更新日:2025年01月21日
パリ発の高級ジュエリーブランドとして名高いカルティエ(Cartier)。その代表作の一つである「タンク(Tank)」は、戦車をもとにデザインされた角型ウォッチコレクションです。タンクがデザインされたのは、実用腕時計の需要が高まった第一次世界大戦の最中である1917年に遡ります。以来100年間にわたり、メゾンのアイコンウォッチとして多くの人々に支持されてきました。
タンクコレクションの派生シリーズとして、1924年頃に登場したのが「タンク ルイ カルティエ」、通称「タンクLC」です。三代目ルイ・カルティエが愛用していたことからその名が付けられました。タンクの原点である「タンク ノルマル」は角張った正方形のスクエア型ケースでしたが、タンクLCでは角を取った長方形のレクタンギュラーケースを採用。また、上辺・下辺を細くして全体のバランスを整えています。タンクLCのデザインはタンクシリーズのベースとなり、またタンクLCも当初から大きく形を変えることなく販売されています。
本記事ではタンク ルイ カルティエの魅力をはじめ、その他のシリーズに比べて高価な理由や、モデルの選び方、資産価値などについて解説します。
カルティエの2024年秋冬新作ウォッチについて、ミニモデルを中心に紹介しています。
100年以上の長きにわたり愛されてきたタンクLC。モデル交代の多い時計業界で、これほどまでのロングセラーとなった理由はどこにあるのでしょうか。ここではタンク ルイ カルティエの特徴・魅力を紹介していきます。
時代の先端に敏感なルイ・カルティエは、1910年代に流行したアールデコ調に倣い、タンクの直線的なケースをデザインしました。タンクコレクションは文字盤を戦車の車体、ケースサイドをキャタピラに見立てています。ケースからブレスまでのラインが一直線に繋がっており、腕馴染みも良好です。文字盤にはカルティエらしさを強調するローマンインデックスや、レイルウェイのミニッツトラック、ブルースティール針が配置され、リューズにはカルティエの象徴とも言えるカボションが埋め込まれています。
中でもタンク ルイ カルティエはケースの角が丸みを帯びており、直線的でありながら滑らかな印象を受けます。また、タンク ノルマルと比べて線が細く、エレガントな雰囲気をまとっています。ケースにはポリッシュ仕上げが施されており、高級感があるのもポイントです。
2針にローマンインデックスを合わせたクラシカルなデザインは、場所や場面を選ばずに身に着けることができます。華美ではなく、シンプルで洗練された美しさを備えており、気品ある大人にぴったりの時計です。
タンク ルイ カルティエは、金無垢素材のみを使用した高級ラインです。また、タンクLCはタンクシリーズのデザインフォーマットとなっており、アイコンモデルという特別感もあります。また、これは全てのカルティエウォッチに言えることですが、王族や貴族に愛されてきた“カルティエ”のネームバリューは、身に着ける人に高いステータスを与えてくれることでしょう。
カルティエの初期モデルには外注したムーブメントが搭載されていますが、いずれもジャガー・ルクルトやフレデリック・ピゲなど高い品質のものを採用しており、時計の精度や機能性は十分に保証されています。また、ジュエリーブランドならではの繊細な技術が活かされており、表面加工や装飾のクオリティも高いです。
タンク ルイ カルティエには新旧含めると様々なバリエーションが存在するため、自分に合った一本を見つけることができます。例えば、タンクLCはサイズ展開が豊富で、男女や体格を問わず身に着けることが可能です。素材はイエローゴールドがほとんどですが、ホワイトゴールドやプラチナモデルも存在します。ムーブメントは手巻き・クォーツ・自動巻きがあり、年代によって製造会社も異なります。
文字盤については、2針とローマ数字を合わせたオーソドックスなデザインが多く見られますが、1990年代以降にはスモールセコンドやデイト表示、ムーンフェイズを備えたモデルも登場しました。近年はカラーバリエーションも増加しています。
そのほか、「CARTIER」の「A」の形状やカボションの形が変わる、7時位置に「CARTIER」のシークレットシグネチャーが入る、レザーではなくビーズオブライスブレスレットが装着されているなど、個体ごとに細かな違いが見られます。
カルティエはラグジュアリーブランドという位置づけですが、手の届きやすい価格帯のモデルが多い印象です。しかし、その中でもタンク ルイ カルティエは比較的高価で販売されています。その理由はどこにあるのでしょうか。
タンクLCはタンクシリーズのハイエンドモデルということで、高めに価格設定されています。カルティエは、1847年に創立されて以来、世界的に有名な高級ジュエリーブランドとして知られ、品質とエレガンスを重視し、多くの王族やセレブリティに愛されてきました。このようなブランドの歴史や名声は、製品の価格に大きな影響を与えます。
タンクLCではケース素材に貴金属を使用しています。他のシリーズではステンレススティールを使用することもありますが、タンクLCは金無垢のみです。そのため、他よりも価格が高く設定されています。
タンクLCのリューズカボションには、天然石のブルーサファイア(プラチナ製の場合はルビー) を使用しています。その他ではシンセティックスピネルという人工宝石が使用されており、ここでも差別化が図られているようです。
タンクLCの購入を検討している方に向けて、購入前に知っておくべきことや、モデル選びのポイントをいくつかご紹介します。
タンク ルイ カルティエはタンクシリーズの中でも最上位ラインに位置する高級時計であり、比較的高価です(現行では160~200万円程度)。予算を考慮して検討しましょう。
後述する通り、一部のレアモデル・ヴィンテージモデルは価格が高騰していますが、それ以外であれば比較的安価な中古品もおすすめです。タンクLCは中古市場での流通数が多いため、状態の良いものが見つかる場合もあります。新品・正規店にこだわらない場合は一度検討してみてください。ただし、レビューなどを確認しつつ、信頼できる販売店を見定めることが大切です。
タンクのデザインは好きだけど、タンクLCは予算をオーバーしてしまう…という方には、スティール製の「タンクマスト」がおすすめです。類似モデルとして、2021年のタンクマスト登場に伴い生産終了した「タンクソロ」や、2004年に生産終了となった「マストタンク」から選ぶのもよいでしょう。マストタンクはヴェルメイユと呼ばれる金メッキ加工を施し、金無垢同様の高級感と低価格帯を両立した大衆向けラインです。興味がある方は、ぜひ以下の記事を参考にしてください。
2004年に生産終了した「マスト ドゥ カルティエ(マストタンク)」の魅力や歴史を紹介するとともに、購入を検討している方に向けて選び方のポイントやお手入れ方法、価格相場などを解説しています。
タンクLCは男女ともに使えるユニセックスなシリーズで、サイズ展開も豊富です。現行はSM、LM、ラージ、そして2024年新作としてミニが追加されました。
具体的な寸法は以下の通りです。
タンク ルイ カルティエのサイズ
また、現在は生産されていませんが、「タンク ルイ カルティエ エクストラフラット」という薄型モデルも存在します。厚さはわずか4mmで、当時最高級の超薄型ムーブメントを搭載していました。1960~70年代のモデルと2012年のモデルがあります。サイズはSM(28mm×20mm)・LM(30mm×24mm)・XL(35mm×28mm)です。
1980年代に自動巻きムーブメントが採用された際には、「XLジャンボ」というサイズも登場しました。これは自動巻きムーブメントを収納するために大型化したと言われており、サイズは現行のラージとほぼ同じ35mm×28mmです。
タンクLCの素材は金無垢のみで、中でも18Kイエローゴールドがほとんどです。ホワイトゴールドやピンクゴールド、プラチナも存在しますが、モデルによっては希少なものもあります。扱いやすく安価なステンレススティールモデルはありません。
基本的に手巻きかクォーツのどちらかですが、「Ref. 17002」、通称“ジャンボ”では自動巻きムーブメントが採用されています。
1970年代までは手巻き式メインで展開されており、中でも60年代まではジャガー・ルクルトおよびヨーロピアン・ウォッチ&クロックカンパニー製、70年代はETA社製のムーブメントを搭載していました。前者は非常に希少価値が高く、ETA社のものは比較的流通が多いです。エクストラフラットでは、高い精度と耐久性を誇るフレデリック・ピゲ社製の極薄ムーブメント「Cal. 21」を搭載したモデルもあります。
80年代に入るとクォーツ式ムーブメント(および自動巻き“ジャンボ”)が登場。また、2009年に「オートオルロジュリー」ラインを展開してからは、自社製ムーブメントの開発にも力を入れるようになりました。現行の手巻きモデルではマニュファクチュールムーブメントを使用しています。
その他のモデルと同様、タンクLCも定期的なお手入れやメンテナンスが必要です。
着用後は乾いた柔らかい布を用い、汗や皮脂を拭きとるようにしましょう。また、機械式時計はこまめにゼンマイを巻き上げることが重要です。クォーツ式の場合は電池切れに注意し、時計が止まった場合は直ちに電池を取り出すか、交換を依頼しましょう。そのほか、時計は水気や化学薬品、高温、磁気、衝撃などに弱いため、それらを避けるように日頃から注意してください。
こうした配慮をしていても、5年に一度はオーバーホールを行うことをお勧めします。オーバーホールは時計の完全分解および点検・修理のことで、隠れた異常がないか確認するのはもちろん、潤滑油を注油して部品の摩耗を防いだり防水性を維持したりする目的もあります。費用はかかりますが、大事な時計を長く使うためには欠かせないものです。
カルティエウォッチのメンテナンス頻度や保証期間、正規アフターサービスの内容・依頼手順などを解説しています。一般時計店との修理料金比較や、ご自身でのお手入れ方法もまとめています。
カルティエは創業当時から、王族や上流階級御用達のラグジュアリーブランドとして確固たる地位を築いてきました。そうしたネームバリューのほか、ひと目でそれと分かる独自性のあるデザインや、卓越性への信頼の高まりなどを受け、近年ブランドの価値が急上昇しています。
世界の売上額ランキングによれば、ここ数年「カルティエ」は「オメガ(OMEGA)」を抜き2位をキープしています。
中国の景気低迷により高級ブランドが軒並み売り上げを落とす中、カルティエを擁するリシュモングループは増収しており、異例の強さを見せています。さらに人気の高いオメガやロレックスが実質入手困難となっていることも大きいでしょう。
また、昨今は深刻な物価高が続いていますが、そうした不安定な経済情勢のもとでは、安定した資産としてヴィンテージウォッチが注目されているようです。
こうした要因から、カルティエのヴィンテージウォッチや人気モデルは需要が高まり、流通減少および価格高騰しています。定価の値上げも続いており、比較的安価な中古品はまだまだ需要を伸ばしていくと考えられます。ただし、価格は市場の動向や経済状況の変化に応じて変動していくものです。資産として時計をお持ちの方は、売り時を逃さないように注意してください。
スイス時計業界の最新動向と推定販売収益によるランキングをご紹介します。
カルティエの中古品は価格が上昇していると述べましたが、新品と中古の価格はどれくらい差があるのでしょうか。ここでは新品(現行モデル)と中古の価格を比較してみます。
現行モデルの新品定価は以下の通りです。クォーツよりも手巻き式が高く、ダイヤ付きはさらに高価に設定されています。
一方、一般的なモデルの中古販売価格相場は以下の通りです。
高騰しているとはいえ、やはり中古品の方が比較的安価ですね。モデル・個体によっては、現行の半額ほどで購入できるものもあります。
タンクLCの中古品は新品より比較的安価で購入することができますが、一部の希少モデルについてはその限りではありません。ここでは価格が高騰しているタンクLCの特徴を紹介します。
文字盤の6時位置に「PARIS」の表記がある個体のこと(後年は「SWISS MADE」)。1970年代後半から1980年代初頭にかけて製造されていたもので、製造期間が短いため希少品とされています。また、元はパリ文字盤であったものが後にスイス文字盤に交換されてしまったり、文字盤に大きなクラックが入ってしまったりする場合がほとんどなのだとか。さらに「PARIS」表記の交換用ダイヤルも販売されているため、オリジナルかつ状態の良いパリ文字盤を見つけるのは非常に困難です。
1998年から2009年にかけて、男性向け高級コレクションとして展開されていた「コレクション・プリヴェ・カルティエ・パリ(CPCP)」。すべて機械式であり、希少性の高いモデルが揃っています。CPCPのタンクLC文字盤には、繊細なギョーシェ装飾が施されているのもポイントです。このCPCP以前に、同じ品質で製造された「プレCPCP」も人気です(Ref. W1504856など)。
最高クラスの超薄型ムーブメントを搭載した、厚さ4mmの極薄ウォッチ「タンク ルイ カルティエ エクストラフラット」。こちらはタンクLCの上位モデルとして展開されており、価格相場は通常のタンクLCよりやや高めです。キャリバーはジャガー・ルクルト製「Cal. P838」や、フレデリック・ピゲ(FP)製「Cal. 21」「Cal. 96」などを採用しています。モデル例は「Ref. 96065」「Ref. 96019」です。
Ref. 17002をはじめ、自動巻きムーブメントを搭載したXLサイズのモデルは通称“ジャンボ”と呼ばれています。寸法は35mm×28mmで、現在のラージモデルとほぼ同じです。当時としては珍しい大ぶりのケースに、タンクLCとしては希少な自動巻きモデルということで、こちらも人気が高いです。
「タンク ルイ カルティエ」は、気品とパイオニア精神を兼ね備えたカルティエのアイコンモデルです。タンクのデザインフォーマットに採用されたことからも分かる通り、普遍的かつクラシカルで、誰にでも寄り添う洗練された美しさを持っています。人気およびステータス性も高いため、「何か一つ高級時計を購入してみたい」という方におすすめのシリーズです。ぜひお気に入りの一本を探してみてください。
中古での購入を検討している方は、口コミなどをチェックして信頼できる販売店を選ぶようにしましょう。また、破損や修理歴をしっかりと確認しておくこと、複数の販売店を比較して相場を把握することも重要なポイントです。偽物や故障品、あるいは法外な値段設定に騙されないように注意してください。
すでにタンクLCの時計をお持ちの方は、相場の上昇時が売却のチャンスです。時計買取のピアゾでは最大9社のバイヤーとオークション形式で交渉を行い、できるだけ高価買取を目指しています。状態の悪い時計も査定可能ですので、ぜひお気軽にご相談ください。
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