更新日:2023年09月04日
高級腕時計ブランドの新作発表の場である”Watches&Wonders 2023”で賑わうジュネーブですが、旧市街には世界中の時計ブランドが店舗を構える、時計愛好家には天国のような街でもあります。
そしてその中の1つ、昨年突如始まり大きな話題となった、「Rolex Certified Pre-Owned(ロレックス認定中古時計)プログラム」で既にその販売を開始している、スイスの老舗時計店ブヘラ(Bucherer)のブティックへ、ピアゾスタッフが直撃してみました!
時計はなにも新作が全てではありません。特にロレックスなんて、正規店で新作はおろか既存モデルだってなかなか買えない状況で、中古腕時計マーケットは年々活況となっています。そこに爆弾投下!ロレックスの”正規店で買える”認定中古ウォッチが登場したわけですから、これは見ないわけには参りません。
ブヘラで販売しているロレックス認定中古腕時計(Certified Pre-Owned watch、以下「CPOロレックス」と呼びます)、最も気になるのはその「状態」や「価格」ですよね。ウェブサイト上で写真を見たり、価格を確認することはできますが、やはり「実物が見たい!」ということで、ジュネーブにあるブヘラブティックへ赴き、デイトナなど人気モデルをしっかりチェックして参りました!
ロレックス認定中古時計はアリ?ナシ?時計はどんな状態?と言った疑問から、為替やクレジットの手数料、免税と消費税って?!と言った海外で時計を買う際に知っておきたい情報まで、詳しくご紹介して参ります。なお、本記事においてCHF(スイスフラン)を日本円に計算する際のレートは「1CHF=150円」としています。
昨年から始まった「Rolex Certified Pre-Owned(ロレックス認定中古時計)プログラム」。時計の世界で最も需要が多い「ロレックスの中古ウォッチ」を正規店が販売する、という驚きのニュースは2022年12月1日に発表され、瞬く間に世界中に駆け巡りました。
「Rolex Certified Pre-Owned(ロレックス認定中古時計)プログラムとは?いつどこで始まる?
そもそもRolex Certified Pre-Owned(ロレックス認定中古時計)プログラムとは?という方に向け、さらっとおさらいしましょう。「Rolex Certified Pre-Owned(ロレックス認定中古時計)プログラム」で販売対象となるのは、製造から3年以上が経過したロレックスの腕時計。ロレックスの正規サービスセンターでメンテナンスを受けた上でCPOロレックスとして認定され「真正保証」のタグを付与、ロレックスによる2年間の国際保証が付きます。
最初のパートナーとして選ばれたブヘラは、1888年にスイス・ルツェルンで創業した老舗名門時計店。既にオーデマ ピゲ、オメガ、ジャガー・ルクルト、IWC、カルティエ、パネライなど多数の認定中古ウォッチを販売している実績があり、2022年 12月の初めから、6カ国 (スイス、オーストリア、ドイツ、フランス、デンマーク、英国) の ブティックでロレックスの認定中古時計の販売を開始しています。
プログラムは世界へ順次拡大、とのことでしたが、2023年4月時点ではまだ日本の正規販売店でロレックス認定中古時計プログラムは開始していません。
・・・というわけで、実際どんな時計が売られているのだろう、という興味もあり、ピアゾスタッフがジュネーブのブヘラを覗いてみました!
ブヘラ・ジュネーブ店は、高級ブランドがずらりと立ち並ぶジュネーブ旧市街の「ローヌ通り」に店を構えています。日本で言えば銀座の並木通りの拡大版、といった雰囲気でしょうか。この写真の範囲だけでも、シャネル、パテック・フィリップ、エルメス、カルティエなどが並んでいます。
通りに面したショーウィンドウにはロレックスの人気モデルが飾られています。ちなみにブヘラはもちろん通常の”正規店”として”新品の”ロレックス、チューダー、カルティエ、IWCなど非常に多くのブランドを取扱っています。
スイスの空港などではよく見かけるロレックスの掛け時計。こちらはまるで看板のよう。
余談ですが、ローヌ通り付近にある他の時計ブランドもこのような感じで自社の時計を掲げている店舗がいくつかありました。F.P.ジュルヌとか印象的でした。
さて、本題。エントランスから奥のエレベーターで5階に上がると、「Certified Pre-Owned」フロア。その一角でCPOロレックスが販売されています。
あれ、これは・・・オーデマ・ピゲのロイヤルオークとオフショアですね。そう、前述しました通り、ブヘラではAPほか多数のブランドの認定中古時計を販売しているのです。
今回の目的はロレックスです。さっそくロレックスのコーナーへ参りましょう。
スペースとしてはさほど広くはないものの、通常のショールームと変わらない雰囲気。窓から明るく日が差し込む中、ゆったりとロレックスの時計を眺めることができます。中古ならではと言いますか、中には普段なかなか目にすることのないようなレアモデルも。
ガラスのショーケースや、壁にロレックスの認定中古ウォッチが整然と飾られています。
通常のロレックス正規店と違うのは、モデル名やスペック、そして販売価格などが明示されたプレートが添えてある点です。
新品販売時の国際保証書、オリジナルボックスの有無も分かりやすくピクトグラム表示され、製造年が記載されているものもあります。 ただし、現行モデルの場合は、製造年は表記されていないようですね。
さっそく右手のショーケースから見て行きましょう。左がサブマリーナデイト、右がシードゥエラーですね。
左)サブマリーナデイト Ref.116618: 46,000 CHF(約690万円)、右)シードゥエラー Ref.16600: 12,800 CHF(約192万円)。
次はデイトナです。
右・左)Ref.116523: 24,500 CHF(約368万円)、中央)Ref.16523: 27,500 CHF(約413万円)。
エアキングとGMTマスターII。ちょっと不思議な並びですね。
左)エアキング Ref.116900:12,000 CHF(約180万円)、右)GMTマスターII Ref.116710BLNR:23,000 CHF(約345万円)
スカイドゥエラーが3本並んでいます。真ん中と右は型番は同じ18Kホワイトゴールド製ですが、右のモデルはアイボリー文字盤にローマンインデックス、という現行にはない組み合わせです。
左)スカイドゥエラー Ref.326135:41,000 CHF(約615万円)、中央・右)スカイドゥエラー Ref.326138:38,500 CHF(約578万円)
右手一番奥のショーケースにはデイデイトが並んでいました。特に注目したのがこちら、デイデイトのタイガーアイ文字盤、しかもダイヤインデックス。これはゴージャスですね!なかなかおいそれと出会うことはなさそうな1本です。
デイデイト Ref.118208:35,000 CHF(約525万円)
最奥へ進みます。ガラスケースなしで幾分無防備な感じで壁に飾られていたのは、オイスターパーペチュアルとか、デイトジャスト。このあたりのクラスはショーケースを開ける手間を省いて、手に取りやすくしているのでしょうか。鏡も置かれています。
スペースの真ん中のショーケース。まずはベゼルがセラクロム化する前のデイトナ 116520白&黒です。
デイトナ Ref.116520 : 29,500 CHF(約443万円)
こちらにはデイトナが3本並んでいます。ローズゴールド(116505)、ホワイトゴールドのメテオライト(116509)、イエローゴールドのダイヤインデックス(116528G)です。壮観ですね!手が震えて写真がブレましたw
デイトナ 左)Ref.116505:57,000 CHF(約855万円)、中)Ref.116509:69,000 CHF(約1,035万円)、右)Ref.116528G:55,000 CHF(約825万円)
それでは時計を試着して傷などをチェックしてみましょう!
気になった時計はどれでも、この明るい窓際のスペースで試着できます。外もいい眺めです。
ホワイトゴールドのメテオライト Ref.116509:69,000 CHF(約1,035万円)。2023年にメテオライト文字盤がラインナップから消えてしまいましたので、こちらは貴重な1本ですね!
少し角度を変えてみましょう。
若干の小キズは見られますが、これ以上磨くとケースのラインに響くという判断でしょう。気になるほどではありませんが、これは個人差あるところでしょうね。
最後に、デイトナ 116520です。こちらは少し傷が目立つ方かな、と思いましたのであえて。
ラグなどはしっかりポリッシュされて輝いていますが、ベゼルにまぁまぁ擦り傷が認められますね。ここは研磨しづらいところですよね。
ブヘラのオンラインショッピングでも購入可能ですが、配送はスイス国内に限られています。色々と実物を見たり、試着したりできますので、スイスに行かれることがあれば、ぜひお店に足を運んでみることをお勧めします。
まだ日本ではサービス開始していない、「Rolex Certified Pre-Owned(ロレックス認定中古時計)プログラム」。サービス内容に関する疑問を、忖度無し、根掘り葉掘りwブヘラの方にぶつけてみました!
ブヘラのCPOウォッチを見たい場合、予約は不要。他にも新品商品を多数販売していますから、そちらも見たいのであれば、予約を取った方がよいでしょう。 ブヘラの公式サイトから予約(APPOINTMENT)を取ることができます。
様々なCPOウォッチの入手ルートがありますが、ロレックスCPOウォッチの多くは、ブヘラがスイス国内の顧客から査定を行い、買取りや下取りしたもの、とのこと。
CPOロレックスの修理や整備は、ロレックスの公認時計技術者の資格を持つブヘラ社内のスタッフが行う場合と、ロレックス本社で行う場合の両方がある、とのこと。
全ての修理履歴を確認することはできませんが、CPOロレックスとして販売するに当たってしっかりと正規の整備が行われていますので、その点心配には及ばない、とのこと。
もちろん、パーツは全て純正です。販売する前にロレックスの公認時計技術者の資格を持つスタッフもしくはロレックス本社のサービスセンターで時計の全てをチェックして、整備・修理していますので、純正外のパーツを見落とすことはない、とのこと。
CPOロレックスの価格は毎月見直ししている、とのこと。
免税でのCPOロレックス購入を希望する場合、ブヘラで購入時に申し出れば、販売員はスイスのVAT(Value Added Tax、付加価値税)7.7%が差し引かれるよう手配します。
つまり、「税抜き価格」で支払いを進めることができるのです。
当日に所定の免税書類が渡されるので、購入後30日以内の出国時に税関でスタンプを押してもらい、店舗へ返送すれば手続き完了です。
いったん税込で支払うのではなく、非課税で支払いができるのは嬉しいですね!
ちょっと不躾な質問ですが、CPOロレックスの販売価格は、二次流通市場の平均的な価格に比べると、少し、場合によってはかなり、高いように思うのですが、とお伺いしたところ、次のようにとても真摯にお答えくださいました。
「そうですね、高いと思います。ただそれはやはり、ロレックス正規のメンテナンスを経た上に、2年の保証がつく『Rolex Certified Pre-Owned(ロレックス認定中古時計)プログラム』の付加価値、と捉えてご納得頂ければ、というところです。」
ぶっちゃけ高いですよ、と。CPOならではの、中古時計としての品質の高さと、正規の2年保証、というのは大きなポイントですから、よく考えて購入したいですね。
ここで改めて、CPOロレックスを購入するメリットとデメリットについて考えてみましょう。
中古腕時計を購入するときは「本物なのか?」「すぐ壊れるのでは?」と言った不安を抱きやすいもの。
しかしその点、CPOロレックスは先述の通り、
引用: www.rolex.com
並行店やに一般的な中古時計店ではなく、「ロレックス正規店で買った」という点に”ステータス性”を感じる方にとってはそれもメリットの1つと言えますね。CPOロレックスには保証書と品質保証タグ、ケースが付属しますので、より「正規店らしさ」を感じられることでしょう。
ではCPOロレックスを購入する【デメリット】は?ズバリ、「価格」です。結論から言うと、高いです。
ブヘラでのCPOロレックスの販売価格と、二次流通市場での相場を比較してみましょう。例えばブヘラで2023年4月現在販売中の「ロレックス デイトナ Ref.116500LN」(黒文字盤)。
ブヘラではCHF 34,000で販売しています。2023年4月20日時点で、1スイスフラン=約150円。単純計算すると、5,100,000円となります。(※免税前の価格ではありますが、結局帰国時に税関で消費税を払うとほぼプラスマイナス0に近い数字になりますので、このまま話を進めます。)
引用:www.bucherer.com/rolex-certified-pre-owned
一方、現在デイトナ 116500LNの中古腕時計の国内販売相場を見てみると、390~470万円前後がボリュームゾーンとなっていますので、割高感は否めません。が、実はまだこれでも実勢価格との差が少ないほうです。
例えば、「ロレックス サブマリーナ ノンデイト Ref.114060」はブヘラで17,000 CHF(約225万円)で販売されていましたが、日本の中古市場では150~160万円がボリュームゾーンで、5~6割高い、という計算になります。
やはり円安の影響も大きいですが、他のモデルを見てみても、全体的に二次流通市場の価格よりも2~3割は高い傾向が見て取れます。
その割高になっている差分を「正規の有料オーバーホール1回分」+「正規品の安心感」+「2年保証」の対価、と考えれば、妥当かどうか。これは個人の価値観によるかもしれませんが、やはり単純に「高い」と感じる方がほとんどなのではないかと思います。
さらに忘れがちですが、海外でクレジットカードを利用すると、換算日の基準レートに「事務手数料」が加算されます。「事務手数料」は国際カードブランドによって利率が異なりますが、1.6~2.2%前後です。
海外での利用データが「カード会社に届いた日」の基準レートで円に換算されるため、換算のタイミングは必ずしも「利用日」のレードが適用されるわけではなく、利用日から数日程度のタイムラグがある点に注意が必要です。
現在、ブヘラにおいて、CPOロレックスを販売しているのは、店舗のあるスイス、オーストリア、ドイツ、フランス、デンマーク、イギリスの6カ国ですが、さらに今後はブヘラグループの時計店があるアメリカへの展開も予定されています。
(→※2023年5月、アメリカではTourneau | Bucherer(トゥルノー|ブヘラ)にて認定中古ロレックスのサービスがスタートしました。)
この先ヨーロッパでは遅かれ早かれ、ブヘラ以外のロレックスの正規販売代理店でもCPOロレックスの販売が始まると予想されますが、残念ながら、まだ日本でサービスを開始する、という情報は入ってきていません。
日本でも確かにフランク・ミュラーやリシャール・ミル、H・モーザー、ブライトリングなど認定中古もしくはそれに類するサービスを展開しているブランドもあるにはありますが、ブヘラほどのCPO(Certified Pre-Owned)ウォッチに関して知識・経験・ノウハウが蓄積している「ロレックス正規販売店」はありません。
正規店側としても査定したりメンテナンスしたりと、そのための人材を確保し、教育する人的コストがかかりますし、あまりメリットがなさそうですから、このサービスを積極的に始めたい、というところはあまりないんじゃないかと推測されます。
とはいえ、時計も二次流通市場は拡大の一途を辿っていますから、やはり高級腕時計界の巨人・ロレックスにとっても無視できない状況であることは明らかで、ようやく一歩を踏み出したところ。今後の展開に注目ですね。
さて、ロレックス認定中古時計を扱う、ジュネーブのブヘラをご紹介して参りました。訪れた編集スタッフの感想としては「やっぱり高いな」でしたが、それでも「日本で中古でも販売されていないモデルだからどうしても買いたい!」ですとか、「ロレックスの正規サービスがつく中古ならぜひ買いたい!」という方にとっては、有益なサービスなのかな、と感じました。
ブヘラのあるジュネーブ旧市街のローヌ通近辺には、ロレックスのジュネーブブティックをはじめ、パテック・フィリップ、オメガ、タグホイヤー、リシャール・ミル、シャネル、カルティエ、IWC、パネライ、ジャガー・ルクルト、ウブロ、エルメス、ショパール、ヴァン・クリーフ&アーペル、ブレゲ、ヴァシュロン・コンスタンタン、ピアジェ、ロジェ・デュブイ、P.P.ジュルヌ、ブランパン、ユリス・ナルダン、モンブラン等々、、数えきれないほどの高級腕時計ブランド、正規販売店、腕時計専門ショップが軒を連ねています。珍しいところではパネライの認定中古を取り扱う「Watchfinder & Co.」のショップも。ジュネーブを訪れるなら、これらの時計店巡りとともに、ブヘラの認定中古フロアも忘れずに!
ロレックス ジュネーブブティック。行列ができるのは日本と同じ。
ただこの超絶円安・物価上昇のインフレの折、海外でのショッピングは「お得」とは言えない、なかなか厳しい状況です。やはり国内の中古腕時計市場で状態のよい個体を見つける方が現実的、と言わざるを得ません。
中古腕時計を販売しているのはブランドリサイクル店や時計専門店、ネットのサイトやフリマアプリなど様々ですが、時計のメンテナンスの有無や品質、アフターサービス内容等は販売者次第ですから、「どこで買うのか」という見極めが非常に重要です。
失敗しないお店選びのためには、オーバーホール・メンテナンスの有無、アフターサービス内容などの事前の確認が重要です。上手に活用して、納得の行く時計選びをしたいものですね。