更新日:2023年05月06日
「原点回帰」は近年の、そして今年のWatches and Wonders 2023 (ウォッチズアンドワンダーズ 2023、以下 W&W2023)のキーワードかもしれません。その中でも最高の事例の1つがIWCのインヂュニア復活、という話題ではないでしょうか。IWCは新しいインヂュニア・オートマティック 40を発表しました。
まるでジェラルド・ジェンタ(Gérald Genta)が手掛けた「インヂュニアSL(Ref.1832)”ジャンボ”」の復刻版?!
ジェラルド・ジェンタと言えば、人気のラグスポ、パテック フィリップの「ノーチラス」やオーデマ ピゲの「ロイヤル オーク」の生みの親である時計デザイン界の巨匠。レトログラード機構をキャラクターを組み合わせた『レトロ ファンタジー』も有名です。インヂュニアSL(Ref.1832)はもはや垂涎の”コレクターアイテム化”していますし、過去の”ジェンタっぽい”インヂュニアも価格高騰気味。そんな状況を知ってか知らずか、ついにIWCもラグスポ強化策に出たのでしょうか?!
ジェンタのデザインコードを踏襲しつつ、120時間パワーリザーブを備える自社製の32111キャリバーを搭載、軟鉄製インナーケースによる優れた耐磁性、10気圧の防水性などを確保するなど、技術面では現代モデルらしくアップデートされた新型インヂュニア。果たして人気王道ラグスポの仲間入りとなるのか?!
W&W2023で披露された実機や歴代のインヂュニアの展示などもご紹介しつつ、”古くて新しい”新型インヂュニア・オートマティック 40の魅力から、廃盤インヂュニアの価格高騰モデルまで、徹底解剖します!
※掲載している情報・価格は2023年5月調査時点のものです。
ドイツ語で「エンジニア(engineer)」、つまり「技術者」を意味する「インヂュニア(Ingenieur)」。1955年、初の自動巻きムーブメントと磁場から守る軟鉄製インナーケースを備えた、まさにエンジニアの働く特殊な環境にも耐えうる時計として初代モデル(Ref.666AD)が誕生しました。
英国空軍用に開発された高耐磁パイロット・ウォッチ「マーク11」を転用し、80,000A/m(1,000ガウス)という当時としては破格の耐磁性を誇り、高耐磁性時計のパイオニア的存在となりました。初代インヂュニアはターゲットとしていた技術者、物理学者、化学者、医師といった人々の好みに合わせ、丸みを帯びた、控えめなラウンドケースのデザインでした。
1969年「セイコー アストロン」に端を発するクォーツショックにより機械式時計が苦境に陥る中、IWCは今では「時計界のピカソ」とも呼ばれる時計デザイナー、ジェラルド・ジェンタにインヂュニアの再デザインを依頼します。
W&W2023のIWCブースでは、その後誕生したジェンタによる「インヂュニアSL」のデザインコードを引き継ぐモデルの変遷が稀少な実機とともに展示・紹介されていました。その流れに沿いつつ、インヂュニアの系譜について解説します。
1976年、5つの穴でビス留めされたベゼル、独特なパターンの文字盤、H型リンクの一体型ブレスレットなど、大胆な美的特徴を備えた「インヂュニア SL」(Rf.1832)が発売されました。
ケースの形状や5つのビス穴、市松模様のダイヤルなど、新作にも通じるディテール。見比べると相違点もありつつも、全体としての雰囲気はかなり似ていて、”ジェンタらしさ”溢れるデザインですね。
搭載するCal.8541は厚さ5.9mm、ケース厚も12mmと厚みがありましたが、側面を削ぎ落とし、さらにラグ方向へケースを傾斜させることで、薄型に”見える”よう図られていました。ただ当時としては40mmというケースサイズは大き目で、”ジャンボ”とも呼ばれ、初代ロイヤルオーク同様、当時はあまり人気が振るわず、1000本に満たず数年で生産終了。しかし現在、このジェラルド・ ジェンタの作品はコレクター人気を集め、IWC屈指の垂涎の的となっているというから皮肉なものですね。
IWCは1983年にインヂュニアコレクションに「Ref.3505」など新作をいくつか追加しました。いずれも紛うことなきジェンタデザインコードを継ぐモデルでしたが、80年代のテイストに合わせ、ケースサイズは34mmと小型化されました。
「Ref.3505」の後継機として「インジュニアSL Ref.3506」は1985年に発表されました。新しいインヂュニアSLは厚さわずか4mmのCal.3753を搭載したことにより、IWCケース厚は10mmに抑えられていました。その小振りなサイズと薄さから、コレクターはこのインヂュニアを”スキニーインヂュニア(the skinny Ingenieur”)と呼ぶんだとか。
1980年代半ば、IWCはスイスの冶金学専門家である スタイネマン教授およびストラウマン博士と協力し、製造が極めて難しい特別なニオブ・ジルコニウム合金製のひげゼンマイを搭載し、軟鉄製インナーケースを使わない完全な耐磁性を持つ腕時計を開発しました。それを実用化して搭載したのがこの「インヂュニア “500,000A/m”」です。
1989年11月に実施されたMRIスキャナーによるテストでは、370万A/mという驚異的な磁場をも耐え抜いたのですが、IWCは、当時の技術での正確性を考慮してか、かなり控え目な数値を添えて「インヂュニア “500,000A/m”」という名でリリースしました。そのまんまでもよかったのに、なんて思ってしまいますけども。
ただこのニオブ・ジルコニウム合金製のヒゲゼンマイ、実は温度変化に弱く、やはり非鉄素材では鋼ほどの耐久性を保持することができず、IWCはわずか4年で生産を中止しました。
ジャガー・ルクルト製Cal.889ベースのCal.887を搭載した「インヂュニア クロノメーター Ref.3521」。長いIWCの歴史の中で、実はこの1本は珍しい特徴を持っている時計です。
IWCは極めて精密で正確な時計を製造する長い伝統を誇り、ジュネーブのヌーシャテル天文台、もしくはロンドンのキュー天文台による認証を選んできました。
1980年代後半、IWCはスイス公式クロノメーター検定機関のC.O.S.C.(The Contrôle Officiel Suisse des Chronomètre)の認定を受けることを一度は決めたものの、より厳格な社内精度基準を遵守していたため、このプロジェクトは継続されなかったのです。
そのため、「インヂュニア クロノメーター Ref.352102」は文字盤上に”OFFICIAL CERTIFIED CHRONOMETER ”という表記のあるIWC唯一の時計となりました。
そこに誰が最初に稀少性を見出したのか、ほんの数年前までは中古腕時計市場で40~50万円前後で販売されていたこの352102、今では150万円前後まで高騰しているから驚きです。
このRef.3521は2001年頃まで生産されましたが、販売不振により製造中止となり、インヂュニア自体がIWCのコレクションから姿を消しました。
IWCが初代インヂュニアを発表してから50年後の2005年、「インヂュニア・オートマティック」(Ref.3227)がついに自社製ムーブメントを搭載して復活しました。
堅牢な自動巻きムーブと軟鉄製インナーケースの組み合わせで80,000A/mという耐磁性能を実現しましたが、ケースは42.5mmと、当時のデカ厚ブームを反映して巨大化し、ペラトン自動巻き機構と耐衝撃システムを装備したキャリバー80110は厚さ7.23㎜にもなり、重さは216gにも達しました。
「ジェンタのインヂュニアSLの主要なデザインコードをすべて継承した」デザイン、と謳っていますが、バーインデックスが太くなり、アラビア数字の「6」と「12」が追加されたり、とディテールがより現代的なスポーツウォッチ感を印象付けています。正直「ジェンタ感だいぶ薄れましたよね」という感想。
ちなみに2007年には、耐磁性能を捨てたシースルーバック仕様のRef.IW3228を発表し、世間をあっと驚かせました。「超耐磁性能腕時計」でないインヂュニア・・・、IWC自社製キャリバー80111を鑑賞できるとはいえ、インヂュニアのアイデンティティー喪失感は否めず、愛好家からの評価は芳しいものではありませんでした。
IWCは2013年に「インヂュニア」コレクションを一新。新しい「インヂュニア・オートマティック」 (Ref. 3239)は、40,000A/mという(ほどほどながら)耐磁性能を取り戻し、ジェンタのインヂュニアSLの主要なデザインコードを受け継ぎながら、「インヂュニア」で初めてリューズプロテクターを備えました。
今回のW&W2023で展示されていたのは、1500 本限定モデルの「インヂュニア・オートマティック “ローレウス・スポーツ・フォー・グッド”IW.323909」
Ref.3227での反省点を活かし、ETA2892-A2をベースにIWCが改良した薄型のCal.30110を搭載してケース厚を10mmに抑えています。これまでのインヂュニアはケースを薄く見せるために平面的な作りとなっていましたが、本作では薄型ムーブを搭載したことで、逆に立体感を与えるべくラグ・ブレスレット方向へ角度がつけられています。
この後、2017年に発表された”Ref.3570”ではインジュニアSLから続くジェンタデザインのデザインコードをほぼ捨てて、一転して初代インヂュニアのようなシンプルデザインとなったため、この”Ref.3239”が「インヂュニア最後のジェンタデザイン」と言われ、インヂュニアSLの系譜はついに途切れたかに見えました。しかし、今年の新作”Ref.3289”により、インヂュニアSLに大きく回帰したデザインが復活したのです。
引用: www.iwc.com
それではいよいよ今年の新作「インヂュニア オートマティック 40」を見て行きましょう。結論から言うと、新しいインヂュニアは、「ジェラルド・ジェンタ氏の思い描いた最高のインヂュニア」を実現した、1976年のインヂュニア SL(Ref.1832)の”正統進化モデル”と言えるでしょう。
引用: www.iwc.com
今回、ジェラルド・ジェンタによる「インヂュニアSL」のスケッチが公開されました。ベゼルの穴の位置や外装の面取りなどの仕上げの精巧さ、そして耐磁性能を保持したままこのスケッチのような薄さを実現することなど、当時の価格設定と技術力ではジェラルド・ジェンタ氏の理想通りのインヂュニアの製作は不可能でした。それが50年近い時を経て、現代の技術と価格面での余裕、そして恐らくは市場の熟成を得て、ようやく実現された、というわけです。
IWCのCEO、クリストフ・グランジェ・ヘア氏が「1970年代のジェラルド・ジェンタのインヂュニア SLにインスピレーションを得ながら、多大な時間と努力を傾け、人間工学に基づいた完璧なプロポーションのケース、ハイレベルなディテールと仕上げ、現代的なムーブメント技術による、新しい自動巻きモデルをつくりました。」と語る通り、新型インヂュニアはオリジナルのインヂュニア SLのデザインに忠実でありながら、IWCの最新技術による最高の機能性をも備えた理想的な”ラグスポウォッチ”に仕上がっているのです。
新型インヂュニア・オートマティック 40には3つのステンレススティール製モデル(Ref. IW328901、 IW328902、 IW328903)と、1つのチタン製モデル(Ref. IW328904)が用意されています。
モデル | インヂュニア・オートマティック 40
INGENIEUR AUTOMATIC 40 |
---|---|
型番(Ref.) | IW328901(ブラック)、IW328902(シルバー)、IW328903(アクア) |
ケース | ステンレススティール ケース |
ケースサイズ | 直径 40.0 mm 厚さ 10.7 mm |
ムーブメント | 自動巻き32111 キャリバー 120 時間のパワーリザーブ |
ダイヤル | IW328901:ブラックの文字盤、ロジウムメッキの針とアプライド・インデックス IW328902:シルバーメッキの文字盤、ロジウムメッキの針とアプライド・インデックス IW328903:アクアの文字盤、ロジウムメッキの針とアプライド・インデックス |
防水性 | 10.0 気圧 |
特徴 |
|
ブレスレット | 一体型ステンレススティール・ブレスレット、バタフライ・フォール ディングバックル |
価格 | ¥1,567,500 (税込) |
モデル | インヂュニア・オートマティック 40
INGENIEUR AUTOMATIC 40 |
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型番(Ref.) | IW328904 |
ケース | グレード5チタン製ケース |
ケースサイズ | 直径 40.0 mm 厚さ 10.7 mm |
ムーブメント | 自動巻き32111 キャリバー 120 時間のパワーリザーブ |
ダイヤル | グレーの文字盤、ブラックの針とアプライド・インデックス |
防水性 | 10.0 気圧 |
特徴 |
|
ブレスレット | 一体型グレード5チタン製ブレスレット、バタフライ・フォールディングバックル |
価格 | ¥1,958,000 (税込) |
IW3239よりミドルケースが薄くなったほか、ラグ間の距離を縮めてH型リンクブレスレットの幅を細くし、ノーズ型だったラグを新開発の可動するミドルリンク・ アタッチメントに変更したことで、手首のサイズ感を問わずフィットするよう設計されています。またケース全体をわずかに湾曲させ、全長も短くなったことも、装着感の向上に貢献しています。
現存するインヂュニアSLをいくつか見ると、ベゼルの5つの穴の位置が固定されていないことに気づきます。これは 瓶の蓋のようにねじ止めするねじ込み式ベゼルを採用していたためで、デザイナーにとっては受け入れがたいことだったでしょう。
今回、ベゼルをケースに固定するネジを機能的な多角形ネジに変更して、どの個体においてもシンメトリーな位置を確保した点は美的観点からも歓迎すべきポイントです。
今回のモデルで際立っているのが文字盤の独特なパターンです。IWCは「非常に造形的で技術的なケースデザインに対してバランスを取るために」この文字盤を採用したとのこと。市松模様のようにも見えるこの模様は、互いに垂直な細い線で構成されていて、インヂュニアSLよりも大柄な印象で、さらに角度により輝きすら感じられる気がします。
それもそのはず、この新作の文字盤は、耐磁性を保つ軟鉄製のブランク材に型押し加工してから、さらに研磨、電気メッキしているのです。それにより筋目が強調され、陰影がつき、ケースの直線的な部分と呼応しています。なんだかちょっとグランドセイコー的フィロソフィーを感じなくもありませんね。
特に今回はSSモデルにブラック、シルバー、そしてアクアグリーンと3色用意されていますが、この一番目を引くアクアグリーンも塗装ではなくメッキによる発色なのですね。W&W2023のIWCブースでは文字盤製造の工程を解説するディスプレイがありました。
まず軟鉄製のベースプレートに100トンの圧力でプレスして特徴的なグリッドパターンを施します。軟鉄素材を腐食から保護するため、表面にシルバーメッキを施した後、サンバーストパターンを手作業で追加。さらにメッキ処理をした後、IWCのために特別に調合されたグリーンとブルーの間のアクアブルーカラーのニスによって文字盤を着色。インデックスを手作業で植字し、レーザーで固定後、蓄光塗料のスーパールミノバを手作業で塗布します。
かつてのインヂュニアはサテン仕上げ主体のマットな印象の強い時計でしたが、新型「インヂュニア・オートマティック 40」のケース、ベゼル、ブレスレットは、ポリッシュ仕上げとサテン仕上げの組み合わせでメリハリが生まれています。
IWCらしく、ブレスレットは分解可能。連続性を強調するバタフライ・フォールディングバックルは、Hリンクのブレスレットの美しさと薄さを際立たせますね。
インヂュニア・オートマティック 40は、ラチェット式自動巻き機構を組み込んだIWC自社製ムーブメント、キャリバー32111を搭載しています。
W&W2023のIWCブースに展示された「インヂュニア・オートマティック 40」の高耐磁性能を解説するディスプレイ。
軟鉄製の文字盤・インナーケースリング・インナーケースバックの三つ巴でムーブメント全体を取り囲むことにより、ムーブメント部品への磁気の影響をシャットアウトしています。この堅牢な機構が厚さ10.8mmに収められ、10気圧防水と約40,000A/mの耐磁性能を実現しています。
さらにキャリバー32111のパワーリザーブは120時間、約5日に達しますから、実用性も十分。機能性の高い、”ジェンタデザイン”のスポーツウォッチの理想形とも言える仕上がりかもしれません。
IWCのCEOであるクリストフ・グランジェ・ヘア氏も「新しいインヂュニア・オートマティック 40は、21世紀にふさわしい、用途の広いラグジュアリースポーツウォッチ」だと明言しています。
ブレスレット一体型スポーツウォッチを再解釈する、という流れはもはや必然。新型インヂュニア オートマティック 40はコレクターやジャーナリストも熱望した、ジェンタデザインのインヂュニアの復活、そして新たなラグスポの到来です。このラグスポ群雄割拠の時代において、インヂュニアは今後どのような位置づけとなっていくのか、が気になるポイントです。
他ブランドの価格帯の近いラグスポや、IWCの他のコレクションの時計との比較や、廃盤となっているインジュニアの価格高騰モデルの傾向から、新型インヂュニア オートマティック 40は高いのか、それともコスパよしのモデルなのか、はたまあ今後の資産価値はどうなっていくのか、という点について考察してみましょう。
価格面に注目すると、新型インヂュニアのスティールモデルの定価は¥1,567,500。オーデマ・ピゲのロイヤルオークやパテック・フィリップのノーチラス、ヴァシュロンのオーヴァーシーズといった雲上ブランドとは並ぶべくもありませんが、競合しそうなショパールのアルパイン イーグル(Ref.298600-3001 ¥ 1,991,000)やジラール ペルゴ ロレアート(Ref.81010-11-431-11A ¥1,881,000)よりはいささか安い設定。
ただし、オメガ シーマスター アクアテラ(Ref.220.10.41.21.02.001 ¥836,000)や、生産終了しましたがロレックス ミルガウス(116400GV、¥1,109,900)などの耐磁性時計よりもかなり高価です。
また、同じ32111 キャリバーを搭載し、さらに「EasX-CHANGE」システムを採用したIWC のパイロット・ウォッチ・マーク XX(Ref.IW328204 ¥852,500)と比較すると約1.8倍の価格です。
IWCの他のラインナップや、過去のインヂュニアの定価を思えば随分高くなった印象ではあるものの、まったく生まれ変わった”ラグスポ”としては程よい価格帯と言えるでしょう。
むしろ明らかにジェラルド・ジェンタのデザインを正統的に引き継ぐラグスポとしてはお買い得感すらあるかもしれませんね。
系譜の功でご紹介したジェンタのDNAを引き継いでいる過去のインヂュニアも、ここ数年中古販売価格に上昇傾向が見られます。
引用: www.iwc.com
例えばオリジナルの「インヂュニアSL Ref.1832」は440~520万円前後という超プレミアモデルとなっています。さすがにこちらは別格としても、「インヂュニア “500,000A/m” Ref.IW3508」は100~140万円前後、「インヂュニア クロノメーター Ref.IW352102」は、145~170万円前後、IW3239系は72~88万円前後とさほど高騰は見られませんが、1500 本限定モデルの「インヂュニア・オートマティック “ローレウス・スポーツ・フォー・グッド”IW323909」は115~140万円前後で販売されています。(2023年5月現在)
ラグスポの人気過熱ぶりとジェンタデザインへの根強い支持の表れでしょう。今回の「インヂュニアSL Ref.1832」をトリビュートした新型インヂュニア オートマティック40は業界からも評価が高く、一時期の高級腕時計バブルのピークは過ぎていますが、安定した資産価値が望めるのではないでしょうか。
新しい「インヂュニア オートマティック40」をご紹介して参りました。 1970年代のジェラルド・ジェンタのインヂュニア SLにインスピレーションを得ながら、現代向けにディテールも機能性も遥かにアップレードした本作。個人的にはマットな雰囲気のチタンモデルも、価格はさらに上がりますが、軽さはもちろん、かつてのポルシェデザインのような趣きがあって良いかなと。
最後に非常に大盛況だったW&Wジュネーブ2023のIWCブースをご紹介しましょう。
1970年代のジェラルド・ジェンタのインヂュニアSLにインスピレーションを得た新作、ということで、この時代にオマージュを捧げるべく、レトロでありながら未来的なデザインの試作車、メルセデス・ベンツC 111-IIIが展示され、ラウンジエリアにはヴィトラ社製の家具が備え付けられていました。
目を惹くメルセデス・ベンツC111-III
ブースで目を惹きつけるのは、メルセデス・ベンツC 111-IIIです。この車は、1970年代に新しいエンジンと材料をテストするために製造された一連の試作車のひとつでした。 このボディは、空気力学を最適化することを目的として精密にデザインされ、「フォルム(形)は機能に従う」というエンジニアリングの完璧な例となっています。機能性と技術的細部を重視したこのコンセプトカーは、1970年代当時のデザイントレンドを象徴しています。
引用: www.iwc.com
ヴィトラ社製の家具を備え付けたラウンジエリア
ラウンジエリアでは、来場者はスイスの家具メーカー、ヴィトラが提供するチャールズ&レイ・イームズ夫妻の ビーチェアES104などの、あこがれの的となっている 家具でくつろぐことができます。チャールズ&レイ・ イームズ夫妻は、20世紀のデザインを代表するデザイナー です。1957年以来、この夫妻のヨーロッパと中東向けの 製品の唯一の認定メーカーとなったのがヴィトラ社 でした。このデザイナー夫妻の作品の特徴は、機能的 なデザインとディテールへのこだわりとの組み合わせです。 こうしたアプローチは、驚くほどハイレベルなディテールと高品質な処理と仕上げが施された新しいインヂュニアにも見て取ることができます。
キャリバー69000ファミリーのIWC自社製ムーブメントを搭載したパイロット・ウォッチ、ポルトギーゼやポートフィノ・コレクションのクロノグラフの展示も圧巻。
IWCの試験プログラムの紹介も非常に興味深いものでした。IWCでは通常の条件下と極端な条件下での10年以上の着用をシミュレーションした、数十件に及ぶ試験を課しています。今回はその中から、耐食・耐摩耗性のための浸漬試験、クロノグラフ向け過圧試験、加速させた輪列摩耗試験、および耐磁試験のための、4つの特注の品質試験装置が展示されていました。
大丈夫、と分かっていてもドキドキしてしまう浸漬試験。
大きな炊飯器みたいですが、これはクロノグラフ向け過圧試験。
輪列摩耗試験装置。
耐磁試験装置。ザ・コイル!って感じですね。
こちらはCYBERLOUPE ®を用いた時計製造の デモンストレーションです。
特許取得済みの「Cyberloupe®」は高解像度カメラとネットワーク接続を備えた世界初のデジタル化された時計師用のデジタルルーペ(拡大鏡)です。時計内部の小さな部品もじっくりと眺めることができます。このデジタルツールは、2020年に導入されて以来、改良・アップデートされ、ごく最近IWCは幅広い拡張現実(AR)機能を組み込んだCyberloupe® 3.0を導入しました。2.0と比較すると、各段に小型化し、装着しやすくなっているように見えますね。
こういった道具の開発も、IWCの精巧で緻密な時計作りの一助となっているのでしょう。今回のW&Wジュネーブ2023のIWCブースは、IWCの技術力を強く印象付ける展示となっていました。来年はどんな新作が出て、どんなテーマの展示になるのかも、楽しみですね!
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