更新日:2026年05月20日
ロレックス GMTマスター 16700の実機レビューをお届けします!
1999年に生産終了となった、赤×青またはブラックのベゼルディスクが交換可能なGMTマスターI。赤×青、通称ペプシベゼルが人気がありますが、ブラックベゼルも使い勝手の良さで根強い人気があります。時計史に詳しい方ならご存知の通り、ロレックスは1982年に3つのタイムゾーンを同時に把握できる「GMTマスターII(Ref.16760・通称ファットレディ)」をすでに市場に投入していました。
普通であれば、上位互換である「II」の登場によって初代からの「I」の系統は幕を閉じるはずです。しかし、ロレックスは1988年、前作Ref.16750のアップデート版として、この「GMTマスターI 最終章」となるRef.16700をあえて新規で発表しました。そして1999年に生産終了を迎えるまで、なんと「GMTマスターII(Ref.16710)」と約10年間にわたり並行して販売され続けたのです。
限定モデルのような数に限りがある希少性はありませんが、この「あえて性能が異なる2つの実用時計を並行して作り続けた」というロレックスの歪なタイムラインそのものが、今となっては非常にコレクター心をくすぐるストーリーとなっています。今回はブラックベゼルのA番を実機レビュー!
ロレックス GMTマスター ブラックベゼル Ref.16700を実際に見てみましょう。
ロレックスらしいブラックフェイス。ブラック×シルバーのシンプルな配色に、赤のGMT針がよいアクセントになっています。インデックスの大きさは控えめ。
GMTマスターといえば、赤青(ペプシ)や黒赤(コーク)といった2トーンカラーがアイコンですが、この「オールブラックベゼル」は、パイロットウォッチでありながらダイバーズ(サブマリーナー)のようなストイックさを放ちます。
2トーンベゼルが「昼夜の識別」というツール感を強調するのに対し、ブラックベゼルは24時間表記の数字が文字盤の黒と溶け合い、遠目には非常にソリッドでドレッシーな印象を与えます。「GMTの機能は欲しいが、ビジネスシーンで赤や青のベゼルは悪目立ちする」という目の肥えたユーザーに選ばれてきた、大人のための仕様です。
1999年にトリチウムからルミノバへ夜光塗料の仕様変更がありました。こちらはA品番でルミノバが採用されており、2色に色分けされていることで誤認を防いでくれます。文字盤の6時位置に「SWISS-T < 25」と表記されているのがその証。自発光の放射性物質であるトリチウムは、経年変化によって夜光インデックスがクリーム色〜小麦色に「「ヤケ」」ます。黒文字盤・黒ベゼルの中に、優しく枯れた色味のインデックスが浮かび上がる姿は、ヴィンテージテイストの極みです。
前モデル(Ref.16750)ではプラスチック風防でしたが、本モデルからサファイヤクリスタル風防になっています。高級感・透明度ともにアップ。 ブラックベゼルにシルバーのベゼルインデックス。上品な雰囲気はビジネスシーンで活躍してくれそうです。現行のセラクロム(セラミック)ベゼルは傷がつかず退色もしませんが、Ref.16700のベゼルは「アノダイズド加工(陽極酸化処理)が施されたアルミニウム製」です。長年使い込むことで、このブラックがわずかにグレーがかった「フェードブラック(退色黒)」へとエイジングしていきます。この個体ごとの“育つ楽しみ”は、アルミベゼル世代だけの特権です。
厚みは11.3ミリ。100M防水などの機能性を鑑みると、薄型化に成功しています。ベゼルのカッティングやケースの曲線が美しいです。埋め込み型のリューズにはブランドロゴのクラウンが彫られています。
メンズらしい張り出したラグ。
裏蓋はロレックスならではのシンプルなもの。サテン仕上げと鏡面仕上げの組み合わせです。搭載ムーブメントは3175。ロレックスのムーブメントといえば、サブマリーナーやエクスプローラーI、デイトジャストなど、多くの主要モデルに横断的に採用される「Cal.3135」が傑作として有名です。
しかし、このRef.16700に搭載されている「Cal.3175」は、数あるロレックスのキャリバーの中でも極めて特異な存在です。なぜなら、このムーブメントは「GMTマスターI(Ref.16700)のただ1機種のためだけ」に開発され、Ref.16700の生産終了とともにそのまま絶版となった「専用機」だからです。
効率性を極限まで追求するロレックスが、一つのリファレンスのためだけにキャリバーを新規製造し、10年間守り続けたという事実は、現代の視点で見ると非常に贅沢であり、ロマンを感じずにはいられません。
前世代のRef.16750に搭載されていた「Cal.3075」から、この「Cal.3175」への進化は、実用面において決定的な違いを生み出しました。最大の変化は、時計の精度を司る「テンプ」を支える構造です。従来のシングルブリッジ(片持ち)から、テンプを両側からガッチリと挟み込んで固定する「ツインブリッジ(両持ち)」へと設計が変更されました。これにより、外部からの衝撃や振動に対する耐性が劇的に向上。さらに、マイクロステラスクリュー(天輪の内側にあるナット)による高精度な歩度調整が可能となり、現代の高級時計の標準となる「タフで狂わないロレックス」の基礎を確立したのです。
短針独立駆動(Cal.3185)という派手な機能こそありませんが、基本設計の頑強さと、前述した「デイトのクイックセット」を両立させたCal.3175は、まさに「3針+GMT機能」というベーシックなプラットフォームにおいて、ロレックスが到達したひとつの完成形と言えます。
ブレスレットは3連で、バックルの表面にはタイル状の模様と刻印が刻まれています。バックルはダブルロック。1995年頃よりシングルロックから変更され、よりタフな構造になりました。
スポーツロレックスながら大変軽く、着け心地のよい1本です。気分でベゼルのカラーを変更できるのが嬉しいモデルですが、ブラックはより上品で大人の雰囲気。
Ref.16700は生産終了後に安定的な相場の上昇を見せており、今後も大注目のモデル。2000年頃にはブラックベゼルが人気でしたが、そこからペプシカラーが巻き返し、今後またブラック人気の再燃がくるかもしれません!
ロレックスの歴史において、「時代の過渡期」に生まれたモデルには独特の妖艶さがあります。Ref.16700のブラックベゼルは、5桁リューズのシャープなケースライン、アルミベゼルの独特な質感、そしてトリチウム夜光の温かみといった「ヴィンテージの愉しみ」を完全に残しながら、サファイア風防やツインブリッジの高精度キャリバー(Cal.3175)という「現代の信頼性」を併せ持つ、奇跡的なバランスの上に成り立っています。
現行のセラミックGMT(6桁リューズ)が持つ圧倒的なラグジュアリー感とは一線を画す、「ツール(道具)としてのロレックス」の最高峰。スマートな黒ベゼルを腕元に滑らせ、リューズを引いて小気味よく日付を合わせる瞬間、この時計が「II」の時代にあえて「I」として生き抜いた10年間の意味が、きっと身体に伝わってくるはずです。
| モデル | GMTマスター
GMT MASTER |
|---|---|
| 型番(Ref.) | 16700 |
| ムーブメント | 自動巻きCal.3175 |
| 駆動時間 | 48時間 |
| 振動数 | 28,800振動 |
| 防水 | 100m |
| ケースサイズ | 横 39.5mm × 厚さ 11.3mm |
| ケース素材 | ステンレスケース |
| 風防 | サファイアクリスタル |
| ダイアル | ブラック |
| 製造期間 | 1990年~1999年 |
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