更新日:2026年05月12日
「ウォッチズ&ワンダーズ ジュネーブ(Watches&Wonders、略称W&WG) 2026」で、自社開発の「コンプライアントクロノグラフ機構」搭載の“エバーグラフ”を発表し、時計ファンの度肝を抜いたタグ・ホイヤー(TAG Heuer)。先進技術で話題をさらう一方で、レギュラーのモナコ クロノグラフでは1969年発売のオリジナルモデル Ref. 1133を彷彿させる「原点回帰」の姿勢がみられました。
世界初の角型防水クロノグラフと大胆な色味のブルーを組み合わせ、アバンギャルド精神を体現してきたモナコ。W&WG2026では“エバーグラフ”でイノベーションを、レギュラーではクラシック路線を追求し、異なるベクトルで人気コレクションのモナコをリニューアルしています。
2026年新作モナコは、従来のモデルよりケースフォルムがシャープな形状となり、1997年発売の復刻モナコ(CS2110)の系譜よりも初代モナコのデザインへと近づきました。外観は原点回帰を追求しながら、ケースバックは人間工学に基づいた設計を施すことで着け心地を改良、全体のバランスそのものも大幅に改善されています。
デビューから半世紀以上の時を経て、次なるステージへと歩みを進めるタグ・ホイヤー モナコ。本記事では新たな改革について、多角的に分析していきましょう。
LVMHウォッチウィーク 2026で発表されたタグ・ホイヤー「カレラ」の新作を速報。象徴的なグラスボックスが41mmにサイズアップし、自社製TH20-01を搭載。初のスプリットセコンドや復刻シーファーラーなど、伝統と革新が融合した最新モデルの全貌を解説します。
ウォッチズ&ワンダーズ 2024でモナコ・スプリットセコンド・クロノグラフのCBW2181.FC8322(赤)とCBW2182.FC8339(青)、翌年の同イベントでもモナコ・スプリットセコンド・クロノグラフCBW2190.FC8356(白)を発表し、毎年のようにクロノグラフの革新へ挑戦するタグ・ホイヤー。今年はレバーやバネを排除したコンプライアント クロノグラフ機構搭載の“エバーグラフ”と、初代モナコRef. 1133に着想を得た新世代モデルで、コレクションに新たな息吹をもたらしました。
≪モナコクロノグラフ2026年新作の見どころ≫
クロノグラフの歴史を変えるかもしれない“エバーグラフ”も凄いですが、そつのないアップグレードで魅力を増したレギュラー陣もにわかに時計通の間で議論が交わされています。
ケースはオリジナルモナコのように真四角なフォルム、軽量化を追求するF1マシンのように軽く頑丈なチタン素材を採用、人間工学に基づく着け心地の改善、など基本スペックそのものを見直しコレクションを刷新している点が興味深いですね。
全ての面で初代モナコに完全に忠実か、といわれるといささか疑問で、溝が浅くなったリューズ、押しやすさを追求したであろう角型プッシュボタンなど、似ていないパーツも混在しており、2026新生モナコのリニューアル箇所に対して、ネット上では激論が交わされている模様です。巷の声をかいつまむと、ダイヤルデザインや着け心地を追求したストラップは肯定的、価格や一部デザインのバランスは否定的な意見が目立つ状況でした。
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それらも踏まえ、本作のデザインの変化を掘り下げていきましょう。
モナコ新作はローズゴールドベゼル×ブラックダイヤル、グリーンダイヤル、スティーブ・マックイーン着用の『栄光のル・マン』でお馴染みのブルーダイヤル、3つのバリエーションで展開。初代モナコ Ref.1133を形づくる多くの要素を受け継ぎつつ、快適性や装着感を高めるためにケース形状を大幅にブラッシュアップ。「見た目はクラシック、中身は最先端」の大胆進化を遂げています。
青文字盤のCDW2181.FC8360は、2カウンター&左リューズ仕様、6時位置にデイト表示、青・白・赤で構成されたお馴染みのシグネチャーカラー、など初代モナコのデザインコードと共通点が多く、“普遍的なカッコ良さ”は往年のファンも納得の完成度でしょう。1998モナコ以降は緩やかなカーブを効かせた、やや縦長の長方形に近いフォルムが目立ちましたが、本作は直線美を活かすようにシャープな輪郭が強調されています。
長方形寄りから正方形寄りのスクウェアケースへ変化したことで、ハンサムな顔つきというよりは愛嬌のあるシルエットが味わい深さを増しています。モナコ特有の色使い、ダイヤルレイアウトは一種独特な“レトロ顔”を醸し出しており、眺めているとノスタルジックな気持ちになりますね。
時計の表側はケースのエッジを際立たせつつも、手首に当たる裏側は腕馴染みがよくなるように、緩やかにカーブさせているのも本作のニクいところです。
エバーグラフ含む、モナコ注目作と見比べていきましょう。
まずは初代モナコRef. 1133Bから。公式サイトによると、モナコの最初のロットは12時位置に“CHRONOMATIC”文字表記、6時位置に“MONACO”のプリントだったそうですが、アメリカ市場での「クロノマチック(※自動巻きクロノグラフ)」の認知度が低かった影響で、速やかに“AUTOMATIC CHRONOGRAPH”表記へ切り替えたとのこと。針に塗布されたグリーンの夜光塗料も、今となっては斬新なデザインですね。
モナコのデザインといえば、スティーブ・マックイーンが着用した青・白・赤で構成された「スタンダードプロダクションバージョン」が有名ですが、原点回帰を本作で謳うなら「クロノマチックバージョン」の系譜をレギュラーとして現代に蘇らせてもよかったのではないか、と思います。リューズの形やプッシュボタンが似ていないのは少し残念な気持ちです。
クロノグラフの歴史を変えるかもしれない意欲作「タグ・ホイヤー モナコ エバーグラフ」CEW5180.FT8122(黒)&CEW5181.FT8123(青)。従来のレバーやバネの代わりに「双安定部品」を用いることで、歯切れのよい操作性を実現しています。1万回押しても変わらない押し心地、ムーブメントを裏表反転配置させる発想力、カムやコラムホイールを持たないクロノグラフ機構の独創性など、タグ・ホイヤーの先進技術が凝縮された“夢のクロノグラフ”です。
モナココレクションは数年にわたりW&WGの常連で、55周年アニバーサリーの2024年にはCBW2181.FC8322(赤×黒)&CBW2182.FC8339(青×銀)、翌年にはCBW2190.FC8356(白×赤)、のモナコ・スプリットセコンド・クロノグラフを手掛けています。
アバンギャルド、はブランドの根幹を支えるアイデンティティーですし、革新技術で時計史を賑わせるのは戦略としては有益でしょう。
2020年初頭に発売された既存のレギュラーCBL2111.FC6453。自社製ムーブメントTH20-00搭載のステンレススティールケースで、右リューズ仕様です。
“エバーグラフ”やラトラパンテ機構のスプリットセコンド・クロノグラフが「技術革新」の方向性に全振りしている分、本作はオリジナルモナコを意識した「古典回帰」をウリにしているのですが、コレクション全体がRef. 1133Bに似たデザインコード、同じようなカラーリングが続いており、目新しさに欠けるのは課題です。ワンパターンになりがちな手法はそろそろ見直した方がよいかもしれません。
また、現行コレクション27モデルのうち25モデルがストラップに偏っているので、メタルブレスレット(+1133Bに似たリューズ&プッシュボタン)で本作をリリースして欲しかったな、というのがいちファンとしての正直な感想です。
ライトブルー×オレンジのレーシングストライプが目を引くモナコ クロノグラフ ガルフ CAW218G.EB0393。ストラップには映画『栄光のル・マン』に登場したレーシングスーツ素材「ノーメックス®」を採用、限定数971本(※同映画の公開年が1971年)からもF1レースへの熱い思いが窺える限定モデルでした。
2025年はタグ・ホイヤーがモナコグランプリのタイトルパートナーに就任した記念すべき年で、モナコ クロノグラフ ストップウォッチ CAW218F.FC6356、モナコ スプリットセコンド クロノグラフ CBW2185.FC8350を同時リリースするなど、気合いの入ったデザインが目立ちました。12時位置のロゴが“HEUER”表記なのもコレクター心をくすぐります。
2021年発売当時、ネット販売開始後数時間で完売してしまったCBL2116.FC6497。ロレックスのグリーンサブの影響もあり、グリーン文字盤ブームが巻き起こっていた頃の作品です。
レギュラーで似たデザインのモナコが買えるようになったのは素直に嬉しいですね。
2026年新作モナコクロノグラフのサイズは横 39 mm ×厚さ 13.9 mm、チタンケースを採用。右リューズのCBL2111.FC6453は横 39 mm ×厚さ 15.21 mm、SS製。ムーブメントが新しくなり少し薄くなったのは、目を見張る企業努力ですね。
色使いやフォルムが独特なモナコは、ビジネスシーンには少し不向きな“くせ強”な見た目が長所でもあり短所でもあるのですが、時計業界全体のトレンドがサイズダウンをもてはやす風潮ですし、(オリジナルモナコと同じ)横 38mmサイズだと尚良かったかな、という気もします。あるいは、インパクトで勝負してきた作品ですし、35mm以下の“スモールモナコ”がレギュラー入りしていたら、また違った結果になっていたかなと思います。
コレクション全体のバランスを考えると、サイズは前回までと同じ39mmで大きな問題がないように見受けられますが、初代モナコの系譜である金属ブレスレットではなく、お馴染みのパンチング加工レザーストラップを今回も採用した点が少し気になりました。
同時リリースの“エバーグラフ”もラバーストラップでしたし、「“エバーグラフ”はラバーストラップor革バンドで先進性、レギュラーモナコは金属ブレスレットで伝統」を打ち出して、コレクション全体のテコ入れをして欲しかった、とややマイナス評価をつけさせて頂きます。グランドセイコーの主力モデルのように、あえてレギュラーにサイズ調整付きブレスレットが実装されていたら高評価だったのですが・・・
モナコの定番スタイルといえば、メタリックブルー文字盤+パンチングレザーストラップの組み合わせが根強い人気を誇りますが、何故ストラップが定番なのか、歴史に答えがありました。
タグ・ホイヤーの公式情報によると、スティーブ・マックイーンが『栄光のル・マン』撮影中に、ホイヤー モナコRef. 1133Bをメタルバンドからレザーストラップへ変更したとのこと。その影響を色濃く受け継ぐ形で、「青文字盤+ストラップ」の組み合わせが定番スタイルとして定着したのではないか、と考えられます。
マックイーン本人はメタルブレスレットの時計が好きで、金属ブレス仕様のモナコを数日着用していたそうですが、①撮影現場に参加していたプロレーサーのシフェールやベルは、レース中でも熱くなりにくいレザーストラップを好んだ ②事故が発生しても、ストラップ仕様なら被害を減らしやすい、などの理由が決め手となり、メタルブレスレットを断念したそうです。
初代モナコ自体がブレスレットorストラップ、どちらも混在していますし、本作は初代モナコの復刻モデルでもないので断定口調は避けますが……マックイーンも愛用した「左リューズ+メタリックブルー+メタルブレスレット」の定番レギュラーを、そろそろリーズナブルな価格のうちにリリースして欲しいものですよね。
本作のムーブメントは、定番となりつつある自動巻キャリバーTH20-00を再設計した「キャリバーTH20-11」を搭載。社内開発チームが数年かけて改良とテストを重ねてきた自信作で、約80時間のパワーリザーブ&5年間のメーカー保証を標準装備しています。
オリジナルモナコに通じる左リューズ仕様ですし、完成度高めのムーブメントですね。
モナココレクションのボリュームゾーンはSS製レギュラーが110~120万円前後、チタン製モデルが130~140万円程度。現行コレクションと比較すると平均的な価格に落ち着いているのは良い点です。
コレクション全体を見渡すと、ブレスレット仕様のレギュラーモデルを増やす、青・黒系統以外の新作を充実させる、39mmケース以外の小型サイズをリリースするなど、革新の追求よりも抜本的な改革が急務で、比較的若い世代に「古臭い」「ダサい」と捉えらがちなデザインセンスを如何に現代的にアレンジしていくかが課題です。
今の若い子たちにスティーブ・マックイーンのカッコ良さを訴えても、今ひとつピンと来ない可能性も高く、イメージ戦略も見直す時期に差し掛かっているようにも思えます。一目見て「モナコだ!」と理解できるデザインコードは、伝統でもあり個性そのものですから、ダイヤルの味付けやレパートリーを見直すことで、スタイリッシュな装いへ生まれ変わった“現代風モナコ”を見てみたいものです。
2020年発売のモナコ キャリバー ホイヤー02 クロノグラフの参考定価が775,500円(税込)、倍に迫る価格設定に関しては言葉が詰まりますね。消費者目線に立つと、「手の届くラグジュアリー」を全面に出していたあの頃の価格設定が懐かしいものです。
近年のタグ・ホイヤーは、同コレクションの価格帯をミドルレンジというよりハイエンドの高級クロノグラフの領域へどんどん押し上げており、ブランドイメージを「手の届くスポーツウォッチ」から「ハイエンドラグジュアリー」へ塗り替えようと試みているように見えるのですが、その移行がファン達に受け入れられるか、かなりの疑問が残ります。
同ブランドはここ数年、トップの交代劇が相次いでおり、2024年1月にフレデリック・アルノー氏がCEOを退任、後任のジュリアン・トルナーレ氏は約6カ月間で同職を離れ2024年9月にウブロCEOへ就任。事態を収拾させるべく、アントワーヌ・パン氏がタグ・ホイヤーのCEOに就任するも、LVMHウォッチ・ウィーク2026開催直前のタイミングでまさかの退任……5月1日付で同社のアメリカ統括責任者だったベアトリス・ゴアスグラス氏を新CEOへ指名、不安定な局面をどう乗り越えていくか今後が注目されています。
看板モデルであるモナコのルーツを徹底的に洗い直し、価格設定含めブランドの「原点」へ立ち返って欲しいものですね。
「緑色のモデルが好き」
「6500ユーロなら十分だけど、9300ユーロは高すぎる」
「プッシュボタンとリューズが合っていない」
値段に対する否定的な意見が目立ちました。デザインや機能性への改善が良かった分、もう一声あれば尚良しですからね。
伝説的なアイコン Ref. 1133を現代的に再解釈し、往年のファンから新しい世代へ訴求する2026モナコ クロノグラフ。アバンギャルドな見た目はそのままに、実用性をチューンナップしていました。
慌ただしいCEO交代劇でブランドの再活性化を推し進めるタグ・ホイヤーですが、こんな状況だからこそ、“一瞬一瞬の選択”を吟味して、常識や限界を押し広げていってもらいたいものです。
| モデル | モナコ クロノグラフ |
|---|---|
| 型番(Ref.) | CDW2181.FC8360 | CDW2180.FC8360 | CDW2150.FC8360 |
| ケースサイズ | 横 39 mm (厚み: 13.9 mm) |
| ケース素材 | チタン | チタン | チタン & 18K 5N ローズゴールド |
| ダイヤルカラー | ブルー | グリーン | ブラックオパーリン |
| 防水性能 | 100 m |
| ムーブメント | 自動巻 キャリバーTH20-11 |
| 振動数 | 28800 (4Hz) |
| パワーリザーブ | 約80時間 |
| バンド / バックル | パンチング加工レザーストラップ / チタン製フォールディングクラスプ |
| 希望小売価格(税込) | 1,347,500円 | 1,347,500円 | 1,886,500円 |
※販売開始時期・価格は予告なく変更される場合があります。
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