更新日:2024年11月25日
誕生から100年以上の時を経て、今もなおカルティエ(Cartier)の時計を代表する「タンク(TANK)」コレクション。「タンク=戦車」をモチーフにデザインされたこのシリーズは、アールデコの先駆けとも言われる直線的なラインが特徴的です。美しくスマートなルックスで、男女ともに人気があります。この記事では、1976年に発売され現在は生産終了している「マスト ドゥ カルティエ(マストタンク)」の魅力や歴史を紹介するとともに、モデルの選び方やお手入れ方法、市場価値について解説しています。
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「レ・マスト・ドゥ・カルティエ(LES MUST DE CARTIER)」は、1970年代に発表された大衆向けラインで、通称「マストライン」と呼ばれるシリーズです。マストラインは「MUST」が「不可欠なもの」という意味を持つことに由来しており、「美を愛する人の生活には持たなければならないもの」というコンセプトのもと、様々な商品が展開されました。
このシリーズで「タンク」ケースを採用した通称「マストタンク」は1976年に発表され、2004年に廃盤となりました。現在は製造されておらず、公式では類似シリーズ「タンク マスト(Tank Must)」が展開されています。今回では旧シリーズ「マストタンク」の魅力をポイント別に解説します。
マストタンクは「タンク」コレクションの基本的なデザインに倣っており、時計本体を戦車(タンク)に、ケースサイドをキャタピラーに見立てています。ベゼルレスなケースとブレスレットの直線的なフォルムが特徴的です。
他シリーズと比べると、ケースやブレスレットのラインがやや丸みを帯びており、優美な印象を与えます。男女問わず身に着けやすい、普遍的なデザインのタンクです。
ケース表面には、マストタンクの代名詞ともいえる「ヴェルメイユ(vermeil)」加工が施されています。ヴェルメイユは18世紀にフランスで開発されたもので、銀に金メッキを施す金属表面加工技術のことです。金メッキを使うことで価格を抑えつつ、高級感や品格を演出することができます。
マストタンクでは銀含有率92.5%のスターリングシルバーに、厚さ20ミクロンのイエローゴールドを重ねています。通常のヴェルメイユでは、ゴールドの層は5ミクロン程度です。マストタンクのゴールドは分厚く耐久性が高いため、時間が経っても美しい輝きを保つことができます。
マストタンクは文字盤のラインナップが豊富で、好みのモデルを探しやすいシリーズです。カルティエらしい伝統的なローマンインデックスはもちろん、アラビアンインデックスや、インデックスのない単色・ツートーンの文字盤まで展開されています。
マストタンクは幅広い層をターゲットに据え、価格設定を下げて販売されました。ヴェルメイユ(金メッキ)を採用することで、高級感を損なわず、金無垢よりも安く販売することが可能になったのです。
近年、中古市場では価格が上昇しつつありますが、それでも現行品「タンク マスト」や他のタンクシリーズと比べると安価で購入することができます。また、手巻き式とクォーツ式の価格差がほとんどないため、手巻き式に憧れている若い世代にもおすすめです。さらに、大量生産が可能になったため流通数が多く、製造終了した現在でも好みの個体を厳選することができます。
タンクの上品なテイストに合わせるのであれば、シックでエレガントなコーディネートがおすすめです。スーツなどのフォーマルスタイルにもよく似合います。
マストタンクは文字盤のバリエーションが豊かであるため、プライベートやカジュアルスタイルにもおすすめです。また、ベルトカラーを差し色にしたり、革ベルトのエイジングを楽しんだりなど、自由な着けこなしが可能です。ご自身のファッションに合わせてデザインを選ぶとよいでしょう。
「タンク」コレクションの誕生は1917年までさかのぼります。当時は懐中時計が主流でしたが、第一次世界大戦の影響で、瞬時に時刻を把握できる腕時計の必要性が高まりました。一方、カルティエは1904年に世界初の男性用腕時計「サントス」を作り出し、実用腕時計のパイオニアとして知られていました。
1917年、3代目ルイ・カルティエは戦中に活躍したフランスの軽戦車「ルノーFT-17」をもとに時計をデザインし、1919年に「タンク ノルマル」を発表しました。懐中時計の円形に対し、直線的なタンクのラインは注目を集め、今でも角型時計の基準となっています。また、1920年代よりアールデコ様式が流行したため、タンクはその先駆けとして認知されています。
類似シリーズとして「タンク ルイ カルティエ(タンクLC)」「タンク シノワ」そして「タンク アロンジェ」を発表。タンクLCでは、ケース形状がスクエア型から縦長のレクタンギュラーに変更され、現行に至るまでのデザインのベースとなっています。
その後も派生シリーズを生み出し続けていたカルティエですが、1970年代にブティックの買収を受け、経営母体が変わることになります。その直後に展開されたのが、大衆向けライン「レ・マスト(Les Must)」シリーズです。それまでのカルティエは貴族などの特権階級に向けた高級ブランドという位置づけでしたが、このラインでは高級時計の品格をそのままに、価格帯を抑えて幅広い層へとアピールする狙いがありました。ウォッチコレクションからはタンクが採用され、1976年に「マスト ドゥ カルティエ」を発表。ヴェルメイユ技法によって低価格帯を実現し、若い世代を中心に人気を集めました。「タンク」のケースを採用した「マストタンク」は2004年に製造終了となりましたが、中古市場でも取引数が多く、時代を超えて愛されているシリーズです。2021年にはマストタンクの後継シリーズである「タンク マスト」が誕生し、現行モデルとして販売されています。
マストタンクには様々なバリエーションがあり、中古市場にも数多くのモデル・個体が出品されています。ここではマストタンクに興味を持った方に向けて、モデル選びのポイントを紹介します。
マストタンクのサイズは、SM・MM・LM・XLの4種類で展開されています。具体的なケースの寸法は以下の通りです。
出回っている個体のほとんどは、発売当初から展開されていたSM、LMサイズです。MM、XLは1990年のマイナーチェンジによって追加されたもので、流通量は少なめです。
現行の「タンク マスト」は、マストタンクと比べて全体的にサイズアップしています。 現行ケースの具体的な寸法は以下の通りです。
マストタンクと現行のサイズを比較すると、以下のようになります。(現=タンク マスト)
SM<MM=現SM<LM<XL<現LM<現XL
以上を参考に、お好みのサイズを探してみてください。腕元にフィットするサイズがおすすめですが、あえて大きめ・小さめを選ぶのも粋ですね。
マストタンクのムーブメントには、ETAベースの汎用機を用いた手巻き式とクォーツ式が存在します。意外なことに、価格にはほとんど差がないため、機械式時計のロマンを求める方は手巻き式を、利便性やメンテナンスのしやすさを重視する方はクォーツ式を選ぶとよいでしょう。
マストタンクのモデルを選ぶ際、最も大きな基準となるのが文字盤のデザインでしょう。まずは中古市場でモデルを調査し、多様なデザインの中から好みの文字盤を選んでみてください。その後、サイズなどの条件に合っているか確認していくとスムーズです。
ここではマストタンクの文字盤タイプを画像付きで紹介します。
インデックスは「タンク ルイ カルティエ」を踏襲するローマンインデックスのほか、アラビアンインデックス、楔形など様々なタイプが存在します。
デザインについても、1~12までぐるりと配置したものや、奇数を省いたもの、左右縦2列に並べたものなど実に多様です。画像右は【縦ローマン/ストレートローマン】とも呼ばれています。
文字盤カラーはシンプルな単色(ホワイト、ゴールド、コーラル、オニキス、ガーネット、ラピスブルー)のほか、複数カラーを組み合わせたものもあります。
今も人気を集めるカルティエのジュエリーシリーズ「トリニティ」にちなんで、三色のゴールド(イエローゴールド・ホワイトゴールド・ピンクゴールド)を組み合わせた文字盤もあります。三色の縦縞や、四角形が同心円状に配置されているものなど、デザインは様々です。
文字盤中央のミニッツサークルを中心に、変形したローマンインデックスが放射状に配置されています。
文字盤の端まで放射状に広がるローマンインデックスが特徴的です。
ダイヤルに放射状(サンバースト)のギョーシェ彫りが施されたもの。中心にうっすらと縦横のクロスラインが引かれています。
マストタンクは2004年に生産終了しているため、中古品を購入することになります。また、ヴェルメイユによる金メッキがはがれやすかったり、文字盤のクラック(割れ)が起こりやすかったりするため、コンディションの確認は必要不可欠です。また、状態の良い品を購入するには、信頼できる販売店を選ぶことも大切でしょう。幸いマストタンクは流通量が多いため、好みの個体が見つかるまで粘り強く探してみてください。
時計を長く愛用するためには、定期的なメンテナンスや日頃のお手入れがとても大切です。ここではマストタンクを購入した後、どのように取り扱えばよいのかをまとめています。
マストタンクをはじめ、時計の着用後は乾いた柔らかい布でお手入れをしてください。
また、時計を動かしているムーブメントの状態にも配慮が必要です。クォーツ式の電池寿命はおよそ2~3年ですので、電池が切れたことに気づいたらすぐに取り出してください。電池が切れたまま放置すると、酸化してムーブメントにダメージを与えることがあります。カルティエの電池交換サービスでは、各種点検や裏蓋・チューブパッキンの交換も行っているため、そちらを利用するのもおすすめです。
機械式時計は、頻繁に着用しない場合も毎日巻き上げを行ってください。駆動させ続けることでムーブメントの歯車に潤滑油が行き渡り、時計の品質を保つことができます。何か月も放置していた場合、本来の精度が戻るまで数日間着用する必要があります。
マストタンクは非防水時計のため、水気には触れないようにしてください。また、レザーストラップの平均寿命は24か月程度ですが、こちらも水や汗などの液体に弱いため注意が必要です。サウナなどの湿気が多い場所や、汗をかくシーンでの着用は控えましょう。
腕とブレスの間に指一本分の空間を確保するのがおすすめです。きつすぎると汗や皮脂が時計に入り込み、錆びや故障を引き起こしてしまいます。反対に、ゆるすぎると時計本体が動いてしまい、扱いにくくなったり物にぶつけたりする危険性があります。そのため、ご自身の腕に合わせた長さの調整がとても大切です。
時計は高温や磁力に弱いため、強い熱源や磁気を発するものには近づけないでください。磁場は主に磁石、スピーカー、携帯電話、スマートフォンなどから発生しています。そのほか、冷蔵庫、戸棚、ハンドバッグなど、開閉口に磁石を使用しているものにも注意してください。
時計に強い衝撃を与えると、外装だけではなく内部にも影響が及びます。ゴルフやテニスなど衝撃の強いスポーツを行う際は、時計を外すようにしましょう。また、同じ腕に時計とブレスレット(アクセサリー)を着けていると外装が傷つく原因になります。
思わぬけがやアレルギーを防ぐため、就寝時の着用も控えた方がよいでしょう。
マストタンクはケース表面にヴェルメイユ加工(金メッキ)が施されており、経年とともにゴールドがはがれてしまうことがあります。しかし、再度メッキを施すことで新品同様の美しさを取り戻すことができます。
再メッキは土台に傷があると綺麗に仕上がらないため、「研磨・外装仕上げ」のメニューがセットになっていることが多いです。主に「メッキはがし→ケース研磨→再メッキ」の手順で行われており、一般的な修理店では2~3万円が相場となっています。時計の状態によって必要な工程や料金が変わるため、まずは個別に見積もりを取りましょう。
再メッキのほか、定期的なメンテナンス(オーバーホール)も必要です。腕時計は多数のパーツで構成される精密機械ですので、時間とともに潤滑油が劣化して摩擦が発生し、ムーブメントおよび時計の精度が狂ってしまうことがあります。購入してから5年ほど経ちましたら、異常が見られない場合も点検を依頼するようにしましょう。カルティエでは、時計の完全分解および洗浄、点検、修理などをまとめて行う「コンプリートサービス」が提供されています。
カルティエウォッチのメンテナンス頻度や保証期間、正規アフターサービスの内容・依頼手順などを解説しています。一般時計店との修理料金比較や、ご自身でのお手入れ方法もまとめています。
近年、カルティエはスイス時計輸出ランキング2位を占有しており、ブランドの持つウォッチメイキングの美学や卓越性が認められるようになりました。ブランド価値は向上しつつあり、「タンク」をはじめとするウォッチシリーズもその認知度を高めています。
さらにインフレの影響もあってか、中古市場におけるカルティエのヴィンテージモデルが盛り上がりを見せているのです。例えば、カルティエがスイスに拠点を移したことで消滅した「London」「Paris」表記の文字盤や、過去に廃盤となった希少モデルなど、ヴィンテージにしかない要素が時計コレクターの熱を高めています。復刻モデルの発売によってヴィンテージモデルが再注目されたケースもあります。
では、2004年に廃盤となったマストタンクの中古相場はどれくらいなのでしょうか。ここでは現行の「タンク マスト」と比較しつつ、その価格動向を見ていきます。
オリジナルに近い1920~1950年代のタンクは、ヴィンテージウォッチとして高い価値を持ちますが、現存する個体が少ないこと、価格が高騰していることから入手は難しいでしょう。一方マストタンクを含む1960~1970年代のモデルは、ほどよいセミヴィンテージ感があり、流通も多いため、コレクションとしても資産としてもおすすめです。
このようにヴィンテージウォッチの市場価値は高まりつつありますが、新品と中古の価格を比較してみると、どのような結果が得られるのでしょうか。マストタンクはすでに販売終了しているため、現行のタンク マストと比較していきます。
新品(現行)の定価は51~109万円程度。サイズが大きい、あるいはダイヤモンドがセッティングされているモデルは高値で販売されています。
一方、中古のマストタンクは20~30万円台が相場の中心です。ただし、「アールデコ」や限定モデルなど、希少性の高い文字盤を持つものは高額で販売されています。以下はその一例です。
ケースサイド・文字盤に天然木を使用した「ウッド タンク」。家具業界でも注目を集めるブラジリアンローズウッドを採用しています。こちらは1975年から76年にかけて販売された、ロンドン・パリ・ニューヨークのブティック限定モデルです。
Ref. 20611、LM、ヴェルメイユ(金メッキ)、手巻き、限定約3000本。
ケースフォルムのみならず、文字盤にも直線的なデザインが施された「アールデコ」モデル。幾何学的な図形を組み合わせた独特のラインを、コントラストの強いイエローやネイビーで塗り分けています。
Ref. W1008195、SM、シルバー、クォーツ、限定1000本。
淡いパープルの文字盤にチェック模様が入った、マストタンクの日本限定モデル。遊び心が感じられる可愛らしいデザインで、女性におすすめの一本です。
Ref. W1017554、MM、ヴェルメイユ(金メッキ)、クォーツ。
カルティエの創業150周年を記念し、1997年に発売された限定モデル。ヴェルメイユのケースにギョーシェのシルバー文字盤がエレガントな印象です。赤いレザーベルトは女性らしさを引き立てるとともに、特別感を演出しています。
Ref. W1010195、SM、ヴェルメイユ(金メッキ)、クォーツ、限定1847本。
カルティエの創業150周年を記念して発売された「マストタンク W1010195」について、実機写真とともに特徴を紹介しています。
不安定な経済状況下では、ヴィンテージ時計は安定した資産として見られる傾向があります。ヴィンテージ時計の資産価値に興味を持つ人が増えれば、マストタンクの需要・価格も高まっていくことでしょう。
また、カルティエや高級ブランドの腕時計は定価の値上げが続いており、比較的安価で購入できる中古品の需要が高まっています。結果として中古価格も上昇しており、今後しばらくはこの傾向が続くと予想されます。
ただし、価格上昇は永遠に続くわけではありません。市場の動向や経済状況の変化によって、価格が大きく下落することも考えられます。資産としてマストタンクを購入される方は、相場の動向をこまめにチェックして、売り時を逃さないように注意しましょう。
マストタンクは、タンクの伝統的なデザインにヴェルメイユという画期的な技術を施した、カルティエの歴史に残るシリーズです。丸みを帯びたラインが美しく、文字盤は豊かなバリエーションを有しています。廃盤となった今でも流通が多く、価格帯もリーズナブルなため、カルティエデビューやタンクデビューにおすすめです。
購入を検討している方は、ご紹介したように中古市場の相場を調査・比較し、適正な予算を決めておきましょう。また、信頼できる販売店を厳選し、商品の状態をしっかりと確認してください。偽物や故障品を回避するのはもちろん、マストタンクはヴィンテージ品であるため、個体によって経年劣化や修理歴があります。それも含めて納得した上で購入するようにしましょう。
マストタンクに限らず、相場が上昇している場合は売却のチャンスです。時計買取のピアゾでは最大9社とオークション形式での査定を行っており、できるだけ高額での買い取りを目指しています。ご不要な時計の売却を検討している方は、ぜひお気軽にサービスをご利用ください。
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