更新日:2023年01月11日

ロレックス新工場を建設予定!第5拠点の誕生で時計は増産されるのか?

さて相変わらず入手困難を極めるロレックスですが、昨年11月下旬にスイスで「ロレックス、ビュルに新しい生産拠点を計画中」というニュースが流れたことをご存知でしょうか?ロレックスは既にスイス国内に本社を含む4カ所に工場を構えていますが、巷では第5工場の誕生で時計の生産量が増えるのでは?と俄かに期待が高まっています。

ロレックス新工場を建設予定!第5拠点の誕生で時計は増産されるのか?

ロレックス新工場ができれば、生産本数が増えて正規店の在庫が増えることが期待されるわけですが、果たしてそう思惑通りに事が運ぶのでしょうか?!
本ブログではロレックスの新工場設立に関するニュースの詳細のほか、現在スイスに4カ所あるロレックスの生産拠点の詳細、今後増産の可能性についてもお伝えして参ります。

まずはロレックスの新しい工房設立に関するスイス国内での報道内容をまとめてみましょう。

スイスの公共テレビ局RTSが最初に報じた内容によると、「ロレックスは10億スイスフラン(約10億ドル)を投じて、スイス・フリブール州ビュール(Bulle)に新しい生産拠点を建設し、2029年に操業開始を予定。2,000人の雇用が創出される」と報じられました。
※引用元の記事はこちら(フランス語)→Rolex souhaite créer un nouveau site de production à Bulle avec 2000 emplois

ロレックスは、RTSを含むいずれのメディアからのコメントや確認の要請に応じていませんが、RTSの記事によると、 ロレックスが建設を希望している土地の売却にはビュル議会の承認が必要で、取引はまだ確定していないものの、フリブール州経済局は取引の調印は12月に予定されていると述べたそう。
建設予定地はモントルーから北へ約14マイル、レマン湖畔に位置する高速道路A12沿いのビュル工業地帯にある土地2区画で、広さは約100万平方フィート(10万平方メートル)、なんとサッカー場10面分にも相当すると言います。
この場所が選ばれた理由として、 ベルンとジュネーブ湖の間というビュルの中心部に位置し、多くの有能な労働者を確保できる可能性があることに魅力を感じたのではないか、と伝えられています。

フリブール州議会議長のOliver Curty氏はこの件に関して次のようにコメントしています。

「名門ロレックス社との稀に見る大規模なプロジェクトがブルで進行中である。その結果、大規模な投資と多くの雇用が生まれるでしょう。」
「このプロジェクトは順調に進んでおり、フリブール州当局はこのプロジェクトの成功のためにあらゆる努力をするつもりです」

2000人規模の雇用の創出、地域経済の活性化という意味で、議会側の期待も大きいようですね。

そして2022年12月12日、ビュル議会は「反対5 VS 賛成43」と賛成多数でロレックスへの土地の売却を可決しました。
※引用元の記事はこちら(フランス語)→Le législatif de Bulle vote la vente de terrains à Rolex pour 31,4 millions de francs

記事によると、約 104,000 平方メートルという土地を得るために、ロレックスは議会が設定した3140万フラン(約44億円)という金額を支払う必要がありますが、ロレックス新工場建設はほぼ確定した、と言えるでしょう。
10万平方メートル、と言われましてもあまりピンと来ませんが、どうやら東京ドーム2.2個分ぐらいみたいです。大きいですね!

ジュネーブに本社を置くロレックスは生産量を公表していませんが、モルガン・スタンレーによると、現在年間約100万個の時計を生産しており、2021年の売上高は80億ドル近くになると推定されています。

★関連記事★

【データで見る時計業界】2021年スイス時計ブランドの売上高ランキングトップ20(モルガン・スタンレー発表)

「モルガン・スタンレー」とスイスの時計産業専門のコンサルティング会社「LuxeConsult」が共同で今年3月初旬に発表した、最新の「スイス時計業界の調査レポート」と「推定売上高ランキング」をご紹介します。

年間約100万個の時計を生産しても需要には到底供給が追い付かないとは、ロレックスの人気は本当に凄まじいものがありますよね。

海外の一部メディアやフォーラムでは「新工場設立でロレックスの時計は30%増産される」という噂がまことしやかに流れています。一体だれが言い始めたのか、ソースは特定に至りませんでした。

ロレックスはすでにスイスに4カ所の製造拠点を持ち、ジュネーブ近郊にケース、文字盤、検査、組立工場、ビエンヌにムーブメント生産拠点があります。
この新工場がどのような機能を持つのか、またロレックスの生産能力をどのように変化させるのか?実はロレックスから公式にはまだ何も語られていません。新工場が設立されれば時計の生産量が増えるのでしょうか?
まずは現在のロレックスの生産体制について整理しておきましょう。

ロレックスが本社を構えるレ・アカシア(Les Acacias)では、ロレックスグループ全体のマネジメント、マーケティング、セールス部門などが集約されています。さらにロレックスの時計のデザイン、設計、研究開発部門も設置されており、他の拠点で製造され、運ばれてきた部品の最終組み立てと、最終的な品質管理が行われています。各国のアフターサビスを統括する「ロレックス ワールドサービス」もこちらにあります。

ロレックスの製造拠点 レ・アカシア

レ・アカシアの敷地面積は約16万平方メートルあり、ロレックスのコーポレートカラーであるグリーンのファザードが有名な13階建ての本社メイン棟と、製造部門が入る黒いガラス張りの2つの棟で構成されています。

ロレックス 品質テスト

レ・アカシアのラボでは組立てられた時計が1つ1つ丁寧に検査されます。そう、無作為抽出ではなく、本当に1本1本、すべての時計が検査されているというから驚きです!ロレックスの時計の品質、特に「壊れにくさ」については折り紙付きですが、それを支えているのがこの徹底的な性能検査体制でしょう。

レ・アカシア 本社、最終組立と品質管理

2015年、ロレックスは自社製品の品質を定めるものとして、〝ロレックス高精度クロノメーター(Superlative Chronometer)〞という独自の社内認定基準を導入しています。ひとつの時計が社内の一連の性能検査をすべて終えるのに要する時間は33時間にも及ぶのだとか。

ロレックス 性能テスト

例えばオイスターケースのテストでは、時計を実生活で想定される水中、あるいは水中をシミュレーションするスチール製の巨大な高圧タンクに入れて、表示された防水深度にさらに10%のマージンを追加して検査します。ダイバーズウォッチはサブマリーナでもお馴染みのコメックスが設計した特別な機械の中で、さらに25%の追加マージンをかけて防水テストが行われています。

防水テスト

防水性テストやパワーリザーブ、自動巻きモジュールの検査のほか、日差-2~+2秒と、COSCの2倍の精度が求められる厳しい精度テストが実施されます。まず写真が撮影され、24時間後に再度撮影し、時計がまったく同じ時間を示していない場合は、追加の調整が行われます。

Superlative Chronometer

そうした長い検査を経て、テストの最終段階を通過した時計だけが、最終的にブレスレットを装着し、”ロレックス高精度クロノメーター”としてグリーンのタグをつけられ、ロレックス独自の輸送用コンテナでようやく市場に出荷されるのです。

中央で繋がった6つの棟からなる、ロレックス最大の規模となるジュネーブ プラン・レ・ワット工場。 ロレックス本社からもさほど遠くないジュネーブ郊外の工業団地で、ピアジェ、パテック フィリップ、ヴァシュロン・コンスタンタンなど名だたる名門時計マニュファクチュールも拠点を置いている地域です。
ここでは、ロレックスの時計のケースとブレスレットの開発・製造に関わる全ての業務が行われています。それには原材料の加工、完成部品の加工・研磨の仕上げに至るまでもが含まれています。

ロレックスの製造拠点 プラン・レ・ワット

地上5階、地下6階の11階建てで、地下には巨大な部品保管庫があります。全長1.5㎞にわたってレールが敷かれ、部品の出し入れは完全自動化されており、その様子は公開されていませんが、かなり近未来感があるそうです。Amazonの倉庫などが思い浮かびますね。あんな感じでしょうか。
工場内の物資の輸送用に耐荷重 5 トンの巨大なエレベーターもあるそうです。

ロレックスは自社鋳造所がある

プラン・レ・ワット工場で特筆すべき点は、ここに自社鋳造所を備えている、ということです。ロレックスはここで24ctゴールドや銀、銅、パラジウムなどの原材料を独自に加工しして、3種類の18ctゴールド(イエローゴールド、ホワイトゴールド、エバーローズゴールド)と904Lステンレススティールを製造しているのです。自社内ですべての合金の鋳造・加工を行うことで、機能的にも美的にも高いクオリティーを確保しているわけです。

自社鋳造所で作るゴールド

ケースとブレスレットは研磨機によって研磨されたあと、常時50~60人いるという熟練した職人によってじっくり丁寧に手仕上げされます。

プラン・レ・ワットの北東、そして本社から7kmほど離れたジュネーブ シェーン・ブールの工場ではダイヤルの開発・製造すべてに関わる業務、さらに宝石・貴石の鑑定とセッティング、セラミック製セラクロムベゼルとベゼルインサートの製造が行われています。敷地面積は7万3000平方メートルと、他拠点と比較すれば小規模ながら、地下5階+地上5階の10階建ての建物で、巨大な地下倉庫やジェモロジー(宝石額)研究所なども備え、約800人ほどの従業員が従事しています。

ロレックスの製造拠点 シェーン・ブール

ロレックスのダイヤル(文字盤)の素材は主に真鍮とゴールドの2種類で、他にマザー・オブ・パールやメテオライト、マラカイトといった天然素材も存在することは皆さまご存知の通り。それらが60以上の工程を経て、それぞれラッカー、メッキ、PVDなどで仕上げられます。その後、文字や目盛りがスタンプ印刷され、インデックスや王冠マークが植字されます。

ロレックス ダイヤル植字

ここで宝石セッティングだけに従事しているのは100 人ほど。ロレックスの時計に使用されるのは厳格に品質管理された最高品質の宝石だけで、例えばダイヤモンドは、最高品質のクラリティグレード、IF(Internally Flawless)のものに限られています。専属宝石セッターの中にはカルティエやブルガリと言った宝飾ブランド出身者も多く、人間の髪の毛の直径の約1/4にあたるわずか1/200mmの誤差しか許容されない、繊細かつ高度な技術で作業に当たります。

ロレックス ジェムセッティング

シェーン・ブールの工場で製造される、セラミック製セラクロムベゼルとベゼルインサートは、常に卓越性を追及し続けるロレックスが長い年月をかけ、研究開発部門とクリエーション部門が緊密に協力して応用研究を重ね、独自の製造プロセスを開発開発されたものです。極めて硬質で耐傷性に優れ、さらに太陽の紫外線による退色も防ぐ性質を有しています。

ロレックス セラクロムベゼル製造

ロレックスが初めてセラミックベゼルを採用したのは2005年、ブラックのセラミックベゼルを備えた18Kイエローゴールド製の「GMTマスターⅡ」でした。
さらに新色の開発を進め、2007年にはヨットマスターIIにブルーセラミックのベゼルを採用し、この年、ロレックスは「セラクロム」を商標登録しました。2010年にはグリーンセラミックベゼルのサブマリーナデイト、2013年には青と黒のバイカラーのセラクロムベゼルが登場し、難しいと言われたレッドの色合いを出すことにも成功し、2014年には青と赤のバイカラーのセラクロムベゼルベゼルを備えたGMTマスターIIが登場しました。現在では2018年に登場したブラウンや、ブラック、グリーン、ブルー、チェスナットブラウン、レッドなどの豊富なカラーが揃っています。

ジュネーブからは移動に2時間ほど要するベルン州、ジュラ山脈の麓、ジュウ渓谷からすぐに位置する”ビエンヌ”、と聞けば、時計に少し詳しい人であればピンと来るであろう、スイスの時計製造の中心地。
ビエンヌにある「マニュファクチュール・デ・モントル・ロレックスS.A.」の敷地面積は13万5000平方メートルほどあり、約2,000人がムーブメントの製造と組立に従事しています。

ロレックスの製造拠点 ビエンヌ

ムーブメントを構成する部品は約200個、複雑なキャリバーでは400個にも及び、数ミクロン単位の緻密さで製造されます。主要なパーツのほか、パラフレックスショック・アブソーバやシリコン製シロキシ・ヘアスプリング、ブルー パラクロム・ヘアスプリングといったロレックス独自機構に使用される特殊なパーツも含まれます。ここまでほぼ完全自社製造しているマニュファクチュールは他に例を見ません。
ここビエンヌにも自動制御の巨大な倉庫があり、製造も機械化されていますが、ムーブメントの組み立て・調整は全て熟練の職人の手作業で行われます。余談ですが、屋上には450名収容可能なレストランがあり、南アルプスを含む施設周辺一帯を一望できる屋上テラスがあるとか。

ビエンヌ ムーブメント製造

実はここは2004年までエグラー社の所有する工場でした。エグラー社は、ロレックス創設者であるハンス・ウィルスドルフが創業当初に契約を結んだ時計製造会社で、高精度の小型アンカー・エスケープメント式ムーブメントを開発するなど、精度の高いムーブメント製造に長けていました。ロレックス黎明期を支えたCal.600系 ムーブメントもエグラー社製で、評判も良く、その後のロレックスの飛躍を支えた影の立役者とも言えるかもしれません。
ロレックスは1990年代中頃から独立性の維持、事業展開の自由の確保という目的遂行のため「垂直統合」という戦略を選択し、次々に主要な供給業者を買収していましたが、エグラー社を2005年に10億スイスフラン以上を投じて買収し吸収統合したことで、ほぼ「完全なる自社製造」を実現したのです。
ここでほぼ、と付け加えますのは、僅かに針、受け石と穴石、サファイアクリスタル風防というパーツのみ、自社製造でない部分を残しているためです。

さて、ロレックスの4つの工場について、それぞれが原材料の加工からケース&ブレスレット製造、ムーブメント製造、ダイヤル製造&ジェムセッティング、最終組立と品質管理といった役割分担をしていることがお分かり頂けたと思います。そうなるとまず、「ロレックスの新工場では一体何を作るのか?」という疑問が湧いてきます。現在のところロレックスは、それこそオイスター(牡蠣)のようにこの新工場建設の件に関しては口を閉ざし、公式な発表はなにもない状態。

かつては製造拠点をスイス国内の20カ所ほどに分散させていたロレックスですが、前項でご説明した通り、ここ二十数年で供給業者の吸収合併を進め現在の4カ所に集約してきました。この4拠点の位置関係を地図で見てみましょう。

ロレックス 工場マップ

新工場建設予定地であるビュルの町は、ジュネーブにある3工場と、ムーブメント製造を担うビエンヌとのほぼ中央に位置することが分かりますね。ムーブメントやケースなどのパーツを製造するラインが一部移行されるのか、現時点で自社生産に至っていない針や風防といった部品を製造するのか?・・・真相は公式の発表を待つしかなさそうです。

「ロレックス新工場」に関して、色々とお伝えして参りましたが、30%増産する、社外部品を自社製造できるようにする、といった様々な噂があるものの、いずれもあくまで憶測にすぎません。

今回のロレックス新工場では2,000人以上新規雇用する、ということで、人数だけで言えばビエンヌに匹敵する規模。ビュルという土地では高度なスキルを有した人材が雇用しやすい、と期待されているとはいえ、これだけの人数の従業員を、ロレックスが求める”卓越した”職人に育て上げるには数年はかかるでしょうし、すぐには増産、とはならないのではないでしょうか。

ロレックスは最近「認定中古時計販売制度」(→関連記事:「Rolex Certified Pre-Owned(ロレックス認定中古時計)プログラム)を始めることで、需給バランスの改善やブランドのイメージ・価値を守ることをより重要視してきている印象があります。
需要に供給量を追いつかせる、という意味では増産も取るべき方針の1つではあると思われますが、数十年かけてブランディングに成功したロレックスが、ここで安易に”大規模な”増産に舵を切るとは思い難く、生産量は調整しつつ、専門的な独自の製造技術の開発や、ブランド価値の保持・向上のための人材育成などを主たる目的としている可能性もあります。

新工場では数十人の実習生を受け入れる予定との報道があります。 ロレックスは自社の専門知識・優れた技術と専門知識を若い世代に継承することを目指し、ジュネーブに社員の能力開発・研修と研修生の指導を行う独自のユニークなトレーニングセンターを保有していますが、ブランドの将来を見据え、新工場でも積極的に人を育てていくのでしょう。

さらに言えば、ロレックスのジュネーブ本社の工場内には、ディフュージョンブランドであるチューダー(TUDOR)の製造拠点があります。
チューダーは2021年5月、オメガ以外で初めてスイス連邦計量認定局(METAS、Metrology And Accreditation Switzerland)のマスター クロノメーター認定を受けたブランド初の時計「ブラックベイ セラミック」を発表するなど、「ロレックスの廉価版」という立ち位置から脱却し、独自のアイデンティティを構築しています。現在チューダーのマスタクロノメーター認定は小規模ロットですが、今後この割合も絶対数も増やしていく方針であることは間違いないでしょう。

チューダー ブラックベイセラミック

そうするとレ・アカシアの本社内のチューダー比率を上げ、何かしらの機能をビュルに移行する、もしくは可能性は高くないですがチューダーの製造拠点を移す、なんていうこともあり得なくはないかもしれません。

2023年は1月1日早々から「価格改定」という名の「値上げ」でスタートを切ったロレックス。定価の5~6倍にも届こうかと言う、一時期の”バブル”とも呼ぶべき高騰期は過ぎたものの、相変わらず入手困難な状況は変わらず、正規店では毎日のように行列が見かけられます。
大幅な増産には否定的な意見をお伝えはしましたが、単純にロレックスを愛する者としては、やはり近い将来、ロレックスのブティックにもっと多くの時計が並ぶようになることを願うばかりですね。

★こちらもおすすめ★

ロレックス買取について

ロレックス買取 時計買取ピアゾでは腕時計買取を専門とする9社無料一括査定が受けられます!買取実績掲載中!

姉妹サイト時計販売QUERIにて、高級ブランド腕時計を好評発売中!

ロレックスはもちろん、オメガ、タグホイヤー、オーデマ・ピゲなどの高級ブランド時計を独自ルートで激安価格にて販売中です!




最大9社に一括査定!最高額で賢く時計を売却しましょう

業者も利用するピアゾの時計一括査定サービスをぜひお試しください!

カンタン無料一括査定に申込む