更新日:2020年04月26日
新型コロナウィルスの感染拡大の影響は高級時計業界にも確実に広がり、まさに未曾有の危機に直面しています。 Watches&Wondersで新作がオンライン公開されるなど心躍るニュースもある一方で、 ロレックス、パテック・フィリップ、ウブロなど、高級腕時計ブランドは工場を次々と一時閉鎖し、 百貨店も正規ディーラーも店舗閉鎖を余儀なくされています。
この状況を受け、ついにパテック・フィリップはブランド史上初めて、海外の一部の正規ディーラーに対してオンライン販売を解禁しました。
他にも、ブライトリングは公式サイトでの販売を、ウブロはオンラインでブティック体験が楽しめる「ウブロ デジタルブティック」を開始しています。
5G時代が到来し、対面での顧客とのコミュニケーションを重視してきた老舗ブランドにも変革の時が来ているのかもしれません。 各ブランドの取り組みについて、詳しく見ていきましょう。
冒頭に述べた通り、パテック・フィリップはこれまで正規販売代理店に対してオンラインでの販売を認めてきませんでしたが、この新型コロナウィルスの感染拡大の影響を受け、ブランド史上初めて、海外の一部の正規ディーラーに対してオンライン販売を解禁しました。
そしてHamilton Jewelers、Watches of Switzerland、London Jewelers、Berry’sなどの海外の正規代理店サイトではすでにパテック・フィリップが販売されています。
ただしパテック・フィリップは、これはあくまでもこのパンデミックにより店舗閉鎖に追い込まれたパートナーたちを救済するための「一時的な」措置である、ということを強調しています。
また販売される時計は店舗に在庫しているものに限られているようで、見たところ、カラトラバやコンプリケーション、レディースのTwenty-4などが中心。男性に人気のラグジュアリースポーツモデル、ノーチラスやアクアノートなどは一部レディースを除き、ほぼ販売されていません。アニュアルカレンダー5205G-013やワールドタイム5930G-001など、有名モデルがずらっとラインナップされているのは壮観ですが。
なお残念ながら、現状日本国内ではオンライン販売を解禁する予定はないそうです。 これは日本でのパテック フィリップの圧倒的な人気と販売状況と体力を考えれば、当然と言えば当然でしょうか。
しかし今後の状況によっては、何かしらの新たな販売方法が求められてくるかもしれませんね。 さて、他の高級腕時計ブランドはどうでしょうか。
ブライトリング・ジャパンは2020年4月2日、自社のオフィシャルウェブサイト内にオンライン ブティックをオープンしました。
例えば先日発表された「ゾロ・ダイヤル」と呼ばれるダイヤルを持つ新作「トップタイム リミテッドエディション」は、ブライトリングのオンライン ブティック限定で販売を開始しています。 そのほか、「アウターノウン エコニール®ヤーン NATOストラップ」もオンライン ブティック限定で販売。
「カートに追加する」の文字がまだ見慣れませんね。 ブライトリングのオンライン ブティックでは現状、すべてのモデルがオンラインで購入できるわけではなく、「お問い合わせ」というステータスのものの方が多いようです。ネットで購入できるのが一部のモデルに限られてはいる点は残念ではありますが、発売開始前の最新作のプレオーダーも受け付けているのは魅力的ですね!
スイスの高級時計ブランド「ウブロ」は、 スマートフォンやPCのカメラを通じて、ウブロブティックのスタッフと直接会話しながら好みの時計を見つけることができる「ウブロ デジタルブティック」をスタートさせました。
単なるオンライン販売という「ハード」を提供するものではなく、自宅にいながらにしてブティックスタッフによるプレゼンテーションを受けたり、相談したりできる「接客サービス」という「ソフト」を提供しているところが新しいですね。
国内の対応店舗はウブロブティック銀座、大阪、京都の3店舗で予約制。 「ウブロ デジタルブティック」について、詳しくは下記の「ウブロブティック」までお問合せ下さい。
<お問合せ先>ウブロブティック銀座 | ginza@hublot.com 03-3569-3600 |
ウブロブティック大阪 | osaka@hublot.com 06-6121-4531 |
ウブロブティック京都 | daimaru.kyoto@hublot.com 075-533-2711 |
※各店舗は新型コロナウイルス感染拡大防止のため臨時休業中ですが、電話&メールでのお問合せを承っているとのこと。(電話受付時間 12-19時)
※ウブロブティック銀座は、並木通りの店舗は2020年4月19日(日)20時をもって営業を終了中央通りへ移転。2020年5月7日(木)11時よりオープン予定。
新型コロナウィルスの流行は、高級腕時計の世界にどんな影響を与えるのか?
歴史を振り返れば、危機は社会を変容させるきっかけとなった、という側面を持ち合わせています。こと感染症はペスト、スペイン風邪、SARS、MERS、エボラ出血熱など人類史上幾度となく繰り返され、実はそのたびに何かしらの社会への変化をもたらしています。
例えば「ペストは近代の陣痛」という言葉がありますが、中世ヨーロッパで人口の3分の1を奪ったともいうペストの大流行により、敬虔だった人々は神の存在に懐疑的になり、自由な発想や価値観の変化、つまりルネサンスをもたらした、との説もあります。
また、経済的にもペストによる大量死は深刻な労働力不足を招き、領主たちが農民の労働意欲を奮い立たせるべく、土地を貸し出すなど裁量を与えたことが、資本主義的自由経済に繋がりました。
新型コロナウィルスの流行は、社会にどんな変化を与えたでしょうか?
まだ事態は収束していない段階ですが、すでに明らかに進歩したものとして真っ先に思い浮かぶのは「テレワーク」や家庭レベルの「Wi-Fi環境」です。 皮肉なことにどんなに政府が「働き方改革」を訴え、様々な施策で推進しようとしたときよりも、圧倒的なスピードで今、人々は在宅ワークにシフトしています。(これを執筆している筆者も!)
そして極力”ステイ・ホーム”が求められる中、 高級腕時計のあらゆるブランドが オンライン販売に活路を見出すことも、それを求める”需要”が生まれてくるのも、ごく自然な流れと言えるでしょう。
折しも5G(第5世代移動通信システム)の時代が到来し、オンラインコンテンツやVR技術は今後一層充実していくでしょう。 例えばウブロのデジタルブティックの仕組みを活用すれば、高級時計ブランドのアンバサダーを務める有名スポーツ選手や芸能人たちが一日店長として接客する、なんていうサービスも可能ですよね!
パテック・フィリップやロレックスのように、顧客との対面コミュニケーションを重視している老舗ブランドが、今後はそういった需要にどう応えていくのか(いかないのか?)、注目ですね。
高級腕時計も、家にいながらVRを駆使してオンラインで気軽に「試着体験」し「接客」され、購入する。今後はそれが当たり前の光景になっていくのかもしれません。