時計業界のオスカーとも呼ばれる「GPHG2023（ジュネーブ・ウォッチメイキング・グランプリ）」。2023年9月からノミネート作品の展示が行われ、2023年11月9日、スイス・ジュネーブのレマン劇場（テアトル・デュ・レマン）にて授賞式が開催されました。2023年は全部門合わせて90の時計がノミネートされ、グランプリ「金の針賞」を含む18の受賞作品が発表されました。

今年は毎年注目を集める「メンズウォッチ賞」と「メカニカル・イクセプションウォッチ賞」が受賞なし、となる大番狂わせ（？）がありました。
ただしそれらの部門のノミネートから、大賞である「金の針賞」や「イノベーション賞」などが選出されており、例年であれば、ファイナリストがノミネート部門から外れて別の賞を獲得した場合、次の候補者が繰り上げとなっていたところです。今年はなぜそうならなかったのでしょうか。

GPHGディレクターのカリーヌ・メイラール（Carine Maillard）氏によれば、
「メンズウォッチ賞とメカニカル・エクセプション賞いずれも、審査員の投票で他の賞を獲得した1位と2位の時計が3位をあまりにも大きく上回っていたため、委員会は3位の時計は受賞に値しないと判断したのです」とのこと。

ならばいっそのこと１つの時計が複数の賞を受賞してもよいのでは、という問いに対し、彼女は「来年はそうするつもり」と回答しています。今年はなぜ駄目だったのでしょうね。

さて、本ブログではGPHG2023の全受賞モデルおよびノミネート時計を一挙にご紹介します！
なお、掲載した定価は2023年11月調査時点のものです。

GPHG（Foundation du Grand Prix d'Horlogerie de Genève)とは、時計業界において権威や影響力を持つ大会の一つです。2001年に創設され、2011年より公益財団法人によって運営されています。世界中の時計芸術の発展を目的としており、展示や表彰を通して各ブランドや時計作品を宣伝するとともに、業界全体を盛り上げてきました。

GPHG2023では、2022年5月から2023年10月に商品化された時計作品を対象としています。ブランド側のエントリー制ですが、2020年に創設されたGPHGアカデミーにより出品を勧められることもあります。一ブランドにつき7本まで、また一つのモデルに対し1カテゴリーにのみ出品可能です。複数モデルを出品する場合、各モデルは異なるカテゴリーにエントリーする必要があります。

GPHGには多くのブランドがエントリーしていますが、ロレックスやスウォッチ・グループ、リシュモンなどの有力ブランドが参加していない点には注意が必要です。そのため絶対的な優劣を決める大会とは言えませんが、業界にとって重要なイベントであることには変わりないでしょう。

ノミネートされた作品は、マカオ、香港、クアラルンプール、ニューヨーク、そしてジュネーブにて展示が行われました。受賞作品は2023年11月～12月にかけて、「ドバイ・ウォッチ・ウィーク」およびチューリッヒのクンストハウスにて紹介されています。

GPHG2023では15のカテゴリーに加え、大賞「金の針賞（エギーユ・ドール）」および4つの特別な賞が用意されています。早速ご紹介しましょう。

2023年はノミネート作品90点および受賞作品18点が選出されました。ここでは、GPHG2023の受賞・ノミネート作品を部門ごとに紹介します。

大賞/金の針賞は、全エントリーの中で総合的に最も優れた時計に贈られます。GPHGの中で最も大きな権威・影響力をもつ賞です。

「オーデマ・ピゲ（AUDEMARS PIGUET）、CODE 11.59 バイ オーデマ ピゲ ウルトラコンプリケーション ユニヴェルセル RD#4（CODE 11.59 BY AUDEMARS PIGUET ULTRA-COMPLICATION UNIVERSELLE RD#4）、Ref. 26398OR.OO.D002KB.01」」
ケース径：42mm、ケース素材：ピンクゴールド、自動巻きムーブメント（キャリバー1000）、ダイヤル：ベージュ、20m防水、1,723,200 CHF

今大会で最も優れた時計を表彰する「金の針賞」に選ばれたのは、世界三大時計ブランド「オーデマ・ピゲ」のドレスウォッチコレクション「CODE 11.59」です。1899年に同社で製造された懐中時計｢ユニヴェルセル｣を踏襲したモデルで、高性能なエスケープメントやスーパーリューズ、アストロノミカルムーンシステムなど、23もの複雑機構を備えています。また、3つのゴング・ハンマーを用いて時刻を知らせる「グランドソヌリ」、音質に優れた「スーパーソヌリ」に加え、音響効果を高めるシークレットゴールドケースバックを初めて装備しました。

デザインは、ラウンド型のフレームに八角形のケースを挟み込んだような大胆なフォルムが特徴的です。細身のベゼルを使用することで広がりを持たせたベージュダイヤルには、ブラックのクロノグラフカウンターやフライング・トゥールビヨン、パーペチュアルカレンダーの表示窓が整然と配置されています。また、人間工学や現代的な用法に基づいて設計されており、使い心地も快適な一本です。ピンクゴールド・ベージュ・ブラックを組み合わせた上品なビジュアルで、多機能ながら洗練された空気をまとっています。ブレスレットはスポーティーさを感じさせるラバー素材です。

2023年末での退任が決まっているオーデマ・ピゲのCEOフランソワ・ベナミアス（François Bennahmias）氏は、以下のようにコメントされています。

「29年間のキャリアの最後に、たいへん素晴らしい気持ちです。2019年にコレクションが発表された際は批判が多くありましたが、4年後にこのような結果をいただき、”CODE11.59”は特別な時計となりました。―（中略）―私が会社に入った時、社員はわずか200人程度でしたが、今では3000人近い人々が働いています。ブランドが人々を結び付けているのです。私は過去11年間（CEO就任から）、30年間（入社から）、あるいは148年間（創業から）築き上げてきたものを成就させるために、信じられないほど素晴らしいチームを率いることができました。すべての人々に祝意を表します。」

レディースウォッチ賞は、女性用腕時計のうち、時・分・秒および日付表示、パワーリザーブ表示、古典的なムーンフェイズ表示のみで構成されたもの。ジェムセッティングは最大9カラットまで。

「ピアジェ（PIAGET）、ヒドゥン トレジャーズ（HIDDEN TREASURES）、Ref. G0A48255」」
ケース径：27×22mm、ケース素材：ピンクゴールド、クォーツ式ムーブメント、ダイヤル：ターコイズ、30m防水、161,000 CHF

レディースウォッチ賞に輝いたのは、ジュエリーブランドとしても名高いピアジェの「ヒドゥン トレジャーズ」です。1960年代から70年代のカフウォッチを再解釈して、その時代の自由なフォルムや超自然主義をデザインに反映しています。特徴的なピンクゴールドのブレスレットは、当時から採用されている「パレス装飾（Decor Palace）」を再現したもの。深さや幅・方向の異なるラインを手作業で彫り込み、豊かなテクスチャーを生み出しました。また、モデル名「隠された宝物」の通り、ブレスには殻を割ったような独特の細工が施されています。オーバル型ケース、サファイアベゼル、ターコイズダイヤルの組み合わせはさながら宝物のようで、ブレスに埋もれながらも抜群の存在感を放っています。

ピアジェのベンジャミン・コマール（Benjamin Comar）氏は、以下のようにコメントされていました。

「どのようなカテゴリーでも、このアカデミーから賞をいただけることは好ましいことだと思います。私たちはジュエリーウォッチのスペシャリストであり、それに対して賞をいただけることは、私たちにとってとても特別なことです。みな常に最高の時計を身につけ、誇りに思っていることでしょう。しかし、この大会にこのような素晴らしい作品が存在していることは知らないでしょう。」

レディースコンプリケーションウォッチ賞は、女性用腕時計のうち、機械的な創造性や複雑性が傑出しているもの。パーペチュアルカレンダーやレトログラード式ディスプレイ、トゥールビヨン、ワールドタイムなど、古典的または革新的な複雑機構・表示機能を有しているモデルも当てはまります。レディースカテゴリーおよびメカニカル・エクセプションカテゴリーの定義から外れた時計が対象です。

「ディオール（DIOR MONTRES）、グラン ソワール オートマタ エトワール ドゥ ムッシュ ディオール（GRAND SOIR AUTOMATE ETOILE DE MONSIEUR DIOR）、Ref. CD1331KX1274」」
ケース径：38mm、ケース素材：イエローゴールド・ホワイトゴールド、機械式＆クォーツ式ムーブメント、ダイヤル：マザーオブパール、30m防水、110,000 CHF

レディースコンプリケーションウォッチ賞は、コスメやバッグのファンが多い有名ブランド「ディオール」が受賞しました。最近では時計づくりにも力を注いでいるようで、時計業界にいる者としては、女性が時計に興味をもつきっかけになればと感じています。今作品では創業者クリスチャン・ディオールがパリの街で見つけた幸運の星々と、それに導かれて誕生したモンテーニュ30番地のクチュールハウスが描かれました。プッシュボタンを押すことでダイヤルがシアターへと早変わりし、ディオールの誕生物語がアニメーションで表現される仕組みです。異なる層を重ねて奥行きを持たせたダイヤルは、見る人を物語にぐっと引き込んでいくことでしょう。ケース・ダイヤルにはダイヤモンド、レザーストラップにはラメ加工を施し、きらきらと輝く星夜の世界観を演出しています。自動装置は機械式、時・分表示はクォーツ式です。

ディオールのラン・チッタディーニ（Lan Cittadini）さんは、以下のようにコメントされています。

「この賞はディオールの時計にとってとても重要なものです。私たちの目的は幅広いジャンルの時計を提案することではなく、女性のための、最高級の時計を作ることです。この時計は女性のためのものでもあり、ムーブメント、複雑機構、そしてポリシーについて語るものでもあります。また、若い世代に対し、時計製造への関心を高める機会でもあるでしょう。」

メンズウォッチ賞は、男性用腕時計のうち、時・分・秒および日付表示、パワーリザーブ表示、古典的なムーンフェイズ表示のみで構成されたもの。(ジェムセッティングは最大9カラットまで。)

2022年はアクリヴィアの「レジェップ・レジェピ　クロノメトル コンテンポラン II」が受賞したメンズウォッチ賞ですが、今年は該当モデルなしという結果になりました 。ただし、メンズウォッチ賞にノミネートした時計のうち、2本が別の賞を受賞しています。

メンズコンプリケーションウォッチ賞は、男性用腕時計のうち、機械的な創造性や複雑性が傑出しているもの。ワールドタイムやデュアルタイムなど、古典的または革新的な複雑機構・表示機能を有しているモデルも当てはまります。メンズカテゴリーおよびメカニカル・エクセプションカテゴリーの定義から外れた時計が対象です。

「ヴティライネン（VOUTILAINEN）、ワールドタイマー（WORLD TIMER）、Ref. TMZ CSW」
ケース径：39×48 mm、ケース素材：スティール、手巻きムーブメント、ダイヤル：アンスラサイト（ギョーシェ彫り）、30m防水、198,000 CHF

メンズコンプリケーションウォッチ賞を制したのは、独立時計師が営む「ヴティライネン」です。日本ではまだ知名度の低いブランドですが、オーデマ・ピゲやピアジェ、パルミジャーニ・フルリエといった有名ブランドを押さえての受賞となりました。こちらはクッション型のケースにグレー系のアンスラサイトカラーのダイヤルを合わせた、無機質な雰囲気漂う一本です。手作業による緻密で美しいギョーシェ模様が目を引きますね。メインの複雑機構であるワールドタイムは操作性もよく、控えめなデザインにもすっと馴染んでいます。

アイコニックウォッチ賞は、20年以上にわたって時計製造の歴史および時計市場に影響を与えてきた、象徴的なコレクション・モデルに由来する時計が選出されます。

「ユリス・ナルダン（ULYSSE NARDIN）、フリーク ワン（FREAK ONE）、Ref. 2405-500-2A/3D」
ケース径：44mm、ケース素材：ピンクゴールド＆チタニウム、自動巻きムーブメント（DIAMonSil）、ダイヤル：なし、30m防水、65,000 CHF

2023年のアイコニック賞は、2001年発表の初代フリークを踏襲した「フリーク ワン」に授与されました。初代フリークはシリコン製ガンギ車を搭載した史上初の機械式時計であり、時計製造にシリコンという素材を持ち込んだ先駆けのような存在です。今作は2001の直系モデルとして発表されたもので、ダイヤル・針・リューズが省かれています。ブラックのサンレイ加工が施されたバレルカバーには時針の代わりのポインターが備え付けられ、分針代わりのフライングカルーセル機構が回転することで、時刻を示す仕組みです。伝統を踏まえつつ画期的な改良が加えられており、時計製造の歴史に重要な足跡を残す一本となりました。

ユリス・ナルダンのCEOであるパトリック・プルニエ（Patrick Pruniaux）氏は、以下のようにコメントされています。

「私たちは新しい時計を製作するために、何年もの長い時間を費やしてきました。フリークワンでは5年以上、さらにこれは2001年に作られた初代フリークに由来するものです。非常に心踊りますし、興奮しますね。今年の競争相手はとても優秀で、イノベーションのレベルや時計製造が見事でした。私は歴史的ブランドや新しいブランド、独立した大きな会社や小さな会社が（大会に）混在しているのは素晴らしいことだと思います。そのことが、GPHGをより感動的なものにしているのでしょう。」

トゥールビヨンウォッチ賞は、男性用機械式腕時計のうち、少なくとも1つのトゥールビヨンを含むものが対象です。

「ローラン・フェリエ（LAURENT FERRIER）、グランドスポーツ トゥールビヨン パシュート（GRAND SPORT TOURBILLON PURSUIT）、Ref. LCF044.T1.RN1」
ケース径：44×49.88mm、ケース素材：チタニウム、手巻きムーブメント（キャリバーLF619.01）、ダイヤル：ピンク、100m防水、188,475 CHF

クラシックでありながら高い品質の時計を生み出す「ローラン・フェリエ」がトゥールビヨンウォッチ賞を受賞。搭載されている手巻きキャリバー「LF619.01」は、二つのヒゲゼンマイとトゥールビヨンを併せ持つ独創的な構造をもっています。同ブランドはレーシングにも馴染みが深く、今作ではサーモンピンクのグラデーションダイヤルによって夜明けのサーキットを表現しました。針には象徴的なアセガイ型、インデックスにはドロップ型を採用。滑らかな一体型ケースや、サテン・鏡面を組み合わせた立体感のある仕上げにより、モーターレースにふさわしい躍動感のあるデザインに仕上がっています。

カレンダー&天文時計賞は、男性用腕時計のうち、少なくとも1つのカレンダー機能または天文的な複雑機構を含むものが対象です。具体的な機能としては、デイト表示やアニュアルカレンダーやパーペチュアルカレンダー、複雑なムーンフェイズ表示などがあります。

「ボヴェ 1822、リサイタル20 アステリウム（RÉCITAL 20 ASTÉRIUM）、Ref. R20N005/1/PU」
ケース径：46mm、ケース素材：ホワイトゴールド＆レッドゴールド、手巻きムーブメント、ダイヤル：ブルークォーツ、防水30m、532,432 CHF

カレンダー＆天文時計賞に選ばれたのは、メカニカルかつアストロノミカルな魅力を持つ「リサイタル20 アステリウム」です。
地球から見た星座を半透明のブルークォーツダイヤルに描き、スーパールミノバを施した上から、星座早見盤を模したフレームを重ね合わせました。地球一周の周期を正確に反映しており、星々のリアルな位置を腕元に映し出すことができます。

3時位置にはレトログラード式の分針、その下には10日間（240時間）ものパワーリザーブを管理できるインジケーターを設置。9時位置には精密なムーンフェイズ、6時位置にはリサイタル20アステリウムを調合した特許取得済みのダブルフェイストゥールビヨンを配置しました。細部に至るまでこだわりが感じられ、機械美を堪能できるデザインですね。ケースバックベゼルにはアニュアルカレンダーが用意されており、リューズを用いて夜空の位置を調整することができます。

2022年はフェルディナント・ベルトゥーが受賞したメカニカル・イクセプション賞ですが、2023年は受賞者なしという結果に終わりました。ノミネートには「金の針賞」を受賞したオーデマ・ピゲ、イノベーション賞を受賞したオートランスもリストアップされています。

メカニカル・イクセプションウォッチ賞は、特別な機構を備えた時計が対象。革新的で洗練されたディスプレイや自動装置、ミニッツリピーターなどの音響機構、特別な脱進機、ベルト駆動のムーブメントなどを搭載しています。

クロノグラフウォッチ賞は、少なくとも1つのクロノグラフ表示を含む機械式時計が対象です。

「ペテルマン・ベダ（PETERMANN BÉDAT）、クロノグラフ ラトラパント（CHRONOGRAPHE RATTRAPANTE）、Ref. 2941」
ケース径：38.6mm、ケース素材：プラチナ、手巻きムーブメント、ダイヤル：サファイア＆プラチナ、243,000 CHF

グランドセイコー渾身のテンタグラフや、世界三大時計オーデマ・ピゲのロイヤルオークオフショア、タグ・ホイヤーなどを押さえて受賞したのは、ペテルマン・ベダの若き時計師が手掛けた「クロノグラフ ラトラパント」です。複雑機構であるスプリットセコンドグラフ、ジャンピング・ミニッツ・カウンターを搭載しつつ、ビジュアルがすっきりとして見えるようにモノプッシャーを選択しました。質感を工夫したプラチナの文字盤が高級感と重厚感を加えており、ケースバックからは芸術的なムーブメントが駆動する様子を眺めることができます。

スポーツウォッチ賞は、スポーツの世界と繋がりを持ち、機能・素材・デザインが身体の動きにフィットしている腕時計が対象です。

「チューダー（TUDOR）、ぺラゴス 39（PELAGOS 39）、Ref. 25407N」
ケース径：39mm、ケース素材：チタニウム、自動巻きムーブメント（MT5400）、ダイヤル：ブラック、200m防水、4,400 CHF

スポーツウォッチ賞を獲得したのは、ロレックスのディフュージョンブランドとして誕生した「チューダー」です。近年は独自ブランドとしての道を開拓し、カジュアルで存在感のあるタイムピースを数多く生み出してきました。こちらは高品質のダイバーズライン「ぺラゴス」の一本で、サテンブラッシュ仕上げのチタン製ケースに、サンレイサテン仕上げのセラミックベゼルとブラックダイヤルを合わせています。スクエアインデックスに「イカ針（スノーフレーク針）」というチューダーらしいデザインです。チタン製ブレスレットには「T-fitクラスプ」が備え付けられており、長さを素早く微調整できるほか、25mmの延長機能も備え付けられています。それぞれの手首にジャストフィットするため、動きの激しいスポーツにおいても有用ですね。

チューダーのJuan Ciola氏は以下のようにコメントされています。

「私たちは世界中の異なる海軍と強い結び付きを持ち、ダイビングウォッチの強力なDNAを有しています。今夜受賞した時計がダイビングウォッチなのかスポーツウォッチなのかと言われたら、ダイビングウォッチです。昨年はダイビングカテゴリーで賞をいただきましたが、今年のスポーツカテゴリーでも認めていただくことができ、とても嬉しく思います。」

ジュエリーウォッチ賞は、宝飾芸術やジェムセッティングに関する卓越した技術を示す時計。宝石の質の高さもポイントです。

「ブルガリ、セルペンティ クレオパトラ（SERPENTI CLEOPATRA）、Ref. 103654」
ケース径：10.80×7.25mm、ケース素材：ピンクゴールド、クォーツ式ムーブメント、ダイヤル：スノーセッティングダイヤモンド、防水性30m、938,000 CHF

華やかなジュエリーウォッチ賞は、ブルガリのセルペンティコレクションに授与されました。セルペンティはブランドのアイコンである蛇をモチーフにしており、こちらはマンシェットタイプのモデルです。マンシェットは古代に、かの有名なクレオパトラが着用されていたもので、時代を超越した作品とも言えます。今作はイタリアデザインの現代的な表現と、宝飾および時計製造の表現手法を融合したもの。蛇の鱗に寄せた六角形の中にはダイヤモンドが敷き詰められ、大粒のトパーズ、ルベライト、タンザナイト、アメジストが鮮やかに華やいでいます。

ブルガリのCEOであるジャン・クリストフ（Jean-Christophe）氏は、以下のようにコメントされていました。

「並外れた時計メーカーが顔を揃える中、賞をいただけたのは驚くべきことです。ジュエリーウォッチカテゴリーでは三度目の受賞となりました。もちろん我々は時計メーカーであり、オクトでグランプリを勝ち取っています。しかし、歴史的にはローマのジュエラーとして誕生しており、｢クレオパトラ｣と名のつくジュエリーウォッチで賞を獲得することは非常に素晴らしいことです。この作品はハイジュエリーの名作であるだけでなく、とても豊かでユニークな歴史と直接的な繋がりを持っています。その歴史とは、創業時からブルガリにひらめきを与えてきたものです。」

アーティスティッククラフトウォッチ賞は、1つまたは複数の卓越した芸術的技能を示す時計。具体的な技法としては、エナメル加工、ラッカー加工、彫刻、ギョーシェ彫り、スケルトン加工などがあります。

「ピアジェ、アルティプラノ メティエ・ダール-ウンデュラタ（ALTIPLANO MÉTIERS D'ART - UNDULATA）、Ref. G0A48118」
ケース径：41mm、ケース素材：ホワイトゴールド、手巻きムーブメント、ダイヤル：象眼（寄木）細工、30m防水、225,000 CHF

芸術的な技法を讃えるアーティスティッククラフト部門では、ピアジェの「メタフォリア（Metaphoria）」コレクションから受賞しました。美しく力強い大自然にインスパイアされたシリーズで、こちらはブルー・グリーン・虹色の色調を融合させた寄木細工が美しいモデルです。フランス人アーティストのローズ・サヌイユは、ストロー、羊皮紙、レザー、エリトロンを何層にも重ねたパーツを根気よく手作業で組み立て、ダイヤルに魅惑的な表情を描き出しました。ケースおよびフライング・トゥールビヨンの外周にはダイヤモンドがセッティングされ、この貴重なタイムピースを華やかに飾り立てています。

小さな針賞は、小売価格が2,000CHFから8,000CHFの間の時計。スマートウォッチもこのカテゴリーに含まれます。

「クリストファー・ウォード・ロンドン（CHRISTOPHER WARD LONDON）、C1 ベル カント（C1 BEL CANTO）、Ref. C01-41APT1-T00B0-VB」
ケース径：41mm、ケース素材：チタニウム、自動巻きムーブメント、ダイヤル：アズーロブルー、30m防水、3,350 CHF

コストを抑えて多くの人に高級時計を届けるという野心をもつ「クリストファー・ウォード・ロンドン」が、見事「小さい針賞」を受賞しました。同モデルの鍵となるのは複雑機構であるチャイムモジュール「FS01」です。同様の機構を持つその他のブランドよりも価格をぐっと抑え、様々な層の人々が手に取れるように工夫しています。音質はもちろん、ビジュアルの美しさもポイントの一つです。サンレイ仕上げが施された鮮やかなアズーロブルーダイヤルには、サブダイヤルや主要部品を立体的に組み込み、力強いデザインに仕上げました。

チャレンジウォッチ賞は、小売価格が2,000CHFよりも安い時計。スマートウォッチもこのカテゴリーに含まれます。

「レイモンド・ウェイル（RAYMOND WEIL）、ミレジム オートマティック スモールセコンド（MILLÉSIME AUTOMATIC SMALL SECONDS）、Ref. 2930-STC-65001」
ケース径：39.5mm、ケース素材：スティール、自動巻きムーブメント、ダイヤル：シルバー、50m防水、1,895 CHF

スイスの有名ブランド「レイモンド・ウェイル」がチャレンジウォッチ賞を受賞しました。2針にスモールセコンドを合わせたクラシカルなモデル。シルバーでまとめられたエレガントなビジュアルで、ブラックのアワーマーカーやミニッツトラックがレースのように広がって見えます。ダイヤルにはセクター加工が施されており、シンプルながらメリハリのあるデザインです。

メカニカルクロック賞は、縦長時計や置時計など、時間計測を主な用途とする機械式の装置。腕時計はこのカテゴリーに含まれません。

「レペ（L'EPÉE 1839）、タイムファストII クローム（TIME FAST II CHROME）、Ref. 74.6011/111 サイズ：189×450mm、素材：スティール＆パラジウム＆アルミニウム、手巻きムーブメント、ダイヤル：なし、46,850 CHF

腕時計という形にとらわれないメカニカルクロック賞を受賞したのは、1960年代のレーシングカーをかたどったレぺのタイムファストⅡです。Hシャーシの骨組みはもちろん、細部までリアルを追及することで、今にも走り出しそうなキネティックアートを完成させています。運転席のピストンシステムやステアリングホイールを用いた時刻調整システムなど、リアリティと時計芸術を融合した魅力的な作品です。

クロノメトリー賞は、特別な脱進機や調整装置を搭載し、時間計測において著しく正確なパフォーマンス行う時計に贈られる賞です。該当モデルはCOSCやTIMELABなどの検査機関から公式認定を受けています。

「フェルディナント・ベルトゥー、クロノメーター FB 3SP、Ref. FB 3SPC.1」
ケース径：42.3mm、ケース素材：ホワイトゴールド、手巻きムーブメント（FB-SPC）、ダイヤル：シルバー、30m防水、143,000 CHF

精度を重視するクロノメトリー賞に選ばれたのは、メンズウォッチ賞にノミネートされていた「クロノメーター FB 3SP」です。こちらはマニュファクチュールの職人が数年という時間をかけて研究・調整を行ったもので、円筒形のヒゲゼンマイを備えたムーブメントとして初のクロノメーター認定を受けました。9時位置には個別化された脱進機の3パーツ（バランスホイール・パレットレバー・ガンギ車）が配置されており、その緻密で正確な動きを存分に眺めることができます。

オロロジカル・レヴェレイション賞は、最初のモデルが商品化されてから10年未満という若いブランドの時計に贈られる賞です。

「サイモン・ブレット、クロノメーター アルティザン、Ref. SBCA Edition Souscription」
ケース径：39mm、ケース素材：ジルコニウム、手巻きムーブメント、ダイヤル：ゴールド（エングレーヴィング）、30m防水、53,850 CHF

若いブランドを対象としたレヴェレイション賞は、メンズウォッチ賞にノミネートされていた「サイモン・ブレット」に贈られました。MB&Fのプロジェクトマネージャーとして、ムーブメントやデザインの構想を具現化する仕事を行っていたブレット氏。彼が独立して初めて手掛けたのが、こちらの「クロノメーター アルティザン」です。発表されて間もなく数年先まで完売となったほどの人気作で、ダイヤルには手彫りの「ドラゴンスクリュー」が華々しく輝いています。「天文台針」からインスピレーションを得た特殊な青焼き針や、3時位置の開口部から覗くメカニズムが印象的です。ブリッジの面取りやネジのブラックミラーポリッシュなど、小さなパーツにも繊細な加工が施されています。

オーダシティ賞は、型にはまらず、一風変わったアプローチを行っている時計に贈られる賞です。時計製造における独創性の育成を意図して設置されています。

「メゾン・アルセ、ペルセ アジュール サイズ：100×161mm、素材：スティール＆イエローゴールド、手巻きムーブメント、ダイヤル：なし、5,800 CHF

大胆で独創的な時計を讃えるオーダシティ賞は、コレクターや時計愛好家、初心者に至るまで、すべての見習い職人に組み立ての体験を与えた「ペルセ アジュール」に贈られました。調整機構のみ事前に組み上げられ、各部品には熟練の職人による丁寧な表面加工が施されています。人々は詳細なガイドに従いながらそれらを組み立て、創造と表現の喜びを体験することができるのです。この大胆かつ意欲的な取り組みにGPHGは賞賛を送りました。

イノベーション賞は、技術・デザイン・素材などの観点から時間測定の革新的なビジョンを提示し、時計製造芸術の新たな道を切り開く時計に贈られる賞です。

「オートランス、スフィア シリーズ1、Ref. BA80-ST00 ケースサイズ：50.8×43.0mm、ケース素材：スティール、手巻きムーブメント、ダイヤル：真鍮＆サファイア、100m防水、66,000 CHF

革新的な時刻表示を成功させた「スフィア シリーズ1」が、見事イノベーション賞を受賞しました。ブルーのPVD加工が施された球体は予想を裏切る動きで回転し、レトログラード式の分針とともに時刻を表示します。また、グロボライト製ミニッツマーカーが固定されたサファイアダイヤルを通して、ムーブメントに繋がる歯車の動きを眺めることができます。腕馴染みのいいテレビ型のケースも特徴的です。

多様で魅力的なラインアップとなったGPHG2023。日本からは「グランドセイコー」「Kurono Tokyo」「セイコー」のモデルがノミネートされるも、受賞はなりませんでした。グランドセイコーのテンタグラフは腕時計としての機能性や落ち着いた上質なデザインが評価され、2023年度グッドデザイン賞を受賞しています。

2022年にコンプリケーション2部門（男女）を制したエルメスは、レディースウォッチのノミネートのみ。IWC、タグ・ホイヤー、ショパール、ヴァン・クリーフ・アーペルなどの有名ブランドも受賞はありませんでした。知名度の高いブランドばかりが受賞するわけではない、というのは興味深いポイントですね。今回の受賞を機に発展していくブランドも多いことでしょう。

時計買取のピアゾは多種多様なブランド時計に対応しています。希少・人気モデルはもちろん、価値の分からないモデルもぜひお気軽にご相談ください。バイヤーとオークション形式で交渉を行い、できるだけ高価での買い取りに尽力いたします。