更新日:2021年03月08日
今回は高級ウォッチブランドが勢ぞろいするスイスウォッチが、サステイナビリティーへ企業理念を切り替え始めていることについてご紹介していきます。
環境問題や貧困問題など取り立たされる中、SDGsの注目度が高まっている近年。
日本ではまだまだ浸透が薄いように感じますが、海外では当たり前のようにエンドユーザーが環境に配慮した消費をおこなっているそう。
そうした流れを受け、ついに高級ブランドもサスティナビリティーを取り入れ始めたのです。
また、これは環境問題への取り組みということではなく、“一つのビジネス戦略”としても有効なマーケティングと考えられています。
そもそもサステイナブル、SDGs、エシカルなどという言葉になじみがない方のために、簡単に説明していきます。
サスティナブルとは英語でSustainable、「持続できる」「耐えうる」という意味の形容詞です。(ちなみにサスティナビリティーは名詞)
最近ではこれが“持続可能な社会”という意味に変換されるようになりました。
サスティナビリティーには環境問題のほかに、貧困問題、エネルギー資源問題、
ジェンダーの問題などさまざまなジャンルにおける持続可能な社会のための活動が含まれています。
SDGs(エスディージーズ)とは「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略です。
2015年に開催された国際サミットで採択された国際目標で、193か国の国連加盟国が同意し、2016年~2030年の間に達成するべき17の項目を掲げています。
上記でお話したサスティナビリティーのための開発目標というイメージですね。
エシカルとは英語でEthical、「倫理的な」「道徳的な」という意味の形容詞です。
最近ではエシカルというと“特に法律で決まっているわけではないけど、
みんなが道徳的に行動することで持続可能な社会を目指せる”というニュアンスが込められています。
日本でもエシカル消費などという言葉が出ていますが、これは「プラスチック製品よりも環境に良い素材の製品を選ぼう」
「使い捨てでなく長く使い続けられるものを選ぼう」「リサイクルで使えるものを選ぼう」など、消費者の道徳的な購入思考を促す呼びかけとなっています。
宝飾品である高級時計の市場では、リサイクルや環境問題への取り組みは無縁のものと考えられていましたが、
実は近年SDGsを無視するのは難しくなっています。
その最大の理由が消費者の考え方の変化です。
日本ではまだあまり浸透していませんが、海外では環境問題を個々の問題として取り組む国民がとても多く、
その影響でオゾン層破壊の原因となる肉食をやめてビーガンになる人、ファストファッションを買わない人が多いのです。
世界超大手グローバル経営コンサルティングファームBain&Companyが交付している冊子の著者Claudia D‘Arpizio氏はイギリスBBCにてサスティナビリティー
について以下のように述べています。
「もはやここ10年で最も重要な課題となり、消費者を動かすビジネスになるだろう」
Claudia D’Arpizio, said this: ‘Sustainability in all its forms will be one of the most important consumer trends of the next decade.’ She added that it was now a ‘business imperative’ and that social activism would be a legacy of the Covid period. Luxury, once an uncaring club defined by its arrogance, has to change.引用元
また、同上のレポートでは、特に高級時計離れといわれているG~Z世代(1980年頃生まれ~)の若い年齢層では、 64%以上がサスティナビリティーを意識して商品を購入していると伝えられており、 これがいかに時計ビジネスに大きくかかわってくるかがうかがえます。
実はSDGs発足から2年後の2018年には、WWF(World Wide Fund for Nature)世界自然保護基金から、名指しで批判された高級ブランドもあります。
WWFの主張では「時計と宝飾品のジャンルに置いて、(ビジネスの)透明性と責任を要求する」としており、
サスティナビリティーという言葉がトレンド化してきている昨今で、高級時計ビジネスは
「環境やビジネスでサスティナビリティーの基準を見たいしていない」と結論づけました。
そこで売り上げ10億ドルを超える高級ウォッチのビッグブランド、ロレックスやオメガ、パテックフィリップ、
オーデマピゲ、ティソなどが名指しで「不透明で遅れている」と批判されたのです。
またここではサスティナブル企業としてIWCが称賛されています。
IWCでは現サスティナブル企業として2022年に向けた目標を掲げており、
など、さらに多くの目標を掲げて、サスティナブル社会への貢献を目指しています。
また、IWCはGPTWの認証を保持しており、今後も継続することを目指しています。
GPTWとはGreat place to workの略で、世界60か国で従業員リサーチした結果の満足度などももとに審査される認証のことです。
IWCは現在サスティナブルな取り組みを大きな企業理念として、会社組織自体を盛り上げることで、消費者からも高い支持を得るようになっています。
ブライトリングは2020年10月に、ペットボトルのアップリライクル(新な付加価値のあるものに作り替えること)した公式BOXを発表しています。
新なボックスは、布や開閉のプッシュボタンまで、すべてペットボトルのアップリサイクル素材で作られているそう。
そのほかにも、ボックスに認定マークを付けることで、自動的に環境保護団体へ寄付できる仕組み、
ボックス輸送の距離を減らしてCo2の削減を図る試みなど、さまざまな活動とおこなっています。
すでにリサイクル素材のベルトを採用した時計を発売しているパネライですが、なんと今度は100%リサイクルの機械式時計を発表する予定だそうです。
詳しい情報は今後別途追記予定ですが、これまでBOXやパッケージ、寄付などではなく、実際に商品であるベルトにリサイクル素材を取り入れてきたパネライは、
他社の試みとは一味違う踏み込み方をしています。
また、オーバーホールがほとんど不要で動き続ける機会式時計など、サスティナビリティーに特化した商品が多いことから、
今度デカ厚とは別の注目度が高まる予想がされています。
ミートフリーマンデーなど(オゾン層破壊の大きな原因である肉食を週に一日だけ控える運動)を始めたイギリスの歌手ポール・マッカートニー氏は、
環境問題へ大きく貢献しているセレブの一人。
そしてその娘さんであるステラ・マッカートニー氏はデザイナーであり、サスティナブルファッションブランドを立ち上げています。
海外では、ステラ氏がリサイクル素材の洋服を頻繁に着用していることがピックアップされ、大きな話題となりました。
そしてこれがある意味トレンドとして流行し始め、セレブも「環境に配慮してファッション」をチョイスする傾向がみられます。
そして一部ではこのファッション業界の移り変わりが、時計業界にも影響を与えているといわれているのです。
高級時計を購入するセレブの購買意欲は、メーカーやブランドにとってとても重要なポイントとなります。
それらの欲求を満たすためにもサスティナビリティーは必須項目なのかもしれませんね。
今回は高級時計とはあまり縁がなさそうなサスティナブル市場をお伝えしてきましたがいかがでしたでしょうか?世界の情勢やトレンドをキャッチするべく、老舗のスイスウォッチも企業理念を覆すことがあるのでしょうか?! 今後も目が離せないジャンルとなりそうですね。