更新日:2024年11月20日
オーバーホールとは、複雑に組み合った腕時計のパーツを分解し、点検・清掃することを指します。大切な時計を長く使い続けるためには、定期的なオーバーホールが欠かせません。タグホイヤーの時計は、一般的な時計修理店のほか、正規サービスによりオーバーホールを受けることが可能です。
今回の記事ではタグホイヤーのオーバーホールについて、2024年10月最新の料金や修理期間、依頼方法などを紹介します。また、正規サービスと一般的な時計修理店の比較も行いました。さらに、腕時計のお手入れや使用上・保管上の注意点についてもまとめていますので、ぜひ参考にしてください。
腕時計のオーバーホールは3~5年ごとに行うとよいと言われており、タグホイヤーの公式ページでは5年ごとの点検が推奨されています。機械式時計に限らず、クォーツ式時計にもオーバーホールが必要で、こちらは4年に一度行うのが一般的です。各モデルの構造や使用状況によっても頻度が変わってくるため、不安な方は専門店に相談してみるとよいでしょう。もちろん、外装を激しく損傷したり時刻に狂いが生じたりなど、時計に重大な欠陥・異常が見られる場合は、迅速な修理が必要です。
タグホイヤーの時計には、100を超える細かなパーツが複雑に組み合わされています。これらのパーツには摩耗を防ぐ潤滑油が施されていますが、この潤滑油は年を経るごとに劣化していきます。油切れを起こした状態で放置し続けると、パーツが摩耗・破損し、時計が正常に動作しなくなる危険性があるため、定期的な点検・修理が必要なのです。
タグホイヤーの正規サービスには、大きく分けて「コンプリートサービス(M2)」と「メンテナンスサービス(M1)」が存在します。
「メンテナンスサービス(M1)」とは、クォーツ式時計のバッテリー交換や機械式時計の精度点検など、比較的簡易的なメンテナンスを行うサービスです。オーバーホールよりも手軽ですので、料金も安くなっています。ムーブメント内部に関わる不具合でなければ、おおよそこちらで対応可能です。主なサービス内容としては、ケースやブレスレットの洗浄、ガスケット交換と圧力テスト、防水テスト、磁気帯び検査および磁気抜きなどがあります。タグホイヤーでは2~3年に一度、防水性を整えるメンテナンスを推奨していますので、その際はこちらのサービスを利用するとよいでしょう。
「コンプリートサービス(M2)」とは、いわゆるオーバーホール(分解修理)を行うサービスです。メンテナンスサービスとの主な違いはムーブメントを扱うという点で、コンプリートサービスではムーブメントの洗浄や部品交換、注油などを行います。もちろん防水テストやガスケット交換なども内容に含まれており、より幅広く全体的なサービスだと言えるでしょう。時計を丁寧に扱っている方は、防水性や外装を整えるメンテナンスサービス(M1)のみで十分だと思われるかもしれませんが、時計の要であるムーブメントを調整できるのはコンプリートサービス(オーバーホール)のみです。特に異常が見つからない場合でも、5年に一度は受けることが推奨されます。
タグホイヤーのコンプリートサービスは、時計の外側(外装)と内側(ムーブメント)の両方からアプローチを行い、今後も快適に使用できるようにコンディションを整えてくれます。
コンプリートサービスには以下の修理内容が含まれます。(ヴィンテージを除く)
まず時計のケースやブレス、そしてムーブメントの部品に至るまで、完全に分解します。その後、一つひとつのパーツに異常がないか点検し、超音波によるクリーニングを行います。また、摩擦により摩耗した部品があれば、タグホイヤーのオリジナル部品に交換されます。
ムーブメントを組み立てた後は、部品の摩耗および破損を防ぐための注油作業です。また、今後も長く使用していけるよう、ムーブメントの精度を入念にチェックします。最後にケースやムーブメント、ダイヤルなどを組み上げ、密封材の交換を経て、オーバーホールは完了です。同サービスではオプションでポリッシュ(軽研磨)を受けることもできますが、時計の素材や形状によっては不可能な場合もあります。完了後は、公式による2年間のサービス保証を受けることが可能です。
タグホイヤーのコンプリートサービスの料金は、かつては「エドワードクラブ」の会員であるかどうか、で大きく異なっていました。エドワードクラブとは正規品を購入した人だけが入会できる公式のサービスです。タグホイヤーは正規品と並行輸入品を分けて考えるいわゆる「並行差別」を行っており、エドワードクラブに入会している場合のコンプリートサービスの料金は、2022年5月までは通常より約30%以上安くなっていましたが、2022年6月の価格改定で、その割引率は10%ほどと縮小されました。
ただし、「エドワードクラブ」は2022年5月15日(日) をもって新規登録受付を終了しています。
代わって、5月16日(月) より新しいプログラム 「マイタグ・ホイヤー」の登録受付が開始され、時計を登録することにより、対象モデルの保証期間が5年間に延長されるなど、新サービスがスタートしています。
タグホイヤーの正規オーバーホールなどメンテナンス料金は、登録の有無だけではなく、修理する時計が機械式かクォーツ式か、またはクロノグラフか3針時計かなど、タイプごとに細かく料金が分かれています。また、ガラス、ベゼル、ケース、裏蓋、文字盤、ブレスレット、駒、バックルといった部品で交換が必要となった場合は、別途料金が必要です。
以下はタグホイヤーの公式サイトに掲載されている、コンプリートサービス(M2)の料金表です。こちらの料金はあくまで目安であり、実際の金額は現物を見せたうえでの見積もりとなります。時計の状態に特別な問題がない限りは、この目安内に収まるでしょう。
なお、新しい自社製ムーブメント「ホイヤー02」はスイス送りになって修理代金が高くなることも多いようで、かつ独自の部品が多い為、対応できる一般の修理業者が少ない、という話を耳にしました。メンテナンスを定期的にしよう、とお考えの方には少しお心に留めておいて頂くとよい情報かもしれませんね。
なお、2024年から「ヴィンテージ & ストップウォッチ」に関する修理料金も発表されました。
時計タイプ | 価格 |
---|---|
クォーツ3針 | 42,900円 |
クォーツクロノグラフ&ソーラーグラフ | 51,700円 |
機械式3針 | 56,100円 |
機械式クロノグラフ | 66,000円 |
自社製ムーブメント&COSC(※1) | 80,300円 |
トゥールビヨン | 220,000円 |
オートオルロジュリー&V4マイクログラフ | 330,000円 |
※1ホイヤー01、ホイヤー02、1887、キャリバー36、COSC&特定のキャリバー
オプション項目 | 価格 | |
---|---|---|
ケース&ブレスレット軽研磨 | 14,300円 | |
外装部品 | 破損時またはご要望時のお見積り※2 |
※2 ガラス、ベゼル、ケース、裏蓋、文字盤、ブレスレット、駒、バックル:有償
針、プッシュボタン、チューブ、リューズ、ムーブメントパーツはM2コンプリートサービス内で必要に応じて交換。
<注意点>
2024年10月改定以降、ヴィンテージモデルの修理料金が別途表示されるようになりました。いわゆる「スイス送り」となり、修理価格も高額になります。
ヴィンテージウォッチの修復とメンテナンスは、スイスのエキスパート時計職人にお任せください。 時計の価値を維持し、オリジナルの美観を保ちながら、そのメカニズムを改修します。 ---タグ・ホイヤー修理価格表より引用
ヴィンテージウォッチのM2 コンプリートサービスには以下の修理内容が含まれます。
なお、ヴィンテージウォッチやストップウォッチの防水性は、オーバーホールやガスケットの交換 に関わらず保証されません。
時計タイプ | 価格 |
---|---|
クオーツヴィンテージ | 118,800円 |
機械式ヴィンテージ | 255,200円 |
シンプルストップウォッチ | 102,300円 |
ヴィンテージレーシングストップウォッチ | 154,000円 |
交換パーツ(必要に応じて) | ガスケット、消耗品、ガラス、リューズ、プッシュボタン、ムーブメントパーツ |
オプション項目 | 価格 |
---|---|
ヴィンテージ ケース&ブレスレット軽研磨 | 70,400円 |
「M1: メンテナンスサービス」は、コンプリートサービスと違い、電池交換・精度・防水性点検をメインとしたサービスです。「ムーブメント」以外の箇所に不具合が生じた場合に案内されるサービスです。メンテナンスサービスには以下の修理内容が含まれます。
まずケースを含めた外装部品(ブレスレット含む)の洗浄を行い、ガスケット交換、防水テスト、ランニングテストが行われます。リューズ・プッシャーなど、ムーブメント以外の部品が必要となる修理については、別途部品代が請求されます。
クオーツ時計はバッテリー交換・磁気帯び検査及び磁気抜き、機械式時計はムーブメントの精度点検(動作確認)、タイミング調整・磁気帯び検査及び磁気抜きなどが実施されます。
以下はタグホイヤーの公式サイトに掲載されている、「メンテナンスサービス(M1)の料金表」です。こちらの料金はあくまで目安であり、実際の金額は現物を見せたうえでの見積もりとなります。時計の状態に特別な問題が見つかった場合は「M2コンプリートサービス」が推奨されるケースもあります。
時計タイプ | 価格 |
---|---|
クォーツ3針 | 13,200円 |
クォーツクロノグラフ&ソーラーグラフ | 13,200円 |
機械式3針 | 19,800円 |
機械式クロノグラフ | 19,800円 |
自社製ムーブメント&COSC(※1) | 19,800円 |
トゥールビヨン | 45,100円 |
オート オルロジュリー&V4マイクログラフ | 71,500円 |
ヴィンテージ & ストップウォッチ | 50,600円 |
※1ホイヤー01、ホイヤー02、1887、キャリバー36、COSC&特定のキャリバー
※「ヴィンテージ & ストップウォッチ」の交換パーツは電池、ガスケット、消耗品です。
エドワードクラブはタグホイヤーの公式クラブであり、日本独自のプログラムです。タグホイヤーの創業者であるエドワード・ホイヤーの名を由来として、2012年12月に発足しました。日本国内の正規販売店で正規品を購入した方のみが入会でき、入会金や会費は基本的に無料でした。
ただし、先述しました通り、この日本独自のプログラムである「エドワードクラブ」は2022年5月15日(日) をもって新規登録受付を終了しています。
5月16日(月) より登録受付をスタートした新しいプログラム 「マイタグ・ホイヤー」では、時計を登録することにより、対象モデルの保証期間が5年間に延長されます。
タグホイヤーの正規修理を依頼する場合は、全国の直営店・正規販売店へ持ち込むか、ピックアップサービス(配送)を利用しましょう。
ピックアップサービスは、公式サイトの「修理ピックアップ受付」のページから申し込むことが可能です。
氏名・住所などの個人情報や、「精度不良」「水入り」「定期メンテナンス」などの修理要望、時計の品番・シリアルナンバー・購入日などを入力すると、5~7営業日程度で、指定された住所に梱包キットが届きます。案内に従って時計を梱包し、集荷依頼して発送してください。
その後7~10日ほどで見積もりが届きますので、了承する場合は決済を行います。もちろん、見積もりを確認したうえでキャンセルすることも可能で、キャンセル料および返送料はかかりません。しかし、一旦見積もりを承諾した場合はキャンセル料がかかりますので、慎重に検討してから返答しましょう。
修理そのものにかかる期間は、およそ一か月程度です。時計の故障状態や修理の混み具合など、状況によって前後しますので、余裕をもって依頼するようにしましょう。ピックアップサービスを利用する場合は専用のIDが発行され、修理状況を細かくチェックすることができます。
ピックアップサービスでは修理された時計を返送してもらうための「配送料」がかかりますが、正規店でも、百貨店など一部の販売店では「手数料」や「配送料」がかかったり、購入店でない場合は修理自体を断ったりするケースもあるので、事前の確認がおすすめです。
タグホイヤーの正規修理サービスを利用するといくらになるのか、実際のモデルと料金表を照らし合わせて紹介します。
モデル | フォーミュラ1 クォーツクロノグラフ Ref. CAZ101AG.BA0842 |
---|---|
修理内容 | オーバーホール(コンプリートサービス) |
ムーブメント | クォーツクロノグラフ |
料金 | 51,700円 |
モデル | アクアレーサー プロフェッショナル200 Ref. WBP1110.BA0627 |
---|---|
修理内容 | 電池交換などM1 メンテナンスサービス |
ムーブメント | クオーツ3針 |
料金 | 13,200円 |
モデル | カレラ キャリバー5 デイデイト Ref. WBN2012.FC6502 |
---|---|
修理内容 | オーバーホール(コンプリートサービス) |
ムーブメント | 機械式3針(自動巻き、クロノグラフなし) |
料金 | 56,100円 |
こちらは料金表をもとにした基本的な価格であり、時計の状態にそれほど異常がなければ、この価格内で収まることが多いです。しかし、破損・故障状況や交換する部品によっては追加料金がかかることもありますので、あくまで参考程度に見てください。
タグホイヤーはメジャーなブランドということもあって、修理やオーバーホールも対応可能な業者が多いです。特殊なパーツを用いたモデルなどの修理については、メーカー(公式)での見積もりが必要な場合もありますので、ご利用予定の店舗に確認してください。
一般的な時計修理店でオーバーホールを行う場合、料金は正規のサービスよりも安くなります。信頼性やクオリティが気になるという方は、サイトや口コミなどで複数の業者を調査・比較し、実績と歴史があるところを選ぶとよいでしょう。
最近はLINEで時計の写真を送って、簡単に見積もりを問い合わせができるところも増えてきています。その際は、モデルや型番、故障や傷の状態などを伝えるとよいでしょう。タグホイヤーの型番の調べ方は簡単です。保証書があればそこにしっかりと記載されているはずですし、時計本体の裏蓋に刻印がある場合がほとんどです。アルファベット2~3個と数字4ケタの組み合わせ、というパターンが多いです。
一般的な時計修理店でタグホイヤーのオーバーホール・修理を行う場合、どれくらい費用がかかるのでしょうか。ここでは主な時計修理店を参考に、料金の相場を比較しつつご紹介します。
種類 | A社 | B社 | C社 | D社 | E社 | |
---|---|---|---|---|---|---|
クォーツ式 | 3針モデル | 24,000円~ | 21,000円~ | 16,000円~ | 14,000円~ | 17,000円~ |
クロノグラフ | 35,000円~ | 31,000円~ | 27,000円~ | 22,000円~ | 31,000円~ | |
電池交換のみ | 2,000円~ | 3,000円~ | 3,300円~ | - | ||
機械式 | 3針モデル | 26,000円~ | 29,000円~ | 20,000円~ | 17,000円~ | 20,000円~ |
クロノグラフ | 37,000円~ | 39,000円~ | 31,000円~ | 26,000円~ | 31,000円~ | |
特殊モデル | 41,000円~ | 要見積もり | ||||
外装修理・仕上げ | 11,000円~ | 6,000円~ | - | 13,000円~ | - |
一般的な時計修理店には、タグホイヤーに特化した料金を設定しているところもあれば、全ブランドに共通する基本料金を定めているところもあります。また、外装の修理やポリッシュ仕上げなどについては、オーバーホールに含まれている場合と、追加料金が必要になる場合がありますので、注意が必要です。
特殊モデルについては、現物やモデルタイプを確認したうえで、見積もりが必要になります。エドワードクラブ会員料金であれば正規オーバーホールでも差はさほどでもありませんが、標準価格で比較すると、いずれの業者にしても、正規の標準料金に比べて大幅に安くなっていることが分かるでしょう。
ただし、実際に一般修理業者に何本かタグホイヤーのオーバーホールを依頼した経験では、パーツ代や研磨料金など色々と追加料金が必要となり、正規ほどではないにしろ、結局上記の基本料機よりはかなり高額になるケースも多いです。エドワードクラブに入会可能であればほとんど変わらない価格になる可能性も高いので、よくよく確認してくださいね。
ここまで、正規サービスの解説や一般時計修理店の料金比較などを行ってきましたが、実際にタグホイヤーのオーバーホールを依頼する場合は、正規と一般店のどちらを選べばよいのでしょうか。ここでは双方のメリット・デメリットをまとめていますので、参考にしてください。
正規オーバーホールのメリットは、何といっても、「公式」であるという信頼性の高さでしょう。純正パーツを保持しているのはもちろん、2年間のサービス保証を受けることもできます。修理を担当するのは、確かな技術力を持ち、タグホイヤーの時計に精通している直属の職人たちで、安心感も抜群です。料金は比較的高額と思われがちですが、保証期間内あるいはエドワードクラブ会員であれば価格も抑えられ、正規外に依頼するときの料金とほぼ変わらない場合も多いため、基本的には正規サービスのご利用をおすすめします。
正規オーバーホールのデメリットは、やはり料金が高額になりやすいという点です。修理の内容もパッケージ化されており、ライトポリッシュ不要としても金額が変わらない、部品交換のみの対応は不可能であるなど、融通がきかないこともあります。また、全体的に納期が長い傾向です。
時計修理店でオーバーホールを受ける最大のメリットは、その料金の安さです。正規コンプリートサービスの標準料金に比べると、半額以下の基本料金で修理を行っている業者も少なくありません。また、部品交換や一部修理など、柔軟な対応を優先したい場合はそういった希望に対応してくれるお店を探すとよいでしょう。正規サービスよりは、納期も短めな傾向があります。
修理のクオリティに不安を感じる方もいらっしゃると思いますが、1級時計修理技能士の資格者がいたり、一流の職人や工房設備がしっかりと整えられているところであれば、技術力も安心です。ネットだけではなく、実店舗も構えている業者のほうが安心感がある、と感じられるかもしれませんね。余談ですが、比較的タグホイヤーのムーブメントは設計がシンプルであることが多く、正規の職人でなくとも扱いやすい、と言われています。
時計修理店でオーバーホールを受けるデメリットは、業者選びの難しさにあります。正規であれば一定水準のクオリティを担保することが可能ですが、一般の修理店の場合は、業者によって価格・クオリティのばらつきが大きいのです。業者選びのポイントとしては、利用者の口コミを参考にし、修理に際して問題がないか確認すること、料金がサービスに見合っているか吟味すること、高い知識や技能を持つ「1級時計修理技能士」が在籍しているかどうか確認することなどが挙げられます。さらに、複数社を比較して最もよい業者を選ぶとなると、多大な労力が割かれることでしょう。
また、タグホイヤーの「キャリバーS」のような一部のクォーツ時計や、「Cal.1887」「ホイヤー01」「ホイヤー02」といったを自社製ムーブメントを搭載したモデルなど、一般修理店では取り扱いできないものもあります。また、ケースのサンドブラストなどの特殊加工や金メッキ時計の研磨など、内容によっても受け付けてもらえない注文もあるため、注意が必要です。そのほか、純正部品が取り寄せできない場合は、修理に代替パーツを用いる店舗もあります。純正ではない代替パーツを含む時計は、売却時に評価が下がるリスクがあるため、将来的な売却を考えている方にとっては大きなデメリットとなるでしょう。
タグホイヤーなどの高級時計を長く大切にするためには、日頃から様々な注意が必要です。ただ身につけているだけでも、皮脂や汗と時計が反応してサビ・カビが発生し、酷い場合は皮膚がかぶれることもあります。また、状態の悪い個体は、売却時の価値が下がってしまうことも多いです。見た目の美しさや機能性、資産価値が損なわれないよう、気を付けるべきポイントを押さえておきましょう。
腕時計を身につける際に注意すべきことは、まず、時計を化学製品に触れさせないということです。石けんや洗剤などはもちろん、肌につける化粧品や香水なども、ケースやストラップの損傷の原因となります。手を洗う際はきちんと石けんの成分を洗い流し、ハンドクリームや香水などを手首に付ける際は、塗布した部分がしっかりと乾くまで時計に触れないようにしてください。
次に、身につけた時計が水に触れる際には、細心の注意が必要です。前提として、シャワーをはじめとする、勢いの強い水流や蒸気などに時計を晒すことは避けてください。内部の故障を招きかねません。ダイバーなど、どうしても水中で時計を使用したい場合は、2年ごとに正規サービスセンターで防水性検査を受けるようにしましょう。ガスケットの劣化によるムーブメントの損傷など、致命的な故障を防ぐことに繋がります。
また、防水性能の維持に貢献している風防・リューズ・プッシュボタンなどのパーツに対しては、日頃から衝撃を与えないよう気を付けてください。実際に時計を水に晒す際の注意点としては、レザーベルトを使用しないこと・ねじ込み式リューズが完全に押し込まれているのを確認すること・水中でプッシュボタンを操作しないことなどが挙げられます。塩水に晒した後は真水で洗い流すことも大切です。
化学製品や水に触れていなくても、腕時計は皮脂や汗などによって日々劣化しています。対策としては、できるだけ肌に直接密着しないよう、ブレスを緩めに設定したり、服の上から身につけたりといった方法が有効です。どうしてもぴったりと装着しなければならない場合は、こまめなお手入れを心がけましょう。
上述したように、タグホイヤーの腕時計は5年に一度オーバーホールを受けることが推奨されています。また、傷や目立つ汚れ、機能の異常などが発生した場合は、速やかにメンテナンスを依頼しましょう。日頃から水中で時計を使用する場合は、これに加えて2年ごとの防水性検査が必要です。
ご自宅でのお手入れは、温水およびクロスでのふき取りと自然乾燥がメインです。ふき取りには、時計についた汗や水分を吸収し、サビ・カビ・シミを予防する効果があります。素材はマイクロファイバーやセーム革(主に鹿革)など、時計を傷つけない柔らかいものを選んでください。毛先の柔らかい歯ブラシを使用してもよいでしょう。目に見える汚れは、綿棒や木製の爪楊枝などを用いて取り除くことも可能です。
研磨剤やワックスを含む素材は、かえって時計を傷つけてしまう可能性がありますので、注意してください。石けんを使用するのも厳禁です。ふき取った後は、日光が当たらない風通しの良い場所で自然乾燥させます。しっかりとふき取り・乾燥を行うことで雑菌の繁殖が抑えられ、悪臭の対策にも繋がるのです。故障の危険性があるため、ドライヤーの熱風を近くから当てることは避けてください。
革ベルトの場合は、重曹でのお手入れも効果的です。汗や皮脂汚れは酸性、重曹は弱アルカリ性ですので、中和による消臭効果が期待できます。また、静菌作用や除湿効果もあります。使い方としては、ストッキングなどの目の細かい布に重曹を包み、革ベルトとともにビニール袋に入れて、数日置いたら完了です。変色の可能性があるため、金属のストラップには使用しないでください。
各お手入れ方法の良し悪しは、時計の素材によって全く異なります。市販の消臭スプレーやクリーナーが使用できる時計もありますが、サビや傷、変色などの劣化に繋がるものもあるのです。必ず事前にプロの修理屋に相談するか、ブランド・メーカーに確認するようにしてください。
ふき取りや乾燥以上のお手入れを行いたい場合は、基本的にプロに依頼するのがおすすめです。例えば洗浄作業では、水温によってはパッキンの変形を引き起こしたり、水流のショックで防水性に異常をきたしたりと、様々な問題が考えられます。また、分解作業も危険です。裏蓋を自分で開けるとメーカー保証の対象外となってしまいますし、分解にマイナスドライバーなどのマグネット工具を用いると、時計が磁気を帯びてしまうことがあります。大切な時計を守るため、自宅では外装の簡単なお手入れまでに留め、内部の修理はプロに任せるという意識を持ちましょう。
腕時計を身に着けず保管しておく場合は、ムーブメント・ゼンマイの管理が重要です。機械式時計の場合、手巻きはもちろん自動巻きであっても、定期的にゼンマイを巻き上げなければいけません。自動巻き時計は着用時の腕の動きによって自動的にゼンマイが動くため、普段はそれほど気にしなくてよいのですが、40~50時間ほどでパワーリザーブが切れてしまうため、長期間放置する場合は巻き上げが必要です。手首から時計を外し、リューズが完全に押し込まれているのを確認したうえで、巻き上げすぎには注意しつつ、時計回りに30~40回ほど回してください。
クォーツ時計を使用せず保管する場合は、電池を抜くことをおすすめします。なぜなら、普段身につけていない時計は電池切れに気づくのが遅れてしまうからです。電池が切れた状態で長期間放置すると、液漏れが発生し、時計内部やダイヤルが腐食・故障する危険性があります。もちろん使用中でも、時計が止まったことに気づいたら、なるべく早く電池を交換してください。
保管場所の選び方にもいくつかポイントがあります。まず、直射日光が当たる場所は避けましょう。ダイヤルやインデックスの色褪せ、革ベルトの痛みなどに繋がってしまいます。ただ、ソーラータイプの時計や、色変化・アンティーク化を楽しみたい場合は、この限りではありません。次に、高温多湿な場所や、気温・湿度の変動が激しい場所は避けてください。湿気が多い場所ではサビなどが発生しやすく、気温の変動が大きい環境は故障の原因になります。最後に、できるだけ磁気が少ない場所を選びましょう。スピーカーやテレビなどの家電製品の近くでは、磁気の影響を受けて時刻が狂いやすくなります。大型家電のみならず、普段使用しているスマートフォンやタブレット、マグネットなどにも、極力近づけないよう配慮が必要です。最低でも5~10cmは空けておくようにしてください。
そのほか、ケースの隙間などに埃が入らないよう、蓋つきの入れ物や引き出しの中に保管しておくとよいでしょう。売却を考えている方や多数の時計コレクションを所持している方は、各時計の詳細がすぐに確認できるよう、保証書を同梱しておくのがおすすめです。
腕時計は、適切な管理を行えば、世代を超えて使用することもできます。大切な時計をできるだけ長持ちさせるため、定期的なオーバーホールやメンテナンス、お手入れなどを行っていきましょう。安心感や純正パーツにこだわる場合は正規サービス、安さや手軽さを重視する場合は一般の時計修理店をおすすめします。お手入れは簡単なふき取りと自然乾燥をこまめに行うことが大切です。
オーバーホール料金が時計の元値に対してあまりにも高額になる場合は、修理するよりも新たな時計を購入した方がよいかもしれません。故障した時計については、よほど大切なものでない限り、売却するという選択肢もあります。
よく「壊れていたり、進みや遅れなど調子が悪い時計でも買い取ってもらえますか?」「オーバーホールしてから売った方がいいですか?」といったご質問を頂きます。もちろん、修理やオーバーホールをした方が売却査定額は高くなりますが、場合によってはオーバーホールにかかる料金が、売却して出る利益よりも高額になってしまう場合もあります。
時計買取のピアゾでは壊れた時計の査定・買取も行っておりますので、修理と売却でお迷いの方もぜひお気軽にご相談ください。