更新日:2026年07月04日
2026年、大谷翔平選手がセイコーのアンバサダーに就任して10周年を迎えました。これを記念し、東京・原宿で開催されている特別イベント「SHO-ism Seiko|Shohei Ohtani - 10 Years Journey」。
本イベントの最大の目玉は、大谷選手に贈呈された世界に一本だけの特注モデル「Seiko Star Time」のマスターサンプルの展示です。
今回は、時計専門ライターである筆者がイベント初日の東京会場に足を運び、100万時間(約114年)を積算するという時計史に残る超・複雑機構の実機をレビュー。前代未聞のコンセプトが生み出した圧倒的な存在感と、そこに込められた大谷選手の想いを紐解きます。
筆者が訪れたのはイベント初日となる7月3日(金)。平日ということもあり、場内は過度な混雑もなく、じっくりと時計と展示に向き合うことができる落ち着いた雰囲気でした。
会場内は以下の6つのセクションで構成されています。
まず来場者を迎えるのが10周年を記念したフォトブースです。
続く「Prologue」エリアでは、これまでに発表されてきた歴代のセイコー大谷翔平限定モデルの実機が展示されています。一つひとつの時計に当時の大谷選手の活躍の記憶が宿っており、この10年がいかに濃密な時間であったかを改めて実感させられます。
「SHO-ism Theater」では、大型スクリーンを用いてインタビュー動画が上映されています。大谷選手の「時」に対する揺るぎない信念(SHO-ism)を紐解く映像コンテンツです。
「10 Years Journey」のコーナーでは、歴代の広告ビジュアルや大谷選手の印象的な言葉が飾られ、モニターからはインタビュー動画が流れています。
ブランドディスプレイエリアでは、大谷選手がCM等で着用・起用されたプロスペックス(SBEJ029)や、アストロン(SBXC175、HAB001J)などの時計が展示されています。
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会場の最奥に位置するのが、最大の目玉である「Seiko Star Time」マスターサンプルの特別展示コーナーです。
この時計の最大の特徴は、「100万時間(およそ114年)」を積算して表示するという、極めて斬新かつロマンに溢れた機構にあります。
開発のきっかけは大谷選手自身の「野球選手として、あとどれくらいの時間を積み重ねられるだろう」という想い。これに応えるべく、セイコーの開発陣は約3年前にこの途方もないプロジェクトをスタートさせました。
実際に「Seiko Star Time」のマスターサンプルを目の前にして、時計のプロフェッショナルとしても「これまでに見たこともないコンセプト」に純粋にワクワクさせられました。
内側から24時間、1,000時間、1万時間、10万時間、そして100万時間。また中心の円盤針は現在時刻も表示しています。これらを通常の「針」ではなく、5枚の円盤針(ディスク)を重ねて表示する構造は、ムーブメントへのトルク負荷や組み立ての難易度を考えると、まさに時計師泣かせの超絶技巧です。
ケースにはガラスとムーブメントがほぼ同じ高さになるよう専用に考案した新構造が採用されています。この新構造にはムーブメント形状の変更や新しい組立方法の確立が必要となり、設計や製造部門の垣根を越え、セイコーの技術の粋が詰まった、まさに「前人未踏の1本」に仕上がっています。
本プロジェクトの開発過程において大谷選手と複数回の協議が実施され、各円盤針の基準位置と中心、そしてリューズにダイヤモンドおよびブルーサファイアを配置する仕様が採用されました。
また、ストラップは装着性を追求し、大谷選手の腕周りに合わせた専用設計のシリコンストラップが採用されています。
開発は困難を極めましたが、間違いなくセイコーの歴史に名を刻むプロダクトになるでしょう。数々の記録を塗り替え、野球史にその名を刻み続けている大谷選手にこれほど相応しい時計はないですね!
5枚ものディスクを重ねている性質上、サイドから見るとどうしても物理的な厚みは出ます。しかし、専用設計されたサイドのケースデザインが非常に流麗で秀逸なため、野暮ったさは微塵も感じさせません。
リューズに輝く美しいブルーサファイアは、大谷選手本人の提案によって採用されたもの。スポーティーなシリコンストラップとの対比が、唯一無二の高級感を醸し出しています。
裏蓋の回転錘(ローター)には、ロサンゼルス・ドジャースのロゴとチームカラーの青が採用されています。また、時計が積算を開始した日付も刻印されています。
「果たして将来移籍する可能性は……?」などと時計ライターの性でつい野暮な心配をしてしまいますが、それも含めて「いま、この瞬間の大谷翔平」を切り取った歴史的タイムピースと言えるでしょう。
本モデルは、動力に「自動巻き(機械式)」を採用しています。
100万時間(約114年)という超長期的な積算を目的とするならば、一見するとクォーツ(電池式やソーラー式)の方が手間に見えず、精度の面でも有利に思えます。しかし、これほどの長期運用を前提とした場合、自動巻きこそが技術的およびコンセプト的な「最適解」となると推測します。理由は以下の2点です。
クォーツ時計はIC(集積回路)などの電子部品を使用するため、数十年を経て部品の供給が途絶えた場合、修理が不可能になる可能性があります。一方、機械式時計は歯車やゼンマイといった物理的なパーツのみで構成されています。100年後に部品が枯渇したとしても、熟練の時計師であればパーツを金属から削り出して製造し、修理することが可能です。114年という「悠久の時」を刻み続ける時計において、半永久的なメンテナンス性が担保される機械式は必須条件です。
大谷選手は開発段階で「毎日身につけられる時計がいい」と要望を出しています。自動巻き機構は、着用者の腕の振り(日常の動作)を動力源としてゼンマイを巻き上げます。大谷選手が日々着実に努力を重ね、活動するその動き自体が、時計を動かすエネルギーへと直接変換される仕組み。
もちろん手巻きも可能ですので、オフの日にも積み重ねられた時間を確認しながら、ゆったりとゼンマイを巻き上げる大谷選手の姿を思い浮かべると、またグッとくるものがありますね!
本モデルが「Seiko Star Time」と名付けられた理由について、デザイナーの檜林勇吾氏は次のように語っています。
「星の動きというのも夜空を見ても動いているというのはパッと見て分からないが、実は着実に歩みを続けている。それと大谷さんの毎日の努力というのを紐づけて、Star Timeというすべてを円盤針で表すという一番難易度の高いものを提案した」
肉眼では動いていることすら分からないほど、ゆっくりと、しかし確実に100万時間へ向けて回転し続けるディスク。それはまさに、誰も見ていないところで地味で着実な努力を積み重ね、世界最高峰の舞台へと登り詰めた大谷選手の生き様そのものを体現しています。
会場では、構想から設計、製造、そして完成した時計が大谷選手へ届けられるまでの軌跡を追った開発ドキュメンタリームービーも上映されていました。
セイコーウオッチ代表取締役会長 兼 CEO 兼 CCOの服部真二氏より実物を手渡され、腕に着けた大谷選手は「イメージした通りのままで、ちょっとびっくりしてます。デザイン通りで本当に素晴らしいと思います」と、素直に驚いたような嬉しそうな表情を見せていました。
さらに大谷選手は、この時計に込めた自身の想いをこのように語っています。
「ここまで歩んできた道だったり時間っていうのを意識した時に、何枚目が動いてるかはちょっと分からないですけど、その時間を確認するとともに未来の姿っていうのを考えながら活力にできればいいんじゃないかなと思っています」
自身の過去の努力を肯定し、未来への活力へと変える。この「Seiko Star Time」は、単なる時間を計る計器を超え、大谷選手とともに新たな歴史を刻む文字通りの“相棒”となるはずです。
大谷翔平選手とセイコーの10年、そして「Seiko Star Time」の凄みに直接触れることができる本イベント。複雑機構の機械式時計に興味がある層にとっても、セイコーの技術の粋を目の当たりにできる貴重な機会です。
■東京会場(SHO-ism Seiko)
■大阪会場(SHO-ism Seiko)
■Seiko Star Time展 ~セイコーが挑んだ開発の舞台裏~
※最新の空き状況や入場方法の詳細については、セイコー公式特設サイトをご確認ください。
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