更新日:2023年10月09日

機械式クロノグラフの針ズレと不具合。原因と対処法

メカニカルクロノグラフの針ズレ・針飛びへの対策について

時間を計測し記録する、大人気機能のクロノグラフ(Chronograph)。スポーティーでカッコいい“デザイン性の良さ”で不動の人気を誇り、ロレックスの「コスモグラフ デイトナ」、オメガの「スピードマスター」など、数々の人気機種を生み出してきました。
しかし、クロノグラフという機構は、ごつごつしたタフそうなルックスに反し、内部は複雑かつデリケートな構造をしています。そのため、丁寧な取り扱いと正しい使用方法をマスターしておくのが大切です。乱暴な操作方法、誤った使い方が原因で、予期せぬトラブルや故障が発生してしまう恐れもあるので、ご注意ください。

当記事では、名前自体はよく知っているものの、「意外と知らないクロノグラフの正しい使用方法」、クロノグラフを末永く愛用していくための基礎知識、機械式クロノグラフの不具合、トラブルでよく寄せられる「針ズレ」「針飛び」について、詳しく解説致します。

「買ったばかりなのに、クロノグラフ秒針が12時位置からずれている気がする」
「ずっと問題なく稼働していたが、最近どこかおかしい!」
「急に調子が悪くなった?」

変だな?と、異変に気付いた際は、大切なクロノグラフの処方箋代わりに、当記事をお役立てください。

クロノグラフの針ズレトラブルを防ぐには、正しい操作方法を

基本となるクロノグラフの操作方法もおさらいしておきましょう。初めて使用する際には、取扱説明書に目を通した上で、実際に操作するボタンに誤りがないかをご確認ください。
*注*以下の操作手順は、一般的な機械式クロノグラフの例です。モデルによってボタンの位置、操作方法が異なる場合がございます。

【クロノグラフの基本操作】

  1. 「スタート/ストップ」を押す(※計測スタート)
  2. 「スタート/ストップ」を押す(※計測ストップ)
  3. 「リセットボタン」を押す(※計測リセット)

※計測リセット(リセットボタンを押す)する前に、もう一度「スタート/ストップ」を押すと、再スタート(再計測)できます。 基本操作はシンプルです。よくあるスタンダードなボタン配置の場合、「2時位置のスタートボタン⇒2時位置のストップボタン⇒4時位置のリセットボタン」の順番で、ボタンを正確に押すように心掛けましょう。

リセットボタンを押す際には、必ずストップボタンを押してから、リセット操作するようにご注意ください。よくあるトラブル・操作ミスですが、クロノグラフ秒針が動いているのに、リセットボタンを間違えて押してしまい、不具合やパーツ破損、故障の原因となるケースもあります。

機械式クロノグラフは、シンプルな3針モデルに比べると、「計測機能」が付加されている分、構造が複雑です。機械内部にダメージを与えないように、[スタート(※再スタート)]→[ストップ]→[リセット]の順に使用しましょう!

ピアゾの腕時計豆知識 
<クロノグラフの種類>

その他のクロノグラフについても、簡単にご紹介致します。

  • フライバック・クロノグラフ・・・「スタート⇒リセット」操作可能な上位機構。ストップ動作を省いたリセット動作の負荷は大きいため、頻繁なフライバック・クロノグラフの使用は避けるのが賢明
  • ワンプッシュクロノグラフ・・・「スタート/ストップ/リセット」操作をワンボタンで行える。古典的なクロノグラフに多い。再計測できないのが弱点
  • ラトラパンテ・・・スプリットセコンド、ダブルクロノグラフとも呼ばれる。2本の秒針で異なるラップタイムの時間計測を可能としている。ランゲ&ゾーネは2018年に上位版の「トリプルスプリット」も発表している。

続けて、基本となる「機械式クロノグラフを正しく使うコツ」をお伝えします。今すぐ機械式クロノグラフの針ズレ対策について知りたい方は こちらへ。

メカニカルクロノグラフの操作方法と注意点

クロノグラフは複雑機構の一種ですので、パーツ交換や修理にも高度な技術を要します。メーカー対応となった場合、シンプルなメカニカルモデルよりも約1.2倍~1.5倍目安の高額なオーバーホール費用がかかる傾向があり、ランニングコスト(維持費用)も高いのが特徴です。
有名ブランド毎のオーバーホール目安はこちら⇒「ブランド別オーバーホール費用一覧」

機械式クロノグラフを末永く使いたい方、不意な出費を減らしたい方は、4つのポイントにお気を付けください。

(1)ストップウォッチ機能は必要最小限に!

機械式クロノグラフの計測機能(※ストップウォッチ)は、通常の時計機能と同様、ゼンマイがほどける動力を使用しています。頻繁にクロノグラフ機能を使用した場合、想像以上にパーツは摩耗してしまい、内部的なダメージが溜まってしまっている恐れも。

(2)強い衝撃や振動を避ける!

クロノグラフは構造が複雑な分、衝撃や振動に弱いのが欠点です。落下事故を避ける、ぶつけるなどのトラブルを減らすためにも、高い場所には置かない、専用の保管ケースに収納する、安定した場所へ保管スペースを確保するなど、“腕時計を衝撃から守る保管方法を心掛けましょう。また、ゼンマイの巻き上げの際には、時計を激しく(大きく)急いで振らないようにしましょう。

(3)磁気の発生源に近づけない!

高級腕時計全般に言えることですが、精密機械に磁気は大敵!磁気製品(※スマートフォン、パソコン含む)からは5~10センチ以上離すクセを徹底すると安心です。意識的に“磁気帯び”から愛機を守るように気をつけましょう。

(4)定期的にお手入れやメンテナンスを行う!

長く愛用していくと、パッと見では問題がないように見えても、皮脂汚れやサビの詰まりなど、知らず知らずのうちにトラブルが潜んでいるものです。
クロノグラフはタキメーターベゼルやプッシュボタンがあるため、外装も複雑な構造をしています。きちんと掃除をしているつもりでも、溝やボタン周りに汚れが溜まってしまいがちです。普段のクロス拭きとは別に、柔らかめの歯ブラシや爪楊枝で、丁寧に汚れをかき出すなど定期的なお手入れは必須です。

きちんとした取り扱い、アフターケアが“健康的なクロノグラフ”を保つ秘訣です!しかし、正しく使用していたとしても、クロノグラフ秒針の動きがいつもと違う、針の位置がズレるなど不具合は生じることはあります。まずは「お手持ちの腕時計がどういうコンディションなのか?」クロノグラフの状態を確認し、冷静に対処しましょう。順番にトラブル事例への対処方法をご説明します。

クロノグラフ針がズレている時は0位置がどこか点検する

正常な場合、クロノグラフ針は12時の位置(※ゼロ位置)ぴったりで停止します。しかし、深刻ではないトラブル含め、何らかの原因でクロノグラフ秒針が12時以外の位置で停止してしまうケースもしばしば。ゼロ位置からズレていると、何だか気持ちが悪く、「クロノグラフが調子悪い」「もしかして故障かも?」と判断しがちですが、まずは状態確認から始めてみましょう。

始めにクロノグラフの状態をチェック!

  • 針のスタート地点がどこか覚えておく
  • [スタート]→[ストップ]→[リセット]操作を行い、針の位置がどこに戻るのか点検する
  • ズレ幅がどのくらい大きいかも要確認

まずは、専門用語で言う「帰零位置(きれいいち)」を割り出しましょう。動き出した針が「どの位置に戻るのか?」ゼロ位置がズレているか否か、見定めるのが先決です。針の開始位置がどこだったかはお忘れのないように!

  • ズレた同じ位置にまた戻る=ゼロ位置がズレている可能性あり
  • 毎回ランダムな位置に戻る=クロノ針がゆるい可能性も

お持ちの機械式クロノグラフは、どのような状態だったでしょうか?新品・愛用品問わず、針ズレの症状はケースバイケース。「壊れた!」と慌てず、ただのうっかりだった、という可能性もあるので、順番に確認していきましょう!

クロノグラフの針ズレ、よくあるトラブルと対策

眺めていてもしっくりこない、クロノグラフ秒針のズレ。クォーツ式腕時計の場合は簡単な操作で12時位置に手動調整(※ゼロ位置調整)可能ですが、機械式クロノグラフの場合はそうもいきません。歯車と針が噛み合っていない、ハカマと呼ばれる筒状のパーツが緩んでいる・割れているなどの不具合が生じている恐れもあり、オーバーホールしないと直らないケースも。

ただ、針ズレといっても許容範囲内の微々たるズレだったり、故障が原因でない場合もあるので、お手元の機械式クロノグラフが「どの状態に近いのか?」下記項目をご参照ください。ケアレスミスを避けるためにも、よくあるトラブルからご説明します。

クロノグラフ機能を作動する場合、ゼンマイの駆動時間が不足しないように

針ズレの原因は様々ですが、意外と多いのがゼンマイの巻き上げ不足です。機械式クロノグラフは、計測を開始するとエネルギーの消耗が激しくなります。ゼンマイの巻き上げが不十分で、クロノグラフ機能が正常に作動していない可能性もあるのです。

腕の動きが少ない、外している時間が長い等、十分な動力を得られていない可能性も!最低、8~10時間身に着ける、毎朝ゆっくりと巻き上げてから使用するなど、「機械式腕時計の正しい使い方」が出来ているか、を再確認するのも大切です。

口コミで見かけた、悲しすぎるレアケースでは、パワーリザーブがほとんどない状態でクロノグラフを使用してしまい、途中で止まってしまった上に、リセットボタンを押してもズレた位置で固定されてしまった、とか。
最悪なトラブルを避けるためにも、パワーリザーブの残量を確認した上で、クロノグラフ操作を行うようにしましょう。

クロノグラフのボタンは強く押し過ぎないようにする

リセットボタンの押し込みが中途半端で、クロノグラフ針が0位置に戻っていないだけ、という事例もあります。基本的に、クロノグラフの誤操作が起きないように、ボタンが硬めに調整されています。
リセットボタンはしっかり押しましょう。ただし、元々がボタンの固い(動きが渋い)個体で、あらぬ(負荷のかかる)方向へ強くプッシュしてプッシュボタンがめりこんでしまった、ポロっと取れてしまったという故障も珍しくありません。

クロノグラフのプッシュボタンは、強く押し過ぎるのは厳禁です。力の強さよりも適した方向に確実に押すのが肝なので、“正確な操作”を身に着けましょう。 クロノグラフに使われるプッシュボタンの芯は、髪の毛のように細い、繊細なパーツです。過度な心配は無用ですが、くれぐれも力加減にはご注意ください。

万が一、ボタンが取れてしまった場合は、故障箇所から湿気や水などが入り込んでしまい、新たな不具合や故障を招く恐れもあります。また、プッシュボタンが戻らないケースの場合、時計内部(ムーブメント全体)に悪影響が出ることも考えられます。一旦使用を中止して、早めにメーカーや修理店に相談するのが吉でしょう。

バックラッシュのメカニズムについて

クロノグラフ秒針が12時ジャスト位置に、収まりよく静止していればとても気持ちが良いもの。しかし、よーく見ると微妙にズレていたり、たまに(20回に1回くらい?)少しブレた動きをしたりすることがあります。原因の1つに「バックラッシュ(隙間)」と呼ばれる、時計の構造があります。その場合は使用上問題のない針ズレなので、安心して大丈夫です。

メカニカルウォッチは、歯車同士の滑らかな噛み合いが、“時計の動力源”となり、針やクロノグラフ機構を動かします。安定して一定の速度で、スムーズに歯車と歯車を噛み合わせるためには、「遊び」が必要不可欠なのです。バックラッシュの役割を簡単にまとめました。

≪バックラッシュの役割≫

  • パーツ製造誤差・・・ほんの僅かな寸法のバラつきがあっても、バックラッシュがあることで上手く機能する
  • 熱膨張・・・10mmの鉄製の歯車は、10℃温度が上昇すると、1µm(0.001mm)も延びる。隙間があると、パーツの微妙な膨張ズレを吸収できる
  • ゆがみ・・・重力や腕の動きで生じる、パーツのわずかな変形やひずみに対して、不具合を防ぐ役割を果たしている
  • 衝撃や落下・・・時計を落とすなどの強い衝撃が加わった場合でも、歯車を壊さないように、無理に加わった力を逃がす

“精密機械”でもある機械式腕時計。バックラッシュは“なくてはならないスペース”であり、あることで重大なトラブルを未然に防いでいます。ですが皮肉なことに、その僅かな隙間はときに、針の運びに微妙なズレを生み出してしまってもいるのです。
0.5秒以下の微々たるズレは、メーカーに問い合わせても、ありうる誤差“許容範囲内”と返答された例もあります。1秒未満の微妙なズレは、そのクロノグラフ秒針の“個体差、個性”と思って、「あばたもえくぼ」のように慈しむのがよいでしょう。

クロノグラフのリセットし過ぎは寿命を縮める可能性も

「クロノグラフを正しく使うポイント」の項目でも説明しましたが、クロノグラフの操作過多は、愛機の寿命を縮めてしまう可能性を高めます。「見づらいから」という理由で、秒針代わりにクロノグラフ秒針(ストップウォッチ機能)を常に作動させる方もいらっしゃいますが、 クロノグラフ機構をフル稼働させたままだと、動力の消費が激しい(※パワーリザーブが減りやすくなる)以外にも、“衝撃に対して弱い状態”が続き、リスキーです。内部のパーツが絶えず作動している状態なので、咄嗟の衝撃に脆く、パーツ摩耗も激しいので、故障を誘発してしまいます。

また、クロノグラフ針は、リセット操作時に勢いよく開始位置(※ゼロ位置)に戻るため、内部的に大きな負荷がかかっています。
さて、やり過ぎも厳禁、ですが、全く動かさないのも考えものです。年月の経過により、プッシュボタンが固着した(※サビや汚れで固まった)など、深刻なダメージが溜まるまで放置してしまった、というトラブルもあります 。
あまりにサビがひどい場合、プッシュボタンが外すときに折れたり、抜けなかったりする可能性があるため、修理自体を断られるケースも。 「愛機のクロノグラフに問題はないかな?」と、動作確認も兼ねて、ときどきクロノグラフ操作を愉しむ時間を作るのも肝要です。

クロノグラフ針は経年劣化しやすく、曲がったり取れたりもする

クロノグラフ秒針は、リセット操作時の負荷も大きく、経年劣化しやすいパーツです。衝撃や振動で緩んでしまったり、最悪取れてしまうことも。
リセット操作をしてもランダムな針位置に戻る、軽く振ると針が動いてしまうという場合、針のハカマ(※針を取り付けるための筒状のパイプ)部分が、“緩んだ・割れた”末に、針ズレを起こしてしまった可能性があります。

多大な針ズレや曲がっている針を放置すると、文字盤やインデックスを傷つけてしまう場合もあるので、未然に防ぐのが一番の防衛策だと言えます。「クロノグラフ操作リセット時に異常がないか?」たまにチェックする癖をつけましょう。
ただの付け直しで済む、簡単に直る事例もあれば、“針交換・針作成”などが必要なトラブルもあり得ます。いずれにせよまずは修理相談をお勧めします。

クロノグラフ針の初期不良が起きたら保証期間内で交換を

初期不良が原因で、購入当初から微妙なズレのまま固定された個体も存在します。

  • 職人が針を設置する際に、ズレた位置で止めてしまった
  • カシメ不良(※針の固定が弱い)で針ズレを起こした

構造上仕方のない“許容範囲内”なのか、初期不良かは定かではないので、購入店にご相談・調整をお願いしてみるとよいでしょう。

機械式クロノグラフは針飛び、積算計の不具合も多い

針ズレと並んで、時計通が話題に出す「針飛び」。クロノグラフならではのトラブル、積算計の動作不良についても解説致します。 「クロノグラフの選び方」も左右する、クロノグラフの制御方式(※水平式クラッチ VS 垂直式クラッチ)も簡潔にまとめてみました。クロノグラフ入門者の方、クロノグラフ選びに迷っている方、必見ですよ!

クロノグラフ作動時に見かける、ぎこちない針の動き。一度に針が大きくジャンプする、不規則に針が震える症状等、トラブルは千差万別です。

原因としては、①クロノグラフランナー(※クロノグラフ針を回す歯車)の軸折れ②フリクションスプリング(※針を抑える部品)の変形、などの「パーツ破損・劣化」が疑わしい状況です。
対処法にはメーカーのオーバーホール、修理店のパーツ修理・交換などがありますが、純正部品が手に入らない、修理に時間がかかるといった場合も。そんな状況にならぬよう、基本的なオーバーホールの知識を予習しておくことをお勧めします。

困ったら修理する、ではなくそうなる前に!正しい使い方を身に着けた上で、適切なタイミングでメンテナンスを行うのが、高級腕時計にとっての“正解”だとピアゾ編集部は考えています。

この項目では「針飛びの原因」をご理解頂くため、機械式クロノグラフの「メカニズム&仕組み」について深掘りします。

クロノグラフには、“3種類の動力伝達方式”と“2種類の作動方式”があり、それぞれ構造上の長所と短所が内在しています。一時期は、「コラムホイール式は高級で良いもの。カム式は廉価版でボタンが固い」というのが通説でした。ですが、日進月歩な技術革新の影響もあり、徐々にその差は埋まりつつあります。

針ズレ・針飛びがしにくい垂直クラッチ方式と水平クラッチの違い

動力伝達方式・・・古典的でオーソドックスな「水平クラッチ方式(※キャリングアーム、スイングピニオンの2種類)」VS近年、主流になりつつある「垂直クラッチ方式」
作動方式・・・ボタンの押し心地もソフトな「コラムホイール式」VSコスパ良しの「カム式」

*注*「コラムホイール式とカム式」は割愛します。また別の機会で。
水平クラッチと垂直クラッチのメリットとデメリットを見てみましょう。

≪動力伝達方式で見たメリットとデメリット≫

  • ・キャリングアーム方式
    〇古典的技法で見た目も動きも大きい
    〇美観の良さは圧巻!
    (雲上ブランド、パテック・フィリップやランゲ&ゾーネのキャリングアーム方式クロノグラフは“芸術品”とも)
    ×トルクロスが多く、精度面が課題
    ×歯車と歯車が噛み合う際に、針飛びを起こすことも
  • ・スイングピニオン方式
    〇キャリングアームを簡素化しているため、低コストで大量生産しやすい
    〇回転軸が細く省スペース化も可能
    〇普及率No.1!各社、製造技術が向上しているため、高性能&コスパ良しのクロノグラフも多数
    ×キャリングアーム同様、針飛びや調整の難しさが課題
  • ・垂直クラッチ方式
    〇構造上、クロノグラフ動作時に、針飛びが(ほぼ)起こらない
    〇摩擦連結するので、トルクロスが少なく精度が高い
    ×垂直方向にスペースを取る。厚みが出やすい
    ×水平クラッチより美観・耐久性が劣る

「水平クラッチVS垂直クラッチ」も一長一短。時計愛好家の皆さんがメカニカルクロノグラフを選ぶ際に「クラッチ機構」にこだわるのも納得です。

今回のテーマである「針飛び」にフォーカスしますと、水平クラッチの場合、歯車と歯車(※凸と凹)がしっくり噛み合えば問題はないものの、嚙み合わせが微妙にズレると、針はジャンプしてしまうのです。
もし、クロノグラフの歯車の数が200枚だった場合、歯と歯の間隔は「60秒÷200枚=0.3秒」表示の角度に相当します。歯と歯の嚙み合わせしだいで、単純計算でも0.3秒前後のズレ(※その他の原因も重なると、1秒近い針ズレも)が、クロノグラフ秒針に生じうるのです。文字上ではわずかな時間にも感じますが、計測を目的とするクロノグラフにとっては、由々しき問題なのです。

ピアゾの腕時計豆知識 
<クロノグラフが人命救助に活躍!オメガとアポロ13、正確な14秒>

クロノグラフの正確な計測が乗組員の運命を分けた、アポロ13号の有名なエピソードをご紹介します。 酸素タンクの爆発が原因で、危機的状況に追い込まれたアポロ13号と3人の乗組員達……無事、地球へ帰還するためには、“正確な秒数だけ”エンジンを噴射し、軌道修正を行う必要がありました。ほぼ全ての電源を落とし、デジタルタイマーも使用できない難局で、宇宙飛行士が身に着けていたオメガ ・スピードマスターは“正確な14秒”を計測!クロノグラフは人命救助にも活躍したのです。

垂直クラッチ方式は針飛びが起きにくいが、ムーブメントに厚みが出る

一方、針飛びが起こりづらい垂直クラッチ方式は、せっかくの美しいクロノグラフの動きがブリッジ(受け板)の下に隠れてしまい、その全貌を見ることができません。
パテック・フィリップのように、歯車の形状を工夫し、針飛びの問題を解決した水平クラッチ方式(※手巻きクロノグラフムーブメント)もあり、片方がメカニズム的にも格段と優れているという、“差らしい差がない”のが時計選びの難しい(面白い)ところ。

「針飛びが起きない、性能重視の垂直クラッチが“究極”。ムーブメントの厚みや耐久性に問題が残る」
「歴史と伝統が長く、ムーブメントそのものが、薄く美しい水平クラッチ(※特にキャリングアーム)が“至高”。横(水平)スペースの問題は残り、自動巻きを載せづらい」

この記事を読まれた方は、機械式クロノグラフの針飛びや針ズレで頭を悩めていると思うので、当項目が「クロノグラフの選び方」の一助になれば幸いです。“自分だけの正解”を見つけてくださいね。

クロノグラフならではのトラブルとして、積算計の不具合も避けては通れない命題です。計器を腕に取り付けているような、精悍なカッコ良さも魅力のクロノグラフ。しかし、その積算計も針ズレ(※ハカマの緩み、嚙み合わせ不良等)や動作不良が起きてしまうことがあります。

原因は積算計を制御するレバーの劣化、歯車の摩耗や破損、ストップレバーのトラブルで積算計が止まらない、など多岐に渡ります。他にも、「初期不良で、積算計ブレーキの効きがおかしい。リセットしても針の位置がズレる」なんて口コミもあります。何がいけないのかは、一概に判断できないため、“早めの点検と相談、定期的なメンテナンス”で予防していきましょう。

機械式クロノグラフの針ズレに関する、「原因と対処方法」をまとめた今回の記事いかがだったでしょうか?

  • 正しい使用方法を学ぶ
  • 故障の原因を減らす&定期的なお手入れとメンテナンスを行う
  • 異常があれば、まずは状態のチェック(パワリザ不足やリセットボタン操作が正確か?)から
  • 針の位置はどこにあるかを点検(※ズレた同じ位置に戻るのかorランダムにズレるのか)する
  • 当記事の「針ズレ(針飛び)の原因」を要確認
  • 購入店、修理店にトラブルを相談する

機械式クロノグラフはパーツ数も多く、トラブルや原因も様々。独特な針のデザインやダイナミックな動きを楽しむためにも、日頃から“正しい使い方、適切なメンテナンス”を心がけたいものですね!




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