更新日:2023年05月10日
腕時計を長く使うためには、日頃のお手入れはもちろん、定期的にオーバーホールを依頼する必要があります。オーバーホールとは、精巧に組み立てられた腕時計を完全に分解し、修理・点検・清掃を行うことです。
例えば、時計内部に塗られている潤滑油は時間とともに劣化し、部品の摩耗を引き起こすため、オーバーホールの際に注油を行います。また、時計の気密性を保持する防水パッキンも時期や使用状況を見て交換します。このように、自宅ではなかなか手の届かない内部点検を行うことで、大切な時計を長持ちさせることができるのです。
引用: www.audemarspiguet.com
今回は雲上ブランド「オーデマ・ピゲ(Audemars Piguet)」のオーバーホールについて、大まかな料金や見積もり方法、修理期間、依頼する頻度など、あらゆる情報をまとめました。腕時計のお手入れ・保管方法についても紹介していますので、参考にしてください。
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オーバーホールの依頼や実態を具体的にイメージしていただくため、オーデマ・ピゲの正規オーバーホールの実例を紹介します。
修理に出したのは、とある「ロイヤルオークオフショア」の限定モデルです。銀座の「オーデマ・ピゲ ジャパン カスタマーサービス」に持ち込み、相談・依頼しました。
持ち込み時点での時計は完全に不動で、一般的な業者では修理不可能な状態でした。ちなみにケースには傷がありましたが、カーボン素材を使用しているため研磨できず、ケースを丸ごと交換する場合は約40万円(!)の費用がかかる、と言われて諦めましたw 定価を思えば高いとも言えないのでしょうが、許容範囲内の傷でしたので・・・。
今回は完全分解洗浄を行うオーバーホールではなく、部分的サービス(パーシャルサービス)を利用しました。部分的サービスではケースの分解・洗浄やムーブメントの点検をした上で、必要に応じて部品交換などを行っています。
ここではムーブメントを交換しましたが、元々搭載されていたムーブメントはローターがゴールド製だったため、新しいムーブメントのSSローターもゴールドに替えてもらうことができました。
納品されたときの修理代金明細をご覧ください。
記事執筆時点より2年ほど前の2021年の修理代金ですが、パーシャルサービスの基本料・ムーブメント交換の技術料で\44,000、ムーブメント代として¥114,000、合計¥173,800(税込)となりました。ご参考までに。
納期は「2か月ほどかかるかもしれない」と言われていましたが、実際には1か月ほどで仕上がってきました。修理後の時計は、丈夫で持ち運びに便利な、革製の時計用トラベルボックスに収納されています。
また、納品時に「今なら革ベルトが在庫処分で少しお安くできますが」と案内されました。時期によってはそのような特典もあるかもしれませんね。
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正規販売店やサービスセンターでは、機械式時計は3~5年ごと、クォーツ時計は7~8年ごとのオーバーホールを推奨しています。この期間を待たずに異常が見られた場合は、すぐにサービスセンターに相談し、オーバーホールが必要かどうか判断を仰ぐとよいでしょう。
そのほか、計時機能や防水性能は毎年チェックすることをおすすめします。水泳やダイビングなどで水に接することが多い方は、精度や機能が狂い始めた段階で検査を依頼しましょう。
オーデマ・ピゲのブティック、または正規小売店で購入した時計には、国際保証が付いています。保証期間は購入日から2年間ですが、はじめの1年以内にインターネット上で手続きを行えば、3年間延長することができます(計5年間)。革製ストラップの保証期間は、購入日から3か月間です。
保証期間内にオーデマ・ピゲのブティック、正規小売店、公認サービスセンターに時計を持ち込めば(または送付すれば)、製造上の欠陥による不良部品を無料で修理することが可能です。
その際、購入時に受け取った国際保証書(International Warranty Card)が必要となりますので、大切に保管しておいてください。時計の運搬にかかる費用(送料、保険、梱包代など)は自己負担です。
購入後の取り扱いや事故によって生じた故障・破損などは保証対象外ですので、注意しましょう。また、定期クリーニングやメンテナンス、正常な損耗・老朽化なども保証の対象から外れます。
オーデマ・ピゲが提供する2つの公式書類をご紹介します。
当社が製造するウォッチは全て、そのケース番号とムーブメント番号を記録し保管しています。この資料はその番号が当社で記録されていることを示すものですが、ウォッチの真贋性を保証するものではありません。
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真性証明書はウォッチ自体とその素材、部品が真性であることを証明するものです。この証書にはウォッチの識別可能な全ての特徴と現在の写真が含まれます。この証書を発行するには、ル・ブラッシュの当社のエキスパートがウォッチを詳細に審査することが必要となります。 いくつかの国では、ウォッチのピックアップサービスのご利用が可能です。
オーデマ・ピゲには国際保証とは別に、「カバレージサービス(AP COVERAGE SERVICE)」が存在します。これは、盗難や、部分的または全体の機能の損傷、思いがけぬ外部要因によって生じた損傷を対象とする保証です。このような問題が発生した場合、無料の修理、代替または払い戻しを受けられる可能性があります。保証期間は購入日から2年間です。
カバレージサービスを利用するには、まずウェブサイトでAPアカウントを作成し、お手持ちの時計を登録する必要があります。その後、各時計の詳細ページで「AP Coverage Serviceを有効にする」をクリックし、申込書や必要書類をアップロードしてください。オーデマ・ピゲの審査を通過した場合のみ、本サービスが適用されます。
通常の使用による消耗や、第三者によって改変された時計の損傷、意図的な損傷などは対象外となりますので、しっかりと規定を確認しておきましょう。
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オーデマ・ピゲの正規アフターサービスには、コンプリートメンテナンスサービス、部分的サービス・防水性サービス、再仕上(研磨およびサテン仕上げ)、ストラップ交換などがあります。
コンプリートメンテナンスサービスは、分解洗浄すなわちオーバーホールを行うサービスです。まず時計のケースを開け、ムーブメントをプレ洗浄および完全分解します。次に、時計がこれからも正常に動作するよう、摩耗や破損の恐れがある部品は予防交換し、超音波等を利用して全ての部品をきれいに洗浄します。
ムーブメントを組み立てながら部品の摩耗を防ぐ注油を行い、日差の調整、外装の研磨、ケーシングを行った後、最終品質検査をクリアしたら終了です。修理後は2年間の保証が付きます。
コンプリートメンテナンスサービスと同時に、ケースおよびブレスレットの再仕上(研磨サービス)を依頼することも可能です。再仕上では摩耗が見られる部品を交換し、ポリッシュ、サテン、サンドブラストなど、その時計のデザインを尊重して丁寧に研磨していきます。
コンプリートメンテナンスサービスを必要としない場合、部分的サービスや防水性サービスを受けることもできます。これはケースの分解および洗浄、ムーブメントの検査を行った上で、損傷した部品を交換して時計の機能性や防水性を確保するサービスです。クォーツ時計は電池交換も行います。
特殊な技術を要するストラップ交換は、無料の追加サービスとして利用することが可能です。
オーデマ・ピゲの正規サービス料金は、製造から25年以内の機械式時計と15年以内のクォーツ時計に適用されるものです。それよりも古い時計のサービス料金については、正規店やサービスセンターにお問い合わせください。
また、以下の料金表はジュネーブのブティック(Place de la Fusterie)でお客様に案内されている価格です(スイス・フラン、税抜表示)。円単位で計算する場合、為替レートによって料金が変動するため、あくまで参考にしてください。
なお、2023年のスイス・フラン/円の為替レートは1スイス・フランあたり140~150円前後で推移しており、4月頃から上昇傾向にあります。
時計のケースを開け、ムーブメントの前洗浄を行い、ムーブメントの全ての部品を分解し、摩耗、破損の恐れがある部品は予防交換し、全ての部品を洗浄し、ムーブメントを組み立て、注油やタイミングの調整、ケーシング、最終チェックを行います。
※スマホでご覧になる場合は横にスクロール可能です。
モデル種別 | ムーブメント種別 | 料金(税抜・スイスフラン) |
---|---|---|
ロイヤルオークコレクション | クォーツ | 600 |
自動巻き | 950 | |
エクストラシン(極薄) | 1300 | |
クロノグラフ | 1700 | |
パーペチュアルカレンダー(クロノ、パーペチュアルカレンダー、イクエージョン・オブ・タイム) | 2200 | |
CODE 11.59 バイ オーデマ ピゲ | 自動巻き | 950 |
クロノグラフ | 1700 | |
パーペチュアルカレンダー | 2200 | |
その他 | クォーツ | 500 |
手巻き | 800 | |
自動巻き | 850 | |
エクストラシン(極薄) | 1200 | |
クロノグラフ | 1600 | |
パーペチュアルカレンダー (クロノ、パーペチュアルカレンダー、イクエージョン・オブ・タイム) | 2100 |
※スマホでご覧になる場合は横にスクロール可能です。
モデル種別 | 仕上げ箇所 | 料金(税抜・スイスフラン) |
---|---|---|
ロイヤルオークコレクション | ウォッチケース、ブレスレットとバックル | 450 |
ウォッチケースとバックル | 300 | |
バックルのみ | 150 | |
CODE 11.59 バイ オーデマ ピゲ | ウォッチケースとバックル | 600 |
バックルのみ | 150 | |
その他 | ウォッチケース、ブレスレットとバックル | 450 |
ウォッチケースとバックル | 300 | |
バックルのみ | 150 |
※スマホでご覧になる場合は横にスクロール可能です。
モデル種別 | 機構 | 料金(税抜・スイスフラン) |
---|---|---|
ロイヤルオークコレクション | スタンダード | 450 |
コンプリケーション | 900 | |
CODE 11.59 バイ オーデマ ピゲ | スタンダード | 450 |
コンプリケーション | 900 | |
その他 | スタンダード | 300 |
コンプリケーション | 700 |
引用: www.audemarspiguet.com
オーデマ・ピゲの正規修理を依頼するためには、最寄りのオーデマ・ピゲ ブティックか修理センター、正規販売店に持ち込みましょう。
時計の状態を見て必要なサービスを判断し、その内容に応じて、適切な修理センターか認可サービスセンターに時計が送られます。
近くに依頼できる場所がないという方は、ピックアップサービスを利用することも可能です。Eメールまたは電話で申し込みを行い、送られてくる梱包資材を使用して時計を梱包・発送してください。
その後10日以内に見積もりが届き、承認後に修理が行われます。修理後の時計はトラベルボックスに収納され、代金引換にて返送されます。
納期の目安はキャリバーや時計の状況、修理作業の内容にもよりますが、APコアコレクションのモデルをコンプリートメンテナンスに出す場合、5週間が目安とされています。保証期間のウォッチは優先的に対応されるため、納期は3週間が目安です。
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正規修理店ではなく一般的な時計修理店でオーバーホールを行うこともできます。オーデマ・ピゲのような有名ブランドであれば、対応可能な業者も多いでしょう。
一般的な時計修理店でのオーバーホール料金は、正規修理に比べて安いことが多いです。以下の表で大手修理店の料金を紹介しておりますので、ぜひ参考にしてください。
種類 | A社 | B社 | C社 | D社 | E社 | ||
---|---|---|---|---|---|---|---|
クラシック | クォーツ式 | 3針 | \31,000~ | \54,780~ | \15,000~ | \44,000~ | \36,300~ |
クロノグラフ | - | \20,000~ | \44,000~ | ||||
機械式 | 手巻き | \40,000~ | \76,780~ | \20,000~ | \52,800~ | \41,800~ | |
自動巻 | \42,000~ | \25,000~ | \66,000~ | ||||
クロノグラフ | \68,000~ | \87,780~ | \30,000~ | - | お見積もり | ||
ロイヤルオーク | クォーツ式 | 3針 | 電池交換のみ \5,000 | \54,780~ | \15,000~ | \49,500~ | \36,300~ |
クロノグラフ | \20,000~ | \44,000~ | |||||
機械式 | 手巻き | \40,000~ | \76,780~ | \20,000~ | - | \41,800~ | |
自動巻 | \42,000~ | \25,000~ | \71,500~ | ||||
クロノグラフ | \68,000~ | \87,780~ | \30,000~ | - | お見積もり |
オーデマ・ピゲの時計をオーバーホールに出す場合は、正規修理と時計修理店のどちらがおすすめなのでしょうか。ここでは双方のメリット・デメリットをまとめています。自分の条件を明確にして、よりメリットの大きい方を選ぶとよいでしょう。
予算に制限がない場合は、正規修理を選ぶのがおすすめです。オーデマ・ピゲのオーバーホールには正規の修理保証が付くほか、故障した部品を純正パーツに交換してもらうことができます。クオリティも申し分なく、信頼性は抜群です。
デメリットは柔軟性に欠けるという点と、納期が比較的長くなることが多い、という点です。料金も一般店より高めに設定されているため、少しでも価格を抑えたいという方には向かないでしょう。
できる限り安く修理したいという方は、一般的な時計修理店を選ぶのがおすすめです。正規よりも柔軟な対応が可能で、納期は正規よりも短めの傾向にあります。
デメリットは、正規の保証を受けられなくなる恐れがあるという点です。国際保証や「カバレージサービス」の規定にも、正規店や公認サービスセンター以外の第三者によって改変された時計の損傷については、保証対象外であると書かれています。
また、その修理店に純正部品の在庫がない場合は代替部品を使用されてしまい、売却時に評価が下がる恐れもあるのです。
正規サービスを利用しない場合は、業者選びも一苦労です。複雑な自社製ムーブメントを扱うブランドのモデルは、一般店では修理できない可能性もあります。また、きちんとした技術をもつ職人が在籍しているかどうか見極めることも大切です。
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お手持ちの時計を長く使用するためには、計時性能、機能、防水性、磁気帯びなど、定期的に状態を確認することが大切です。オーデマ・ピゲのブティックでは、できれば毎年、無料チェックを受けるよう推奨されています。
また、日頃の取り扱いやお手入れも重要なポイントです。オーバーホールやメンテナンスを行っていても、扱いが悪ければ時計の寿命を縮めることになりかねません。ここではオーデマ・ピゲ ウォッチのお手入れや保管方法、使用上の注意点を紹介します。
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腕時計は精密機械ですので、温度変化など、ちょっとした環境の変化にダメージを受けることもあります。例えば磁石や電気製品による磁場は、ムーブメントの性能に悪影響を及ぼす危険性があります。
磁気の強い物や場所には時計を近づけないよう気を付けてください。
また、時計が進むようであれば、磁場に晒された可能性があります。その場合はブティックやサービスセンターに持ち込んで脱磁(磁気抜き)を依頼しましょう。
時計内部に水が浸入すると、深刻な損傷をもたらすことがあります。防水時計であれば、身に着けたまま泳いでも問題ありませんが、技術仕様に記してある水深(メートル数)を守ってください。
また、時計を水に浸ける前に、リューズとプッシュピースがきちんとねじ込んであることを確認してください。ダイバーモデルを除き、リューズとプッシュピースを水中で作動させることは厳禁です。
手首の装着感も、使用上注意すべきポイントの一つです。ブレス・ストラップを手首にフィットさせることで巻き上げ機構が効率よく機能し、リンクの劣化を防ぐことができます。また、同じ手首に時計以外のアクセサリーを着けると、リンクを痛める危険性があるため避けましょう。
そのほか、午後や夕方に時計の時刻、日付、月、月齢の調整を行わないでください。
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機械式時計の場合は最低でも1ヶ月に一度、巻き上げを行う必要があります。手巻き式ではリューズに抵抗が感じられるところまで、自動巻きではリューズを30回以上回してください。
これにより、ムーブメントの部品に潤滑油が行き渡り、部品同士の摩擦による摩耗を減らすことができます。
時計とメタルブレスレットはこまめにぬるま湯(水道水)で洗うとよいでしょう。特に海で泳いだ後や、腐食しやすい素材(酸、香水、炭酸水など)に触れた際は、防水パッキンを損傷することがあるため、急いでよく洗い流してください。
洗った後は柔らかい布で拭き取りましょう。ただし、非防水の時計やレザーストラップには水がつかないように注意が必要です。
クォーツ時計の電池が切れたまま放置すると、液漏れなどのリスクがあります。長期間保管する際は電池を抜くように心がけましょう。
オーデマ・ピゲ ブティックやサービスセンター、正規小売店に時計を持ち込んで電池交換をする場合は、同時に防水性検査をすることをお勧めします。
保管する場所については、高温で直射日光の当たる場所、温度変化の激しい場所、磁気の影響を受けやすい場所などは避けるようにしましょう。
適切なお手入れや点検を行うことで、腕時計の寿命は格段に延びます。何年も同じ時計を身につけている方や、一生大切にしたいコレクションがある方は、定期的なオーバーホールを心がけましょう。
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