更新日：2024年05月07日
2024年4月、高級時計の大型展示会「Watches and Wonders Geneva 2024」が開催され、フランスのジュエリーブランド・ヴァンクリーフ&アーペル（Van Cleef & Arpels）も名を連ねました。展示ブースのデザインを手掛けたのは、セノグラファーのジャン＝バティスト・オーヴレです。ブランドの二つのテーマ「Enchanted Nature（魅惑する自然）」と「Poetic Astronomy（ポエティック アストロノミー）」を融合し、独自の世界観を表現しました。
同展示会にて、ヴァンクリーフ&アーペルは8つの新作を発表。定番のアルハンブラシリーズの新作はありませんでしたが、色彩豊かなエナメル装飾や緻密なエングレービングなど、卓越した時計技術を用いた魅力的なタイムピースが揃いました。この記事では、2024年新作のスペックおよびデザイン・機能の特徴を紹介します。
2024年4月9日から15日まで、スイスのジュネーブにて開催された大型展示会「Watches and Wonders Geneva（ウォッチズ & ワンダーズ・ジュネーブ）」について、開催概要や出店ブランドリスト、および2023年の様子を紹介しています。
フランスの高級ジュエリーブランド「ヴァンクリーフ&アーペル」の腕時計を着用している有名人と、その着用モデルについて紹介しています。
ヴァンクリーフ&アーペルの職人が持つ卓越した技巧と豊かな詩情を融合し、文字盤に物語を描き出す「ポエティック コンプリケーション コレクション」。エナメルや宝飾技術を駆使して唯一無二の芸術品を生み出すとともに、そのメカニズムを通して人々に奥深い感動を与えてくれます。2024年は宇宙をテーマに据えた4本と、爽やかな庭園の美しさを讃える1本が新たに追加されました。
『レディ アーペル ジュール ニュイ ウォッチ (Ref. VCARPBKG00)』、19,272,000円。
ロジウムコーティングの18Kホワイトゴールドケース、38mm径、ベゼル・ケース・文字盤・ピンバックルにラウンドカットダイヤモンド、ラウンドカットイエローサファイア43個、アベンチュリン文字盤、ホワイトマザーオブパールキャップ、自動巻き(ヴァルフルリエ製)搭載、防水性30m。
広大な宇宙の煌めきをイメージした「ムラーノ アベンチュリンガラス」の文字盤に、ダイヤモンドの月とイエローサファイアの太陽、ホワイトゴールドとダイヤモンドの星々を散りばめました。ストラップはブルーのアリゲーターレザーを使用しています。ムラーノ島で製造されたこのガラスは、素材の過熱・冷却・切り出し・選別などに長い期間を要する特別なものです。吸い込まれるような深い碧色が印象的ですね。
アベンチュリンのディスクは24時間かけて一周しており、文字盤にはギョーシェ彫りが施されたホワイトマザーオブパールのキャップを配置。昼は太陽、夜は月が盤面に現れ、永遠に巡り合うことのない月と太陽の移ろいを表現しています。宝石を数多く取り入れつつも、派手すぎず身に着けやすいデザインです。
ローターには流れ星が刻印され、ケースバックには30～36層のエナメルデカールによって妖精が描かれています。裏蓋は従来のクローズドバックからサファイアガラスのシースルーバックに変更されており、月(あるいは太陽)の周りを回転する星々を眺めることが可能です。
また、後述する「レディ ジュール ニュイ ウォッチ」に対し、こちらの「レディ アーペル ジュール ニュイ ウォッチ」では、太陽にスノーセッティングのイエローサファイアを採用しています。文字盤を覆い隠すキャップもホワイトカラーを採用しており、明るく爽やかな印象です。
『レディ アーペル ジュール ニュイ ウォッチ (Ref. VCARPBKH00)』、34,452,000円。
ロジウムコーティングの18Kホワイトゴールドケース、38mm径、ベゼル・ケース・文字盤・ピンバックル、ブレスレットにラウンドカットダイヤモンド640個、ラウンドカットイエローサファイア43個、アベンチュリン文字盤、ホワイトマザーオブパールキャップ、自動巻き(ヴァルフルリエ製)搭載、防水性30m。
5連リンクのブレスレットに18Kホワイトゴールドを採用し、ラウンドカットダイヤモンドをパヴェセッティングしたモデル。よりいっそう華やかな印象で、パーティーシーンにもぴったりの一本です。
『レディ ジュール ニュイ ウォッチ (Ref. VCARPBLR00)』、14,784,000円。
ロジウムコーティングの18Kホワイトゴールドケース、33mm径、ベゼル・ケース・文字盤・ピンバックルにラウンドカットダイヤモンド252個、アベンチュリン文字盤、ホワイトマザーオブパールキャップ(ブルー)、自動巻き(ヴァルフルリエ製)搭載、防水性30m。
アベンチュリン文字盤を覆い隠すホワイトマザーオブパールのキャップには、クル・ド・パリのような特殊なギョーシェ模様とブルーのペイントが施されています。ストラップはブルーのアリゲーターレザー製です。18Kイエローゴールドの太陽とダイヤモンドの月が、24時間かけて一周するディスクとともに時間の移ろいを告げます。
こちらは先ほど紹介した「レディ アーペル ジュール ニュイ ウォッチ」に比べて、シックで大人びた印象です。太陽には放射状のギョーシェ彫りが施されています。33mmとやや小ぶりですので、華奢な女性の腕にもすっと馴染むでしょう。
『レディ ジュール ニュイ ウォッチ (Ref. VCARPBNA00)』、29,700,000円。
ロジウムコーティングの18Kホワイトゴールドケース、33mm径、ベゼル・ケース・文字盤・ピンバックル、ブレスレットにラウンドカットダイヤモンド622個、アベンチュリン文字盤、ホワイトマザーオブパールキャップ(ブルー)、自動巻き(ヴァルフルリエ製)搭載、防水性30m。
ブレスレットに18Kホワイトゴールドを採用し、ラウンドカットダイヤモンドをパヴェセッティングした華やかなモデル。文字盤の碧と外装の銀色がコントラストを生み出し、輝きと存在感を放っています。
『レディ アーペル ブリーズ デテ ウォッチ』、28,776,000円(参考定価)。
18Kホワイトゴールドケース、38mm径、ベゼル・ケース・インデックス・ピンバックルにラウンドカットダイヤモンド、マザーオブパール文字盤、文字盤にツァボライトガーネットおよびスペサタイトガーネット、自動巻き搭載。
ヴァンクリーフ&アーペルのインスピレーションの源である自然に敬意を表し、爽やかな夏の朝の庭園をイメージした作品です。華やかなダイヤモンドベゼルの内側には「ヴァロネ エナメル」で彩られたアズーロブルーの花々が咲いており、その中心でスペサタイトガーネットが輝いています。盤上で揺れる緑の葉は、グリーンのツァボライトガーネットおよびプリカジュールエナメルによるもの。その上を舞う二匹の蝶は、ホワイトゴールドとイエローゴールドにプリカジュールエナメルを施して表現されています。花および茎にはミニアチュールペインティングが施されており、細密で奥行きのある描写は見る人を物語の世界へと引き込んでいきます。
こちらは時刻表示に加え、オンデマンド アニメーション モジュールを搭載。8時位置のプッシュボタンを押すと蝶が盤上を飛び回り、それに合わせて遠景に配置された花々が揺れ動きます。メゾンの時計制作のヴィジョンである“ポエトリー オブ タイム”――自然の悠久のサイクルと調和しながら時を刻むというテーマに相応しい一本です。
ジュエリーと時計制作の技術を組み合わせ、盤上に魅惑的な世界を作り出す「エクストラオーディナリー ダイヤル コレクション」。複雑かつ独創的なデザインと、それを具現化する並外れた技巧による作品たちは、メティエダールの真骨頂と言えるでしょう。2024年は、自然界に佇む妖精を描いた色彩豊かな1本が追加されました。
『レディ アーペル ジュール アンシャンテ ウォッチ (Ref. VCARPBMA00)』、60,852,000円。
ロジウムコーティングを施した18K ホワイトゴールド製ケース、41mm径、ケース・ベゼル・文字盤・ピンバックルにラウンドカットダイヤモンド308個、文字盤にピンクサファイア1個・イエローサファイア93個・スペサタイトガーネット56個、ターコイズ13個、手巻きCal. Q474搭載、防水性30m、世界8本限定。
まばゆい朝陽の下で花を摘む一匹の妖精をモチーフにした作品。幾重にも重ねられたパーツや立体感あふれる「ファソネ エナメル」の花々によって、臨場感あふれる世界を演出しています。文字盤は青空をイメージしてターコイズを採用。イエローゴールドの太陽にはサファイア、スペサタイトガーネット、ダイヤモンドをセッティングし、これに時計の役割を託しました。また、放射状に太陽光のパーツを配置し、ダイヤル全体に動きを付けています。
遠近感を付けるべく大きめに作られたプリカジュールエナメルの葉には、「セッティング イン エナメル」の技法を用いてダイヤモンドがセッティングされています。メインの妖精はロジウムコーティングを施した18K ホワイトゴールド製です。ストラップは文字盤のテイストに合わせ、シャイニーブルージーンのアリゲーターレザーを採用しています。
文字盤は、3色のターコイズプレートを「ストーンマルケトリー技法(象嵌)」で組み合わせることで形成されています。その上に太陽や光線、花々や妖精などのパーツが複雑に配置され、童話のような世界を作り出しました。
裏蓋には花々と妖精のエングレービングが施されています。これはダイヤルの物語の続きを表しており、花々から飛び立つ妖精の姿が描かれているようです。
ホワイトゴールドの妖精は鮮やかなピンクサファイアを抱いており、羽にはパールホワイトのプリカジュールエナメルが施されています。薄く透明な羽が朝陽に照らされて輝いているかのようです。
手前の葉には、完成に24か月を要した「セッティング イン エナメル」が用いられています。これは金属の留め具を使わずに宝石を埋め込む技法で、緻密に彫られた窪みに宝石をセットし、厳密な温度管理のもと焼成固定します。これにより、宝石が浮かび上がるような効果を生み出すことが可能になり、葉に朝露が煌めいているように見えるのです。
ピンクの花々に用いられている「ファソネ エナメル」は、研究開始から16か月を経て2023年に完成しました。まず高温のエナメルをプレートに流し込み、立体的に切削した後、張力を除くために低温焼成を行います。さらに高温で釉薬をかけることで、滑らかで透明感のあるパーツを作ることができるのです。
メゾンの技巧を余すことなく詰め込んだこちらの文字盤は、組み立てに約180時間を要するのだとか。細部に至るまで匠の技が施されており、見れば見るほどその完成度に圧倒されていきます。
創業以来、芸術工芸品・オブジェの制作でもその名を馳せてきたヴァンクリーフ&アーペル。近年では、積み上げてきたジュエリーや時計制作技術にオートマタの技術を組み合わせ、大胆で魅惑的な作品を作り上げてきました。2024年はスイスのオートマタ職人フランソワ・ジュノー氏と手を結び、動植物をモチーフにした新たな作品を発表しています。
『アパリシオン デ べ オートマタ』
高さ約27cm、幅約21.5cm、ダルメシアンジャスパー、チューライト、ローズゴールド、ホワイトゴールド、イエローゴールド、ダイヤモンド、サファイア、レッドスピネル、機械式搭載、パワーリザーブ約8日間。
ダルメシアンジャスパーの土台にピンク色の希少鉱物「チューライト」のボウルを乗せ、ボウル内にローズゴールドの枝葉を合わせた植物的なオブジェ。イエローゴールドとダイヤモンドによる回転式のリングと合わせて、ホワイトゴールドの蝶がさりげなく時刻を教えてくれます。ラッカー仕上げが施された枝葉の中には一羽の鳥が隠れており、葉の広がりとともに姿を見せる仕様です。鳥は幾度の羽ばたきを見せ、再び枝の中に戻っていきます。
仕掛けが作動するまで、ローズゴールドの枝葉はドーム状に重なり合い、ボウルの中を完全に覆い隠しています。仕掛けが作動すると、オリジナルのメロディーとともに枝葉のブーケが動き出し、花がほころぶように開くのです。開いたブーケの中心からは、ホワイトゴールド・サファイア・ダイヤモンドで飾られた青い鳥が登場。葉の内側や枝はレッドスピネルのベリーによって彩られています。
ホワイトゴールドの鳥の羽には細かなエングレービングを施しています。また、枝葉のブーケは112枚の葉のパーツを組み合わせて作られており、その1枚1枚に、エアブラシによる全8層のラッカーが施されています。1層ごとに長時間乾燥させ、さらに手作業で紙やすりをかけて組み上げました。このように細部まで丁寧な加工・装飾を施しており、見応え十分なオートマタです。
『ブトン ドール オートマタ』
高さ約27cm、幅約21.5cm、チューライト、チャロアイト、ローズゴールド、ダイヤモンド、サファイア、機械式搭載、パワーリザーブ約8日間。
1930年代半ばにメゾンが創作した“パイエット”と呼ばれるモチーフを再解釈し、同名のジュエリー コレクションに敬意を表したオートマタ。土台にはピンク色のチューライトを用い、ボウルはバイオレットカラーのチャロアイトを採用。フェミニンで柔らかな色合いに仕上げました。
パイエットはスパンコールをイメージした形状で、オブジェに設置されたゴールドの茎には様々な大きさのパイエットが飾り付けられています。仕掛けが作動してドームが開くと、そこにはローズゴールドのドレスとブルーラッカーのガウンを身にまとい、華麗に舞い踊る妖精の姿が。顔にはローズカットのダイヤモンドがセッティングされ、掲げた右手にはブリオレットカットダイヤモンドが掛かっています。また、研磨されたプリカジュールエナメルの羽が光を通し、美しさをたたえています。
本作では684個のキャップ・ディスクが使用されており、その一つひとつに色鮮やかなラッカーが施されています。仕掛けが作動した際に、その彩りの美しさを堪能することができるでしょう。また、ボウルの中心には鮮やかなラッカー仕上げの花々と色とりどりの宝石が配置されています。このオブジェの制作には、ジュエリーやエナメル、ゴールドなどの膨大なパーツを正確かつ美しく仕上げる技術が求められており、かつてないほど繊細で優れた工芸品なのです。
宇宙や自然をテーマにした「ポエティック コンプリケーション コレクション」や、妖精の魅惑的な世界を表現した「レディ アーペル ジュール アンシャンテ ウォッチ」、そして独創的かつ立体的なオートマタ。2024年の新作は熟練した職人の技術を結集させ、ヴァンクリーフ&アーペルが大切にしている「メティエダール」の魅力を存分に表しています。
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