更新日:2023年07月21日
エルメス(HERMES)は2023年3月27日から4月2日にかけてスイスのジュネーブで開催された「Watches and Wonders 2023」にて、新作を発表しました。定番モデルのデザインにアレンジが加えられ、エルメスらしさと新鮮さを併せ持つモデルがラインナップされています。
エルメスと言えばバッグ?スカーフ?腕時計はあったとしてもレディースのイメージが強いブランドですが、実は非常に高度な複雑機構を有する本格的機械式腕時計や、比類なき芸術性を表現したユニークな腕時計を製作しています。
本ブログでは、エルメス2023年新作腕時計を、スイス現地で撮影した実機写真を交えつつ、たっぷりとご紹介して参ります。
フランス発のファッションブランド「エルメス」の腕時計を着用している有名人と、その着用モデルについてご紹介します。
ケープコッドは、1991年にアンリ・ドリニーによってデザインされたコレクションです。長方形と正方形を組み合わせたケースが特徴的で、ラグに当たる部分は、エルメスの人気アイテムである「シェーヌ・ダンクル(ブレスレット)」を模しています。
シェーヌ・ダンクルとは船の停泊に利用される錨鎖のことです。ロベール・デュマが錨鎖の形に着想を得て、1938年にデザインとして使用されるようになりました。
今作ではボーダーの背景に、線の入った「シェーヌ・ダンクル」のモチーフを二つ描いています。繋がる二つの鎖がアイコニックなモデルです。
2019年に開催されたSIHH(ジュネーブサロン)に先立ち、プレSIHH2019として発表されたエルメスの新作をご紹介します。「シェーヌ・ダンクル」を描いたケープコッドもラインナップ。
『ケープコッド シェーヌ・ダンクル(059608WW00)』、466,400円。
ステンレススティールケース、23×31mm(ラグ含む)。クォーツ、防水性30m。2023年7月発売。©Joël Von Allmen
こちらはダイヤル・ストラップをグリシーヌカラーで統一したフェミニンなモデル。ボーダーが描かれたラッカーコーティングの型押しダイヤルに、細いバトン針を合わせています。インデックスがないシンプルな仕様です。レザーストラップは、二重巻き(ドゥブルトゥール)を採用しています。
控えめな色合いですので、様々な場面で活躍しそうですね。一方で二重巻きのストラップは腕元を華やかに演出してくれるでしょう。
『ケープコッド シェーヌ・ダンクル(058996WW00)』、1,004,300円。
ステンレススティールケース、23×31mm(ラグ含む)、ケース・ラグにダイヤモンド46個。クォーツ、防水性30m。2023年7月発売。
こちらはダイヤル・ストラップをストームブルーで統一したシックなモデル。アリゲーターレザーのストラップがデザインに味わいを加えています。こちらもインデックスがないシンプルな仕様ですが、ケースにダイヤをセットすることで華やかさがプラスされています。
落ち着いた印象を与えつつも、腕元に映えるブルーモデル。ダイヤの輝きが時計を引き立ててくれます。
こちらはケースにゴールドを使用した華やかなモデル。ダイヤがセットされており、よりいっそう強い輝きを放っています。ブルーのレザーストラップとのコントラストも美しい一本です。
エルメスも2023年1月に値上がりしています。欲しい時計は早めに購入したほうが良さそうですね。
価格改定(値上げ)したブランドと値上げ時期・値上げ率をまとめてご紹介しつつ、高級腕時計ブランドの価格改定の原因・背景や今後の見通しについても考察します。
ピラミッド型のスタッズは、エルメスを代表するブレスレット「コリエ・ド・シアン」に使用されており、1993年にはウォッチコレクション「メドール」へと進化を遂げました。一見時計とは思えないような個性的なビジュアルで、エルメスウォッチの芸術性を牽引しています。
『メドール ミニ・ジュワイエリー(ホワイトゴールド)』、40,854,000円。
18Kホワイトゴールドケース、15×15mm、ケース・ブレスレットにダイヤモンド、マザーオブパール文字盤にダイヤモンド4個。クォーツ、防水性30m。2023年4月発売。©Joël Von Allmen
ホワイトゴールドとダイヤモンドで埋め尽くされた、高級感あふれるモデル。一辺15mmの小型ケースにはぎっしりとダイヤが敷き詰められ、ブレスレットにはラウンドシェイプのダイヤモンドと、スタッズに似たフォルムのバゲットカットダイヤモンドがセットされています。スタッズ型のダイヤルカバーがダイヤルを覆っており、3時位置のボタンで簡単に開閉が可能です。
一見するとブレスレットのようなビジュアルですが、カバーを開けるとマザーオブパールのダイヤルが顔をのぞかせます。インデックスにあしらわれたダイヤもポイントです。
『メドール ミニ・ジュワイエリー(ピンクゴールド)』、9,295,000円(左)・11,429,000円(右)。 18Kピンクゴールドケース、15×15mm、ケース・ブレスレットにダイヤモンド。クォーツ、防水性30m。2023年4月発売。©Joël Von Allmen
こちらはピンクゴールドにダイヤを組み合わせた華やかなモデル。スタッズ型のダイヤルカバーには、外周をダイヤで縁取ったものと、全体にダイヤが敷き詰められたものが存在します。また、ブレスレットは通常のスクエア部分に加え、所々にスタッズやラウンドカットダイヤが散りばめられています。
金色のカバーを開けると、中にはゴールドプレーテッド文字盤が。斜めに線を引くことで、スタッズのフォルムを再現しているようにも見えます。
2021年に発表された「H08」は、エルメスにとって8番目のコレクションです。珍しいクッション型のケースを使用し、異なる素材や仕上げ方法を組み合わせることで、他にはない個性的なモデルを生み出しています。アラビアンインデックスのタイポグラフィーも独創的ですが、視認性は高く、普段使いにも最適なデザインです。
2021年4月7日~13日に開催された“Watches and Wonders 2021”にて発表されたエルメスの新作(H08シリーズ)をご紹介します。
『H08 クロノグラフ(058938WW00)』、2,145,000円。
カーボンファイバーのコンポジットケース、41×41mm。自動巻きCal. H1837搭載、防水性100m。2024年7月以降発売予定。©Joël Von Allmen
モノプッシャーを採用したスマートなクロノグラフで、スタート・ストップ・リセットの操作を一つのボタンで行うことが可能です。ケースには、カーボンファイバーにグラフェンパウダーとエポキシ樹脂を加えることで、軽さと耐久性を両立したコンポジット素材を採用しています。3時位置にスモールセコンド、9時位置に30分計が配置されており、サブダイヤルが二つに抑えられているためスマートな印象です。ブラックゴールドの文字盤にオレンジのポイントがよく映えています。
チタン製ベゼルは、サンバーストサテン仕上げとミラーポリッシュ仕上げを組み合わせました。角度を変えて見ることで、異なる質感を楽しむことができます。
『H08 18Kピンクゴールド×チタン(059581WW00)』、2,178,000円。
18Kピンクゴールド×ブラックDLC加工チタンケース、セラミックベゼル、39×39mm。自動巻きCal. H1837搭載、防水性100m。2023年6月以降発売予定。
18Kピンクゴールドのクッション型ケースに、セラミックス製のベゼルとリューズ、ブラックDLC(ダイヤモンドライクカーボン)加工を施したチタン製のケースバックを組み合わせたモデル。文字盤にはざらざらとしたグレイン仕上げ、分目盛りディスクと秒針にはブラックニッケル加工を施しており、様々な質感を楽しむことができます。
多様な素材や仕上げを組み合わせているため、ブラックの中にも質感の違いが見られ、メリハリがついています。
『H08 グラスファイバー(402990WW00(ブルー)/402991WW00(グリーン)/402992WW00(オレンジ)/402993WW00(イエロー))』、各999,900円。
合成グラスファイバーケース、セラミックベゼル、39×39mm。自動巻きCal. H1837搭載、防水性100m。2023年10月以降発売予定。©Joël Von Allmen
繊維を編んでアルミニウム加工を施したグラスファイバーに、熱硬化性エポキシ樹脂とスレートパウダーを加えたコンポジットケースを使用。微妙にシルバーがかった色味が特徴的で、不規則な模様を表しています。セラミック製のベゼルとリューズにはサテン・ポリッシュ仕上げ、文字盤にはざらざらとしたグレイン仕上げが施されており、質感の違いを楽しめる一本です。
ラインナップは、ブルー、グリーン、オレンジ、イエローの4色です。ラバーストラップだけではなく、ダイヤル外周・中央のミニッツマーカー・秒針にもアクセントカラーが用いられています。
こちらはイエローモデル。ブラックダイヤル・ケースとのコントラストが強く、目を引きやすいカラーですね。
「アルソー」は1978年、アンリ・ドリニーのデザインによって誕生しました。エルメスを代表するウォッチコレクションの一つであり、あぶみ(馬具)の形をしたラグが特徴的です。
『アルソー プティット リュンヌ(060228WW00)』、5,984,000円。
18Kホワイトゴールドケース、38mm径、ケースにダイヤモンド70個、ダイヤルにアヴァンチュリン・アラゴナイト・オパール・マザーオブパール・ダイヤモンド5個。自動巻きCal. H1837搭載、防水性30m。2024年1月以降発売予定。© Joël Von Allmen
磨き上げたブルーのアヴァンチュリンダイヤルに、淡水マザーオブパールの月・アラゴナイトの惑星・オパールの星、ダイヤモンドの星座を組み合わせた芸術的なモデルです。10時半の位置には月の満ち欠けを表すムーンフェイズが配置されています。ストラップには、宇宙の色に合わせた深いネイビーのアリゲーターレザーを使用。ケースにはダイヤモンドがセットされています。
遠近感を意識して、リアルな宇宙の世界観を表現しています。きらきらと輝く青い文字盤が美しいですね。
『アルソー ル タン ヴォヤジャー(057266WW00)』、3,927,000円。
ステンレススティールケース、38mm径、ケースにダイヤモンド78個。自動巻きCal. H1837搭載、防水性30m。2023年1月発売。© Joël Von Allmen
世界地図を文字盤に表し、ワールドタイムを視覚的に楽しむことができる一本です。時間を表すミニダイヤルが世界を旅するようにぐるりと動きます。また、外周の円形ディスクを操作することで、世界24都市の時刻を表示することが可能です。
こちらのシリーズは2022年にも発表されていましたが、今回は海洋部分にマザーオブパールを使用したホワイトモデルが追加されました。
新作のホワイトモデルに加え、2022年のブルー(ステンレススティール)・ブラック(プラチナ)モデルも展示されていました。9時位置のプッシュボタンによって、都市と時刻を変更することができます。
2022年3月30日~4月5日にスイス・ジュネーブで開催された“Watches and Wonders 2022”にて発表された新作モデルをご紹介します。
『アルソー グラン カロッセ ロイヤル「王室の馬車」』、NTD 2,402,000。 ホワイトゴールドケース、41mm径。自動巻きCal. H1837搭載、防水性30m。世界12本限定。©Anita Schlaefli
馬車から飛び出す4頭の馬を描いたモデル。公式サイトなどにも日本語表記が見当たらないため「王室の馬車」と勝手に訳させていただきました。「高貴な馬車」かもしれませんね。
青とグレーで陰影をつけることで、ダイヤルに奥行きと立体感を生み出すことに成功しました。マザーオブパールにブラシで手描きされた馬たちは、たてがみと尾をなびかせながら豊かな表情を浮かべています。ストラップには、深いネイビー(アビス)のアリゲーターレザーを採用しました。
細部まで丁寧に描かれた、絵画のようなダイヤルが魅力的です。色を多用しないことで、全体に統一感が生まれています。
『アルソー 「ペガサスのように自由に」』 ホワイトゴールドケース、41mm径。自動巻き防水性30m。
こちらも日本語表記が見当たりませんでしたので「ペガサスのように自由に」と訳させて頂きました。
こちらに駆け出してくるペガサスを大胆に配置したモデル。白いペガサスにはダイヤルの黒を透かすような形で陰影がついており、立体感が生まれています。また、ブラックのアリゲーターレザーストラップを合わせることで、よりメインモチーフが引き立つデザインとなっています。
今にも飛び出してきそうなペガサス。美術品として飾っておきたくなるような、繊細な美しさが魅力的です。
薄型でドレッシーなフォルムと、グラフィックデザイナーであるフィリップ・アペロワ氏によってデザインされたインデックスが特徴的な「スリム ドゥ エルメス」。2023年の新作ではインデックスを省き、ダイヤルを絵画のキャンバスのように活用したモデルが多く見られました。
『スリム ドゥ エルメス 伝説の馬(059526WW00(ホワイト)/ 059527WW00(ブルー))』、12,859,000円/11,286,000円。
18Kホワイトゴールドケース、39.5mm径、ケースにバゲットカットダイヤモンド52個。自動巻きCal. H1950搭載、防水性30m。世界24本限定、2023年5月以降発売予定。©Anita Schlaefli
ドットアートによってギャロップをする馬の上半身を描き出したモデル。エナメル仕上げのホワイトゴールド文字盤にレーザーで微細な穴を空け、砕いたブルーエナメルの結晶またはピンクゴールドのビーズを挟み込むことによって、馬の輪郭を表現しています。
こちらはブルーエナメルを使用したモデル。ケースを取り囲むバゲットカットダイヤがアクセントとなっています。
『スリム ドゥ エルメス ミニュイ オ フォーブル Ref. 059645WW00 (レッド)/059644WW00 (ブルー)』、8,184,000円。
ホワイトゴールドケース、38mm径。自動巻きCal. H1950搭載、防水性30m。世界24本限定、2023年5月以降発売予定。©Anita Schlaefli, ©David Marchon
パリの町並みとマントを羽織ったヒーローのような白馬が細密画法で描かれたモデル。背景にはエルメスの第一号店があるフォーブル・サントノーレ通り24番地を採用しており、エッフェル塔、亜鉛屋根、アンヴァリッドのドーム型の屋根、ムーランルージュの風車などが細かく描き込まれています。一つの文字盤の完成には、50時間以上もの時間と緻密な手作業を要しました。ベルトカラーはゼラニウム(レッド)とアビス(ブルー)の二色があります。
エッフェル塔の先端から放たれる「H」の光や雲の流れ、躍動感のある白馬がダイヤルに動きをもたらしています。一つの絵画を眺めているような気分になれる、芸術作品のような時計です。
『スリム ドゥ エルメス パンテール』 ピンクゴールドケース、39.5mm径。自動巻きCal. H1950搭載、防水性30m。世界24本限定。
エルメスに度々使用される「パンテール(ヒョウ)」のモチーフをダイヤルに描き出した一本。背景のうねるような筋が独特の風合いを生み出しています。また、ヒョウのモチーフは一つ一つの斑点まで細かく描かれており、リアルで生き生きとした表情を見せてくれます。
グラデーションを用い、細かな色の変化もよく表現されています。ピンクゴールドにブラウンのアリゲーターレザーストラップを合わせ、全体の色味もまとめ上げました。
ここまで、エルメスの2023年新作時計をご紹介しました。ブランドのロゴにもある馬や馬具のモチーフを中心としたデザインが多く、エルメスらしい個性あふれるウォッチが展開されています。ここでは2023年3月27日から4月2日にかけてスイスのジュネーブで開催された「Watches and Wonders 2023」にて撮影した、エルメスのブースの様子をご紹介します。
今回エルメスの現地装飾を担当したのは、クレマン・ヴィエイユ(Clément Vieille)というアーティストです。独創的な空間が見る人をエルメスの世界に引き込んでいきます。
クレマン・ヴィエイユは複合材料を用いた革新的な形状を追求しており、「Tension(張力)」と「Integrity(統合)」の造語である「テンセグリティ」構造や、カーボンファイバーのプレート、染色素材など、様々な要素を扱っています。軽やかなオブジェクトが空間を支配し、来場者を非日常に浸らせてくれます。
時計だけでなくオブジェまでもが展示品のようで、まるで美術館でアートを鑑賞しているような気分です。芸術的な新作のお披露目にふさわしい舞台となりました。
今回ご紹介したモデルのほかに、このような作品も展示されていました。エルメスを象徴する馬のデザインが多いですが、そのほかにも様々なモチーフが描かれています。
こちらは定番コレクション「アルソー」の盤面を鮮やかに彩った4モデル。エルメスのスカーフデザインを時計の文字盤上に再現しています。ホワイトゴールドまたはピンクゴールドのラウンド型ケースに82個のダイヤモンドがセットされ、絵画のようなダイヤルを縁取っています。左上のモデルは木で組み立てられた虎と、ゴールドのアップリケに手彫り・塗装された動物たちがモチーフです。蝶、ハチドリ、孔雀、カメ、ウサギ、カマキリといった動物がみな同じ方向を向いています。3本は馬とそれに乗る人の姿をメインに据えており、右下のモデルは自撮り棒を構えた王女と動物たちを描いたユニークな一本です。右上・左下のモデルはウーゴ・ビアンベヌによってデザインされたスカーフをベースにしており、メカニカルな馬と女性の騎手がメインとなっています。中央のサークルから馬が飛び出すように描かれており、躍動感・立体感のあるデザインです。
こちらは「シェーヌ・ダンクル」モチーフを描いたケープコッドのゴールドモデル。ブルーとグリーンの二色が用意されており、ダイヤルとレザーベルトのカラーリングが統一されています。ケースにはダイヤモンドがセットされており、鮮やかかつ華やかなビジュアルです。
高い芸術性と独創性、優れたブランディング能力で地位を築いたエルメス。今後の新作や展示にも注目が集まります。