更新日:2026年10月02日
ロレックス パーペチュアル パデローネ Ref.53505、39mm、18ct エバーローズゴールド、キャリバー7190(自動巻き)、約66時間パワーリザーブ、50m(5気圧)防水、日本定価未発表
2026年9月15日、ロレックスがミラノで思いがけない新作を発表しました。名前は「パーペチュアル パデローネ(Perpetual Padellone)」です。
名の由来は、1949年に登場した伝説の複雑時計「Ref.8171」です。コレクターの間で「パデローネ(大きなフライパン)」と呼ばれてきたこのモデルを、ロレックスは愛称のまま正式なモデル名に迎えました。
搭載するのは、ランドドゥエラーの画期的なキャリバー7135から進化した新キャリバー7190。深夜0時に日付・曜日・月が瞬時に切り替わる年次カレンダーと、メテオライトの月が浮かぶムーンフェイズを備えています。
日本での価格は、現時点で未発表です。この記事では米ドル価格と円換算の目安も添えて、スペックと注目ポイントを整理します。
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Ref.8171は1949年に登場し、1953年頃まで生産された、日・曜日・月・ムーンフェイズを備える自動巻きのトリプルカレンダーです。ケース径38mmは当時としては大柄で、その平たく広いケースから、イタリアのコレクターが「大きなフライパン」を意味する「パデローネ」と呼び始めました。原型は防水のオイスターケースではなく、裏蓋も押し込み式でした。
新作は、コレクターの間でパデローネとして知られてきたRef.8171にちなんだモデルとして位置づけられています。
名前に含まれる「パーペチュアル」は、2023年の「パーペチュアル 1908」から始まったコレクション名です。この「パーペチュアル」は、1931年にロレックスが特許を取得した自動巻き機構「パーペチュアル・ローター」に由来する語で、「オイスター パーペチュアル」と語源を共有します。搭載するのは年次カレンダーで、調整は年1回、2月から3月に切り替わるときだけで済みます。
このニュースを最初に目にしたとき、筆者は「やはり『1908』にムーンフェイズが追加されたか」と”早とちり”しました。2017年のチェリーニ ムーンフェイズのように、既存のシンプルなドレスウォッチに月相表示が加わる——そんな展開を、少なからず期待していたからです。
しかし実際には、1908のバリエーションではなく、「パーペチュアル パデローネ」という独立したコレクションでした。デザインだけを見れば、無理もない誤解だと思います。39mmのケース径、ドームとフルーテッドを組み合わせたベゼル、3時と9時のアラビア数字、サファイアクリスタルのシースルーバックなど、1908と共通する意匠は非常に多く、同じ「Perpetualコレクション」のドレスラインと考えれば、似て見えるのは当然とも言えます。
実はこの「一瞬1908かと思った」という感覚は、筆者だけのものではなく、海外の時計専門メディアでも同様の第一印象が複数語られていました。1908という土台があったからこそ、この新作が唐突には見えなかった、という受け止め方も共通していました。
デザインの入り口は同じでも、中身は大きく異なります。この違いを、次の項で詳しく見ていきます。
1908に搭載されるCal.7140は、4Hz(28,800振動/時)、クロナジー エスケープメント、パワーリザーブ約66時間を備える、時・分・スモールセコンドのみのシンプルな自動巻きムーブメントです。2023年の1908発表と同時に新規開発されました。
一方、パデローネのCal.7190は、2025年にランドドゥエラーで登場したCal.7135をベースにしています。心臓部はシリコン製の新しい脱進機「ダイナパルス エスケープメント」で、従来のスイスレバー脱進機と比べて約30%効率が高いとされます。その効率のおかげで、5Hz(36,000振動/時)という高振動でも、パワーリザーブは1908と同じ約66時間を確保しています。シリコン製のヒゲゼンマイやセラミック製の天真などにより、強い磁場への耐性も備えます。ムーブメントには30件の特許出願がかかり、そのうち2件はこの時計専用です。
つまり、同じPerpetualコレクションでありながら、1908とパデローネは脱進機の設計思想からして別物です。クロナジーは2007年に発表されたロレックスの標準的な高効率脱進機で、ダイナパルスはそこからさらに一段進化した、ランドドゥエラー以降の最新世代の脱進機という位置づけになります。
Cal.7190には、新開発の年次カレンダー機構「ハプロス」が組み込まれています。追加のキャリアフィンガーとアニュアルレバーの2部品を日付機構に組み合わせるだけで成立する、簡潔な構造です。月の長さを識別するプログラムは、月表示ディスクの裏面に組み込まれています。日付・曜日・月は深夜0時に瞬時に切り替わり、カレンダー修正用のプッシャーはケース側面に設けられています。
1908のCal.7140には、そもそもカレンダー機構を組み込む余地がありません。この機能差こそが、1908とパデローネを分けた最大の要因です。
ここで気になるのが、「1908をベースに複雑機構を足したらパデローネになった」のか、それとも「パデローネという複雑時計を作る構想が先にあり、その結果として1908とは別系統にせざるを得なかった」のか、という順序です。
鶏が先か卵が先か、という話に近いと思います。この点は、ロレックスが公式に明かしていない以上、断定はできません。筆者の取材・調査が及んでいないだけで、どこかのメディアがロレックス関係者への取材を通じて答えを得ている可能性もあります。現時点で確認できた範囲では、という前提でお読みください。
1908は2023年に、シンプルな時刻表示のドレスウォッチとして先に登場しました。その3年後にパデローネが続いたという時系列だけを見れば、「1908の土台を発展させて複雑機構を加えた」という見方が自然に思えます。一方で、ダイナパルス エスケープメントとHaplos機構という中身を見ると、これはランドドゥエラーの技術を転用した、1908とは独立した新設計です。デザインの共通項だけを1908から借りて、ムーブメントはゼロから別物として作った、という見方もできます。
いずれにせよ、ロレックスはパデローネを1908のバリエーションに加えるのではなく、意図的に独立したモデルとして立ち上げました。この「あえて分けた」という判断自体が、この新作を読み解く上で重要なポイントだと筆者は考えています。
6時位置のムーンフェイズは、ブルーのエナメルディスクが29.53日で1周します。チェリーニ ムーンフェイズ ref.50535は満月にメテオライトが採用されていましたが、パドローネでは満月と新月がメテオライト製で、新月にはダークブルーのPVDコーティングが施されています。銀色の星々に加え、月には原型モデルを彷彿とさせる顔がパッド印刷されています。ヴィンテージ時計のような素朴な表情が、この時計ならではの魅力になっています。
新作のデザインは、8171そのものの復刻ではありません。ケース径39mm、フルーテッドとドームを組み合わせたベゼル、シースルーバックといった造りは、パーペチュアル 1908のものです。
1908と並べると、6時位置の小窓がスモールセコンドからムーンフェイズに置き換わった印象を受けます。ところが秒針は、8171や1908のようなスモールセコンドではなく、センターセコンドです。
センターセコンドには、5Hzの滑らかな運針がよく見えるという利点があります。それでも、これだけ1908に似たクラシックな顔立ちなら、スモールセコンドのほうが自然だったというのが筆者の率直な感想です。原型のヴィンテージ感も、より濃く出たはずです。
内部は、原型とは別次元の進化を遂げています。精度は日差−2/+2秒の「スーパーラティブ クロノメーター」認定、防水は50mです。
エバーローズゴールド仕様は「インテンスホワイト」、プラチナ仕様は「アイスブルー」の文字盤です。どちらも文字盤全体にグレイン仕上げを施し、外周の日付トラックは細かなサテン仕上げにしています。光の当たり方で表情が変わる点は、写真より実物でこそ魅力が伝わる部分です。
7つの小さな磨き仕上げのコマからなるセッティモブレスレットは、腕に沿ってしなやかに寄り添い、軽やかな着け心地です。コンシールドタイプのフォールディングクラウンクラスプと、特許出願中のケースへの取り付け機構が、ケースとの一体感を生み出しています。好みはそれぞれですが、予算が許すなら、まずセッティモ仕様を検討すべきだと筆者は考えています。
パーペチュアル 1908にはイエローゴールド、ホワイトゴールド、プラチナが揃いますが、パデローネの展開はエバーローズゴールドと950プラチナの2種類のみです。エバーローズゴールドは、パーペチュアル・コレクションでは初採用の素材です。今後の展開は未発表です。
| モデル名 | パーペチュアル パデローネ |
|---|---|
| 型番(Ref.) | 53505-0002(レザーストラップ)/ 53505-0003(セッティモブレスレット) |
| ケース素材 | 18ct エバーローズゴールド |
| ケースサイズ | 横 39mm × 縦 約45.1mm(ラグ・トゥ・ラグ)× 厚さ 12.2mm |
| 文字盤 | インテンスホワイト(グレイン仕上げ) |
| ムーブメント | Cal.7190(自社製) |
| 駆動方式 | 自動巻き(パーペチュアル・ローター) |
| 振動数 | 5Hz(36,000振動/時) |
| パワーリザーブ | 約66時間 |
| 機能 | 時・分・センターセコンド、瞬時切替の年次カレンダー(日付・曜日・月)、ムーンフェイズ |
| 防水性 | 50m(5気圧) |
| ストラップ/ブレスレット | 53505-0002:マットブラウンのアリゲーターレザー+Dualclasp / 53505-0003:セッティモブレスレット+隠しクラスプ(Crownclasp) |
| 参考価格(米ドル) | 53505-0002:$59,000(約931万円)/ 53505-0003:$72,800(約1,149万円) |
| 日本定価(税込) | 未発表 |
| モデル名 | パーペチュアル パデローネ |
|---|---|
| 型番(Ref.) | 53506-0002 |
| ケース素材 | 950 プラチナ |
| ケースサイズ | 横 39mm × 縦 約45.1mm(ラグ・トゥ・ラグ)× 厚さ 12.2mm |
| 文字盤 | アイスブルー(グレイン仕上げ) |
| ムーブメント | Cal.7190(自社製) |
| 駆動方式 | 自動巻き(パーペチュアル・ローター) |
| 振動数 | 5Hz(36,000振動/時) |
| パワーリザーブ | 約66時間 |
| 機能 | 時・分・センターセコンド、瞬時切替の年次カレンダー(日付・曜日・月)、ムーンフェイズ |
| 防水性 | 50m(5気圧) |
| ストラップ | マットブラックのアリゲーターレザー+Dualclasp |
| 参考価格(米ドル) | $66,200(約1,044万円) |
| 日本定価(税込) | 未発表 |
※円換算は2026年9月28日時点の為替レート(1ドル≒157.77円)による目安です。米ドル価格は報道ベースで、税の扱いや実際の販売価格は異なる場合があります。
※ケース厚とラグ・トゥ・ラグは、ロレックス公式のプレスリリースに記載がなく、発表時の取材情報に基づく数値です。
| 項目 | パーペチュアル1908 | パーペチュアル パデローネ |
|---|---|---|
| 発表年 | 2023年 | 2026年 |
| ケース径×厚さ | 39mm×9.5mm | 39mm×12.2mm |
| 素材展開 | イエローゴールド/ホワイトゴールド/プラチナ | エバーローズゴールド/プラチナ |
| ムーブメント | Cal.7140 | Cal.7190(ランドドゥエラー搭載Cal.7135がベース) |
| 振動数 | 4Hz(28,800振動/時) | 5Hz(36,000振動/時) |
| 脱進機 | クロナジー エスケープメント | ダイナパルス エスケープメント |
| パワーリザーブ | 約66時間 | 約66時間 |
| 機能 | 時・分・スモールセコンド | 時・分・センターセコンド・年次カレンダー・ムーンフェイズ |
| 防水性 | 50m | 50m |
| 参考価格(現行) | ¥4,287,800〜¥6,076,400 | 約931万円〜($59,000〜、円換算の目安) |
ロレックスは、一つの世代の中でモデルの性格を頻繁に転換するブランドではない、というのが筆者の認識です。1908はCal.7140をベースとした「シンプルな時刻表示の入門ドレスウォッチ」、パデローネはCal.7190をベースとした「複雑時計」として、それぞれ独立したアイデンティティを保ったまま、素材やケースサイズのバリエーションを少しずつ広げていくのではないかと予想しています。
一方で、「パデローネがミニッツリピーターやトゥールビヨンといった、いわゆる三大複雑機構(トゥールビヨン・ミニッツリピーター・永久カレンダー)の領域にまで踏み込むのでは」という発想も、一瞬頭をよぎりました。しかし、これは現実的ではないというのが筆者の結論です。ロレックスはこれまで一貫して、三大複雑機構のようなデリケートな機構には手を出さず、量産効率と堅牢性、修理のしやすさを最優先する設計思想を貫いてきました。パデローネもまた「実用時計の頂点」というロレックスのイメージの延長線上にある複雑時計であり、そこからさらに一段上の「グランド・コンプリケーション」を志向する動きには、同社の生産哲学そのものと相容れない部分が大きいと見ています。
今後の展開としてより可能性が高いのは、1908側にプラチナ以外の新素材やサイズバリエーションが加わること、あるいはパデローネ側に新しい文字盤カラーやブレスレットの選択肢が加わる、といった比較的穏やかな広がり方ではないかと筆者は考えています。
この記事を読んで「売ろうかな」と思ったら
パデローネの価格を測るには、同じ「年次カレンダー+ムーンフェイズ」で、現行の新品として手に入る競合が適切です。今回は、年次カレンダーという複雑機構を生んだ、知名度の高いパテック フィリップ「5396R-016」を比較対象に選びました。
パテック フィリップ Ref. 5396R-016
| 項目 | パデローネ Ref.53505(エバーローズ) | パデローネ Ref.53506(プラチナ) | パテック フィリップ 5396R-016 |
|---|---|---|---|
| ケース素材 | 18ct エバーローズゴールド | 950 プラチナ | 18Kローズゴールド |
| ケース径 × 厚さ | 39mm × 12.2mm | 39mm × 12.2mm | 38.5mm × 約11.2mm |
| 防水性 | 50m | 50m | 30m |
| 振動数 | 5Hz | 5Hz | 4Hz |
| パワーリザーブ | 約66時間 | 約66時間 | 約35〜45時間 |
| ムーンフェイズ | あり | あり | あり |
| 参考価格 | $59,000(約931万円、レザー)/ $72,800(約1,149万円、セッティモ) | $66,200 (約1,044万円) | 1,099万円(税込・日本正規価格) |
※パテック フィリップの価格は日本の正規販売店価格(税込)です。パデローネは米ドル参考価格からの円換算のため、性質の異なる価格が混在している点にご留意ください。
2026年のパテック フィリップ新作全貌を解説。誕生50周年を迎えたノーチラスの限定モデルや、キュビタス初の永久カレンダー・スケルトンなど、世界が注目するコンプリケーションやカラトラバの最新情報を網羅。
一般論として、約930万円からという価格が高額であることは間違いありません。それでも、年次カレンダーに予算を割ける層に絞れば、決して割高ではないというのが筆者の見方です。理由は2つあります。
1. 上記のとおり、パテックと同格の価格帯にありながら、最新の技術と50m防水、セッティモブレスレットという選択肢を備えています。
2. 原型8171のオークション落札価格が高いことです。2025年11月〜2026年7月の主な落札は約5.8万ドルから63.5万ドルまで幅があり、多くは約9万〜11万ドル台でした(状態により大きく変動します)。それに対し、5年間の国際保証が付く現行モデルの定価は約5.9万ドルから、パテック フィリップの同格モデル5396R-016の日本正規価格(1,099万円)と比べても、パデローネのほうが手が届きやすい水準です。
パーペチュアル パデローネは、ヴィンテージの名作を、ダイナパルス エスケープメント、5Hz、瞬時切替の年次カレンダーという最新技術で描き直した一本です。メテオライトの月、グレイン仕上げの文字盤、そしてセッティモブレスレットと、見どころは多くあります。
一見すると1908の延長線上にあるようでいて、ムーブメントの設計思想はまったく別物です。ロレックスがこの2系統をあえて分けた背景には、1908を「入門ドレスウォッチ」、パデローネを「複雑時計」として、それぞれ独立したアイデンティティで育てていく意図があるのではないか、というのが筆者の見立てです。
スモールセコンドとリューズ修正が実現していれば完璧だったと思いつつ、それでも現行のロレックスで最も心惹かれる新作の一つであることは間違いありません。日本での価格と発売時期は、正規販売店やロレックス公式サイトの発表を待ちましょう。
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