更新日:2025年05月13日

【Watches&Wonders 2025】グランドセイコー2025年新作“Tokyo Lion”SLGC009

ウォッチズ&ワンダーズ ジュネーブ(Watches&Wonders、略称W&W) 2025にて、青&シルバー系の気品漂う新作を手掛けたグランドセイコー(GRAND SEIKO)。ベクトルが違う異色の新作“Tokyo Lion”SLGC009は、一部の時計見識者達からクローズアップされています。

“Tokyo Lion”SLGC009はダサい、クールと評価はバラバラ

グランドセイコー SLGC009/横43.0mm× 縦50.0mm×厚さ15.6mm、ブリリアントハードチタン製ケース、メカニカル 自動巻き(手巻つき) キャリバー9SC5搭載。希望小売価格:2,310,000 円(税込)、2025年8月発売予定

GS史上最もワイルドなモデル、かもしれませんね。他のシリーズとは一線を画す力強いマッシブなケースフォルム、文字盤を切り裂く風靡な横線模様、ライオンの体色を彷彿とさせるブラウンカラー、など「Tokyo Lion」の持ち味である“野性味”を文字盤に貪欲に反映させています。ある種、グランドセイコーっぽくないグイグイ来るアグレッシブなデザインセンスが、獅子の獰猛さのようです。

ロイヤルオークオフショアのようだ、という口コミ意見も見かけましたが、野性味溢れる“強面な外観”、洗練された“気高い佇まい”、など矛盾した美を研ぎ澄ませている部分は、確かにオフショアっぽさがあります。Tokyo Lionの名も言い得て妙で、都会と共生する大型獣のように“危険な香り”がたまりませんね。

控えめの美を身上とするグランドセイコーには似つかわしくない、型破りな近未来的(旧時代的?)テンタグラフクロノグラフ“Tokyo Lion”SLGC009。時計ファン達からも賛否両論、意見は真っ二つな Tokyo Lionの独特な生態について迫りましょう。

初見ではダサカッコ良いかな・・・と思ったのですが、細かいディテールに目を向けると豪快&マイルドな味付けが遊び心をくすぐります。有機的な型打ち模様は、大胆な造形のケースフォルムを引き立て、ダイナミックさを体現。ぷにぷにとしたクッション性を持つラバーストラップの突起は、獅子の肉球を連想させ、ネコ科ならではの愛嬌も秘めます。コンクリートジャングルを生き抜くための知恵が随所にあしらわれていますね。

好奇心旺盛なSLGC009の習性もまとめてみました。

≪SLGC009のセールスポイント≫

  • 獅子のたたずまいを元にした迫力あるマッシブなケースフォルム
  • “獅子の力強い爪”をテーマに掲げ、直線美を追求
  • 丸みを帯びたケースバック形状&新開発ラバーストラップで、極上の装着感を実現

良くも悪くも、グランドセイコーっぽくない外観が、本作の醍醐味でしょう。1960年の誕生以来、グランドセイコーは百獣の王「獅子」をブランドシンボルに掲げ、腕時計の本質(※正確、見やすい、美しい)を追求し続けてきました。GSと聞くとブランド哲学の“最高の普通”を真っ先に連想してしまいますが、その本質は「最高峰の腕時計を創りたい」という強い信念にあります。“内なる意志の強さ”を具現化したタイムレスな佇まいは、獅子のように気高く、威厳に満ち溢れています。

樹氷”SLGB003とSLGB001

“樹氷”SLGB003とSLGB001

グランドセイコーのW&WG2025のテーマは「The Evolution of Precision(精度の進化)」ですが、“樹氷”SLGB003とSLGB001とは、全く違うルートで“時計そのものの在り方”を模索しているようにも見えます。SLGC009は「獅子(ネコ科)のしなやかさ(曲線美)×逞しさ(直線美)」を各パーツに大胆にあしらい、上手く組み合わせている印象です。ベゼルやケースは角張っているのに、ケースバックは腕に馴染むように湾曲しているのも芸コマでした。

テスラ社・サイバートラックは近未来的なフォルムが魅力

2019年発表の電気自動車サイバートラック、角張った直線的なフォルムや耐久性能など似ているところ多し!?

Cybertruck(サイバートラック)のように、空気を切り裂かんばかりの角ばった直線的なデザインが、スポーティー&タフネスで好奇心を刺激しますね。SF映画に登場しそうな近未来的なフォルムは、GSファン以外からも強い関心を集めそうです。
話題性抜群の見た目をしたSLGC009。野性味溢れるダイヤルから見ていきましょう。

SLGC009のデザインは獅子の力強い爪がデザインテーマである
『本モデルは、獅子の力強い爪をモチーフとし、金属の塊を削ぎ落としたかのような、大胆な造形とするとともに、まるで獅子が腕をしっかりつかんでいるような形状に仕上げています。さらに、金属の表情をより際立たせるヘアライン仕上げが、爪の鋭さを強調し、ケースフォルムのアクセントとなります。』

褒め言葉ですが、好みがハッキリ分かれそうな癖の強い外見が持ち味です。“獅子の力強い爪”がデザインテーマだけに、スパッと引き裂いたような「直線の芸術」が随所にピリリと効いています。

金属の塊を切り落としたような、角張った造形が武骨さを演出しているのがTokyo Lion(東京ライオン)シリーズならではの特徴です。それでいて、ダイヤルやインデックスは丸みを残しているため、ポップな親しみやすさを共存させています。これがもし、タグ・ホイヤー モナコのスクエア型、ジャガー・ルクルト レベルソのレクタンギュラー型、カルティエのトノー型だったら、本作の場合は悪目立ちしてしまったかもしれません。フォルムがハッキリとしているからか、フォントのゴシック体のように、独特な親近感がありますよね。

色々な角度から、SLGC009を眺めてみましょう。

SLGC009のケースはヘアライン仕上げが巧み

ラグからベゼルまで、獅子の爪で研いだようなヘアライン仕上げが美しいですね。本作はGS独自の先進素材ブリリアントハードチタン製で、白みがかった上質な輝きも魅力です。
続いて、リューズ側の写真も。

SLGC009のプッシュボタンはネコ科の前足のようにキュート

ケースサイドのプッシュボタンは、より力強いフォルムへアップデート。操作性を改善しつつ、押し心地も追求しています。東京ライオンシリーズのケースデザインは、獅子の前足をインスピレーション元にしているのですが、プッシュボタンを獅子がガッチリとホールドしているようにも見えますね。m(=^・ω・^=)m<ガオー

SLGC009のダイヤルパターンは“風になびくライオンのたてがみ”をアレンジ

右斜め下方向から見た写真です。ジグザグに交差したアトランダムな直線模様が、ダイヤルのデコレーション的役割を果たしています。横縞のチークパターンを複雑にした模様は、アスファルトのタイヤ跡を彷彿させ、スポーティーさが強調されています。こちらの模様、獅子のたてがみが風になびく姿、をモチーフにしていますが、さながら虎柄のようにワイルドです。便宜上、東京ライオン模様と呼称しますが、この模様を上手く活用したレーシーなクロノグラフを見てみたいものです。

本作の東京ライオンらしさを概ね解説出来ましたので、SLGC009に雰囲気が近いGSウォッチを見比べていきましょう。

型破りなSLGC009、東京ライオンシリーズを中心に見比べていきましょう。

GSスポコレ スプドラレギュラー3針SBGA481実機写真

順番的には、似ている要素の多いクロノグラフが妥当かもしれませんが、まずはシンプルな3針モデルのSBGA481からセレクトしました。
凛々しくも猛々しい、重厚感のあるケースデザインで、一風変わった3針モデルを体現したスプリングドライブ“獅子”SBGA481。獅子のたてがみをイメージしたシャイニーホワイトダイヤルが、程よく上品な知性を演出しています。荒野に佇むホワイトライオンのように、神々しいですよね。

SBGC253のレビュー写真、シャイニーホワイト文字盤が美しい

東京ライオンシリーズ初のレギュラー スプドラ クロノグラフ GMT SBGC253。44.5mmのブライトチタンケース、押しやすさを重視した凹凸形状のプッシュボタン、サブダイヤルをさり気なく盛り上げる赤褐色の差し色、などGS的解釈で最高峰の腕時計を具現化しています。ベーシックな色遣いで、ごつさと凛々しさのバランスが絶妙です。

60周年記念限定SBGC238は勝色×東京ライオンケースが勇ましい

続きましては、60周年記念限定モデルのSBGC238。戦国武将が好んで着用した「獅子甲冑」をモチーフに、勇敢さを示す「勝色(かついろ)」をダイヤルカラーに採用しています。「18KPGケース×藍色のカラーリング」が実に見目好く、東京ライオンデザインとの相性もバッチリですね!

東京ライオンケースのGS特選会モデル について

東京ライオン系のデザインは、得意客のみを対象とした完全招待制イベント「グランドセイコー特選会」で、ほぼ毎年リリースされているのも特徴です。多種多彩な縦三つ目のクロノグラフは、GS蒐集家なら一つは手に入れたい銘品揃いです。
本作のダイヤルパターンに採用された東京ライオン模様は、SBGC230のようなカラーリングにも似合いそうですね。

東京ライオンデザインの出世作“ゴジラ”SBGA405

東京ライオンケースを一躍有名にしたゴジラ65周年記念限定モデルSBGA405。GSスポーツウォッチの定義に、破壊的イノベーションを巻き起こしかねない異色のコラボモデルでした。人を選ぶ「赤×黒」のコーディネートですが、赤黒いシャークストラップが絶妙で、銃弾やミサイルをも防ぐ強靭な皮膚を連想させました。
東京ライオンのカクカクしたケース形状は、特撮ヒーロー『仮面ライダー』にも馴染みそう(黒×緑系文字盤が妥当?)ですし、GS×特撮シリーズの続編も出て欲しいものです。

SBGC275は東京ライオンケース×光学多層コーティングで個性豊か

2024年発売の“夏の穂高連峰の朝焼け”SBGC275は、色彩が光の角度で変化する「光学多層コーティング」を用い、従来の塗装では表現しきれない奥行きのあるダイヤルを完成させています。見るたびに表情が変わるオレンジ系~レッド系のダイヤルとスポーティーな東京ライオンのケースデザインはインパクト絶大でした!

ロイヤルオーク コンセプト は遊び心のある時計が多い

造形のゴツさ加減、で相通じるものがある「ロイヤルオーク コンセプト」。東京ライオンシリーズは、高級感よりスポーティーに尖らせていますし、オフショアよりコンセプトの方が近いかも!?
ロイヤル オーク コンセプト トゥールビヨン“コンパニオン”のようなユーモラスな新作が、グランドセイコーからリリースされる未来も楽しみですね。

SLGC009のサイズは横 43.0mm×縦 50.0mm×厚さ 15.6mm、同条件(※ブリリアントハードチタン、キャリバー9SC5)で絞り込むと同スペックのものはないため、デザインコードの近い東京ライオン系ウォッチと見比べてみました。

2025年5月現在、GS東京ライオン一覧

スプドラクロノグラフGMTモデルのSBGC253はブライトチタン製&キャリバー9R86搭載で横 44.5mm×縦 50.0mm×厚さ 16.8mm、光学多層コーティングのSBGC275は同素材&9R96搭載で横 44.5mm×縦 50.0mm×厚さ 16.8mm。東京ライオンの中では、大き過ぎず分厚過ぎないサイズですね。

ちなみに、キャリバー9SC5繋がりのSLGC007は横 43.2mm×縦 51.5mm ×厚さ 15.3mmブライトチタン製、東京ライオンではないですがSLGC001もSLGC007と同スペックでした。値段項目の比較はこちらへ  ⇒ 「SLGC009の値段」

TENTAGRAPHの由来と正式名称

SLGC009のムーブメントは、去年W&W2024の地を震撼させたGS初のメカニカルクロノグラフ「キャリバー9SC5」を搭載。「10振動+約72時間のロングリザーブ+自動巻きクロノグラフ」のキーワードを組み合わせた“TENTAGRAPH(テンタグラフ)”の名前は、親しみやすく語呂もいいですよね。
前置きはこのくらいにして、本作のケースバックも見てみましょう。

SLGC009の裏ぶたは獅子の背中のような丸みをが腕にジャストフィット

猫背?のようにゆる~く湾曲したケースバックと一体型ラバーストラップのやんわりとしたフォルムが目を惹きますね。見たまんまの感想を述べると、獅子の肉球をイメージした「蹠球(しょきゅう)風突起部」と最高峰メカニカルクロノグラフの対比がなんともキュートです。質実剛健なデザインを是とする、GSらしくない突飛さが大胆不敵です。
せっかくなので、ネコ科のしなやかさを再現したであろう、ラバーストラップも少しだけ深掘り解説します。

新開発のラバーベルトは、シリコンストラップの2倍以上の引っ張り強度(※GS当社比)を実現!頑健な東京ライオンケースをなめらかな質感で盛り立てます。

SLGC009 のベルトはライオンの体つきのようにしなやかで力強い

「プッシュボタン式クラスプ+湾曲したケースバック+ラバーストラップ」で、極上の着け心地を提供しています。ストラップでも獅子の足を再現しているのが妙味ですね。ライオン同様、やや大柄なサイズがネックなSLGC009ですが、ラバーベルトのお陰で腕乗りは良さそうです。
SLGC009はデザインそのものが傾(かぶ)いていて、安直に金属製ブレスレットにしなかったところに、独自の哲学を感じさせ好感が持てますね。

SLGC009の値段は2,310,000円(税込)とちょっとお高め。東京ライオンシリーズ、キャリバー 9SC5搭載モデルの中でも最高値を記録しています。

キャリバー 9SC5 搭載モデルの定価一覧

色々と攻めた結果が、値段にも反映されているのがネックでしょうか。
キャリバー9SC5搭載のSLGC001&SLGC007は1,980,000 円(税込)。東京ライオン系のレギュラーSBGC253が1,793,000円(税込)、新技法「光学多層コーティング」を施したSBGC275は1,837,000円でした。東京ライオン系スプリングドライブクロノグラフのボリュームゾーンが180万円前後で、50万円の価格差は如何ともし難いものがあります。本作はコストパフォーマンスで考える作風ではありませんし、W&W2025GS新作記事でもお伝えしたように、“面白い男”を演出したい方など、本当にSLGC009を気に入った方こそが購入すべきでしょう。

本作と同時リリースにして、負けず劣らずアバンギャルドなデザインセンスが光る、キャリバー 9SC5搭載モデルSLGC007と比較していきましょう。

SLGC009とSLGC007のデザインを比較

≪SLGC009とSLGC007のデザイン・素材の違い≫

  • SLGC009はブリリアントハードチタン、SLGC007はブライトチタンケース
  • SLGC009は東京ライオン、SLGC007はエボリューション9スタイル
  • SLGC007はタキメータースケールありのブラックベゼル
  • SLGC007は厳冬期の岩手山をモチーフにしたスノーブルー×ブラックカラー、SLGC009は獅子の力強い爪がテーマ

四季折々の自然美を多彩な技法で表現するグランドセイコー。東京ライオンシリーズは“天然の美”ではなく、最高峰の腕時計を志す“意思と野望”を大胆な作風で描出しており、他のGSウォッチとは一線を画します。GSは“最高の普通”をブランド哲学に掲げているため、シンプルでオーソドックスなデザインが多く、「地味」「つまらない」「どれも同じ」という声もあるのも事実。否定的な感想に一つのアンサーを突き付けるように、個性的なデザインを模索している印象です。

SLGC009が出るまでは、東京ライオン系は目盛り入りの黒ベゼルが中心でしたが、シルバーベゼルも金属のカタマリ感が強調されていて趣きがありますね。
一方、SLGC007は超正統派の横三つ目クロノグラフで、万人受けするデザインが魅力です。筆者個人の好みはセオリー重視のSLGC007に軍配が上がるのですが、SLGC009は興趣に富んだデザインセンスで、どことなく愛らしさを感じます。他のGSウォッチとは、ちょっと毛色が違うのが本作の魅力なのでしょうね。

SLGC009の評価は意見が真っ二つに分かれており、様々な感想が寄せられています。

「APのコンセプトウォッチにGSのセンスが加わっている」
「ケースバックがリシャールミルのようだ」
「ユニークだけど物足りない」
「今まで一番デイト窓表示がダメ!」

獅子の咆哮にも負けない、熱いご意見と感想を皆様寄せていました。美の定義は人それぞれですが、響く人には高い評価を集めていました。

「世界最高峰の腕時計」を目指し、1960年に生まれたグランドセイコー。日本の美意識を反映した、“控えめな存在感”“調和のとれたデザイン”がGSウォッチの魅力なのですが、革新性を強調したアバンギャルドなデザインも強烈なインパクトを与えるために必要不可欠です。
大自然の偉大さを讃える“普遍的な美しさ”だけでなく、そろそろ都会の雑踏を文字盤に反映した“無秩序の美”も増やす頃合いに差し掛かっているのかもしれません。独特なフォルムを持つ東京ライオン、今後どんな多様性を身に着けていくのでしょうか?

グランドセイコー SLGC009の仕様・価格
SLGC009の仕様とスペック
モデル スポーツコレクション 東京ライオン テンタグラフ
Sport Collection Tokyo Lion Tentagraph
型番(Ref.) SLGC009
ケースサイズ 横 43.0mm 縦 50.0mm 厚さ 15.6mm
ケース素材 ブリリアントハードチタンとサファイアガラス
ムーブメント メカニカル 自動巻(手巻つき)9SC5
精度 静的精度:平均日差+5秒~-3秒
携帯精度:日差+8~-1秒
駆動期間 最大巻上時約72時間持続
防水性 日常生活用強化防水(20気圧)
耐磁性 あり
その他 ねじロック式りゅうず
耐メタルアレルギー
石数 60石
ストップウオッチ機能(30分計・12時間計)
取扱店舗 グランドセイコーブティック、およびグランドセイコーサロン
発売日 2025年8月8日(金)発売予定
価格 2,310,000 円(税込)

※販売開始時期・価格は予告なく変更される場合があります。

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