夜桜ならではの幻想的な光景が見事でした。
SBGJ287も暗い紫色を基調としていますが、色味やゴールドのワンポイントの有無が影響して、本作とはムードが全然違いますよね。
続いては、国内外のパープルダイヤルを一挙まとめてご紹介します。
キングセイコー “藤波”SDKS011"
紫文字盤はSEIKOブランドからもそれなりにリリースされており、プレザージュのSARF023&SARX103、アストロンのSBXC083、キングセイコーのSDKS011やSDKA019、など意外に手数が豊富です。
タグ・ホイヤー カレラ クロノグラフ Ref.CBS2219.FC6607
海外のグラデーション紫文字盤を幾つかピックアップすると、タグ・ホイヤーのカレラ クロノグラフ Ref.CBS2219.FC6607、CODE 11.59 バイ オーデマ ピゲのRef. 15210OR.OO.A002KB.02、H.モーザーのエンデバー・センターセコンド コンセプト パープルエナメル 1201-1200、などのモデルがスモーキーなパープルカラーで独特な存在感を発揮していました。
姉妹サイト時計販売QUERIにて、一点限りですがCBS2219.FC6607の取り扱いがございますので、興味のある方はチェックしてみてください。
2025年10月時点で、キャリバー9RB2搭載モデルは3件、同サイズのSLGB003はブライトチタン製で1,518,000円(税込)。SLGB005の方が5万円ほど安く、色々な面で本作に軍配が上がりそうな気もしますが、一部スペックに差があるため一概には断定できません。その差については次項目にて詳細をご説明致します。
エボリューション9コレクションの現行モデルは全21件。“世界最高峰の腕時計をつくる”という志を色濃く受け継いだコレクションのため、世界的トレンドでもある「薄型・小型化」にもしっかり対応しています。
注目モデルは手巻き白樺レギュラーのSLGW007で、横38.6mm×縦45.0mm×厚さ10.0mmのステンレススチール製、兄弟機のSLGW003は同サイズのブリリアントハードチタン製です。“樹氷”や“白樺”シリーズは、ここ最近ラグジュアリーなドレスウォッチ路線を強化していますし、サイズ展開含め何かと面白いことが起こるかもしれませんね。
SLGB005のムーブメントは、世界最高の年差±20秒という高精度を実現したスプリングドライブ自動巻 キャリバー9RB2搭載。裏スケルトン&プリントあり、の仕様です。写真を見る限り、濃くも薄くもない普通の濃さですね。
SLGW003のブレスレットは3段階式微調整機構付きクラスプ搭載、本作は通常仕様なのが非常に残念!!
文字盤・素材・ムーブメント……総合的に見てかなり完成度の高いSLGB005ですが、唯一難点があるとすればクラスプです。SLGW003で初採用された2mm単位でスライド調整可能とした画期的な新型クラスプが、本作では残念ながら搭載を見送られてしまいました。
余談ですが、ここに関しては海外記事でも語気の強い論調が目立ち、ウィークポイントとしてやり玉にあげられていました。SS製改良クラスプの製造準備が整っていない、など諸事情がありそうですが、こればかりは仕方ない気もしますので、“最高の普通”である通常仕様のブレスレットを楽しめるとポジティブに捉えればよいと思います。
SLGB005の定価は1,463,000円(税込)、適正価格かどうか120万~150万円のGSウォッチをリサーチしてみました。
価格単体で見ると、正直あまり安いとは思い難いですが、現在のGSラインナップ全体を見渡せば妥当な価格設定と言えます。「スモーキーなダークパープル+スプリングドライブU.F.A.」という個性で、一定のファンにグサッと刺さりそうでもあります。少なくはない限定本数ですが、円安基調で海外・インバウンドである程度売れるのではないか?と予想します。
“樹氷”SLGB003、値段やトーンバランスが近いSLGW007との比較も悩みましたが、ここは消費者目線で「エボリューション9コレクション+予算120~150万円」の条件で関連モデルを見繕ってみました。
150万円以上のモデルを除いても、まだ実際にどれを買えばいいか、悩ましいですね。1,463,000円の同価格だけでも、“ナイトバーチ(黒い白樺)”SLGH017、“ミナモブルー”SLGA019、“阿寺”SLGA025、岩手山の尾根筋パターンのSLGH027など、選択肢が豊富です。こうやって絞り込んでチェックすると、なかなかどうして“樹氷バイオレット”SLGB005の価格設定は巧みです。
選ぶ方の主観やこだわりにもよりますが、人とは違う腕時計を所有したい方は本作SLGB005や“阿寺”SLGA025、定番に近いモデルなら白樺シリーズのSLGH005&SLGH017、ミナモパターンのSLGA019あたりに絞るとよいでしょう。GSウォッチは、素材・色・ケースデザイン・価格帯のバリエーションが豊富ですので、じっくりこだわれば必ず「自分が好きな時計」を探すことができますよ!
「初代UFAモデルの微調整機能付き中留めがなくて残念」
「紫文字盤が綺麗!サイズも完璧」
「キャリバー9SA5や9RA2にも、この文字盤が採用されて欲しい」
海外のGSウォッチャー達からの評判は上々です。値段よりブレスレットに関する議論が多く交わされていましたし、それだけ新機能に期待が寄せられているのでしょう。
高貴さや神秘性を象徴する色として扱われ、海外でも王族・希少性を意味する「紫」。動の「赤」と静の「青」が混ざり合った不思議な色は、優雅⇔下品、神秘⇔不吉など相反したイメージが内在する難しさもありますが、黒を基調とさせたことでSLGB005は落ち着きのある色味を作り出していましたね。
グランドセイコーはイエロー・ピンク・オレンジなど、一見腕時計とは相性の良くなさそうな色にも果敢に挑戦して、奥深い“日本の美”を完成させてきました。光の三原色は約1600万色、色の三原色は約1億色、とされていますし、これからもアッと驚くような幻想的な文字盤が次々と発表されていきそうですね。
| モデル | エボリューション9 コレクション 樹氷バイオレット
Evolution 9 Collection |
|---|---|
| 型番(Ref.) | SLGB005 |
| ケースサイズ | 横 37.0mm 縦 44.3mm 厚さ 11.4mm |
| ケース素材 | エバーブリリアントスチール 裏ぶた:エバーブリリアントスチールとサファイアガラス |
| ムーブメント | スプリングドライブ 自動巻(手巻つき) キャリバー9RB2 |
| 精度 | 年差±20秒(月差±3秒相当) |
| 駆動期間 | 最大巻上時約72時間(約3日間)持続 |
| 防水性 | 日常生活用強化防水(10気圧) |
| その他 |
|
| 重量 | 151 g |
| 生産本数 | 世界限定:1,300本(うち国内:700本) |
| 取扱店舗 | グランドセイコーブティック、グランドセイコーサロンおよびグランドセイコーマスターショップ |
| 発売日 | 2025年11月8日発売予定 |
| 価格 | 1,463,000 円(税込) |
※販売開始時期・価格は予告なく変更される場合があります。
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