更新日:2023年10月31日
引用: www.seikowatches.com
まだ「防水時計」というジャンルが、一般的でなかった1965年。セイコー(SEIKO)は国産初の150mダイバーズウォッチ「62MAS-010(6217-8000、6217-8001)」を発売。通称“ファーストダイバー”は、国産ダイバーズウォッチの金字塔を打ち立て、数多くの“伝説”を成し遂げます。1966~69年には、南極地域観測隊の装備品として、4回にわたり大活躍!雪と氷に覆われた過酷な南極大陸を耐え抜き、“国産最高峰の耐久性と性能”を証明するのです。
その後もセイコーは、世界に追いつく勢いでダイバーズウォッチ製造を牽引。“ファーストダイバー”を祖とした後継機達(※セカンドダイバーやサードダイバー)は、北極や南極、エベレスト登頂など“地球の果てや頂点”でも、止まることなく安定した時を刻み続けていきます。
そして、2023年……国産初のダイバーズウォッチ“ファーストダイバー”が、1960年代の雰囲気を纏って、また帰ってきます!当時の面差しはそのままに、薄型の新ムーブメント「キャリバー6L37」を搭載した「SBEN003」で堂々凱旋!2017年発売のSBDX019(※「国産ファーストダイバーズ 復刻デザイン」2000本限定)が、忠実なディテールでファンを魅了し、プレミア価格を記録したように、今作のSBEN003も、胸算用したくなる再現度です!
セイコー特殊時計開発のマイルストーン“ファーストダイバー”は、「58年の年月を経て、どのようにスペックアップし、どこが変えなかったのか?」存分に語らせて頂きます。
きたきた~62MAS復刻!早速実機をレビューしていきましょう~!
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2023年だけに絞っても、アストロラーベ(※水中考古学の出土品)文字盤のSBDX053、“ナイトビジョン(※暗視スコープで覗いた世界)”のSBDX055等、様々な「1965メカニカルダイバーズ現代デザイン」を発表したセイコー。プロスペックス新作祭りですね。
更に、SBEN003と同日発売(※8月11日(金))予定の“大谷翔平 2023限定モデル”のSBDC191も、「1965 メカニカルダイバーズ」がモチーフ。大谷翔平選手が“野球の化身”なら、セイコーは“時計の化身”と称しても大袈裟ではないかもしれません。どちらも驚異的なペースで、ダイバーズウォッチ&球界の歴史を切り拓いているのですから。
今作のSBEN003は、ファーストダイバーの「現代デザイン」ではなく「復刻デザイン」である点も大きなセールスポイント!SBEN003の見どころはこちらです。
≪SBDX057の見どころ≫
最大の焦点は“忠実”というキーワードでしょう!「1965 メカニカルダイバーズ」を再解釈した「現代デザイン」とは違い、オリジナルそっくりの復刻モデルとして人気を博したSBDX019に系統は近いものがあります。まずは、「ファーストダイバーのデザインコードをどのように反映しているか?」をご説明します!
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SBEN003の大きなウリは、プレス記事に記載があるように、『現在のダイバーズウォッチの品質基準に準拠しながらオリジナルモデルのデザインを徹底的に検証し、サイズも含めて再現』している点でしょう!ただし、当時150mの防水性能は、JIS(日本工業規格)規格準拠の200m空気潜水用防水へパワーアップ。当時はアクリル製だったガラス素材も、高級感のあるボックス型サファイアガラスへ変更しています。
気になるデザインは、SBDX019のように、極めてオリジナルに忠実。柔らかな高級感を持つチャコールグレーの文字盤、視認性に優れた大きなアワーマーカーと時分針、当時のようなシャープでマットな仕上げのケース、リューズに刻まれた「SEIKO」ロゴのレリーフ……復刻版ならではのデザインコードは今回も顕在です!
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スクリューバックの裏ぶたには、防水性をあらわすイルカマークもしっかり刻印されています。凹凸がくっきりしているせいか、イルカが右手でガッツポーズをしているようにも見えますね。上から順に時計回りで、「SEIKO」「DIVER'S WATCH 200M(※オリジナルはWATER PROOF表記)」「SS」「6L37-00A0(※型番6217-8001表記)」という表記も、ほぼ当時のままのデザイン!往年のファンも納得の再現度でしょう。
「現代デザイン」のSBDC101、SBDC191
「現代デザイン」は6時位置に、プロスペックスロゴの「Xマーク」が入るのに対し、「復刻デザイン」は「Xマークがない」のも持ち味の一つ!「SEIKO」ロゴの真下(※12時位置)に、「AUTOMATIC」表記があるのも、当時と同じ……往年のファンには、たまらない“レトロ感のあるルックス”なのがいいですね。
惜しむらくはSEIKOロゴがアプライドではなくプリントになった点です。デザイン上ベター、という判断なのか?ここはどういう意図があるのか測りかねますね。
気になる方は、関連記事でも外観の違いをじっくり見比べておくと面白いですよ!更に深掘りしたい方は、「ファーストダイバーの歴史」「ファーストダイバーやセカンドダイバーの違い」に触れた「SBDX053」「SBDC187」の記事もどうぞ!
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そして、今作のSBEN003は、
「ケース径がオリジナルに忠実な38.0mm」
「ケース厚はオリジナルよりも若干薄い12.5mm(※Ref.6217-8000&6217-8001は約13mm)」
という、“サイズ感もオリジナルのように小ぶり”な美点を追求しています。SBDX019の「ケース怪39.9mm×ケース厚14.1mm」と比較すると、さらに小さくなっています。
SNSでも「小さなケースサイズが好きな自分に刺さった!」「SBDX019から2mmダウンサイズしたことが一番の魅力」という感想もあり、セイコーの目論見は功を奏していそうです。
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SBEN003に搭載するムーブメントは、ダイバーズウォッチ用に新たに開発された耐衝撃性に優れた「キャリバー6L37」。セイコー現行メカニカルキャリバーの中で、“最薄&最小ケースサイズ”を実現!前述の通り、オリジナルファーストダイバーは、「ケース怪約38.0mm×ケース厚約13mm」の“小柄なサイズ(そして、タフなボディ!)”も大きな魅力の一つ。
まるで、古き良き日本人を思わせる、“小さな体と丈夫な骨格”のDNAを思い出させてくれるようですね!?味噌汁と白いご飯が、食べたくなってきました。
キャリバー6L37も、パワーリザーブ約45時間&高精度な「平均日差+15秒~-10秒」を兼ね備えており、実用性も十分!
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資産価値にウェイトを置いて考えれば「プレミア価格のSBDX019と同系統」という点は、ある意味、SBEN003の“最強の長所”かもしません。
SBDX053の紹介記事でも述べたように「オリジナルに忠実なSBDX019は別格の資産価値をキープ」しており、「カラーリングやデザインを工夫するより、オリジナルにどれだけ近いか」という要素が、 “リセールバリューの決定打”のようにも思えます。
その点、SBEN003はSBDX019以来(※2017年発売)の“超正統派ファーストダイバー復刻”モデル!わずか数日で、オンライン販売が完売する人気ぶりでも話題にもなっています。“相場は水物”なので、皮算用のし過ぎは禁物……ですが、「6年ぶりのオリジナルに忠実なファーストダイバー」という前評判は、今後多くの「現代&復刻デザイン」が登場したとしても、決して色褪せないポテンシャルを秘めていそうです。
正直に申し上げて、SBEN003の462,000 円(税込)という定価設定に関しては、当初強気な印象を受けました。
上位機種である8Lの現行レギュラーモデルSBDX047が38.5万円(税込)ですから、「新キャリバー&限定モデル」というフィルターを掛けても、40万円以下に抑えるのが妥当なところと感じられたからです。
それでも、少し高めの設定にしたのは、やはりSBDX019が瞬く間に売り切れとなり、中古市場でも定価以上で販売されている現状を鑑みて「売れる」という経営判断がなされたのでしょう。実際ほぼ予約完売しているようですから、大当たりと言えます。
「SBEN003がお得か否か!?」参考情報として、ファーストダイバーをモチーフにした復刻モデルの発売当時の定価をまとめてみました。
<ファーストダイバー復刻モデルの価格>
SBDX019・・・定価378,000円(税込)
SBDX039(1965復刻デザイン 55周年記念):定価528,000円(税込)
SBDX041(1965復刻デザイン 男はつらいよ ビームス篇):定価528,000円(税込)
SBEX009(1965復刻デザイン セイコーダイバーズウオッチ 55周年記念):定価715,000円(税込)
SBEN003・・・定価462,000円(税込)←NEW!
並べるとSBEN003が意外と安く見えてしまいますね!?
2020年に「セイコーダイバーズウォッチ55周年記念」としてトリロジーコレクションボックスとして発売された「1965メカニカルダイバーズ復刻デザイン Ref. SBEX009」は再現度はまぁまぁながら、メカニカルハイビートキャリバー8L55搭載でエバーブリリアントスチールを採用で、
定価715,000円と高額になってしまってトゥーマッチ感が否めませんでした。
同じく2020年発売のSBDX039&SBDX041より、66,000円も安いのは、思わず財布のひもが緩くなってしまいそうです。
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再三、類似モデルとしてお伝えしているSBDX019。サジェストキーワードには「SBDX019 SBDC101 違い」がサジェストキーワードのトップに出てくるように、何度も“復刻”されるがゆえに良くも悪くも“似たようなデザインが多い”のがファーストダイバーデザイン。
実はオリジナルをほぼ忠実に再現した“復刻デザイン”と、現代的にアレンジした“現代デザイン”の2種類に大別でき、SBDX019や今回の新作SBEN003は前者、SBDC101は後者にあたります。違いを表でまとめてみました。
項目 | SBEN003 | SBDX019 | SBDC101 |
---|---|---|---|
ムーブメント | 6L37 | 8L35 | 6R35 |
精度 | 日差+15秒~-10秒 | 日差+15秒~-10秒 | 日差+25秒~-15秒 |
パワーリザーブ | 最大巻上時約45時間 | 最大巻上時約50時間 | 最大巻上時約70時間 |
振動数 | 28,800振動/時 | 28,800振動/時 | 21,600振動/時 |
ケースサイズ | 径 38.0mm ×厚 12.5mm | 径 39.9mm ×厚 14.1mm | 径 40.5mm ×厚 13.2mm |
ガラス | ボックス型サファイア | ボックス型サファイア | カーブサファイア |
重量 | 約90グラム | 約110グラム | 約180グラム |
定価 | 462,000 円(税込) | 378,000 円(税込) | 159,500 円(税込) |
新作は「パワーリザーブを犠牲にしても、精度を高めつつ、小ぶり&軽くしている」と言えますね。意外なことに、値段が高くなるほどスタミナ(※パワーリザーブ)は低下しています。プレミアモデルのSBDX019が一番分厚いというのも、予想外でした!?
復刻デザインのSBDX019と違い、現代デザインのSBDC101はプレミア化していません。
また、同じ復刻デザインでも、ダイヤルをブラックにしたSBDX041は若干プレミア化し、ダイヤルをブルーにしたSBEX009、SBDX039はプレミア化していません。最もSBDX041は寅さん帽をかぶったイルカが裏蓋に描かれるという面白いポイントもあったので一概には言えませんが、ブルーよりはブラックのほうがよりオリジナルの雰囲気に近いことは事実でしょう。
「同じようなコンセプトでいて、わずかな違いで資産価値の差が激しい」のも、“ファーストダイバーの名を継ぐモノ達”に定められた宿命。
表の項目からリセールバリューの差の要因を推し量ると
・オリジナルにどれだけ似ているか?(「サイズ感」「カラー」「ガラス形状」等)
・実用性に関わる「精度」「軽さ」も人気に影響?
と言ったところでしょうか。
ピアゾ編集部でとりとめもなく話し合ったところ、
「結局のところ“再現度”に尽きる」
「ムーブメント(精度)の違いで定価が大幅に変わるものの、毎日違う時計を着けるような時計好きなら、自動巻きだとどうせ止まってしまったりするので、精度に関してはさほど気にしない、という方も多いのでは」
「いや、やっぱり時計は精度が命!」
「オリジナルに忠実な伝説的デザインは、どうしても持っていたい(のだろう)」
「復刻とはいえやはり50万円までが妥当な価格帯では」
といった、“時計談義”も巻き起こしました。さすが人気のセイコー、奥が深いですね。
オリジナルの再現度という点でやはり「小型化&ボックス型サファイア」の見た目に関わる部分も大きいような気がしますので、実機レビューも気長にお待ちください。
「判断に迷ったら調べる、聞く」というのは、人生の鉄則!SBEN003発売のニュース発表後から、夏よりもアツい情報交換がSNS上で交わされています。
「またプレミアになりそう」
「前回のSBDX019買えなかったから、悩む」
「発売前に売り切れちゃったのが残念!欲しかった」
喉から手が出る……という言葉がピッタリなくらい、本当に欲しそうにしている様子のコメントを多く見かけます。博識な内容も多いので、購入予定者の方は“迷うのを覚悟”で、ご自身で調べてみてはいかがでしょう。
海外からもホカホカの動画が届いています。SJE093(※海外のRef.名)について、海外の方達はどんな認識を持っているのでしょうか?
「ずっと待ってた!素晴らしい出来、でも3700ユーロは高すぎる」
「セイコーのファンじゃないけど、調和のとれた形状だと思う。現代の若者にウケそう」
「素晴らしい復刻モデル。けど、値段が……」
定価設定に関しては前述の通り、強気な値段ですが、円安の折り、税込み定価462,000円のSBEN003が、ユーロ圏内では約577,200円(※1ユーロ=156円計算)となりますので、海外ではさらに割高感があるのかもしれません。
国内外問わず、一本でも多く「セイコーlover」に行き届いてほしいものです。
ちなみに、デザインに関する感想は概ね、大好評!褒め称える意見がよく目立ったので、下馬評は上々と言った滑り出しですね。
国内中古市場で、ファーストダイバーデザインモデルの相場を調べてみました。関連記事では、類似モデルの約半年前の販売価格を掲載していますので、合わせてチェックすると新たな発見があるかも?
≪1965メカニカルダイバーズ 現代デザインの販売価格相場(※中古・新品未使用込み)≫
半年前に比べ、全体的に販売価格上限が10%弱上昇しているようにも見受けられますが、2023年3月価格改定によって新品価格が底上げされた影響です。
とは言え、長い目で見れば、ある程度安定したリセールバリューを保つ現代デザイン達。さらなる定価上昇等でさらに資産価値が上がっていくのか、今後の動向に注目しておきましょう!
ご自身のタイミングで、“価値がある”うちに、売却も選択肢の1つですよ。
≪ファーストダイバー復刻デザインの販売価格相場≫
SBDX019は出品数が少ないため、参考情報程度とはなりますが、海外市場も含めて見ると相変わらず「SBDX019の独り勝ち」に近い状況が続いています。いずれも出品価格は半年前とほぼ同じ。突如、SBDX019がもうひと伸びするのか、現代&復刻デザインも釣られてリセールバリューが伸びていくのか……予断を許さない状況は今後も続いていくことでしょう。
満を持してリリースされるSBEN003。「復刻デザインの価値は相変わらず高い」「現代デザインも価値を保っている」など、資産価値だけで見た場合、「渡りに船」のような絶好のタイミング。「鬼に金棒、虎に翼(意味:強いものに一層の強さが加わる)」のことわざも連想したくらい……現代&復刻デザイン達からすれば、“強力な援軍”が登場したようにも見えます。
ただし!ファーストダイバーデザインモデルは、「見た目の差が少ないのに、資産価値の差が大きい」ことにもなりがち。くれぐれも、夢を見過ぎて「邯鄲の夢」にならぬように、ご注意ください!
姉妹サイトの高級腕時計販売のQUERI(クエリ)でも、SBDX039やSBDX055、SBDC163やSBDC165が絶賛セール中。早い者勝ちですよ!
良き時代、昭和の雰囲気を漂わせるSBEN003。ストラップもファブリック調のラバーストラップで、オリジナルのテイストを表現。強化シリコン素材を用いて、出来得る限り“レジェンドダイバー”に近づけているのが嬉しいですね。限定モデル本数も1965年にかけたであろう、1965本(うち国内:500本)なのもたまりませんね。
引用: www.seikowatches.com
モデル | プロスペックス 1965 メカニカルダイバーズ復刻デザイン 限定モデル
PROSPEX The 1965 Diver's Re-creation Limited Edition |
---|---|
型番(Ref.) | SBEN003 |
ケース | ステンレススチール(ダイヤシールド) |
ケースサイズ | 横:38.0mm×縦:46.7mm×厚さ:12.5mm |
ガラス | ボックス型サファイアガラス(内面無反射コーティング) |
ストラップ | 強化シリコン |
ムーブメント | メカニカル 自動巻(手巻つき) キャリバー6L37 |
精度 | 日差+15秒~−10秒(気温5℃~35℃において腕に着けた場合) |
駆動期間 | 最大巻上時約45時間持続 |
防水性能 | 200m空気潜水用防水 |
生産本数 | 世界限定:1,965本 (うち国内:500本)、セイコーウオッチサロン専用モデル |
発売予定日 | 8月11日(金)発売予定 |
価格(税込) | 462,000 円(税込) |
引用: www.seikowatches.com
セイコー特殊時計開発の原点、ファーストダイバー。 ISO(国際標準化機構)やJIS(日本工業規格)規格にも貢献した“伝説のダイバーズウォッチ”です。SBEN003は、2018年以降のISO規格改定に準拠し、デイト横に夜光(※5分ごとのインデックスそれぞれに夜光塗料を塗布することが明確化)もさりげなく塗布されています。あえて主張せず、“控えめが美徳”なのもセイコーらしい良さでしょう。(※2017年発売のSBDX019には、3時位置の夜光は「なし」)
SBDX019にも共通している内容ですが、オリジナルの図面や設計資料が現存しない状況の中、最新のISOやJISに準拠させつつ、当時の加工技術に近い質感を“忠実に”再現するのは、極めて難しいはず……リリースに当たって、公式情報で多くを語らず、抜群の完成度を誇るSBEN003を突如発表したセイコー。「精巧(意味:よくできている。手慣れて上手い)」という、言葉の美しさも再認識できました。SBEN003も惚れ惚れする出来栄えで、まさに「SEIKO」でしたね!