更新日:2022年12月20日
60年以上の歴史を誇るクォーツ技術のパイオニア、セイコー(SEIKO)。先駆者としてより優れたクォーツ時計の革新を続けています。
しかし、クォーツ時計は資産価値やステータスの面で、機械式時計やスプリングドライブよりも低く見られがち……「クォーツ 時計 故障」や「クォーツ 時計 ダサい」などのレッテルを貼られると、誰しもついつい機械式時計を選びがちです。
「クォーツ時計って壊れやすい印象だけど、一生モノのクォーツ時計はあるのかな?」
「グランドセイコーのメカニカルを買った方が、オシャレかな……」
今回は、グランドセイコーの9Fクォーツ時計に焦点を当てて、徹底的にどこよりもわかりやすく解説致します。合わせて、クォーツの特徴、メリットとデメリットもご紹介します。
「グランドセイコー(Grand Seiko)」の9Fクォーツは、ひと言で説明すれば、「クォーツを超えたクォーツ」。世界屈指のクォーツムーブメントです。
元々、世界屈指の技術力と実力を誇るグランドセイコー。独自技術の「スプリングドライブ」や世界有数の機械式時計達は、「国産ブランドナンバーワン」の地位を保ち続けています。
特に、業界に先駆けて発明、改良と進化を続ける最高峰クォーツ「9Fクォーツシリーズ」は、現在の高級時計ブランドの地位を築き上げる上で欠かせない存在です。値段も価値もピンキリなクォーツウォッチの分野に限れば、「世界最高峰の高級クォーツ時計メーカー」「クォーツのロールスロイス」という表現も過言ではない歴史と機能性を誇ります。
メーカーから供給された部品を組み立てるエタブリスールによる大量生産の対極を歩む「マニュファクチュール(自社一貫生産)」から創り出される丁寧な匠の芸術品は、クォーツの常識や偏見を打ち破る美しさと性能を実現。「正確・見やすい・美しい」腕時計の本質を日夜追求し続ける世界屈指のハンドクラフトクォーツメーカーなのが、グランドセイコーというブランドの醍醐味です。
そんなハイエンドクラスのクォーツモデルを生み出すグランドセイコーのクォーツですが、ネット上のイメージや評判はネガティブなものが目立ちます。
など、インターネット上の評判や口コミは、ステータス性や寿命の長さが気になっているようです。
結論を先に伝えます。グランドセイコーのクォーツ時計は、世界に誇れるコストパフォーマンスに優れた価値の高いムーブメントです。グランドセイコーが成し遂げた数々の偉業と歴史は、時計史に残る金字塔ばかりであり、近年では世界的な評価も高まりつつあります。
9Fクォーツを購入後、後悔しないためにも、常にクォーツ発展の中心であったグランドセイコーのドラマをまずはご紹介します。合わせて、メリット・デメリットも一つひとつ丁寧に掘り下げて解説致します。
値段以上のパフォーマンスを発揮し、エントリーモデルとしても最適なグランドセイコーのクォーツ時計。世界初のクォーツ式腕時計開発で有名なグランドセイコーは、常にクォーツムーブメントの先駆者として、世界を席巻し続けています。
腕時計の歴史を変えたグランドセイコーのクォーツ開発ストーリーと進化の過程をご紹介します。
クォーツ時計は水晶振動子を用いた時計で、英語でQuartz clockやQuartz watchとも呼ばれます。原理の発見自体は古く、ノーベル賞受賞や伝記でも有名なキュリー夫人の夫ピエール・キュリーとその兄ジャックが1880年に発見しています。1930年代には、一部の研究機関や放送局などでは、クォーツ時計が使用されていましたが、タンス並みのサイズがあったため、一般的に普及するまで30年以上の時間を要しました。
クォーツ腕時計の実用化に向け、世界の名だたる企業達が小型化&高性能化にしのぎを削り合う中、諏訪湖を拠点とするメーカーが覇権を握ります。現在のセイコーエプソンである諏訪精工舎です。
セイコーの歴史とも呼べるクォーツ腕時計の歴史……グランドセイコーのクォーツは、どのように進化を続けてきたのでしょうか?
「初代グランドセイコー」が発表された1960年代は、グランドセイコーが世界に羽ばたいた輝かしい時代です。機械式時計の精度を競うスイス天文台コンクールで、グランドセイコーは上位を独占し、国産トップブランドの名を欲しいままにしていたほどです。
グランドセイコーが凄い点と言えば、機械式時計でも世界トップクラスの技術を持ちながら、いち早くクォーツ時計の開発にも乗り出していた点でしょう。時が少し遡った1958年には、クォーツ時計の開発に乗り出し、放送局向けの「水晶発振式親時計」を開発。しかし、大型ロッカー並み(高さ2.1m)の大きさがあり、持ち運びにすら苦労するサイズでした。
そんな中、アジア初となるオリンピック開催に当たる1964年の東京オリンピックが正式決定。グランドセイコーは、オリンピックの公式計時に取り組むことを決断します。しかし、オリンピックの公式計時は、1932年のロサンゼルス大会以来、スイスの大手時計メーカーであるオメガとロンジンの独占状態でした。しかも、スポーツのタイム計測について知識がある人もおらず、スポーツ専用のストップウォッチすらない状況でした。
そこで、セイコーグループは1961年から各種機器の開発に向けて、関連企業3社で分担することを決意します。
特に、次世代ウォッチ実用化に向けた「59Aプロジェクト」を翌年1959年からスタートしていた諏訪精工舎は、クォーツ技術の発展において目覚ましい活躍を見せます。前述の通り、大型ロッカーサイズだった水晶時計装置を東京オリンピック開催時には、テーブルに置ける大きさまで小型化に成功。
世界初のポータブル水晶時計「クリスタルクロノメーター」は、AC電源不要・精度日差0.2秒という当時としては異例の精度とサイズです。壁掛け時計並みのサイズ(縦20cm×横16cm×厚さ7cm)に抑え、総重量はわずか3kgにまでコンパクトに収めています。
世界初の水晶発振式デジタル・ストップクロックを完成させたセイコーチームは、マラソン優勝者アベベの世界記録2時間12分11秒2を計測するなど、1/100秒単位の7桁までの表示を液晶もLEDもない時代で達成します。アジア初のオリンピック開催の大会公式時計メーカーとして世界に誇れる偉業でしょう。
水晶振動子の実用化を早めた古賀逸策氏は、日本初のクォーツ時計の製作にも携わっています。
最大の発見は、現在ではATカットとも呼ばれる「古賀カット」を1932年に発見。ひと言で簡単に説明すれば、温度変化に弱い水晶をより安定性の高いカット角度を見つけ出す偉勲です。1963年に文化勲章を受章したのも納得ですね!
水晶技術の発展に貢献した「クォーツの父」のような知る人ぞ知る偉人でしょう。
日本企業が世界に躍進する大きなきっかけにもなった1964年の東京オリンピックで、大会公式時計メーカーとして大イベントの成功を支えたグランドセイコー。セイコーの技術力を世界に示すのにも成功し、ブランドイメージは飛躍的に向上します。
更なるステップアップを目指し、グランドセイコーは世界的に権威のあるスイス天文台コンクールに挑戦。機械式時計の精度コンクールでも上位を独占する中、ボード水晶時計部門でも上位を狙います。
前述のクォーツ搭載型置き時計「クリスタルクロノメーター」を1963年に発表した翌年、ニューシャテル天文台コンクールのボード水晶時計部門で2位から7位を独占します。諏訪精工舎は水晶懐中時計の更なる小型化を進め、1966年に2位から5位、1967年に1位から5位を獲得するほどの躍進を果たします。
当初はテンプ駆動式や音叉時計、クォーツ式など各方式で研究を行っていたセイコーですが、1968年に服部時計店(現セイコーホールディングス)の三代目社長服部正次氏から、一つの厳命が下されます。
「1年以内にクォーツを載せた腕時計を商品化して欲しい」
世界初のクォーツ腕時計「セイコークオーツアストロン 35SQ」が生まれる1年前の出来事です。
腕時計の技術の頂点であり、最高精度を競い合うスイス天文台コンクール。時計づくりの聖地スイスで毎年開催された世界最高峰の勝負の場に該当します。ちなみに、スイス天文台コンクールは、減点方式のニューシャテル天文台と60点満点の加点方式のジュネーブ天文台コンクールの2種類があります。
驚くことに、機械式時計部門とボード水晶時計部門の両方の分野で、並み居るスイス時計の名門ブランド達も参加する中、たった数年で上位を独占しています!!世界的に評価されている日本の「ものづくり」の凄さのDNAを感じられる偉業ですね……本当に凄すぎます!
世界的なクォーツ開発競争を制したセイコー及び諏訪精工舎。1959年に中村恒也氏をリーダーに始まった「59Aプロジェクト」は、多くのエンジニア達の汗と涙の結晶が凝縮された歴史です。同年、1.5Vの電池で駆動するクォーツムーブメントの開発から着手し、確かな実績を挙げることから始まります。
しかし、腕時計サイズにまで小型商品化するためには、3つの大きな課題がありました。
課題①水晶振動子の小型化と安定化⇒音叉型水晶振動子を開発
課題②省エネルギー化⇒最初のクオーツ腕時計(35SQ)はトランジスタによるハイブリットICを使用
課題③モーターの省電力化と小型化⇒ステップモーターの開発
各課題をどのように克服していったか?も合わせてご紹介します。
諏訪精工舎が他社に先駆けて、クォーツ腕時計を実用化できたポイントの一つとして、「水晶振動子の小型化」に成功した点でしょう。それまでのクォーツ時計は、「精度が高いもののサイズが大きい」という弱点がありました。どんなに小型な水晶振動子でも長さが約50mmほどもあり、腕時計内に収めるのは不可能な状況でした。
そこで諏訪精工舎は、ある秘策を用います。水晶振動子の構造を新しく「音叉型」に変えることで、問題を克服するのです。音叉型水晶振動子「Cal.35SQ」は、直径4.3mm×長さ18.5mmまで小型化することに成功します。
腕時計に応用できるように、衝撃の問題は「真空のカプセル内に振動子をつり下げる」方法で、温度変化の問題は「クリスタルクロノメーター」にも使われた「サーモバリコン(温度補正装置)」で、それぞれ問題をクリアしていきます。
音叉型水晶振動子は、パソコンやスマートフォン、デジタルカメラなど、多岐にわたって有効活用されており、現在の私達の生活インフラに欠かせない存在です。
2つ目の問題である「省エネルギー化」も優れた技術力で、セイコーグループは切り抜けます。「Cal.35SQ」には、セラミック基板上に……なんと、手作業!で、トランジスタを76個、抵抗84個、コンデンサを29個などの素子をハンダ付けで固定。省電力&小型化を図ったハイブリッドICを実現しました。
その後、3分の1~4分の1の低パワーで動く「CMOS-IC」を自社製造することで、より小型化&低消費電力化を実現していくのです。
スプリングドライブの歴史にも共通しているので、合わせて関連記事をご覧ください。
「ないならば、自分達で作ってしまえばいい!」
日本のものづくりへの真摯さが伺える……感動的なエピソードですね!
水晶の問題を解決できた諏訪精工舎ですが、それでもまだ小型化のハードルは高い状況でした。最大の壁であるクォーツの振動を針の回転運動に置き換える変換装置である「モーターのサイズと消費電力」の問題が残っていました。
この問題を解決するべく、諏訪精工舎の技術者達は議論に議論を重ね、ステップ(間歇型)モーターという一つの発想に至ります。永久磁石と電磁石を組み合わせ、小型モーターで電気信号を回転運動に変える仕組みです。ローターに白金コバルト、コイルに0.2ミリメートルの極細銅線を約2万回巻き、直径2.8ミリメートル×厚み0.5ミリメートルの超小型モーターを生み出すことに成功します。
しかし、2つの難題がステップモーターに立ちはだかります。
どちらもモーターの特性とも言える習性に、諏訪精工舎のクラフトマン達は頭を悩めました。一つ目のモーターの逆回転現象は、モーターが1回逆転するたびに、1秒の誤差が生じてしまうため、腕時計にとっては大敵とも呼べる現象です。更に、実際のムーブメントの設計(直径30.0mm×厚み5.3mmのサイズ)に収めるために、厚みを変えずにステップモーターを組み込まなければいけない難問までありました。
モーターの逆回転現象は、ローターとステーターの距離を変えることで、ローターの逆回転を防ぐことが出来ましたが、モーターの収納スペースは正攻法では解決できない超難問でした。
この問題を解決するべく、諏訪精工舎の開発陣は、奇想天外な荒技で切り抜けます。
「デッドスペース(使わない隙間)にモーターの部品をバラバラに配置する」
歯車の厚み0.1ミリメートル×直径3.5ミリメートル……そのわずかな隙間にステーターやローター、コイルを張り付けることで格納スペースを新たに作りあげたのです!驚嘆に値する発想力と執念ですよね!!
前述の二つ目の問題である「消費電力の問題」も、柔軟な発想と対応で解き明かします……「カチッカチッ!」の音でお馴染みの「1秒運針」です。機械式時計のように小刻みに針を動かさず、1000分の25秒程度だけモーターに電流を流すことで、消費電力の問題に決着をつけたのです。
度重なる障害を乗り越えた1969年12月25日……遂に、中村恒也氏達「59Aプロジェクト」チームの悲願が達成されます。「セイコークォーツアストロン 35SQ」の発売です。現在市販されているクォーツ時計でも平均月差±15秒~20秒程度の性能が一般的ですが、「クォーツアストロン」は初のクォーツ腕時計でありながら月差±5秒という高精度を実現。まさに、高級腕時計に相応しいスペックでしょう!
わずか10年あまりで、クォーツ時計のムーブメントの大きさを約30万分の1の体積にまで小型化させた偉業は、「世界中の時の価値」をも変えてしまいました。現在では腕時計の約97%が、クォーツ時計であり、セイコー方式が世界のスタンダードとして統一されています。
ステップモーター方式は、半世紀が経過しても新しい変換方式が登場しない、ノーベル賞に匹敵する画期的な発明技術でしょう。世界を驚愕させたセイコーグループのエンジニア達は、更なる改良を続けます。
世界中に「クォーツショック」を巻き起こしたセイコー。機械式腕時計を製造していたメーカーは大打撃を受け、休眠状態や倒産してしまう事態にまで発展しました。機械式時計で世界最高峰の地位を確立したグランドセイコーも例外ではなく、大ダメージを受けます。
こちらの記事でも述べていますが、グランドセイコーでさえ一時生産中止になるほど追い込まれますが、セイコーグループはその歩みを止めませんでした。
1969年誕生の「クオーツ アストロン」の精度は、月差±5秒という当時の超高精度でしたが、より正確な1秒を目指し、セイコーはクォーツムーブメントの改良を目指します。改良のカギは、水晶振動子の弱点である「温度変化」です。
水晶振動子は温度が変化すると振動数も変わってしまう特性を持っており、温度が25度ならベストパフォーマンスを発揮しますが、25度を境に暑くても寒くても周波数が小さくなってしまい、誤差が生じてしまいます。
1978年、腕を競い合うように諏訪精工舎と第二精工舎(※諏訪精工舎が99系、第二精工舎が92系ムーブメント)が、「ツインクォーツ」をそれぞれ開発します。水晶振動子を2本内蔵することで、一つを温度検出用として用いることで、温度変化による誤差を時計内部で補正する方式を編み出したのです。
そして、満を持した1988年…グランドセイコー初のクォーツ式腕時計「95GS」が発売されます。年差±10秒という高精度だけでなく、水晶振動子を選りすぐることで、耐温度特性・耐湿度特性・耐衝撃性能の全てを兼ね備えた当時の最高峰の品質を成し遂げます。
「クォーツショック」で自身もダメージを受けたグランドセイコーですが、再び“グランドセイコー”の名を世に知らしめたのは、やはり“グランドセイコーのクォーツ”だったのです。年差±10秒の精度を誇る95系キャリバーは、グランドセイコーの再生を支えた屋台骨ともいうべき存在でしょう。
「最高峰の腕時計を目指し続ける」
純粋な目的に向けて、グランドセイコーはひた走ります。目指すべきゴールは、グランドセイコーの名を連ねるに相応しい究極のクォーツムーブメントの誕生です。
「いい腕時計とは?」
たった一つの究極の問いから、9Fキャリバー作りは始まります。実用性を探求するグランドセイコーらしい一つの答えが見つかります。
「大きく重い針をクォーツで動かしたい」
当時の常識では、クォーツ技術では太くて重い針を動かすトルクはないというのが定説でした。グランドセイコーは、クォーツの弱点を克服するべく、クォーツのメリットである大量生産から決別し、一つひとつ丁寧な手作業にこだわった「マニュファクチュール(自社一貫生産)」を選び出します。
そして5年後の1993年、「正確・見やすい・美しい」腕時計の原点が詰まった究極のクォーツ「キャリバー9F」が誕生します。グランドセイコーにとって、理想が現実になった記念すべき年です。
グランドセイコーはより優れたクォーツを生み出し続け、クォーツの定義そのものを変え続けています。大量生産と別れを告げ、「信州 時の匠工房」の卓越した職人達が、一つひとつ丁寧にパーツの製造から組み立て調整まで一貫して行うことで、「クォーツを超えたクォーツ」を日々生み出しています。
詳細は後述しますが、GMT機能搭載「キャリバー9F86」は、トルクが弱い非力なクォーツが多い中、GMTの「4本目の針」すら力強く動かし、9Fシリーズに欠かせない「瞬間日送り機構」と新たな「時針単独修正機能」の両立に成功しています。
例えるなら、高級スポーツカーのフェラーリでしょう。ステータス性と性能は勿論、GMT機能搭載だから出来た「なまめかしいスポーティーなルックス」すら、最上級の高級クォーツ「キャリバー9F86」搭載モデルは携えています。
初代グランドセイコーを生み出した諏訪精工舎の伝統と技術を受け継ぐ腕時計づくりのエキスパート達のホームグラウンドが、セイコーエプソン塩尻事業所内(長野県)の「信州 時の匠工房」です。開発や設計から、針やケースなどの各パーツの製造と組立調整まで全ての工程で、世界最高峰の匠の技術を余すところなく発揮しています。
「信州 時の匠工房」では日々、独自技術スプリングドライブと世界ナンバーワンの最高峰クォーツムーブメントを搭載した腕時計が生み出されています。世界のほとんどのクォーツが自動組立方式を取っている中、グランドセイコーの9Fクォーツ達は一つひとつ丁寧な手作業を経て完成しています。
圧倒的精度と高機能性を保つために、異なる2名の職人が組立を分担。それぞれの技術と情熱が掛け合わせることで、精密かつ精巧な「究極のクォーツ」が誕生するのです。
電圧を加えると、安定した周波数の電気信号を発する特長を持つクォーツ。その特性を生かした時計がクォーツウォッチです。手巻きや自動巻きの機械式時計が常識だった価値観を一変させ、現在ではもっともスタンダードな時計でしょう。
まず、クォーツそのものの仕組みを簡潔に記載します。
①:電池の電気を使い、水晶振動子が毎秒32,768振動という非常に高い振動を発する……仕組みだけでは凄さやメリットが伝わりにくいと思うので、クォーツの特長もまとめてみました。
グランドセイコーの9Fクォーツが凄い点は、クォーツでありながら機械式時計のメリットも併せ持っている部分でしょう。それでは、グランドセイコーの9Fクォーツのメリットを順番にご説明します。
グランドセイコーの9Fクォーツの最大の魅力と言えば、なんと言っても圧倒的なまでの精度の高さです。メリットの3点目で詳細を述べますが、高精度という圧倒的な武器は、忙しいビジネスマン&現代人にこそ、「手間がかからない」という大きな見返りを与えてくれます。
機械式時計なら毎日数秒~数十秒単位のズレは、どうしても避けられません。巻き上げ作業は愛機への愛着はわくものの……精神的余裕がない時には、「巻き上げの手間と時間の長さ」が煩わしく感じる時もあるでしょう。しかし、9Fクォーツなら月差を超越した「年差」というハイスペックさで、私達の「今、何時だろう?」という時間のストレスを取り除いてくれます。
ふと、何気なく自身の9Fクォーツ時計と正確な時刻を照らし合わせた時こそ、「ズレてない!やっぱり、買ってよかったな!」というのは、機械式時計では得られない安堵感です。
9Fクォーツシリーズが年差レベルの異次元精度をキープできるのは、選ばれぬかれた水晶振動子のみを使用しているからです。水晶振動子はどうしても個体差があります。個体によっては、環境の変化や時間経過が原因で、「振動数が不安定=進みや遅れの原因」を引き起こす水晶振動子も少なからず存在します。
グランドセイコーの9Fクォーツは、一定の電圧を人為的にかけて経年変化に強い水晶振動子のみを選りすぐる「エージング方式」を先駆け導入しています。3ヶ月に及ぶエージング工程をクリアした水晶振動子のエリートのみが、9Fクォーツに搭載されているのです。
また、温度変化に弱い水晶振動子かどうかを見極めるために、540回に及ぶ検温を実施。たった1回の振動数の変化が、1年間で約16分の誤差に繋がるため、個体ごとにICとマッチングさせ、最適な状態に仕上げられるよう組み合わせています。
9Fクォーツの抜群の精度を保つ「緩急スイッチ」機能を語るのも忘れてはいけません。機械式時計の緩急針と同様、手軽に精度調整を行える機能です。
プラス方向もしくはマイナス方向に回すことで、進みと遅れを簡単に調整可能です。9Fクォーツムーブメント達は、高精度かつ時刻ずれのトラブルにも比較的強いため、せっかくある緩急スイッチを使ったことがない……という9Fクォーツウォッチ愛好家の話もありますが、万が一の事態に「転ばぬ先の杖」をしっかり備えているのが、グランドセイコーらしいこだわりぶりですね!
一般的なクォーツ時計と言えば、「薄くて軽い」のが定説です。その常識に「待った!」をかけるように、高級感のあるパワフルな実用性の高いムーブメントづくりをグランドセイコーは目指します。
薄くて軽いのは勿論、普段使いのしやすさから見ればいい点なのですが、悪く言えば「最低限の性能と素材」を使っている裏返しでもあります。高級腕時計の対極の存在に当たる安物のプラスチック時計は、わかりやすい例でしょう。
グランドセイコーの9Fクォーツは、太く重い針を動かす独自機能「ツインパルス制御モーター」を開発します。機能を簡単に説明すると、通常のクォーツは1秒に1ステップ動く(1秒運針)のですが、9Fクォーツは2回に分けて針を動かすことで、針の動く距離を短くし、移動のロスや負担を減らしています。クォーツの弱点であるトルクの弱さと消費電力の問題を一度に克服した実に理にかなった機能ですね!
「コロンブスの卵」のように、固定観念から脱却することで、普通のクォーツ式時計では不可能だった重厚感のある重い針を「9Fクォーツ」は容易く動かします。「ツインパルス制御モーター」の大きな功績もあり、高級腕時計に必要不可欠な部品である「高級感のある太く重い針」を9Fクォーツは搭載できるようになったのです。
デイト機能付きモデルの9Fクォーツなら、「瞬間日送りカレンダー」の魅力も味わえます。トルクが弱いクォーツ式腕時計では不可能だと思われていた瞬時に切り替わる日付表示機能をグランドセイコーは世界で初めて搭載することに成功。
午前0時~5分の間にのみ、見ることが出来る日付の切り替えの瞬間は、熟練した組立職人が手作業で調整することで、クォーツの不可能を可能にしています。
個人的に9Fクォーツの最大のウリだと感じる「普段使いのしやすさ」は、9Fクォーツを愛用する際に重宝するはずです。
腕時計を購入した後に、よくある後悔したエピソードとして……
「腕時計が煌びやかすぎて、持っている服装と合わない」
「時計が派手&高級過ぎて、職場に着けていきづらい」
など、オンオフ問わず着けられる時計かどうか?場面を問わず、パッと着けられるかどうか?は、気兼ねなく腕時計を愛用するために必要不可欠な要素です。その点、グランドセイコーのクォーツウォッチは、ステータス性と品質、デザイン性と価値の総合的なバランスも良く、「愛用しやすい」という付加価値もプラスされます。
後述の「海外でも高評価」の項目で、詳しくご紹介するアメリカのベストセラー作家ビル・アドラー氏のインタビューコメントを先に抜粋してご紹介します。
『クオーツを手にして気づいたのが、文字通り何も気にせずに使うことができるということ。例えば、急に出かけることになりパッと手にとって手首に巻いて家を飛び出ても、正確な時間を刻み続けていることはダイヤルを見なくてもわかります。常に安心感があるんです』
クォーツにするか、機械式時計にするか迷っている方にとって、頼れる経験者からのアドバイスでしょう。9Fクォーツはありがたいことに、一般的なクォーツよりも「究極のクォーツ」に相応しい耐久性を兼ね備えています。
クォーツは機械式時計やスプリングドライブに比べると、構造がシンプルな電子式仕様なため、ラフにアクティブに使用しても壊れにくい、クォーツならではのメリットがあります。日々気軽にクォーツウォッチを愛用すればわかる「普段使いのしやすさ」は、機械式時計やスプリングドライブにはない自慢の武器に値します!
長い間、普段使いするためには衝撃に強い耐久性に優れたタフな構造が必須です。特に、普段目に見えにくい部品の摩耗と劣化を防ぐ「潤滑油」は、蒸発しないよう気をつけつつ、ホコリやゴミから守らなければいけません。
グランドセイコーの9Fクォーツは、長期間安心して愛用できるように、「スーパーシールドキャビン構造」を採用することで、壊れにくい頑丈なキャリバーを実現。「組み合わせ軸受構造」を取り入れることで、ローターの気密性を高め、ホコリやゴミの侵入を防ぎ、潤滑油を蒸発させにくくする優れものな機能です。
面白いエピソードとして、「スーパーシールドキャビン構造」誕生に、初代グランドセイコーに30年保たれていた潤滑油(※裏蓋が開けらた痕跡はない)が影響しています。
エピソードを知ったキャリバー9F開発陣は、当初不必要だと考えていた「潤滑油を守り支える機構」が必要不可欠と結論付け、改良に取り掛かります。1959年のセイコークラウンにも採用された「ダイヤフィックス」の仕組みを「組み合わせ軸受構造」に取り入れ、ルビーの穴石と受石の間隔を一定に保ち、保油性を格段と高めています。
油断大敵……の言葉通り、潤滑油は9Fクォーツを故障やトラブルから未然に防いでくれる欠かせない「パーツ」の一つです。実用性を追求するグランドセイコーらしい、使用者にとってもありがたい目に見えない部分への配慮ですね。
9Fクォーツの4つ目のメリットと言えば、「コストパフォーマンスの高さ=お得感」でしょう。関連記事の「後悔しないためのグランドセイコー購入のデメリットとメリットまとめ」でもお伝えしていますが、国内よりも海外の評価が高く、「国産時計の最高峰」であるグランドセイコーの高級腕時計を25万円弱から購入できるのは、大きなセールスポイントです。
質実剛健かつ「シンプルイズベスト」なデザイン性は、悪く言えば「地味」な部分もあるかもしれません……ですが、そのデメリットは前述③でも述べた通り、悪目立ちしにくくどこでも着けていけるメリットの裏返しでもあります。
機械式時計をメインに愛用する方でも、コレクション目的やサブ愛機候補として、9Fクォーツを購入するのは有効な選択肢でしょう……再三お伝えしている通り、これだけの品質・機能・こだわりが詰まった「クォーツのロールスロイス」や「クォーツのポルシェ」達を数十万円程度で購入できるのですから。
記事後半のデメリットで詳細は後述しますが、純正部品のパーツ問題があるので、「9Fクォーツ=一生モノの愛機」……とまでは言い切れませんが、きちんとオーバーホールさえすれば、数十年単位でハイスペックな高級腕時計を使用可能です。長い年月になればなるほど、オーバーホール費用が割安な利点は、のちのちの愛機の維持費軽減へと繋がります。
詳細は関連記事の「コンプリートサービス料金」の表を合わせてご覧ください。
メリット③でもご紹介したアメリカのベストセラー作家ビル・アドラー氏のインタビュー内容が、わかりやすい海外の高評価だと感じたので、まず最初にご紹介します。
『時計愛好家のなかには、クオーツウオッチを軽視している人もいますよね。私もかつてはそうでした。前にグランドセイコーのクオーツウオッチを購入した友人になぜ買ったのか理由を聞いたことがありますが、そのときは彼もはっきりと答えられませんでした』
『それから2年くらいして、9Fクオーツは私のコレクションに必要だと感じたのです。グランドセイコーのクオーツムーブメントは、他の一般的なクオーツと違って職人がひとつひとつ手作りしていることはもちろん、デザインを含めたパッケージ全体が素晴らしいと思います』 (※ビル・アドラー氏のインタビューより抜粋)
時計愛好家の方なら素直にうなずける内容の体験談ですよね!
関連して、3つの動画もご紹介します。多分、私だけではないでしょうが、見ていると欲しくなっちゃいますよね!?
生産終了モデルの「SBGV245」の魅力を熱弁するオランダの時計ユーチューバーのジョディさんの動画です。チャンネル登録者数22.5万人を誇る実力派ユーチューバーだったりもします。
オランダ語からの日本語自動翻訳が原因で、おかしな和訳も目立ちますが、赤いゴジラTシャツと相まって楽しく「SBGV245」の魅力を知ることが出来ます。
スプリングドライブの海外評価でもご紹介したイギリスで人気の大手時計買取店「Watchfinder & Co.」さんも同様に、SBGV245を「Best Watch I’ve Owned(私が所有している最高の時計)」とタイトル含め絶賛しています。生産終了モデルなのが惜しまれますね。
面白い点として、権威ある世界的な時計メディア「HODINKEE」も、SBGV245を「最も美しいモデルの1つ(※文中より抜粋)」として褒め称えています。
記事の最後にもご紹介する強化耐磁時計「SBGX341」の魅力を丁寧に語る表圈儿さん。チャンネル登録者数はまだ少ないですが、グランドセイコーを紹介した動画が、2.1万回再生と爆伸びしています……グランドセイコーの9Fクォーツを世界的に知りたがっている一つの証明だと感じたので、ピックアップしてみました。
時として、国産ブランドのグランドセイコーに身近な日本人よりも、海外の評価の方が正当な場合があります。9Fクォーツの正確な評価も例外ではないでしょう。
関連した他に面白いエピソードとして、インスタグラムで検索した場合、カタカナの「グランドセイコー」より英語表記の「Grand Seiko」の方が遥かに多いのが特筆すべきポイントです。自分のフィーリングに適した他人の評価や感想は、時計選びの指針になり得ます。気になった方はインスタグラムで海外の評価を調べてみましょう!
わかりやすいように、クォーツの特徴のまとめも兼ねて、スプリングドライブと機械式との違いを簡単にまとめてみました。表も合わせてご覧ください。
ムーブメント | 動力(トルク) | 制御 | 価格 | 寿命 | 精度 | ムーブメントの簡単な特徴 |
---|---|---|---|---|---|---|
機械式 | ゼンマイ(強) | 脱進機 | 中~高 | 長 | 日差数秒 | ・寿命が長く、ステータス性も高い ・オーバーホールが課題 |
クォーツ式 | 電池(弱) | 電気信号 | 低~中 | 短 | 年差数秒 | ・年差数秒の高精度、電池交換が必須 ・寿命の短さが課題 |
スプリングドライブ | ゼンマイ(強) | 電気信号 | 中~高 | 長 | 月差数秒 | ・電池交換不要&精度は高め ・メンテナンス面が課題 |
<機械式時計のメリットとデメリット、違い>
◎芸術性とステータス性の高さ
▲精度の低さ
▲巻き上げの手間
<スプリングドライブのメリットとデメリット>
◎機械式時計とクォーツのいいとこどりをしている
▲機械式時計とクォーツの悪いとこどりもしている
▲メンテナンス面で難あり
<クォーツ式のメリットとデメリット、違い>
◎コストパフォーマンスの高さ
◎精度が高く普段使いしやすい
▲寿命が短い
▲資産価値が全体的に低め
クォーツのデメリットについては、後ほど詳しくご説明しますが、ステータス性と資産価値を維持しながら、雑に&ラフに普段使いしても問題が少ないのは、9Fクォーツの重要なストロングポイントですね!
機械式時計に匹敵する力強さすら有しているグランドセイコーの極上ムーブメント9Fクォーツ。「信州 時の匠工房」の優れた技術を持つエキスパート達が、一つひとつ丁寧に手作業で完成させています。キャリバー9Fのクオリティは、「究極のクォーツ」と賞賛されるのも過言ではない出来栄えです。
9Fクォーツの現行キャリバーは、「9F8シリーズ」の4種類と「9F6シリーズ」の2種類です。今回は「9F8シリーズと9F6シリーズ」の違いや特徴と、代表的なキャリバー「9F86」のエピソードを簡単にご紹介します。
キャリバー | 精度 | 電池寿命 | ムーブメントの簡単な特徴 |
---|---|---|---|
9F86 | 年差±10秒 | 約3年 | ・日付カレンダー・GMT機能つき ・ 瞬間日送り機構&24時針(デュアルタイム表示機能)&時針単独時差修正機能 |
9F85 | 年差±10秒 | 約3年 | ・日付カレンダーつき ・瞬間日送り機構&時針単独時差修正機能 |
9F83 | 年差±10秒 | 約3年 | ・日付・曜日カレンダーつき ・瞬間日送り機構 |
9F82 | 年差±10秒 | 約3年 | ・日付カレンダーつき ・瞬間日送り機構 |
9F62 | 年差±10秒 | 約3年 | ・日付カレンダーつき ・瞬間日送り機構 |
9F61 | 年差±10秒 | 約3年 | ・日付カレンダーなし |
究極のクォーツに匹敵する9Fクォーツの歴史は、1993年の9F8系(9F8シリーズ)の日付カレンダー付の「キャリバー9F82」と日付&曜日カレンダー付の「キャリバー9F83」から始まります。
そして、2018年には9Fクォーツ25周年を記念するクォーツムーブメント初のGMT搭載ムーブメント「キャリバー9F86」が堂々登場。2020年にも「グランドセイコー生誕60周年」を祝う最新ムーブメントの「キャリバー9F85」が誕生します。
1997年には、9F8系をよりコンパクトダウンさせた9F6系(9F6シリーズ)がラインナップ。シンプルかつ薄型なムーブメントながらも、9F8系と同様のスペックと特徴を兼ね備えます。
「9Fクォーツ」の目玉と言えば、なんと言ってもクォーツ初のGMT搭載ムーブメントである「キャリバー9F86(Cal.9F86)」の存在は欠かせません。
GMTの4本目の針にまでこだわった「4軸独立ガイド構造」が生み出す時針・分針・秒針・GMT針の独立回転した針の滑らかな動きは必見の価値ありです!弦楽四重奏(カルテット)のように、それぞれが滑らかに文字盤上を優雅に彩ります。
更に、「瞬間日送り機構」と「時針単独時差修正機能」も搭載しており、キャリバー9F86は実用性にも富んだ新世代のグランドセイコーを象徴するスペシャルクォーツムーブメントです。
旅行に行った際に必ず生じてしまう時差の問題……現地時間に調整すると必ず時計が止まってしまい、秒針単位でのズレが生じてしまいます。普通のクォーツなら問題ないかもしれませんが、年差単位での精度を誇るグランドセイコーは一切の妥協をしません。
「時針単独時差修正機能」は、時針だけ動かすことができ、時計は動いたまま秒針を止めずに調整可能なです。せっかく、秒単位で正確に合わせていた高精度クォーツウォッチの時間合わせの手間を減らすことは、楽しくも忙しい旅行のストレスを減らすことにも繋がります。
なお、開発チームのエピソードによると、25年前から開発構想はあったものの、瞬間日送り機構と時針単独時差修正機能を両立させようとすると、時針側の「ジャンパー」と呼ばれるパーツの強度を確保出来ず、25年の試行錯誤が必要だったとのことです。
機能の要となる「時ジャンパー体」に秘密があるらしいのですが、現在はまだ秘密のベールに包まれており、詳細は謎に隠されています。名前も不思議な印象ですし、気になる存在ですね!?
無敵の存在に思えるグランドセイコーのクォーツですが、幾つかの問題点やデメリットもあります。後半部分に関しては、グランドセイコーのクォーツのデメリットと問題点に言及して、お伝えします。
購入後に「やっぱり、買わなければよかった……」と後悔しないように、クォーツの課題点を事前にしっかりと確認しておきましょう!
キャリバー9Fシリーズは、耐磁板が組み込まれており、モーターにも磁気経路を確保しているため、比較的磁気の影響を受けにくいムーブメントだと言えます。ISO規格に定められたダイバーズウオッチと同等の耐磁性能4800A/mを誇り、日常生活に差し支えない耐磁性能を有しています。
耐磁性能4800A/mを具体的に説明すると、磁気に5cmまで近づけても性能を維持できるレベルです。しかし、機械式時計・クォーツ・スプリングドライブ……そのいずれにしても、精密機械である高級腕時計に磁気は大敵です!
磁気に近づければ近づけるほど、磁気帯びの期間が長ければ長いほど、ボクシングのパンチドランカー症状のように、磁気帯びという厄介な病状を抱えるリスクが高まります。関連記事でもお伝えしている通り、身近な電化製品から5センチ~10センチ以上離すように心がけましょう!!
一般的にクォーツウォッチは、資産価値が低い傾向があります。ただし、その理屈は格安クォーツウォッチを含めたクォーツウォッチ全体の話であり、グランドセイコーの9Fクォーツは比較的価値は高めです。
2つの関連記事でもお伝えしていますが、9Fクォーツ時計含めグランドセイコーの海外評価は高く、一部の限定モデルは高騰中なので、資産価値に関しては「モデル次第で価値がピンキリ」が正しい評価です。
ステータス性も同様に、「後悔しないためのグランドセイコー購入のデメリットとメリットまとめ」の「認知度・知名度・ステータス性が低い」で詳細を述べていますが、海外評価も高く「時計を知っている人が見たら凄い!」と思われる時計がグランドセイコー全般の傾向です。
価値がわかる方なら、グランドセイコーの9Fクォーツウォッチは、「最高のクォーツ(高級腕時計)を持っているな!」と思われるのですが、あまり詳しくない方には安物クォーツと「似たり寄ったり」に思われてしまうかもしれません。
価値もステータス性も本来高いはずの9Fクォーツを購入したのに、「機械式時計にすればよかった!」や「グランドセイコーのクォーツはやめとけ!」など類似の後悔体験談をちらほら見かけるのは、クォーツウォッチへの偏見が一つの原因となっているのでしょう。
ある意味、この項目はグランドセイコーの9Fクォーツを選ぶ際の一番のデメリットかもしれません。前述のベストセラー作家ビル・アドラー氏も類似した内容を語っていたように、歴史が浅いクォーツウォッチは見下されやすく、「クォーツのロールスロイス」クラスなはずの9Fクォーツ達も機械式時計より下に見られがちなのですから。
機械式時計のゼンマイの代わりに、クォーツは電池を動力源にしているため、電池交換の手間は避けられません。おもちゃやテレビのリモコンのように、簡単に電池を変えられればいいのですが、9Fクォーツは多機能性&年差レベルの高精度を誇る高性能クォーツなため、プロに交換してもらわなければなりません。
電池交換を面倒に感じてしまい、そのまま放置すると液漏れが原因の様々なトラブルに見舞われるリスクが高まるのでご注意ください。
グランドセイコーは時計に適した純正電池を使用しているため、電池交換は約3年と比較的長めです。正規店に電池交換のみを依頼した場合、「5,500~6,600円+送料」が、約3年おきにかかります。長く使えば使うほど、オーバーホール費用のメンテナンス代も合わさると、時に思わぬ出費と感じてしまうかもしれません。
割安な時計専門店に依頼すれば、安く済ませることは可能ですが、「電池交換のみ」を最優先にするリスクがあります。その結果、非純正電池交換をされてしまったり、精密な9Fクォーツウォッチの機能性を知らず知らずのうちに低下させてしまう可能性もあるので、正規店の電池交換が妥当です。
肝心の寿命は、グランドセイコーのサポート体制を加味して、約30年~50年と予想されています。ただし、電子パーツの寿命がクォーツウォッチの寿命そのものに繋がっているので、9Fクォーツを一生モノの愛機に近づける場合は、正規店への定期的&適切なオーバーホールが必要不可欠です。
関連記事の「スプリングドライブ」でも、詳しくお伝えしましたが、内部パーツの寿命問題は避けても通れない命題です。電池交換だけをしている間はいいのですが、数十年単位で愛用していった場合、内部の電子回路が寿命を迎えてしまうと中身そのものを交換しなくてはいけません。
修理費用が高くつく……だけならばいいのですが、純正部品がパーツ切れを起こしてしまうと、修理そのものが出来ないリスクを内包しています。
より性能の良い9Fクォーツウォッチに買い換えた方が安く済みますし、愛用機と悲しい別れを経験する前に、オーバーホールが必要な時期になったら、資産価値が高いうちに高価買取を狙うのも有効な選択肢です。
9Fクォーツのその他の問題は、以下の2点がポイントでしょう。
・デザイン性が乏しい芸術品揃いの高級機械式腕時計達と比べると、デザインのバリエーションが乏しく、収集癖を刺激しにくいのは物足りない部分かもしれません。前述のGMT機能9Fクォーツウォッチなど、バリエーションのレパートリーも増え始めているので、今後の9Fクォーツの更なる進化をお楽しみに!!
グランドセイコーより「44GS」55周年記念モデルとして、「信州の雲海」を表した水色の文字盤が特徴的な数量限定モデルが登場
総論ですが、クォーツウォッチはステータス性の面で、価値が軽視されがちな傾向がありますが、グランドセイコーの9Fクォーツは「クォーツのロールスロイス」とも称される十分な価値を兼ね備えています。
パソコンのOSやスマホの規格が新しくなるように、愛用の9Fクォーツウォッチも時の経過とともに、型遅れになっていく「クォーツウォッチ全般の定められた運命」に抗うのは、純正パーツの問題・ランニングコスト含め容易ではありません。
「長い年月で見れば、オーバーホール代や電池交換費用も軽視できないから、価値が高いうちに高額買取してもらおう!」
「9Fクォーツはステータス性も高く、普段使い用&サブ愛機に最適だから、資産価値が高くなりそうなモデルをコレクションしちゃおう!」
というクォーツならではの付き合い方が賢明でしょう!じっくりと費用面や年月、メリットとデメリットを考慮した上で、ご参考ください。
デザイン性と機能性にも力を入れているグランドセイコーの9Fクォーツウォッチ。現行モデルは、2022年3月現在で30種類の力作達が勢揃い(※現行モデルに搭載されているキャリバーは9F61、9F62、9F85、9F86の4種類)しています。
「クォーツを超えたクォーツ」の呼び名が相応しい、デザイン面や機能面でも注目の人気モデルを8モデルご紹介します!機能性が高く、デザインもオシャレでありながら、新作や限定品、定番モデルが385,000~1,100,000円で購入できてしまうのは、グランドセイコーの9Fクォーツならではの魅力です。
<9FクォーツSBGX265スペック>
ケースサイズ:横37mm×縦44.6mm×厚さ10mm
コーティング&外装:内面無反射コーティング/ステンレス
ガラス材質:サファイア
文字盤:ブルー
ムーブメント:9F62
精度:年差±10秒
定価:253,000円
グランドセイコーの「SBGX261」と「SBGX263」と「SBGX265」は、253,000円の割安価格で、9Fシリーズデビューが可能です。「正確・見やすい・美しい」の三拍子が揃った高級クォーツモデル達をこの値段で味わえるのは、わかる人なら大変お得に感じることでしょう。
小さ目なケースはスーツの袖口にもしっくりと収まり、オンオフを問わず活躍できます。
<9FクォーツSBGX347スペック>
ケースサイズ:横34mm×縦41.5mm×厚さ10.7mm
コーティング&外装:内面無反射コーティング/ステンレス
ガラス材質:ボックス型サファイア
文字盤:ホワイト
ムーブメント:9F61
精度:年差±10秒
定価:385,000円
新作モデルの「SBGX347」も、クラシックな出で立ちと直径34mmのミドルサイズケースのバランスがいい3針モデルです。グランドセイコーのホワイトカラーは、「雪白(Snowflake【スノーフレイク】)」を筆頭に、世界的にも人気なデザインカラーです。
「SBGX347」は34mmのサイズ感も含め、男女問わず自信をもってお勧めできるファーストクォーツウォッチ候補の一つです。
<9FクォーツSBGX346スペック>
ケースサイズ:横34mm×縦41.5mm×厚さ10.7mm
コーティング&外装:内面無反射コーティング/ステンレス(一部18Kピンクゴールド)
ガラス材質:ボックス型サファイア
文字盤:ホワイト
ムーブメント:9F61
精度:年差±10秒
定価:1,100,000円
モデル数:世界限定140本(国内60本)
セイコー創業140周年記念にピッタリな3針限定モデルの「SBGX346」は、まるで花火を彷彿とさせるピンクカラーが華やかなクォーツのラグジュアリーウォッチです。18Kピンクゴールドが印象的なベゼルとホワイトダイヤル&ダイヤモンドの組み合わせは、悪目立ちしない上品さと優雅さも見事に演出しています。
可愛らしいドレスウォッチを好む大切なパートナーへのプレゼントにもピッタリな最高峰の極上クォーツウォッチです。
<9FクォーツSBGN019スペック>
ケースサイズ:横40mm×縦46.8mm×厚さ13.1mm
コーティング&外装:内面無反射コーティング/ステンレス(※ベゼルはセラミックス)
ガラス材質:サファイア
文字盤:ブラック
ムーブメント:9F86
精度:年差±10秒
定価:506,000円
傷つきにくいセラミックスをベゼルに。見やすいヴィヴィッドオレンジカラーをGMT表示針とダイヤルリングに……「SBGN019」はタフさと確かな視認性、機能美にこだわったGMTクォーツウォッチです。
太い針を正確に動かせる「キャリバー9F86」だから出来る、GMTクォーツの醍醐味が凝縮された名品です!
<9FクォーツSBGN023スペック>
ケースサイズ:横40mm×縦46.8mm×厚さ13.7mm
コーティング&外装:内面無反射コーティング/ステンレス(※一部セラミックス)
裏ぶた:ステンレスと18KYG
ガラス材質:サファイア
文字盤:ブラック
ムーブメント:9F86
精度:年差±10秒
定価:605,000円
モデル数:世界限定2021本(国800本)
力強い最高級GMTクォーツ。「SBGN019」にも当てはまりますが、セイコー創業140周年記念の「SBGN023」にピッタリな言葉でしょう。
要所にあしらわれた18Kイエローゴールドと裏ぶたの獅子のメダルは、限定モデルとしての特別感も十分。機能美、スペック、コスパ……全てで高い点を取っており、クォーツなのすら忘れてしまうグランドセイコー自慢の限定クォーツウォッチです。
<9FクォーツSBGN003スペック>
ケースサイズ:横39mm×縦46mm×厚さ12.1mm
コーティング&外装:内面無反射コーティング/ステンレス
ガラス材質:デュアルカーブサファイア
文字盤:ブラック
ムーブメント:9F86
精度:年差±10秒
定価:363,000円
363,000円とコストパフォーマンスにも優れた「SBGN003」は、クラシックなGMTデザインと新型キャリバー9F86が融合した実用的なスポーツウォッチです。メタリックなステレンスボディーに映えるワンポイントのGMT針は、控えめなアクセントでありながら確かな存在感を放ちます。
「4軸独立ガイド構造」が生み出す4本の針のシンフォニー(四重奏)は、いつまで眺めても飽きない美しさを年差レベルの精度で保ち続けます。
<9FクォーツSBGX337スペック>
ケースサイズ:横43.6mm×縦50.6mm×厚さ13mm
コーティング&外装:内面無反射コーティング/ステンレス
ガラス材質:サファイア
文字盤:ブルー
ムーブメント:9F61
精度:年差±10秒
定価:462,000円
人とは違うちょっとユニークな高級クォーツウォッチをお求めの方は、ダイバーズウォッチの「SBGX337」はいかがでしょうか?「セイコースタイル」のデザイン哲学を踏襲しつつ、荒々しい縦の筋目や切り立ったベゼルなど、無駄のないやんちゃな遊び心を「SBGX337」は魅力として携えています。
グランドセイコーのクォーツウォッチの多彩さを物語るソリッドデザインが特徴的な「SBGX337」は、グランドセイコーのダイバーズウォッチの中で、最もスリムという個性も忘れません。
<9FクォーツSBGX341スペック>
ケースサイズ:横40mm×縦45.3mm×厚さ11.7mm
コーティング&外装:内面無反射コーティング/ステンレス
ガラス材質:サファイア
文字盤:ホワイト
ムーブメント:9F61
精度:年差±10秒
定価:407,000円
耐磁 :40,000A/m
強力な耐磁性能40,000A/mに、ベゼルをスポーティーに彩る赤と青のツーカラー。グランドセイコー初の緑と青のルミブライト……クォーツの限界に挑戦し続ける創意工夫を凝らした強化耐磁クォーツモデルなのが、「SBGX341」です。
前述の表圈儿さんの1分頃の動画内容が的を射ているので、日本語翻訳の一文を抜粋します。
『誰もがロレックスをコピーする世界でグランドセイコーが行うことを賞賛しています』…まさに、「実用時計の最高峰」の言葉を体現する世界最高峰のマニュファクチュールブランドが、グランドセイコーなのを思い出させてくれる名コメントですね!!
グランドセイコーの9Fクォーツの特徴やメリット、クォーツの仕組みやデメリットにも言及した今回の記事はいかがだったでしょうか?
「最高峰クォーツウォッチ」や「クォーツのロールスロイス」と称されるのが適切な「機能性・デザイン性・多彩さ」は、どの9Fクォーツモデルを選んだとしても値段以上の価値を発揮することでしょう。
ただ、どんなに優れたクォーツウォッチだとしても、「寿命の問題」だけは避けられません。関連記事の「後悔しないためのスプリングドライブ、デメリットとメリット特徴まとめ」でも同様の結論をお伝えしていますが、メンテナンスの面で課題が残るため、一生モノの愛機にするには、無理が残ってしまうのが現状です。
自慢の9Fクォーツウォッチを見つけ出し、大切に丁寧にメンテナンスを心がけ、半永久的に一生モノの愛機に近づけるも良し。タフさを活かし、多少ラフに普段使いして天寿を全うさせるのもクォーツウォッチらしい愛し方です。この記事で高級9Fクォーツ達との自分なりの付き合い方が見つかれば幸いです。
比較的割安なメンテナンス費用なのが、9Fクォーツの魅力でもありますが、時計の寿命が近づけば近づくほど……ランニングコストが痛手に感じるのは人情というものでしょう。たび重なる「電池交換の手間と費用+オーバーホール代」は、時に持ち主を苦しめてしまいます。
「オーバーホールが近いけど、まだ価値があるうちに高額買取してもらおうかな?」クォーツウォッチにありがちな高級腕時計の迷い対策に、ピアゾの9社一括査定はいかがでしょうか?一括査定だから見つかる大切な9Fクォーツの手放し時と適正価値の判断にお役立てください。