更新日:2022年05月04日
スイスのジュネーブで開催されたWatches and Wonders 2022で新作を発表したエルメス(HERMÈS)。今回は、高級老舗メゾンであるエルメスを代表するシリーズ「アルソー(Arceau)」、「ケリー(Kelly)」などの2022年新作モデルをご紹介します。
(C)Joël Von Allmen
1970年代後半、エルメスはスイス・ビエンヌに時計会社を設立し、本格的に時計製造に着手します。1978年にアンリ・ドリーニ氏によってデザインされた「アルソー」は、エルメスの時計史の最初期に名を刻む名品です。2022年新作の「アルソー ル タン ヴォヤジャー(Arceau Le temps voyageur)」は、「旅人の時間」を意味します。アルソーシリーズの丸いケースとアーチ形の非対称ラグを継承した新作のデュアルタイムウォッチは、旅のお供に最適なタイムピースです。
(C)Joël Von Allmen
直径41mmのプラチナケースに、ブラックマットのチタン製ベゼルを備えたアルソー ル タン ヴォヤジャー。DLC加工が施されたベゼルは耐摩耗性に優れ、金属アレルギーを起こす心配もありません。
ダイヤルには、エルメスの名作スカーフ“カレ”のジェローム・コリヤール氏デザインによる、幻想的な「乗馬の世界地図」がモチーフとして採用。この架空の地図の海洋部分はレーザー彫刻が施された後にラッカー塗装され、子午線と平行線がチャコールグレーで転写されています。
エルメスは、これまでにも2つの異なる時刻を同時に表示できるデュアルタイムウォッチを発表してきました。一般的なデュアルタイムモデルは回転ベゼルを使用してローカルタイムを表示するのに対し、2022年新作モデルのアルソー ル タン ヴォヤジャーでは、「アルソー」シリーズの特徴的な数字フォントが記された、小さなサブダイヤルそのものが移動してタイムゾーンを指し示します。
(C)Joël Von Allmen
出発地のホームタイムは12時位置に表示され、時針・分針と共にリューズで調整が可能。ダイヤル外周には世界24都市の名前が刻まれており、ケースの左側に付いているボタンを押すと、赤い三角のマーカーを備えたサブダイヤルがまるで衛星のようにくるりと反時計周りにダイヤル上を移動して、旅先のローカルタイムを表示する仕組みとなっています。
パッと見は難しそうですが、使い方は簡単です。ケース左の9時位置にあるボタンを押してサブダイヤルをセットしてから、ケース右に付いているリューズを3段階目の位置まで引き出して時刻を合わせます。その後、リューズを2段階目の位置に戻して回しながら、ダイヤルの12時位置の小窓に表示されるホームタイムの時刻を合わせます。
(C)Joël Von Allmen
シースルーバックから内部ムーブメントの様子が鑑賞可能です。ムーブメントは自動巻きCal. H1837と、ジャン・フランソワ・モジョン氏が設立した「クロノード社」がエルメスのために独自開発したモジュール「ル タン ヴォヤジャー」を組み合わせて搭載。122個のパーツから構成された、高い信頼性と耐衝撃性を兼ね備えたこのモジュールは厚さ4.4mmのケースに収められており、パワーリザーブ約40時間です。
見る人すべてを魅了する芸術作品のような複雑機構を備えた、アルソー ル タン ヴォヤジャー。視認性が高く実用的、かつ美しいエルメス「アルソー」の2022年新作モデルは、プラチナとチタン製の41mm径ケースのブラックダイヤルに加え、ステンレススティール製の38mm径ケースのブルーダイヤルの2つのモデルを展開しています。アリゲーターストラップもしくは、カーフスキンストラップを装備したアルソー ル タン ヴォヤジャーは、2022年11月1日に世界同時発売予定です。
(C)Joël Von Allmen
モデル | アルソー ル タン ヴォヤジャー
Arceau Le temps voyageur |
---|---|
ケース径 | 41mm |
ケース素材 | プラチナ(Pt)ケース、ブラックDLCチタンベゼル |
ダイアル | 亜鉛メッキダイヤル |
ムーブメント | 自動巻きCal.H1837、パワーリザーブ約40時間、毎時28,800振動(4Hz)、28石 |
リューズ | ねじ込み式リュウズ |
ストラップ | アリゲーターもしくは、カーフスキン |
防水性 | 30m防水 |
価格 | ¥3,443,000(税込) |
(C)Joël Von Allmen
モデル | アルソー ル タン ヴォヤジャー
Arceau Le temps voyageur |
---|---|
ケース径 | 41mm |
ケース素材 | ステンレススティール(SS)、ステンレススティール(SS)ベゼル |
ダイアル | 亜鉛メッキダイヤル |
ムーブメント | 自動巻きCal.H1837、パワーリザーブ約40時間、毎時28,800振動(4Hz)、28石 |
リューズ | ねじ込み式リュウズ |
ストラップ | アリゲーターもしくは、カーフスキン |
防水性 | 30m防水 |
価格 | ¥2,695,000(税込) |
エルメスのケリーバッグに付いている錠前(カデナ)をモチーフにした腕時計「ケリー(Kelly)」。南京錠が特徴になった遊び心いっぱいの「ケリー」シリーズの新モデルが、2022年新作として発表されました。
(C)Joël Von Allmen
独特のデザインで存在感のあるケリーは、時計としてはもちろん、ジュエリーとして身に着けるのにふさわしい輝きを放っています。
(C)Mark Kean
錠前部分を取り外し、エルメス発祥と言われる、鍵を収納可能なアクセサリー「クロシェット(小さい鐘の意味)」に差し入れれば、ネックレスやロングブレスレットとしても楽しめます。
(C)Joël Von Allmen
ステンレススティール(SS)×ダイヤモンド24個(ベゼル両サイドのみ)、縦17×横16mm、クォーツ、30m防水、ボックスカーフのレザー製クロシェットとレザーコードストラップ付き、¥702,900(税込)
エルメス「ケリー」の2022年新作モデルはいずれも上品な印象です。ステンレススティール製ケースは、ケースにダイヤモンドをあしらったモデルが2つと、ダイヤモンドの装飾が施されていないモデルの3タイプがラインナップされました。
(C)Joël Von Allmen
ステンレススティール(SS)×ダイヤモンド(ベゼル43個とブレスレット上部221個)、ホワイトラッカー仕上げのダイヤル、縦17×横16mm、クォーツ、30m防水、ボックスカーフのレザー製クロシェットとレザーコードストラップ付き、¥1,870,000(税込)
1976年に最初のモデルが発表されたケリーですが、2022年新作モデルは従来の錠前(カデナ)よりもサイズが小さく、リューズの位置が3時から12時位置へと変わりました。また、風防はミネラルガラスからサファイアクリスタルに変更され、よりラグジュアリーな雰囲気を醸し出しています。
(C)Joël Von Allmen
ステンレススティール(SS)、ホワイトラッカー仕上げのダイヤル、縦17×横16mm、クォーツ、30m防水、ボックスカーフのレザー製クロシェットとレザーコードストラップ付き、¥523,600(税込)
ダイヤモンドによる装飾がないモデルのダイヤルは、ホワイトラッカー仕上げ。ほかのモデルよりもすっきりシンプルな見た目となっています。
(C)Joël Von Allmen
ピンクゴールド(18KPG)×ダイヤモンド(ベゼル43個とブレスレット上部221個)、縦17×横16mm、クォーツ、30m防水、ボックスカーフのレザー製クロシェットとレザーコードストラップ付き、¥4,917,000(税込)
18金ピンクゴールド製ケースのケリーは、ケースベゼルに43個とブレスレットの上部分に221個のダイヤモンドをあしらったモデルのほか、ケースとブレスレット全面にまんべんなくダイヤモンドをセットしたモデルの2つのタイプがあります。
(C)Joël Von Allmen
ピンクゴールド(18KPG)×ダイヤモンド1,161個(ベゼルとブレスレット全面)、マザー・オブ・パールのダイヤル、縦17×横16mm、クォーツ、30m防水、ボックスカーフのレザー製クロシェットとレザーコードストラップ付き、¥10,362,000(税込)
エルメスらしさに満ちた華やかな2022年新作のケリー。ムーブメントには、クォーツが採用されています。いずれのモデルにもレザーコードストラップとボックスカーフのレザー製クロシェットが付属しており、2023年4月発売予定です。
エルメス2022年新作のもうひとつの「アルソー」であるアルソー レ フォリ ドゥ シエル(Arceau Les folies du ciel)は、世界限定24本の希少モデルです。
(C)Joël Von Allmen
アルソー レ フォリ ドゥ シエル(Arceau Les folies du ciel)、ホワイトゴールド(18KWG)、38mm、マザー・オブ・パールのダイヤル、自動巻きCal.H1837、パワーリザーブ約50時間、毎時28,800振動(4Hz)、30m防水、アリゲーターストラップ
高級馬具の製造工房として始まったエルメス。1978年発表以来、さまざまなデザインのアルソーが世に送り出されてきましたが、その多くがブランドルーツともいえる乗馬の世界を表したタイムピースでした。そんなエルメス「アルソー」の2022年新作であるアルソー レ フォリ ドゥ シエルは、コレクションの特徴ともいえる丸いケースと非対称のラグを引き継いでいます。
伝統的なフォルムを継承しながらも、ダイヤル上には「エアロスタット」と呼ばれる気球の一種が配置された限定モデル。このモチーフは、ロイック・デュビジョン氏が1984年に航空力学に敬意を表してデザインしたスカーフ「Les folies du ciel(大空の狂気)」にインスパイアされています。
(C)Joël Von Allmen
38mm径の18金ホワイトゴールド製ケースには、温かみのある印象を与えるマザー・オブ・パールのダイヤルが装備。熟練した職人による手作業で描かれた煙突、さらに立体的でカラフルなエナメル技法のミニアチュール(細密画)の気球や12位置にある風船のモチーフが目を引きます。鳥の形をしたホワイトゴールドの飛行船は、旅と移動のシンボルです。
(C)Joël Von Allmen
可愛らしくメルヘンな印象が強い、エルメス2022年新作のアルソー レ フォリ ドゥ シエル。ムーブメントには、自動巻きCal.H1837を搭載。精度や機能を決める振動数は2万8800振動/時、パワーリザーブ約50時間です。
1991年発表の「ケープコッド」は、半世紀以上もの長きに渡りエルメスの専属デザイナーとして活躍してきたアンリ・ドリーニ氏の手により誕生しました。2022年新作の「ケープコッド」クレプスキュールは、長方形に正方形を重ねたケースにアンカーチェーン(錨鎖)に着想を得たラグを継承しています。
(C)Joël Von Allmen
「ケープコッド」クレプスキュール(Cape Cod Crepuscule)、ステンレススティール(SS)、29×29mm、単結晶シリコン製ダイヤル、クォーツ、30m防水、カーフスキンストラップ、¥598,400(税込)
フランス語で夕暮れという意味のクレプスキュールと名付けられたこのモデルは、太陽が沈むにつれて刻々と変化する空の色を表現しています。ダイヤルデザインは、ベトナムのグラフィックアーティストであるThanh-Phong Lêによるもので、海の夕暮れをモチーフにした抽象的なものです。
(C)David Marchon
エルメスは、通常半導体として電子機器に使用される単結晶シリコン(シリコンウェハー)をダイヤルに使用しようと、2018年からスイス電子工学・マイクロ技術研究センター(CSEM)と会談を重ねます。
単結晶シリコンは、製造時に蒸着される材料の量によって微妙な色合いを無限に生み出すことができるのだそう。厚さ0.5mmのプレートに窒化ケイ素の極小フィルムで精密にコーディングすると、うっとりするほど美しい濃紺が生み出されます。
(C)David Marchon
シリコンウェハー上に回路パターンを生成するフォトリソグラフィー工程で、ウェハーに青い光を当ててモチーフを転写します。その後、ゴールドメッキ加工を施すことで濃紺とゴールドの煌めきをたたえたダイヤルが完成しました。ネイビーブルーのストラップは、エルメス・オルロジェのアトリエで作られたカーフスキン。ムーブメントにクォーツを採用した「ケープコッド」クレプスキュールは、2022年4月以降発売予定です。
(C)Marius W. Hansen
エルメスの2022年新作モデルは、旅を彷彿させるタイムピースとエルメスらしさがあふれたラグジュアリーなラインナップでした。とくに複雑機構モデルのアルソー ル タン ヴォヤジャーは、革新的な技術が使用された芸術作品のようなモデルです。常に美しさを追求するエルメス、今後どのようなモデルが発表されるのか楽しみですね。